リビルドワールド もしもアキラに双子が居たら 作:バグキャラ
クガマヤマ都市の下位区画。ハンターオフィスの運営する遺物買取所のカウンターに2人の人物が並んだ。
「……ハンター証があるなら出せ」
カウンターに背中を向けたまま、手慣れた様子で仕事を進めるノジマに2人はハンター証をカウンターの上に出した。
「……ん?なんだ、お前らか」
「やっほ、職員さん。昨日ぶりだね」
「……二回目の買い取りに来たぞ」
「(……見違えたな)」
振り向きざまにハンター証を受け取ったノジマは、それを差し出した人物を見て僅かな表情を浮かべた。
「遺物は……このリュック全部か?」
「そ、頑張って集めたんだよ?」
「リュックも同じく買い取りしてくれ」
2人の持ち込んだリュックの中に詰め込まれた遺物に手をだし、大雑把に中身を確認していく。
「……ほう、今回はまぁまぁだな。前回よりも質は落ちているが、量が多い───ラッキーが続くとは運のいいもんだ」
「まぁまぁって何さ。それよりも前回分の買い取り代金も貰えるはずだよね?」
「俺たちの運は最近使い切ったんだ。実力だろ」
「はっ、実力か。───だが、確かにそうかもしれないな」
「……ん?いや、そもそもラッキーってどういう───」
「まずは前回の買い取り代金、30万オーラムだ」
「「 は? 」」
「そして今回の遺物は……そうだな。質は落ちているが、いかんせん量が多い。鑑定には時間が掛かる。次の買い取りまでに終わってない可能性があることを最初に明言しておこう、そしてその前金として20万オーラム出そうか」
「「 は? 」」
「計50万オーラムだ。ここでこんな額を貰うガキなんて滅多に……いや、初めてかもな」
そういって帯封紙にまとめられた50万オーラム分の札束がドンと2人の目の前のカウンターに置かれた。
「……え、ガチで?」
「………………」
「良くて1万……いや、5万オーラムくらいかと……」
「………………」
ソラは目の前の札束を前にブツブツと話し、隣のアキラは身体が震えていた。
「まぁ、大切につかいな。ほら、いったいった。後ろがつかえてるんだ」
「───はっ!そうだった。ほらアキラ、行くよ!いつまでぼーっとしてるのさ」
「……え、あ、あぁ……」
「職員さんもありがとう!また次も遺物を持ってくるから楽しみにしててね!」
「はっ、まぁ期待しとくさ。ほら、さっさといけ」
そうして手をシッシと払いながらもどこか笑みを浮かべたかのようなノジマに感謝を述べるソラは、50万オーラム分の札束を死体から剝ぎ取ったポーチに詰め、放心したままのアキラの手をとり、引きずるようにして買取所を後にした。
スラム街の道を鋭い視線で警戒しながら歩くアキラに隣のアルファは声を掛けた。
『アキラ、少しは落ち着きなさい。そんなにきょろきょろしていたら怪しまれるわよ?』
「いやだって50万だぞ!?こんな大金見たことも……」
『いいえ、その程度のはした金で狼狽えていてはこの先やっていけないわよ?』
「は、はした金!?50万が!?」
『あら、ソラも驚くのね?』
アキラの隣を出来るだけ自然風に歩いていたソラもまたその言葉に驚いた。
「いやいや……いやいやいやいや……50万がはした金って、アルファさんと僕たち2人の間にすごい金銭感覚の差があるよね?」
『否定はしないわ。でも私のサポートを受けた上で、2人は命をかけて尚且つアキラが負傷したことも考えると間違いなくはした金よ。それは理解しなさい』
「……うっそぉー」
「……そ、そう言われてもな……」
『とりあえず2人はハンターとの闘いと探索で疲労も溜まってるだろうし、まずは宿に向かいましょう?』
「宿か……初めて利用するな」
「……とりあえずこのお金はアルファさんに貰ったも同然なんだし、アルファさんに従うのが良いと思う……だよね?」
『えぇ、ソラ。お金の使い方も含めてちゃんとサポートしてあげるわ』
そうしてアルファの指示で向かった先は下位区画に場所を構えるハンター向けの宿泊施設。利用する客層はその名の通りハンターであり、そういった点から自身の装備として所持している銃器などの持ち込みが許可されている。
利用できる部屋の種類は料金によって変わるが、銃器の持ち込みが禁止されるようなことは無い。だが、持ち込む銃器は対モンスター用の物がほとんどであり、もし他の利用客と揉めたりでもしたら、その被害は尋常ではなく、宿自体が消失することもあり得ないことではない。
その為、こういった宿を利用する客には相応のモラル、マナーが求められていた。なお、ハンター同士のいざこざで宿が半壊したといても修理費を出せるのでれば、十分行儀の良いハンター扱いになるのもまたここでの常識だった。
「……広いね」
「あぁ……ずっと路地裏で生活してきたから何というか……室内は落ち着かないな」
値段にして並みほどの部屋を借りた2人は
『それにしてもアキラとソラは同じ部屋でよかったの?1人用の部屋だからベットは1つしかないわよ?』
「?いや、いつも一緒に寝てたんだし、これからだって一緒に寝るよ」
「あぁ、何より二部屋も取ると金が掛かるじゃないか。ここだって一泊2万オーラムするんだぞ?」
『そういうことではないのだけれど……2人はあまり気にしてないのね』
「「……?」」
何気なく聞いた質問に2人が答えると、想定していた解答とは違ったのかアルファは苦笑いを浮かべる。
「にしても2万オーラムかー」
「……50万オーラム貰った後でも信じられねぇ……」
そういって同時に布団へと寝転がる2人にアルファが声を掛けた。
『そのまま寝ると布団が汚れるわよ?それならまずはお風呂にでも入ってみたら?……もしくは別のサポートでも───』
そうして身に付けていた服装を下着のような物へと変えたアルファがお風呂とはまた別の何かを提案しようとしたその時……
「「お風呂!?」」
2人がベットから跳ね上がり、脱衣所へと駆けだしていった。
部屋から脱衣所に場所を移した2人は、汚れた服を脱いで備え付けの洗濯機に入れると、そのまま風呂場へと入る。
すでに水が湯舟に張っており、湯気が浮かんでいることからお湯だということが見て取れた。
「先にアキラが入っていいよ。僕は頭を洗うから」
「いいのか、悪いなソラ。なら遠慮なく───」
そのまま湯舟へと身体をつけて息を吐いた。
「……一泊2万オーラムかー。まぁいいか、風呂が最高だし」
「アキラ。頭貸して、洗うから」
「……ん。頭洗うって俺の頭かよ」
「いいじゃん、こんな機会は無かったんだし。ほら、湯舟に使ったままでいいから」
そうして湯舟に浸かるアキラの頭だけを外にし、シャンプーを手に取ったソラがワシャワシャとアキラの髪で泡立てていく。
「痒い所はないですかー」
「無いな。最高だ」
「なら良かった」
初めてにしては上出来といえる手際の良さで頭を洗われているアキラは満足そうな表情で目をつむる。
そしてアキラとは違い、湯舟には使っていないソラもまた満足そうにしており、微笑みながら頭の隅々まで洗髪していった。
「……ん?アルファさんもお風呂に入ってるの?」
「……んあ?お、本当だ。拡張現実も風呂に入れるんだな」
そう話す2人の先には服を脱いだアルファがアキラと同じく湯舟に使っており、長い髪を後ろに纏めて身体を伸ばしていた。
『あら、私だけ除け者にするなんてズルいから一緒に入らせてもらってるわ』
「「……ふーん」」
『……もう私が裸になってることなんて興味なさそうね……』
欲しかった反応が返ってこなかったからか、そのままアキラと共に湯舟に浸かるアルファは2人を眺めていた。
「……はい、終わったよアキラ。僕も洗ったからちょっとずれて」
「……ん、あぁ」
そうして身体を少し前にずらしたアキラの後ろに滑り込むようにしてソラも湯舟に浸かった。
「……こっちじゃなくて反対側に行けばよかったんじゃ」
「アルファさんが入ってるじゃん。それよりも僕はアキラとくっついてお風呂に入りたい」
「……そうか……好きにしてくれ」
「うん、好きにする」
湯舟に浸かったソラに身体を預けるようにして体重を掛けるアキラと、預けられた身体を大切に抱きしめるようにして手を回すソラ。互いに目を瞑り、お互いの体温かお湯の温度かも分からないソレを感じ取っていた。
「「……………」」
『……湯舟で寝ると溺れるわよ?寝るならベットでね』
「……わかってるよ」
「………………ソラ」
「…………うん。わかってる」
アルファに応えるようにして話したソラに話しかけるようにアキラが呟いた。
ソラもまたアキラの言いたいことを理解しており、アキラから話すのを待っていた。
「……おれから言ったほうがいいか?」
「うーん……そうだね。アキラは覚悟と……意志担当だし、アキラが言ったほうがいいかな」
『……二人とも?』
一体何を話しているのだろうか。アルファにはそれが理解できなかったが、その後に話された言葉によってそれを把握した。
「……アルファの遺跡攻略の依頼。契約するよ」
「……うん」
『あら───それはつまり、私を信用してくれたってことかしら?』
「あぁ、ソラと一緒に決めたことだ。信用するよ」
ソラに預けていた身体を起こし、湯舟から起き上がった。
「……だけど、今のままじゃ俺もソラもその遺跡の攻略なんて到底無理な話だ。────だから、俺たちがハンターとして強くなるまで気長に待ってくれるか?」
「そうだね。装備は拳銃一丁と汚れた戦利品だけ。こんな装備じゃまず無理だもんね」
『そうね。ならまずは2人の装備を整えないとね』
「あぁ、わかった」
「よし、決まったことだし上がろっか」
「ソラはまだ浸かっててもいいぞ?」
「いや、アキラが上がるなら僕も上がるよ。それにほら、アキラの身体も拭いてあげる!」
「いやいいよ。それくらい自分で出来る」
「そんな遠慮せずにさー」
そんな会話をしながら風呂場を後にする2人をアルファは微笑みながら眺めていた。
ハンター向けの宿泊施設。そこは1人用ということもあって湯舟もベッドも一つずつしかないが、そのうちのベットの上でお互いに抱き合うようにして目を閉じる2人がいた。
「…………」
「…………」
朝日が昇り、2人の宿泊している部屋に光が差し込んだとき、2人のうちの片方であるアキラは目を覚ました。
「…………」
『おはようアキラ。よく眠れたかしら?』
「…………!?」
寝起きで状況が理解できなかったのか、アルファが声を掛けた直後、慌てるようにして自分の半身であるソラを探す。
「そ、ソラッ!起きてくれ!ここはどこ───」
『昨日泊まった部屋よ。忘れたの?』
「……んあっ?アキラ……?」
その騒ぎに目が覚めたのか、アキラの胴体にしがみつくようにして寝ていたソラもまた目を覚ました。
「わ、悪い……起こしたか?」
「いや、アキラが起きたらなら僕も起きる……。ふわぁ……おはようアキラ。それにアルファさんも」
『おはようソラ。よく眠れた?』
「うん……人生で最高の寝心地だったよ……」
「だな。布団があるだけでこんなに違うのか」
『ふふっ、満足して休めたようね。ならまずはご飯を食べましょう。昨日から何も食べてないでしょ?』
「……確かに」
「お腹へったね」
アルファに指摘されたかのようにして、部屋に備え付けられた冷蔵庫を漁ると、そのまま二つの冷凍食品を取り出して電子家電へと入れて温める。
時間にして数十秒後。適度に温められた食品はその調理された過程によって生まれた旨味を纏う香りが湯気と共に2人の鼻腔を擽った。
そのままソファへと持っていき、備え付けのスプーンで口にした。
「「いただきます(ーす)」」
暖かい料理を一口。スプーンの上に救って口の中に入れた瞬間。
「「……っ!」」
2人は驚愕したように目を見開いた。
「すっご、味がする!」
「いやそこかよ」
「いや美味しいよ?でもそれ以上に味がすることに感動したんだよ」
「まぁ、配給はいつも味気なかったからな」
「……今度から料理について学んでみようかな?ここにはキッチンと調理器具も揃ってるみたいだし、食材さえ揃えば僕でも……」
そんな謎の場所に感動を覚えるソラをよそに、アキラも料理を口に運びながらアルファへと問いかけた。
「……それで、これからどうすればいいんだ?」
『そうね、まず二人には最低限の装備を整えてもらうわ』
「……ん?確かに拳銃一丁だけじゃなんとも言えないからね」
「……あの戦利品は使わないのか?」
『いいえ、使わないわ。誰かのお古なんて嫌でしょ?』
「……まぁ、確かに」
「出来るなら新品がいいかな」
『なら、2人が食べ終わった後に早速買い物に行きましょうか』
下位区画に位置するハンター用品を取り扱うよろず屋、カートリッジフリークへと2人は訪れていた。昨晩に服を洗濯したためにスラム街の子どもにしては身ぎれいと言えるようになった2人は、それでもどこか気負いするかのようにドアを開ける。
「いらっしゃい、初めてのお客さん。カートリッジフリークへようこそ」
ドアを開けたすぐそこにはカウンターがあり、そこにはこの店の店長であるシズカが構えていた。
「おぉ……初めて来たけど、なんかすごい雰囲気あるね」
「……色んな銃があるな」
店に入って早々、物珍しいように辺りを見回す2人の様子に店長が声を掛けた。
「どんな御用かしら?小さなお客さん」
「あー……AAHっていう銃とそれに対応した弾薬をください」*1
「それと銃の整備ツールも一緒に……できればさっき伝えた銃とセットのもの2つを……あと荷物を入れるリュックサックがそれも2つあれば」
2人の後ろに構えるアルファの指示通りに要求を伝えると、どこか興味深そうにアキラとソラを見回した。
「(スラム街の子どもに見えるけど……もしかしてハンター……なのかしら?)」
「あ、そうだった。あとこの銃の買い取りもお願いします」
「これもだな」
そうして2人の背負った銃を、店主に銃口が向かぬように気を配りながらカウンターに乗せた。
「ふふっ、そこまで慎重にならなくてもいいわ。弾倉に弾は入ってないみたいだし、安心して」
「いやー……その、銃を持つ身分として最低限のマナーといいますか……」
「……弾が入っていないとはいえ、銃を向けられると嫌な気分になるからな……です」
そんな2人の様子に拍子抜けしたかのようにシズカが笑うと、カウンターに置かれた銃を手にとった。
「……あら、この銃にはAAHの部品が混ざってるみたいだけど───整備すればまだまだ使えるけれど買い取りにだすの?元の銃器自体はAAHよりも良い性能よ?」
黙って買い取ったほうがシズカにとっても売り上げが上がるなどと都合がよかったが、それでも2人に確認を取るのはシズカ自身の性分であった。
「あ、はい。買い取りでお願いします」
「これから2人で使いこんでいくので、出来れば新品のものを───」
「そうなのね、わかったわ。なら、買い取り金額と相殺して───25万オーラムね。ハンターのお客さんには基本的に一括払いが基本になるのだけれど」
「支払いは現金で」
「あら、稼いでいるのね」
「2人で命懸けたお金ですよ」
「ふふっ、そうなのね。なら、こちらが注文の品になります。AAHは安価で整備しやすい銃だから故障も少ないから多くのハンターに好かれているのよ。でも整備を怠ると、相応に性能が落ちるから手入れはちゃんとね?」
「はい、分かりました」
「忠告ありがとうございます。それと……このぐらいの大きさで対モンスター用に対応してる銃はありますか?」
2人がそれぞれの銃を手に入れたが、突如として思いついたソラはアルファへと視線を送るとシズカへと問いかけた。
「あら、それは拳銃かしら?そうね……この大きさなら、これならどうかしら。ARH自動拳銃よ、AAHと同じ弾丸に対応しているから、一緒に扱う分にはちょうどいいと思うわ」*2
ソラからの要望に応えるために、買い取った銃をガンラックに掛けると希望のものを同じ場所から取り出した。
「おぉーちょうど良さそう………いくらぐらいしますか?」
「そうね……モンスターに対してあまり拳銃サイズのものを扱う人は中々いないから、随分前に仕入れてから売れ残ってる商品なのよ。だから、売れ残りと型落ち品ってことも考慮して……5万オーラムでどうかしら?最後の一つだし、買ってくれるのなら専用のホルスターもつけるわ」
「───いいんですか!?」
「えぇ、サービスよ。2人には是非ともうちの常連さんになって貰って、これからの売り上げに貢献してもらわないとね」
「ありがとうございます!」
「それと2人にはこれもおまけしてあげるわ。これも型落ち品だから良ければ貰って」
「「……?」」
そういってシズカがカウンターの下から服を2着分取り出してカウンターに置いた。
言われるがままに置かれた服を着ている服の上から着ると、随分と様になったような装いになった。
それは全体を黒で統一した防護服であり、デザインとしては作業服に近いものであった。3本のラインが縦に並んだデザイン部分が特徴的で、サイズとしては子ども2人にはいささか大きすぎる程度である。*3一般的な服装よりも耐久性にすぐれ、装甲などが付けられていないこともあってか意外にも動きやすいものであった。
肩から少し下の腕と腰付近にはポーチが縫い付けられており、小物や利用頻度の高い物を仕舞うのに適していた。
一緒に備え付けられた手袋は、細かい作業に適した指ぬき仕様であり、銃を握った際のマメ防止に役立つようになっている。
「い、いいんですか!?こんなものまで貰ってしまって……」
「お金とかは……」
「いいのよこれくらい。これも型落ちだし、今後も売れないだろうからおまけよ。もし気が止めるようなら、今後の常連客としてたっぷり貢献して頂戴」
「わかりました!」
「いろいろとありがとうございます!」
そうして2人はシズカへと感謝を伝えて店を後にした。
購入した物、貰った物を袋にまとめて入り口から出ていった2人の背中をシズカは見ていた。
「……子どものハンターか……できれば生き延びて常連になってほしいわね。本当に……」
そのこぼれた言葉は彼女が2人の今後を案じるがゆえの本心だった。
買い物を済ませ、部屋へと戻った2人は手にした装備に心を弾ませながら、買った物に手を付ける。
「……どうアキラ、似合ってる?」
そう話すソラの腹部にはシズカから買った対モンスター対応のハンドガン、ARH自動拳銃が収められたホルスターが取り付けられており、両手でAAH突撃銃を構えながらも素早い射撃を可能としていた。
「あぁ、よく似合ってるよ」
「ふふ、ありがとアキラ。アキラも防護服が似合ってるよ?」
「同じの着てるだろ」
「ペアルックってやつだね」
「それにしてもソラはAAHに加えて拳銃も買っていたが使えるのか?」
「もしもの時の保険だよ。ほら、昨日のハンターを殺した時だって拳銃だったわけだし、取り回しはAAHよりもいいかなーって思って」
「そんなもんか?」
店から戻った後も上機嫌のソラはベットの上で胡坐をかき、銃を構えるアキラの下に近づき後ろからアキラの頭部へと顎を乗せるようにして抱き着く。
『装備の次は銃撃訓練ね。正式に契約したわけだから、2人を強くするためにも厳しくサポートしていくわ。特にソラは突撃銃と拳銃の2種類の訓練ね』
「頑張るよ」
「アキラに同じく」
アルファの声に2人は返事をするが、内心では別のことを考えていた。
「(正直、アルファさんがなんなのかは理解できていない。でも、アルファさんは何度もアキラと僕を助けてくれた。なら……これからアキラと一緒に強くなるためにもアルファさんを……)」
「(……得体の知れないアルファは、きっとどんな手を使ってでも遺跡を攻略してほしいんだ。でもいつか、ソラがこの前言ったように俺たちよりも強いハンターが現れた時に、捨てられるかもしれない。なら、その前に必ず強くなる。ソラと2人で成り上がってやる……!)」
2人は、2人の為に考えを巡らせる。お互い強くなる為に────
『アキラ、ソラ。契約について一番大切な事を話すわ。真剣に聞いてね』
「「……わかった」」
突如として雰囲気が変わったアルファの様子にアキラとソラは気を引き締めて返事をした。
周りの空気が重くなったかのような感覚が2人のいる部屋を覆いつくした。
『個人名アキラ及び個人名ソラに対する、より高度なサポートの実施を円滑に行うために事前説明、承諾なしに多種多様な操作をアキラに対して実施してもよろしいですか?』
「……え?」
「……あ、アルファさん?」
唐突にそう機械的な言葉でアルファがアキラとソラに対して問いかけた。
『これにはLv.5個人情報の承諾なしでの取得および活用が含まれます。説明内容に関する補足情報の取得は任意です』
「れ、れべる5……?」
「……どういうことだ?」
つらつらと用意された台本を読み上げるかのように機械的な声が2人の耳へと入っていく。
『口頭説明による規則内容及び個別概要の把握に要する推定時間は国際都市法に基づき、セシウム133原子の基底状態の二つの超微細構造準位の遷移に対応する放射の周期の91億9263万1770倍の継続時間を一秒と定義されたうえで、約120年になります。詳細内容認識までに要する時間は現在算出不可能です』
「……え、えっと、こくさいとしほう……?」
「ひゃ、120年って……さっきから一体なにを……?」
そんな2人の疑問に答えることもなくアルファは続ける。
『優先提示項目の優先順位決定方法および条例認識算出手法はA887による偏向回避法により規定されています。これには狭義の思考誘導広義の自由干渉が含まれます。対象者の生命及び思想の保護は自足自縛行動法213873条により生命及び思想の拘束と同義です。これには非該当地域での特殊協力者に対する規定の全てを含み、これらの概要に反しない詳細項目に対しすべて同意したものと見なされます』
「…………」
「…………ソラ」
「……なに、アキラ」
「……アルファが言ってることって理解できるか?」
「できると思う?」
「……すまん」
「……いいよ」
「…………」
「…………」
つらつらと訳の分からないことを述べられた2人は、途方に暮れていた。
だが、突如として覚悟を決めたかのようにソラが立ち上がった。
「アキラ!とりあえず僕が聞きたいことだけを聞いてもいい?あとはアキラの判断に任せる!」
「なげやりだな」
「こういうのは僕の担当……だと思う。アキラが覚悟と意志で、僕がアキラのために考える。どう、ちゃんと役割分担できてる?」
「あぁ、できてるよ。なら───任せた」
「任された!───よし、アルファさん、契約について聞きたいことがあります!」
『なんでしょうか』
つい先程まで同じ文言を繰り返していたアルファがソラの質問に反応した。
「さっきの契約を結ぶことについてなんだけど、アルファさんと契約するのはアキラ?それとも僕?もしくはどっちとも?」
『質問による解答を検索中────検索完了。当契約の対象者はその通信強度の観点から判断した結果、個人名アキラとの契約を推奨します』
「……アキラとの契約が推奨……なら僕とは契約できないってこと?」
『質問による解答を検索中────検索完了。呼称アルファからの要望により両者との契約を希望。よって個人名ソラとの契約は個人名アキラの契約に付随する形での契約となります』
「あぁー……なるほど?つまり、一応はアキラとソラ、両方とも契約するってことでいい?」
『はい』
「りょーかい、ある程度は分かった。次!アルファさんと僕たちが契約することで、なにか僕たちに不利益が生じますか!」
『質問による解答を検索中────検索失敗。質問に回答するために必要な情報が不足しております。個人名ソラの定義する不利益についての追加情報を求めます』
「……え、不利益だけじゃダメなの!?それなら……はい!追加します!というよりこれだけ分かればいいです!アルファさんと契約したらアキラと僕はアルファさんに脅されるようなことはありますか!特に命!どっちかが死ぬかもしれない要求をされることがあるなら契約は断ります!」
『質問による解答への条件に追加情報を加えて検索中────検索完了。呼称アルファからに対して生命の危機に関する要求することはありません。しかし、個人名アキラ及び個人名ソラの生命の危機を回避するための指針要求についての契約には含まれています』
「……ん、んん-?つまり?アキラと僕が死にそうになった時は、助ける代わりにどっちかが死にそうになるってこと?」
『はい』
「───なら、契約していい」
「アキラ!?」
ソラからの質問の途中に突如、アキラが口を挟んだ。
「ほら、あれだろ。今までと一緒ってことだ」
「……あー、そっか。そういうことね」
「あぁ、今まで2人で生き延びてきたんだ。それがアルファと契約しても続くってだけだ」
「ふふっ、一心同体だね。お互い命を懸けてお互いを助ける────そこにアルファさんが入るだけ」
「決まりだな」
「うん」
『繰り返します。より高度なサポートを円滑に行うために、事前の説明、承諾なしに多種多様な操作を個人名アキラ及び個人名ソラに対して実施してもよろしいですか?』
まるで最終確認のように機械的なアルファが口にした内容に2人は答えた。
「「 はい 」」
ソラ
アキラの双子の弟
容姿はアキラに酷似しており、髪は全体的な黒い髪に白のメッシュが特徴。髪型はアキラと同じ。口調はアキラよりも柔らかく、考え事に長けている。