リビルドワールド もしもアキラに双子が居たら   作:バグキャラ

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口座

 エリオをシェリルの拠点に連れた後、一泊5000オーラムの部屋に戻り睡眠をとった2人は、以前に正式なハンターとして認められた場所、ハンターオフィスへと来ていた。

 

「いやー、なんか久しぶりって感じがする」

 

「来るのは2回目だけど、やっぱり慣れないな」

 

「天井が高いのとかそうだよね」

 

 入口近くの番号札を取って以前と同じ場所で待っている2人はオフィス内を見回しながら雑談をしていた。

 

「とりあえずは口座登録からだね」

 

「俺とソラの口座は一緒にするか?それとも別々に分けるか?」

 

「一緒でいいんじゃない?変に口座をいくつも作っても管理が出来なさそう」

 

『私に頼むって選択肢は?』

 

「そこまで頼ったらもはや依存だよ」

 

『あら、私としては依存してくれるのも大歓迎よ』

 

「そうしたら次は自立が大変そうだ。これも一人前のハンターになる為には自分たちで管理するさ」

 

『それは残念。いつでも言っていいからね?』

 

「気が向いたらね───あ、呼ばれた」

 

 紙に記載された番号がオフィスの窓口へと提示されたのを確認した2人は一泊2万オーラムのホテルよりも高級感のあるソファから立ち上がり、女性の職員の待つカウンターへと向かった。

 

「お待たせしました。本日はどのようなご用件でしょうか?」

 

「口座の作成をお願いしたいんですけど、ここで手続きってできますか?」

 

「新規での口座開設はこちらのほうで対応させていただいております。身分証明書はお持ちでしょうか?」

 

「身分証…………ソラ、何かあったか?」

 

「うーん……ハンター証とかでも大丈夫ですか?」

 

「はい、問題ございません。こちらの方に提示をお願いします」

 

 職員はその言葉と共にカウンターにシンプルながらも丁寧なつくりのカルトンが差し出されると、2人は躊躇うことなく先日に作ったハンター証を取り出した。

 

「お預かりいたします───はい、身分証の確認が終わりました。アキラ様並びにソラ様、本日は新規口座開設の御申し込み、誠にありがとうございます。開設される口座はそれぞれお一つずつで宜しいでしょうか?」

 

「あー……それがですね」

 

「まだハンターランク10になったばかりで色々と不慣れなものでして……とりあえずは僕とアキラで1つの口座を使おうかなと思いまして」

 

「かしこまりました。それでは今回の御申し込みではお二人のハンター証に登録される口座はお一つということで。今回新規開設される口座はハンター証と紐づけられますがいかがでしょうか?」

 

「……?」

 

「……どういうことですか?」

 

「はい。新規口座開設の際には口座に入金、出金に用いる管理用のカードと物品の購入やその他店舗での代金の支払いにご利用できるカードを発行するのですが、ハンター証をお持ちの方には、ハンター証で口座の管理が出来る手続きが行えます」

 

「……具体的には?」

 

「お二人が買い物をされる際に支払いを求めた時にこちらで発行したハンター証を提示していただければ、直接代金をお支払いする必要はなく、代金がご登録された口座から引き落とされるようになります」

 

「あー……なるほど。わざわざ銀行やハンターオフィスで口座からお金をおろして持ち歩かなくても、ハンター証を出せば僕たちの口座から支払ってくれるんですね」

 

「ご職業がハンターの方々はその職業柄大金を取り扱うことが多い為、多くの方がハンター証と口座との登録もとい紐づけを行っております」

 

「大金を持ち歩かなくてもいいって訳か、便利だな」

 

「だね。是非お願いします」

 

「かしこまりました。それでは開設する口座と紐づけられたハンター証の新規発行の手続きをさせていただきます。また、新規口座開設にあたりましてあらかじめ一定額の入金が必要となりますがよろしいでしょうか?」

 

「あ、はい。えっと……これをお願いします」

 

 職員から促された後、アキラは前日に受け取った遺物の買い取り金額をそのままカウンターに乗せた。

 

「お預かりいたします────はい、こちら800万オーラムでお間違いでしょうか?」

 

 アキラが差し出した帯封紙に包まれた紙幣を受け取った職員は紙幣を数える機械に投入し、表示された金額を口に出した。

 

「はい、大丈夫です」

 

「かしこまりました、それではこちらの金額を開設する口座に振り込ませていただきます。では、こちら新規発行しましたアキラ様並びにソラ様の新しいハンター証になります。またハンターオフィスのサイトから登録された口座の管理も行えますのでお確かめ下さい*1

 

「おぉー……これが新しいハンター証か」

 

「無くしたらヤバそう」

 

「はい。ですのでハンター証の紛失には十分お気をつけください。また、ハンター証を紛失された場合にはすぐにお申し出ください。口座の一時凍結、ハンター証の再発行等が必要になります。勿論ハンター証の再発行には手数料が発生いたします」

 

「わかりました」

 

「気を付けないとね」

 

 職員からの丁寧な警告を受け取った2人はしっかりと心に留めた。

 

「ではこれで手続きは終了となります。他になにかご用件はおありでしょうか?」

 

「今作った口座ってもう使えるんですか?」

 

「勿論でございます。情報端末はお持ちでしょうか?こちらハンターオフィスのサイトを開かれて登録された口座番号を入力されると現在の口座状況が確認できます。また、読み取り機能のある情報端末であればハンター証をかざすだけで確認できますのご購入をご検討されるのもよろしいかと」

 

「あ、ほんとだ。ちゃんと800万オーラムが振り込まれてる」

 

「これが俺たちの口座か……」

 

 職員の指示通りに情報端末を操作したソラは画面に表示される口座の残高を確認し、隣で見ていたアキラも満足そうにうなずいた。

 

「はい、大丈夫みたいです」

 

「それではまた何かご用件がございましたらお気軽にハンターオフィスへお尋ねください。本日はお越しいただき、ありがとうございました」

 

「こちらこそありがとうございます」

 

「色々と教えてくれてありがとうございました」

 

 スラム街でありがちな物とは全く異なる丁寧な対応をされた2人は、しっかりとした礼をもって職員に応えた。

 

 ハンターオフィスの受付はアキラとソラのことを子どもだからという理由で侮るような態度も嘲るような言動もなく、ハンターとハンターオフィスという互いに対等な立場で接してくれたことを2人は上機嫌に思いながらハンターオフィスを後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ハンターオフィスで初めての口座を作った2人は再度荒野へと出ていた。

 

「よしよし、ちゃんと遺物は残ってるね」

 

「これで残ってなかったらまずかったな」

 

 クガマヤマ都市からさほど離れていない荒野に立ち並ぶ廃ビルの一棟の中で2人は呟く。

 

 アキラとソラの視線の先には遺物が詰め込まれたリュックサックが複数置かれており、昨日カツラギに買い取りに出した量と遜色ない量であった。

 

 リュックサックの大きさ容量こそ前日の物に劣れど、リュックサック自体の数は多く、その光景は2人の顔をニヤケさせるには十分な量であった。

 

「どうする?やっぱり一度に持って行った方がいいかな?」

 

『そのほうが良いのだけど、そうなると帰りにモンスターと遭遇した場合に遺物を背負ったままだと勝率が著しく低下するわ』

 

「となるとやっぱり手分けして持って行った方がいいか」

 

『幸いそこまで距離が離れているわけでもないし、まずは持てるだけの遺物を持ってカツラギに売りに行きましょう。鑑定待ちの間にアキラとソラのどちらかが再度ここに取りにくればいいわ』

 

「まぁ、僕とアキラのどっちかがカツラギを見張ってないと絶対に遺物を持ち逃げされそうだし」

 

「遺物を売った後に再度俺とソラで取りに来るのはダメなのか?」

 

『ダメってことは無いけど、出来る限り早いほうが良いでしょう?ここも都市から離れているわけじゃないのだから、他のハンター見つかる可能性はあるでしょうね』

 

「…………とりあえず持てるだけの遺物は持っていこう。それから考えるか」

 

「カツラギはトレーラーでお店をしてるんだし、ここまで来てもらうよう呼んでみる?」

 

「あー……その手があったか」

 

『その手段も一つの手だけど、その分だけ買い取り代金は下がる可能性は考慮すべきね』

 

「まぁ車の燃料代とかあるもんね」

 

「……アルファ的にはどう思う?こういったことを考えるのもハンターとしての素質なんだろうけど、ここは頼む」

 

『私としては一度に持っていきたいところね。時間と安全、お金と装備。これらを天秤にかけるのなら、リスクを背負ってでも時間と装備を優先したいわ』

 

「ならそうするか」

 

『あら、持てるのかしら?』

 

「この遺物を他のやつらに奪われるくらいなら意地でも全部持って行ってやるよ」

 

「昨日より距離はないけど、重さがなぁー……よっこいせっと」

 

 ため息を吐きながらも近くのリュックサックを二つ背負ったソラはAAHのスリリングベルトを身体の横にやりつつ、追加でもう一つのリュックサックを片手で手にとり、空いた肩に掛けるようにして持ち上げた。

 

「うぅ……やっぱり重い……」

 

「あと少し頑張ればまた大金が手に入るんだ。それまでは我慢するさ」

 

『その大金も2人の装備代になることを忘れないでね?』

 

「……そうだったな」

 

 アキラもまたソラと同じように遺物の詰まったリュックサックを複数持ち上げると、ふらふらとした足取りで廃ビルの外を目指した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 クガマヤマ都市の下位区画とスラム街の間に位置する空き地でカツラギは、トレーラーの中で昨日にアキラとソラから買い取ったばかりの遺物の鑑定を行っていた。

 

「……ふむ。この特徴からしてあいつらが遺物を集めた場所はクズスハラ街遺跡で確定だな」

 

 片手で操作できる顕微鏡を片手に遺物の状態を隈なく調べると同時に用意された鑑定書のひな型に遺物の情報や状態を書き込んでいる。

 

 遺物の種類から用途、発見された遺跡や現時点での遺物の状態や使用具合などを記入していく。こういった作業自体は金になることは無いが、2人から買い取った遺物を他者へ売る際には非常に役に立つ。

 

 遺物の鑑定に必要な時間の省略から高値で売りつける際のプレゼン資料、売り払った後の相手の遺物の管理のしやすさに気遣った気配りにいたるまで。高値で売れるなら些細な手間も惜しまない。五大企業へ参入することを夢みるカツラギは、着実に歩みを進めてた。

 

 そんな作業の最中に突如としてトレーラーの扉が叩かれた。

 

「……ん?なんだ、今は作業中だ。ダリス!店番を頼む!」

 

「おいおい、俺は今は休憩中なんだが」

 

「あとにしてくれ!今は手が離せないんだ!」

 

「はぁ……全く。はいはい、いま出ますよっと」

 

 鑑定の作業を続けるカツラギの横をダリスが通り抜け、今もなお扉をたたき続ける者の下へと向かった。

 

 そうしてトレーラーの扉に手を掛けて勢いよく持ち上げると、そこにはこの数日で見慣れた顔が現れた。

 

「お……なんだ。アキラとソラじゃないか、昨日ぶりだな。何か用か?」

 

「何か用っていうか、とりあえずはお客としてきたんだけど」

 

「カツラギはいるか?」

 

「ん?もちろんいるぞ、ちょっと待ってろ……カツラギ!お前に客が来たぞ、アキラとソラだ!」

 

 トレーラーの後部で複数のリュックサックを降ろしながら大きく息を吐く2人にダリスは話しかけた。

 

「おいおい、昨日の今日でまた遺物の買い取りか?ハンターとして精が出るじゃないか」

 

「まさか。貯めてた遺物を持ってきたんだよ、今は色々と入用でね」

 

「流石に1日でここまで遺物を集めるのは無理だ。……何か飲み物はないか?」

 

「お、そうだな。今の2人は客だ、お茶くらいは出そう」

 

 そう言ってダリスがトレーラーの中に戻っていくのと入れ違いにカツラギが姿を見せた。

 

「待たせたな、おっ、今日も遺物を持ってくるとは予想外だ。これで2人と俺との商談は大成功だったって訳だ」

 

「遺物を持ってくるだけ───だけどね。とりあえず鑑定をお願いできる?」

 

「高値で頼むぞ」

 

「それを決めるのはこれからだな。まぁなんだ。せっかく来たんだ、トレーラーの中でやろうじゃないか」

 

 カツラギはその言葉と同時にアキラとソラの隣に降ろされた遺物の詰まったリュックサックを複数持ち上げトレーラーの中へと入っていた。

 

 それに続くようにアキラとソラもまたリュックサックを持ってカツラギの後を追う。

 

 カツラギは先程まで行っていた作業を中断し、机の上に置かれた遺物や鑑定書、機材などを手早く片付けて、2人が持ち込んだ遺物を並べ始めた。

 

「そのリュックも置いておいてくれ。これだけの量だ、すぐには終わらんぞ?」

 

「分かってるよ。高値で買い取ってくれることを祈って適当に時間を潰すから」

 

「それなら俺の店の商品を見ていけ。あそこの棚に並べられてるやつだ。何か買っていく条件だったろう?」

 

「まぁ良さそうなのがあったらね」

 

 椅子に座ってリュックサックから遺物を取り出して鑑定を始めるカツラギは意外と広いトレーラーの中に備え付けられた商品棚の方を指さした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アキラとソラは指し示された場所の前に移動してハンター向けの商品を色々と物色し始めた。

 

『へぇー……ハンター向けの商品を扱ってる部分ではシズカさんのお店と一緒だけど、品ぞろえが全然違うね』

 

 銃器などもガンラックに掛けられているが、2人は現在の装備……AAH突撃銃。加えてソラのARH自動拳銃に満足しており、特に視線を引かれることは無かった。

 

『これは……なんだ?遺物保管袋……遺物を入れるのにわざわざ別の袋を用意するのか?』

 

『衣類用・精密機械用・防水・防弾・帯電防止・耐衝撃………色々な種類があるみたいだね?』

 

『まぁ遺物収集をする際にあれば便利でしょうけど、こういった品は2人が最低限の装備を整えてから買うことをお勧めするわ』

 

『だよねー。遺物を集めるのも大事だけど今は死なないように装備が欲しい……かと言ってあっちの棚の銃はちょっと……』

 

『この銃は……A2D突撃銃って言うのか。銃身の下についている筒はなんだ?』

 

『これは榴弾発射器ねアキラ。炸薬でまとめて敵を狙える爆発物を打ち出すものよ』

 

『爆弾が撃てるってこと?』

 

『簡単に言えばね。敵が密集していたり、もしくはより丈夫な身体を持つモンスターに攻撃する際に有効になると思うわ』

 

『へぇー……すごいけど扱うのが難しそう。あと弾薬費も』

 

『そうね。武器を複数持ったところで2人の今の装備だと遺物を集めるどころか歩くことすら覚束なくなるわ。新しい武器を買う前にまずは装備ね』

 

『そういえばアルファが前から言っている装備ってのは何なんだ?銃とかじゃないんだろ?』

 

『そういえば聞いてなかった。あの大金で何を買うつもりなの?』

 

『強化服よ』

 

『強化服?』

 

『強化服って……重い物を持ったりするやつだよね?』

 

『簡単に言えば身体能力を上げる装備よ。2人の今のままだと銃を持ってあの程度の遺物を運ぶだけでヘトヘトになるでしょ?』

 

『子どもにあんな重い物を持たせるのが間違ってるよ』

 

『でも実際強化服があればだれでもあの程度の重さは持ち上げれるようになるわ』

 

『その装備を買ってアルファの遺跡に向かうのか?』

 

『いいえ?800万オーラム程度で買える強化服なんて、依頼を指定する遺跡に入るどころか道中で死ぬわ』

 

『『は?』』

 

『2人によって800万オーラムは大金でしょうけれど、私からしてみれば100億オーラムでも端金よ。だからまず2人にはお金を稼いで装備を買って、更にお金を稼いでそのお金でまた装備を買う……みたいに装備更新を続けていくことを目標にしましょう』

 

『ひゃ、100億で端金って……』

 

『……先は長そうだ』

 

『私のサポートがあればすぐよ。そのうち800万オーラムすらいずれ買う装備の弾薬費にすらならないようになるのだから、早いうちに大金を扱う感覚に慣れておきなさい』

 

『100億オーラムが端金かぁー……どんな装備を身に付けるんだろうね?』

 

『想像もできないな』

 

『いずれは目にしてもらうわ。まずはここでソラが約束した物でも買いましょうか』

 

『わかった。とりあえず強化服はここには置いてないみたいだし、次点で銃器類も選択肢から外れるね。と、なると残るのは消耗品の類だけど……流石に遺物を入れる袋はすぐには使わなそうだし……あ、回復薬とかは?』

 

『んー……ここにあるのは1個10万オーラムか。高いのか安いのかよく分からないな』

 

『僕たちが使ってる回復薬より性能が良いのかな?』

 

 銃器や雑貨の置かれた棚から移動した2人は、次なる品が置かれた棚の前に移動して目に付いたものを手に取った。

 

『いいえ、悪いわ。2人が今使っている回復薬は旧世界製の回復薬、そして今アキラが手にとった回復薬は現代で企業が製造した回復薬よ。効果の差で言えば数十倍は違うでしょうね』

 

『そ、そんなに違うの?』

 

『少なくとも2人が使っている回復薬と同等の効果を得たいのであれば、この回復薬を山ほど飲む必要があるわ』

 

『……今使ってる回復薬って高級品だったんだな』

 

『タダで手に入れたやつだから気にしたことなかったね』

 

 2人のバッグの奥に押し込まれた回復薬の容器を思い出しながら、手に取った回復薬をそのまま棚に戻した。そして隣に置いてある商品に手を伸ばした。

 

『次は……何これ。加速剤って書いてあるけど』

 

『……どういう意味だ?飲んだら動きが早くなったりするのか?』

 

 手に取ったボトルのラベルにじっと視線を向ける。書いてあることは読めるが意味が理解できないといった表情の2人にアルファが説明を始める。

 

『ソラが手に取ったのは戦闘薬の一種ね。加速剤の加速というのはいわゆく思考能力の加速という意味よ。反射神経の増幅だったり戦闘中での判断能力の向上が見込めるわね』

 

『へぇー……いいねこれ!買うのはこれにしようかな?』

 

『大丈夫なのか?なんか怪しい薬だったりしないか?』

 

『もちろん身体に負担はかかるわ。摂取量や使用頻度を間違えれば以前に回復薬を多用したとき以上に負荷が掛かって昏睡状態に落ちることもありえるでしょうね』

 

『ようはしっかりと用量を守ればいいんでしょ?大丈夫だって!』

 

『……本当に大丈夫か?』

 

 興味深そうに商品を眺めるソラとどこか心配そうにするアキラ。そんな2人のもとに飲料水を持ったダリスがやってきた。

 

「ほら、待たせたな。さっきから随分と棚を見ていたが何か買うのか?」

 

「ん?あぁ、えっと……昨日の遺物の買い取りで何かここで買うって言っちゃったから、よさげな商品を探してるとこ」

 

「ダリスもここでカツラギと一緒に店をやっているんだろ?何かないか?」

 

「何かないかって言われてもなぁ……具体的にはどんな商品が欲しいんだ?」

 

「今のところは強化服が欲しいけど置いてないみたいだし、銃もこのAAHで満足してるからそっちも大丈夫」

 

「AAHは名銃だからな。下手な銃を買うよりAAHの改造パーツを買った方がいいんだが、あいにく在庫を切らしている。悪いな……と、なると大体は消耗品になるが────ん?ソラの持ってるそれはなんだ。戦闘薬だが買うのか?」

 

「考え中。ダリス的にはおすすめできない?」

 

「店の売り上げを考えるなら購入を促すところだが、俺個人としてはあまりお勧めしないな。無難に回復薬とかにしないのか?」

 

「そっちは予備も含めて何個か持ってるから大丈夫。でもダリスも言うならやっぱりやめようかな」

 

「まぁ、戦闘薬事態もあれば便利なのは間違いない。用量を守ればいざという時に力になるからな」

 

「お、やっぱり?」

 

「あぁ、いわゆる()()()ってやつだ」

 

「おぉ、切り札!そういうのには憧れるんだよねー」

 

「だがな?そういった戦闘薬はハンター稼業の中で役には立つんだが……まぁ、デメリットというか……色々と考えることもあってな」

 

 商品棚の前で膝を曲げ、ソラの視線の高さを合わせたダリスは忠告するかのように口を開いた。

 

「戦闘薬の成分には気分を高揚させるような成分が入ってるものもある。鎮痛成分の副次的な効果だからそこまで効き目が強いってわけじゃないんだが戦闘中に使うとなると、その状況とも相まってハイになるような奴が出ることがあるんだ」

 

「は、はい?」

 

「麻薬って知ってるか?お前たちもスラム街出身だから耳にしたことはあるだろうが、この戦闘薬も似たようなもんだ。ハンターが使うことはあまり無いが金のないやつは別だ。モンスターと戦うときの恐怖を抑えようとして薬に手を出したハンターが、その高揚感のあまり調子に乗って遺跡の中で更に薬を手を付ける。結果、過剰摂取で死んだってわけだ。モンスターと戦う為に使った薬のせいでモンスターと戦うことなく1人で死ぬってオチだな」

 

「こっわ」

 

「まぁ、この話の信憑性は薄いが無いわけじゃない。が、調子に乗ったり、引き際を間違えたり、もしくは使いどころを間違えた結果、過剰摂取で戦闘中に気絶して死んだたやつはごまんといる。もしも買うならその辺はしっかりと考えな*2

 

「よし、もしそうなったらアキラに止めて貰おう」

 

「俺頼りかよ」

 

「まぁカツラギに何かか売って言っちゃったし、お試しってことで」

 

「おいおい、本当に買うのか?今の話を聞いて?」

 

「俄然買う気が出てきたね。あれば便利だし、ちゃんと用量は守るよ」

 

「まぁ、ソラがそれでいいならいいけどよ……」

 

「よし、とりあえずこれ1個ね。ついでだし、あと何個かくらいは良さそうなものを……」

 

「なら、投げ物はどうだ?消耗品の類でかつ、お前たちが持つAAHが効きにくいモンスターにも有効だぞ」

 

「投げ物?」

 

「ほら、これだ。手榴弾っていえばわかるか?破片手榴弾に焼夷手榴弾……それに機械系に有効なEMP手榴弾ってのもあるぞ」

 

 ひとまず加速剤を手に取ったソラは次なる商品を探すと、ダリスが球体の何かを取り出した。

 

「おぉー、いいね」

 

『アルファ的にはどうだ?』

 

『いいと思うわ。銃よりも軽量で、使い切りとはいえ役立つ場面は多いわね』

 

「よし、それもお願い。1個いくら?」

 

「威力にもよるが大体1万から3万オーラムくらいだ。EMPのやつは10万だがな」

 

「最後のやつだけなんか高いね」

 

「それだけ効果と需要があるんだよ。クガマヤマ都市から少し離れたところにミハゾノ街遺跡って場所があってだな。そこだと頻繁に機械系モンスターが徘徊しているから、そこで稼ぐやつは買っていったりする」

 

「なら最後のはいいや。とりあえず一番威力が大きいやつを何個か頂戴……おまけしてくれてもいいんだけど?」

 

「その相談はカツラギとしてくれ。今の俺はただの店員みたいなもんだ。支払いはどうする?現金か?」

 

「いや、口座があるからそっちで引き落として」

 

「了解だ。ほら、この端末にかざせばいいぞ」

 

 つい先程作ったばかりの口座と紐づいたハンター証を取り出したソラは、ダリスが持ってきたカードリーダーにかざして支払いをする。

 

『なるほどな。こんな感じで買い物が出来るわけか』

 

『便利だね。作ってよかったよ』

 

 問題なく口座から代金が引き落とされたのを確認したソラはハンター証を戻して買った商品をリュックの中に詰め込んだ。

 

「よし、これでお買い物は終わりっと。カツラギー、遺物は全部でいくらぐらいになりそう?」

 

 商品棚から移動したソラとアキラは鑑定を続けるカツラギの下に向かい、並べられた遺物の前にしゃがんで声を掛けた。

 

「そうだな……まだ鑑定途中だからはっきりとは言えんが……そっちの分だけで大体300万オーラムってところだな」

 

「……昨日の遺物より額が低いね。量としては倍以上はあるんだけど」

 

「それだけ価値が低いってわけだ。それに何個か傷がついてるのもあったぞ?どこかで落としたりでもしたか?」

 

「…………いやぁ?」

 

「その間はなんだ。あらかじめ言っておくが量に対しての価格は昨日よりも低いぞ。それに俺の持っておる伝手によっては大した額にはならんこともある。文句は言うなよ」

 

「……まぁとりあえず鑑定を続けて。全体的な価格が分かったらまた考えるよ」

 

「言われなくてもやるさ。……こいつも傷があるぞ。軽く見た感じでも最近出来たみたいだな」

 

 ここまで遺物を運んできた道中で何度も遺物の詰まったリュックを落としたことはアキラとソラの記憶には新しく、カツラギの視界の端で気まずそうに視線をそらした。

 

『高値が付くといいわね?』

 

「……そうだな」

 

「……ん、何か言ったか?」

 

「なんでもないよ」

 

 思わず口から洩れたアキラの言葉に反応したダリスにソラはなんでもないように返した。

 

 

 

 

 

 

 

*1
原作22話 強化服の注文で口座から支払いが出来るカード払い付きのハンター証が出てきたのでこのように取り入れてみました

*2
原作208話 それぞれの訓練 でエリオみたいになる

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