リビルドワールド もしもアキラに双子が居たら 作:バグキャラ
『より高度なサポートを円滑に行うために、事前の説明、承諾なしに多種多様な操作を個人名アキラ及び個人名ソラに対して実施してもよろしいですか?』
「「 はい 」」
アルファとの契約を結ぶに当たって2人は声を揃えて意志を示した。
アキラとソラの意志をアルファへと伝えた後、まるで糸が切れたかのようにストンとソファへと座り込み、ため息をついた。
『ふぅ───』
「………アルファさん?」
「……戻ったのか?」
先程とは違い、戻ったという表現が正しいかのように様子を見る2人は、ベッドの上から動くことは無かった。
『ありがとう二人とも。驚かせてしまったかしら?』
「うーん……アルファさんを初めて見た時よりは……?」
「あぁ……あの時に比べたらそうでも……いや、本当にそうでもなかったか?」
2人にとって理解不能の言葉を紡ぐアルファの姿は、後ろの窓から差し込む光も相まってか、どこか神秘的に───そして恐ろしくも見えた。
『大丈夫よ。2人の悪いようにはしないから安心して』
その言葉と共にアキラとソラに手招きするアルファにどこか警戒するかのような素ぶりを取る2人は、ゆっくりながらもベッドから降りて、アルファの座るソファへと向かった。
『さて、アキラ、ソラ。2人と契約が成立したことで可能となったサポートが沢山あるわ』
「……あー、そういえば契約前のサポートはごく一部って言ってたね」
「……そうだったか?」
『そうよアキラ。50万オーラムを手に入れたサポートも契約後と比べたらほんの一部だから、これから体験させてあげるわ』
「なら、さっそく頼めるか?」
『もちろんよ。ソラも一緒にするわね』
「お願いしまーす」
『最初のサポートは念話よ』
「「……念話?」」
『体験するのが一番いいわ。2人とも、心の中で何か話しかけてみて?』
「「……」」
言われるがままに2人は口元を隠して、口を開かずに話すように言葉を思い浮かべた。
『あきらー』
「……!?そ、ソラ?」
「え、今の伝わったの!?」
『あら、私じゃなくてアキラに話しかけるなんて、仲間外れが好きなのねソラは』
「え!?もしかしてアルファさんにも!?」
『そうよ』
「い、いや……仲間外れのつもりじゃくて……初めてはアキラがいいというか……その……なんというか」
『そら、きこえるか?』
「アキラ?」
「お、聞こえたか?便利だな」
『2人そろって私を仲間外れだなんて……』
ヨヨヨと涙を流すようにして揶揄うアルファに2人は慌てるようにして話しかけた。
「いや、ほら……ソラとはずっと一緒だったし、そのほうがやりやすいというか……」
『…………』
「そ、そうだよ!僕だってそんな気は全然なかったして……」
『…………』
「あ、アルファ?」
「アルファさん……?」
『…………』
まるで2人の言い訳を無視するかのように泣き続けるアルファにお互い顔をむき合わせたアキラとソラはどこか理解したのか集中するかのように口を閉ざして念話で話しかけた。
『あ、あるふぁ……聞こえてるか?』
『あるふぁさーん……?』
『なにかしら?』
「「 !? 」」
直後、涙はどこへ行ったのか、満面の笑みで振り返ったアルファに驚き、2人そろってソファから滑り落ちた。
『いてて……やっぱり意図的に無視してたのか』
『驚かせないでよ……』
『ふふっ、でも2人とも念話が上手くできてるみたいね。コツでも掴んだのかしら?』
『コツというかなんというか……』
『昔からアキラとは会話しなくても考えてることは伝わってたし……それかな?』
『おそらくソレね。まぁ今みたいに考えたことが瞬時に伝わるから便利よ。戦闘中でも訓練すれば念話が出来るからまずはそこを目指しましょうか』
『……とりあえず3人だけの時の会話は念話になるのかな』
『これになれると、口を開いて会話するのが面倒になりそうだ』
『そこは使い分けね。上達すれば長いやり取りも一瞬で済むし高速かつ正確な情報伝達が出来るから戦闘中でも重要なスキルになるわ』
「へぇー」
『アキラ、口に出てるよ』
『おっと、悪い』
『さて、まず念話については理解できたわね。次は射撃のサポートについてよ。2人とも、さっき買った銃と弾を持って荒野に向かいましょう』
「ここで銃を撃つと大変になるもんね」
『ソラ、声が出てるぞ』
『あっ、ゴメン』
リュックサックに弾薬を詰め込んだ2人は、スラム街から離れた荒野へと場所を変え、買ったばかりのAAHのマガジンに銃弾を装填した。
「……なんでアルファさん服を変えたの?」
「確かに。なんか露出がちぐはぐだ」
2人の言う通り、アルファはドレスと水着と運動服が合わさったような衣装からCAのような服装へと姿を変えていた。全体的にスーツが強い印象だが、その豊満な胸だけは強調するかのような露出になっている。
『あら、これも状況に合わせた衣装よ?今の時代風に言うのならオペレーターが正しいかしら』
「へぇー……」
「本当に興味なさそうだねアキラは」
そんな2人を余所にアルファは腕を上げて荒野の先を指さした。
『ふたりとも、銃を構えたままあの100m先にある小石を狙ってみて』
「………!?」
「え、ナニコレ。四角いなにかが石ころに……」
『これが射撃サポートよ。アキラとソラの視界に拡張現実を追加したのよ』
「あー……つまり僕たちの目の中にアルファさんがいるみたいな感じ?」
『その解釈でいいわ。そのまま縁の中身を注視してみて』
「……石が近づいたのか?」
「いや、近づいたというよりコレは……」
『そう、拡大機能よ。石に赤いフチが出たでしょ?それを撃ちなさい』
「どっちから行く?」
「お先にどうぞ」
『石に伸びる青い線が弾道予測線。目標に合わせて引き金を引きなさい。そしたら高確率で当たるわ』
「なら遠慮なく────っ」
アルファの指示後、ソラに先手を譲られたアキラは遠くの石ころを目掛けて引き金を引いた。
結果。発砲と同時にアキラの身体は仰け反り、発射した弾丸は弾道予測線を大きく跨いで狙った石の奥へと着地した。
『発砲の反動で射線が大きくズレたわ。実践では動くモンスターを狙うのだから、しっかりと狙いなさい』
「わかった」
「なら次は僕だね…………ふぅー」
アキラとは違い、丁寧に狙いを定め、手ブレを無くすために息をはきつくした。
「────」
自分の視界に伸びる弾道予測線を石へと重ねて、落ち着いて引き金を引いた。
発砲と同時に身体へと伝わる反動を受け流し、弾丸が射出される瞬間もまた銃口をズラすことなく目標へと揃えた。
結果、弾道予測線に沿って飛び出た弾丸は、その演算によって導き出された通りに飛来し、見事目標であった石へと命中した。
「……よし、当たった」
「すごいなソラ。何かコツはあるのか?」
『ソラは手ブレを完全に無くして、銃の反動もしっかりと処理できていたわ。上出来ね』
「ありがとアルファさん。コツは…………そうだね。リラックスかな?アキラは身体に力を入れすぎなんだよ」
「リラックスか………」
「そうそう。ほら、もう一回構えてみて、僕が手伝うから」
そのまま再度銃を構えるアキラの腕に沿えるようにしてソラが後ろに付いた。
「……こうか?」
「……ほら、手に力をいれすぎ。もう少し抜いて……予測線がずれてるよ。手の力は抜いて、構える腕の力はそのままに……」
「……難しいな」
「慣れと練習だよ。僕だって多分偶々だろうし」
「そうか?ソラなら次も当たりそうだが……」
「どうだろうね?ま、今はアキラも当てることが大事、時間を掛けてもいいから落ち着いて……」
「……よし、行ける」
「なら、一緒に撃つよ。息を合わせて」
「────いくぞ」
「────うん」
引き金に指を掛けるアキラの手に沿えるようにソラの手が添えらえた。2人の予測弾道線は目標へと合わさっている。
「「────」」
そして銃声がなる。反動はアキラとソラによって抑えられ、銃口はブレずに真っすぐと目標に向かっていた。
「……当たったね」
「……あぁ、ありがとうソラ」
『2人ともすごいわ。初日からたった二発で目標にあてられるなんて大したものよ』
「いや、ソラのおかげだ。1人だけじゃ絶対に無理だったな」
「いやいや、アキラだってすぐ物にできるよ。なんだって僕の兄弟なんだから」
「……そうだな」
『なら、その感覚を忘れないうちに身体に覚えさせましょう』
そういってアルファは指を弾くと、2人の視界の先に無数のフチ取られた石が表示された。
『用意した目標は全部で10個。当てた数が多いほうが勝ちよ』
「よしきた」
「アキラ、ハンデはいる?」
「はっ、調子に乗るのは今のうちだ」
『用意はいいかしら』
「いつでも」
「行けるよ」
『なら開始よ』
その言葉と同時に荒野には銃声が鳴り響いた。
「いやー、まさかあんなに接戦になるなんてね」
「いや、俺のほうは途中から直接アルファが指示に加わったからな。足の親指の力加減まで指摘されるとは思わなかった」
『あら、あれでもまだやさしいほうよ?』
「マジかよ」
射撃訓練の途中で突如として始まった目標早打ち対決は、最初のはソラの圧勝だった。
結果はアキラ1に対しソラが9である。だが、アキラも負けたままではいられず、再戦を要求した。一試合のたびに10分の休憩。その間に両者の体勢や力加減にアルファから指摘が入り、再度10個の目標を狙った試合が行われた。
2回目はアキラ2に対しソラが8。3回目と4回目は3:7。5回目は5:5となっていた。
「いやー……結構自信があったんだけどなー」
「まぁまだ初日だ。次は勝つさ」
「ふふっ、楽しみにしとくよ」
『そうね……なら、少し早すぎるけれど、お試しってことで────』
「……ん?」
「どういう意味────」
アルファの言葉の意図を尋ねようとしたその時、突如として2人の耳にいつの日か聞いた遠吠えが聞こえた。
「「………っ!?」」
声の主は遠くの瓦礫から姿を現した二匹のモンスター、ウェポンドッグ。背中に生えている銃器は弾切れなのか、こちらに向けて発砲することは無く、しかし口にそなえた鋭い牙を輝かせてそれぞれの個体が2人の元へと走ってきた。
時間にして数秒。アキラは状況が理解できずにただ手に持ったAAHをモンスター目掛けて乱射する。が、一発も当たらずにそのままウェポンドッグの接近を許し、その鍵爪をもってアキラへと振り下ろした。
「うわああああ!!」
反射的に銃を構えて身体を守ろうとしたその時、アキラの目の前に一発の弾丸が飛来した。
「……!?」
飛来した弾丸はそのままアキラへと振り下ろそうとした腕へと命中し、体勢を崩した。
「───アキラっ!」
「……っ!このやろう!」
隣から聞こえてきた声にハッとしたアキラはそのまま体勢を崩したモンスターの頭部へと銃口を向けて引き金を引く。
「……はぁ……はぁ……はぁ……」
「アキラっ!大丈夫!?」
駆け寄ってくるソラに方に目をやると、そこには上半身を失ったモンスターの姿があった。
「あ、あぁ……悪い。このモンスターは一体……?」
「……いや、これはモンスターじゃない。───だよね、アルファさん」
『えぇ、そうよソラ。素晴らしい対応だったわ』
「……心臓に悪いからやめてよ……」
『あら、モンスターは待ってくれないのよ?』
「それはそうだけどさぁ……」
「ちょ、ちょっと待ってくれ…………ソラ、アルファ。ちゃんと説明してくれ」
「……ん?あぁ、そうだったね。アキラ、これはモンスターじゃなくてただの映像。アルファさんによって用意されたやつだね」
「え、映像か……これが?」
「その証拠には……ほら、手がすけてるでしょ?」
現状に理解が追い付いていたアキラへと伝えるために、ソラが目の前に横たわるウェポンドッグの死体に手をやると、その手が当たることなく通り抜けた。
「……ほんとうだ……」
『ソラの説明通り、私と同じ映像よ。突然の遭遇に慣れておかないよダメよ?』
「いやいや……だからといってこんないきなりに対応できるわけが……」
『あら、ソラはしっかりと対応できていたわよ?』
「……すごいなソラ」
「たまたまだよ」
『ふふっ、それならまずはアキラがモンスターを認識したときから、ソラの様子を再現してみましょうか』
先程と同じようにアルファが指を弾くと、ソラとアキラがアルファと同じく拡張現実として現れた。
『一つずつ説明していくわ。ソラはまずモンスターの声を聞いた後、すぐに銃を構えていたわ』
「……まぁこれは反射的なものだったし、意識して出来るかと言われたら微妙だよ」
「……そうなのか?」
『いえ、いずれはこういった反応は意識せずとも出来るようになって貰うわ。続けるわね、その後2体のウェポンドッグを認識したソラはすぐさま銃口を自分の方へと向かってるモンスターに向けて引き金を引いたわ。狙いどころも文句なしよ。この距離でも確実に当たって機動力を減らせる胴体を狙って、動きが落ちたところに頭部へと3発。撃った数が多いと感じるかもしれないけれど、確実に仕留める分には問題なしよ』
「…………」
「……あらためて言われると恥ずかしいんだけど」
『その後の対応も良かったわね。ソラの隣で慌てるアキラのカバーに入ったのも高得点よ。構えた状態からのAAH突撃銃より腹部に備えたARH自動拳銃で、襲いにかかったモンスターの攻撃手段を的確に狙えているわ。突撃銃より自動拳銃の方が取り回しがいいからね』
「……すごいな、ソラは」
「……出来すぎただけだよ」
数分前の出来事をお互いに理解した2人は沈黙に包まれた。そしてそれを嫌がったソラがなんとか抜け出そうとして、話題を上げた。
「そ、そうだっ。ちなみにさっきの行動は点数をつけると何点くらい?」
『点数?───そうね、100満点でつけるとするのならソラが90点、アキラは30点ってところかしら。ちなみにさっきの襲撃で死んでいれば0点よ』
「……ん、ソラは100点じゃないのか?」
「……死んだら0点……」
『評価は減点方式でそこに部分点が入るってところかしら?ソラの場合は最初に銃を構えて引き金を引いた時点でウェポンドッグの弱点部位を一撃で狙えなかったことくらいね。アキラの場合は───言う必要があるかしら?』
「言わなくても分かってるよ」
『ちなみにソラが援護しなかった場合はこんな感じね』
そういって表示されたのはアキラの肩か腰にかけて大きく裂かれた死体であった。
「……うぁ……結構エグイな……ん、ソラ?」
「…………」
ソラは何も言わずただアキラへと抱き着いた。
「……死んじゃいやだよ、アキラ」
「分かってる。そのための訓練なんだ」
「……うん……」
頭を強く押し付けるソラを強く撫でながら、返事を返した。
そうして数分後、気持ちを取り戻したソラは気恥ずかしそうに顔を伏せた。
「あー……その、ゴメン」
「気にすんな。銃……というか、戦いの才能はどうやらソラの方が向いてるみたいだし、もし俺が危なくなったら助けてくれ」
「それは勿論!絶対に僕がアキラを守るよ!」
『大丈夫かしら?ソラもこういったことが無いようにしっかりと訓練に取り組んでね?』
「分かった。アキラを守るために強くなるよ」
「……いやいや、俺を置いていかないでくれ、一緒に強くなるって言ったろ?」
「そりゃ勿論。一緒に強くなろう」
『大丈夫そうね、なら話に戻るわ。とりあえずは念話と視界の拡張機能は理解できたでしょ?』
「あぁ」
「トラウマになりそうだよ……夢に出てきそう」
『それはいずれ克服しないとね。他にもいろんなサポートがあるけど、それは追々伝えるわ』
お互いに射撃の訓練を再開した2人は、遠くの小石を狙いながらアルファの言葉に耳を傾けた。
『改めて契約内容についてのおさらいね。私からの依頼は、とある高難易度の遺跡攻略。報酬は高額で売れる旧世界の遺物よ』
「あぁ」
「50万オーラムをはした金っていうアルファさんが高額って言うくらいだから、楽しみにしてるよ」
『それとこの完璧なサポートはあくまでも私からの報酬の前払いってことだから覚えていてね?』
「わかってるって」
「忘れられない体験になってるよ。既に」
『さて、ここまででアキラとソラから質問はある?』
「質問か……」
「正直いろんなことを聞いてみたいけど、頭がいっぱいだから、気になったときに聞くってことで」
「そうだな、その時が来たら説明してくれ」
「それと今は射撃訓練中だけど、今後の方針?的にはどんな風に動く予定?」
『あら、良い質問ねソラ。じゃあ今から今後の訓練も含めた予定について話すわ』
「「 わかった 」」
『基本的には週1で遺跡探索をするわ。宿代と弾薬費、あともしもの為の再起用の貯金の為にね』
「それは大事だな」
「うん、また拳銃だけでモンスターと戦うのは嫌だよ」
『残りは全て訓練と勉強に充てるわ。訓練は射撃訓練や身体作り。勉強は2人の場合は読み書きからよ』
「お、勉強か」
「スラムの人は大抵文字が読めないからねー」
『依頼が達成できるその日まで、しっかりとサポートするからついてきてね?アキラ、ソラ』
「勿論だ。逃げたりするもんかよ」
「強くなるからね……お、アキラ。さっきの撃ち方よかったよ」
「本当か?……最初はソラの撃ち方を真似ていたけど、こっちの方が自分にしっくり来たな」
『人それぞれによって適切な撃ち方は変わるわ。体格、腕、指の長さ、日常での癖がその原因よ』
「……へぇー」
「アキラと僕って同じ身体と思ってたけど、違うの?」
『分かりずらいけど違うわ。正確にはアキラの方がほんのわずかに身体が大きいわよ』
「そうなのか」
「まぁ、アキラはよく食べるからね」
「ソラだって食べるだろ?いつも俺に押し付ける癖に」
「アキラがお腹いっぱいになれば僕もお腹いっぱいになるからいいんだよ」
『さて、そろそろ宿に戻りましょうか。2人とも、訓練初日にして動きが良かったわ』
そうして2人は銃を背中に構え、荒野を後にした。
そこに残ったのは、2人の射撃の的として狙われ、粉々になった石ころだけであった。
翌日。2人は一緒にソファに座り、白紙のノートを開いていた。
「拡張現実って便利だね」
「あぁ……勉強道具なんて一切持っていなかったが、まさかこんなことまで出来るなんてな」
はたから見れば、2人が開いているのはなんの変哲もない白紙のノート。だが、当人らの視界には、読み書き練習用も文字がつづられていた。
『これもサポートの一つね。スラム街で勉強道具を探すのは、遺物を探すことよりも難しいから、このほうが手っ取り早いわ』
勉強する2人の横で話すのはオフィススーツを身に纏ったアルファだ。
「あのお店……なまえなんだっけ?よろず屋の……」
「カードリッジフリーク?」
「そうそう、それだ。ハンター用品向けの商品しか置いていないって思ったけど、ノートやペンも扱ってるんだな」
『値段も品揃えも良いお店に出会えたわ。今後の訓練で必要なものはあそこで揃えるようにしましょうか』
「……そういえばアキラって、あそこのお店の店主がタイプなの?意外とデレデレしてたけど」
「なんだよ急に……普通に装備を買っただけじゃないか」
『いいえ、違ったわ。ソラと私にはわかるのよ』
「アルファもかよ……」
「優しいお姉さんがアキラのタイプなんだー」
『あら、私は2人のタイプじゃないの?』
「……いや、だから違うって」
「僕はアキラ一筋だから安心して」
「聞いてねぇよ」
『なら私も2人のタイプになれるように努力するわ』
「残念でしたー、 僕はアキラで枠が埋まってまーす」
「なんなんだよもう……」
そんな他愛ない会話を文字をなぞるように練習しながら勉強に取り組んでいる。
『それより2人とも飲み込みが早いわね。文字の読みだけならもう出来るようになるなんて』
「まぁアルファの教え方が上手いからな」
「……あ、そういえばアキラと僕ってハンター証の名前が間違ってるんじゃなかったっけ?」
「───ん、そうだったか?」
思い出したかのように2人はハンター証を取り出すと、東部統治企業連盟認証・第三特殊労働員の文字と共に前を読み上げた。
「あ……じ……ら────だれがアジラだ!」
「ぼくはソバかー」
『読めるようになって何よりよ。いずれその名前を修正してくれるようにハンター稼業を頑張りなさい』
週一での遺跡探索、2人はアルファ指示の下でクズスハラ遺跡の外縁部になってきていた。
「今日の収穫はボチボチだね」
「この前以上の量はないな」
『あそこに行くのは危険だからね。訓練も兼ねているから、ボチボチの稼ぎで宿代を稼ぎましょう』
2人の背負ったリュックサックには以前の遺物探索よりも質も量も低い遺物が詰め込まれていた。
「いくらぐらいになるかなー」
「宿代の2万オーラムさえ回収できればいいほうか?」
「あと弾薬費もね」
『あまり期待するのはやめておきなさい。この前の遺物は厳選したり、運よく残っていた場所に言っているからね』
「「はーい」」
そんな会話をしている中、ソラが脚を止めた。
「……………ん?」
「……どうした、ソラ?」
「……いや。あれってモンスター?アルファさん」
『あら、そうよソラ。よく気付いたわね』
2人が遺物収集をしていたビルの崩れた外壁からソラの指さす先には、一匹のウェポンドッグがいた。
『一匹だけのウェポンドッグね。群れからはぐれたみたいだし、こちらに気づいていないみたいだから無視しようと思っていたけれど、どうする?』
「せっかく見つけたし、今後の遺物探索の支障は排除しとこうよ」
そういって背中から遺物や弾薬、回復薬を詰めていたリュックを下ろし、銃を構えた。
「…………ふぅー」
『サポートはいるかしら、ソラ?』
「いや、自力でどこまでいけるのか試してみたい」
「……いけるのかソラ?」
「腕試しだよ」
目標との距離は約200m。訓練で狙う的の距離を考えるよそれは2倍の距離。膝をついてAAHのサイトから正確にウェポンドッグの頭部を狙った。
「───────」
狙いを定めて、引き金を引く。すでに銃の反動をものにしたソラは、ブレることなく銃口を目標へと納めた。
結果は……
「……よし、当たったね」
「……はぁー……すごいなソラは。アルファのサポート無しだろ?」
「あれ一匹を撃つにの時間を掛けたし、訓練もしてるんだから、これくらい当てれないと強くなれないよ」
「それはまだ訓練でも外す俺への嫌味か?」
「いや、エールだよ。大丈夫、アキラもすぐにできるよ!」
「……そうか?」
『出来るわアキラ。ソラも見事ね、サポート無しで当てられるなんて流石だわ』
「ありがとアルファさん。アキラもやってみたら?何かちょうどいいモンスターっている?」
「……そうだな。何かいるかアルファ?」
『あら、アキラもソラに焚きつけられたかしら?それならあれなんてどうかしら?』
ちょうどいい的がいないかアルファに聞いた2人は、アルファの方に目線を向けた。すると2人の要望に応えるかのように指を指し、目標を示した。
「群れじゃん、何匹いるんだよアレ……」
「しかも遠いな……ソラが撃ったやつよりも距離があるんじゃないか?」
はぐれたウェポンドッグの居た場所とは真反対の方向に目を向けた2人は、呆れたように声を出した。
『距離はソラよりも遠い300m。目標はあの先頭にいるリーダー個体を狙いましょうか』
「あー……あのおっきいやつか。はいアキラ、双眼鏡」
「ん……見えた。あれか……確かに周りのやつより一回りぐらいデカいな」
『一発だけなら撃ってもこちらの位置は分からないから、一撃で頭目を仕留めれば大丈夫よ』
以前買った文房具と同じく、カードリッジフリークで購入した双眼鏡で目標を認識するとアキラも銃を構えた。
『距離があるから私もしっかりサポートするわ。訓練を思い出しなさい』
「頑張って、アキラ!」
「任せろ」
アキラも同じく荷物を足元に置き、AAHのサイトから伸びる弾道予測線をウェポンドッグの頭部に合わせる。ソラと同じく膝をつき、姿勢を安定させた。
『もう少し上を狙いなさいアキラ。息を吐いて、手振れを無くして』
「……わかった」
「リラックスだよ、リラックス!」
「あぁ…………ふー」
1人と1人に言われるがままに銃口の向きを修正し、息を空いた。
落ち着いて引き金を引く。脳内に浮かんだのは、いつもアキラの隣で訓練の的を当てるソラの姿だった。
「────────」
「おぉ!」
引き金を引いた。ソラと同じく、反動を完全に抑え込み、銃口をブラさずに銃を構えていた。
訓練よりも、ソラの狙った場所よりも遠い距離は引き金を引いてから目標に当たるまでに時間が掛かる。だがそれもたったの一秒。引き金を引いてから目標までに届く時間を認識するまでもなく、2人の視界の先にいたウェポンドックの頭部ははじけ飛んだ。
「……当たったな」
「お見事、アキラ!」
「ソラに見せつけられたんだ。このくらいはな」
『えぇ、良い射撃だったわアキラ。時間が掛かったとはいえ、しっかりと反動も抑え込んでいたし、弾道予測線もしっかりと狙えていたわ』
「ありがとうアルファ。……今後は素早く狙いをつけないとな」
「そうだね!一緒に頑張ろ!」
『さて、そろそろ日が暮れるわ。都市に戻りましょう』
「了解だ」
「おっけー!……ふふ、アキラ。機嫌が良さそうだね?」
「……あぁ。いい気分だ」
「よし、帰ったらまずはお風呂!また頭を洗ってあげる!」
「いつも洗ってるじゃないか」
『ならソラには私の髪も洗って貰おうかしら?』
「いやいや……女性の髪の洗い方とか分からないし……」
「そもそも触れないだろ」
そうして2人は地面へと降ろしていた遺物を詰めたリュックサックを再度背中へと背負い、歩き出した。