リビルドワールド もしもアキラに双子が居たら 作:バグキャラ
銃口から硝煙が流れ出るAAHを握った2人は問いかける。
『アルファ、あと何人だ?』
『あと4人よ。最初の狙撃で1人、次の狙撃で2人。襲われていたハンターが反撃して1人殺したわ』
『へぇー、あそこから反撃できるんだ。結構強いんだね、あの2人組のハンター』
エレナとサラが襲撃にあった場所から少し離れたビルの一室。霧に包まれる遺跡の中から銃口を覗かせる2人は、そう2人と1人にしか伝わらない言葉で話を続ける。
『2人の足跡を的確に追っていたことにも頷けるわね。それだけ装備や実力があることよ』
『そんなハンターもお人好しで死にかけるわけか』
『さて、移動するわよアキラ。ソラはそのままここで狙撃を続けなさい。隠れたところをアキラが別方向から仕留めて』
『『 了解 』』
ソラがそのままAAHを構えて数発、ハンターが隠れた瓦礫へと銃弾を撃ち込む。
それに反応したハンターが咄嗟に銃を構えて、銃弾の飛んできた方向へと向けるがその直後にそのハンターの頭部を移動したアキラの狙撃によって撃ち抜かれた。
『こちらの居場所がバレたわソラ。すぐに移動して』
『わかった』
『アキラはそのまま待機よ。銃を撃つのも控えて』
『あぁ』
瓦礫の隙間や廃ビルの一室で狙撃を続ける2人に狙いの的となったハンターたちは困惑する。
「チクショウ!どこから撃ってやがる!卑怯だぞ、出てこい!」
瓦礫に隠れたままそう高々に声をあげるハンターは、ソラによって首を撃ち抜かれたことで上半身と頭部が分かれ、声をあげたハンターの最後の言葉となった。
『……なに言っているのアイツ』
『さぁ?声をあげたら正々堂々と戦えると思ったんじゃないかしら』
『バカじゃん』
『ならそのままバカで居てくれたほうがこちらも楽できるわ。このままハンター達の索敵範囲外から狙撃を続けていくわよ』
『いまは色無しの霧でアキラと僕は見つかりにくい状況なんだよね?』
『そうよ。彼らだけが目隠しをした状態で戦っているようなものね』
『僕たちの一方的な的になってくれてるわけか』
『訓練の成果を実践で確かめるにはちょうどいいわ。でも油断はしないでね?装備的にはAAHだけの2人よりも相手の方が高性能よ。見つかったら死ぬと思って動きなさい』
『わかった……アキラのほうはどう?』
『あぁ……次の位置に付いたが、瓦礫が邪魔だな。ソラ、行けるか?』
『大丈夫。アルファさん、いいかな?』
『あと数秒だけ待ちなさい────いいわ、今よ』
アルファの指示によって引き金を引いたソラは、その銃口の先が瓦礫に隠れたハンターの顔のすぐ横に着弾した。
「……っ!ひぃ……!?」
瓦礫に銃弾が当たったことで発生した音と飛散する瓦礫が至近距離で顔に当たったことによる驚きと恐怖で、隠れていたハンターが思わず仰け反り、その後頭部が瓦礫の裏側から露わになった。
『────アキラ』
『あぁ、見えてる』
その隙を逃すことなく、アルファの声と共にアキラが引き金を引いた。
ソラの狙撃によって姿を見せたハンターは銃弾によって後頭部を撃ち抜かれ、そのまま顔面から地面にむかって強く強打するように倒れ込んだ。
『残りのハンターはあと2人よ。そろそろ色無しの霧が晴れるから急ぐわね』
『了解、アルファさん』
『次の狙撃位置はどこだ?』
『二つ隣のビルよ。あの2人組のハンターが隠れた瓦礫の近くだから撃ったらすぐに移動して』
銃を構えて廃ビルの窓枠から姿を見せないように姿勢を低くして走る2人。
指定された狙撃位置へと移動したアキラは、そのまま銃を構える。すると、アキラの顔の横からAAHの銃口が生えてきた
『お隣失礼、アキラ』
『早かったなソラ。さっきまで反対側に居なかったか?』
『頑張って走ってきたよ。アルファさんに初めて会った時にウェポンドッグから逃げていた時の頃を思い出したね』
『その割にはあんまり息が切れてないな』
『それは2人に順調に体力がついてきている証拠よ』
『そっか……』
『こんなところで成果が出るなんてね』
『さて、話はここまでよ2人とも。次に顔を出したら撃ちなさい』
『『 了解 』』
銃口をハンターが隠れる瓦礫へと向け、姿を現す瞬間に備えた。
すると、直後。隠れていたハンター2人が装備を瓦礫の外へと投げて姿を現した。
「俺たちの負けだ!降伏する、命だけは助けてくれ!」
「そ、そうだ!俺たちはブバハのやつに脅されてやったんだ!俺たちは元々そんなつもりは無かったんだ!」
両手を上げて男たちの周りにビルをぐるりを見回しながら声を上げ続ける。
「悪かった!もう2度とこんなことはしない!」
「金なら少しだけならある!死んだ奴らの分もまとめてやるよ!」
「コイツらの装備を売ればそれなりの金にはなる!だから助けてくれ!」
命乞いのように手を挙げて無防備な状態を2人に晒すハンター達は、自身が体を表してもなお撃たれないことに安堵のような表情を浮かべた。
そのまま、ともに命乞いをしたハンターへと小声で話しかける。
「(な、なんとか交渉ができそうだぞ!)」
「(あぁ!アイツらとは違う!生き残るん──)」
直後、2人の頭は正面から向かってきた弾丸とともに弾け、熟れた果実が樹から落ちたように地面へ広がった。
廃ビルの通路を走る2人のAAHから硝煙が漏れ出るのを眺めながら、ソラが
『よかったのアキラ?お金とか装備とかもらった後に殺せばよかったんじゃない?』
『いや……別にあいつらが襲ってきたわけじゃないからな』
『そういえばそうだね……まぁいっか。お金はコツコツ貯めていけばいいし』
2人の交わす言葉は少ない。だが、お互いの気持ちは通じており、どちらとも納得した表情で脚を動かす。
そしてただ1人。アルファだけが2人の行動原理を理解できなかった。
『アキラ、ソラ。なんであの2人を助けたのか聞いてもいい?』
自身の目的の為にも2人を理解する必要があると判断したアルファはそう口にした。
『────ん?そりゃあ……あれだよ。人助けして、少しでも徳を積んどこうかなーって』
『あぁ────俺たちはアルファにサポートをしてもらってる代償に俺とソラの運を全部使い切ったみたいだしな…………その、補充ってやつだ』
アルファからの質問に2人は僅かに間をおいて理由を口にした。
『あー……アルファさん的にはあんまり乗り気じゃ無かった……かな?』
『そうだな…………アルファの目的とは外れたサポートを頼んだことに不満があるなら……その、謝る。悪かった……』
『責めているわけではないわアキラ、ソラ。私としても2人にとって見知らぬ人物、ただの赤の他人。ましてやアキラとソラにとってはあんまり良い印象のない2人組のハンターよ?そんな彼女達を2人が助ける理由があったのか気になっただけよ』
『まぁ…………その、なんというか………僕たちの訓練の成果とアルファさんのサポートがあればあのハンター達は倒せないとなーっていうか………』
『それにほら………いつもこの遺跡にきてるんだし、今後の訓練であんなハンターが集まって来るとなると今日みたいに中断することになるじゃないか』
『そ、そうそう!ああいったハンターがこの遺跡にいても邪魔なだけだし、機会があるうちに殺しておいた方が今後のためになるって思ってさ!』
『ふふっ、そうなのね。わかったわ、そういうことにしておきましょうか』
2人の説明に納得を示したアルファは、帰還ルートをアキラとソラの視界に拡張現実に表示して案内する。その裏で、2人の行動原理を整理していた。
『(……ただの建前ね。最初にあの女性ハンターが大型モンスターの進路上に居ると教えた時は特に関心を示さず、むしろ距離を取ろうとしていたわ……でも男たちの存在を伝えた途端に2人は示し合わせたかのように殺意を現した)』
AAHを前に構えて走るアキラと片手で
『(先程の質問に答える瞬間もまた一瞬の間があった───つまり男たちを殺す理由を考えていただけ。あの女性2人を
助けた女性の持つ情報収集機器に自分たちの存在がバレないようにするためにも、なるべく足跡が付かないように気を配り、足音が立たないような歩行で現場から離れていく。
『(とても強い負の感情───アキラの方が負の感情は大きいけれど、それよりも危険なのはソラ。今だに私を警戒しているソラの意見は、アキラに大きく影響を及ぼすわ。そしてアキラの負の感情もまたソラに共鳴するように増加する……どちらにせよ2人の感情がほんのわずかにでも向けられることを避けないといけない……)』
そう思考するアルファは、目の前を走る2人へと声を掛けることはなく、ただその後ろ姿だけを眺めていた。
「銃声が収まった…………終わったのかしら?」
エレナは遺跡を包む色無しの霧が収まりつつあるなか、なんとか自身の装備に身につけた情報収集機器を使って周りの状況を把握する。
情報収集機器をこの状況に最適な状態への設定しながら、こっそりと瓦礫から顔を出して辺りを見回した。
「7………8。私たちを襲ったハンターは全員死んでいるわね…」
隠れた瓦礫から顔を覗かせ、肉眼と情報収集機器を併用してハンター達の状態を把握し、その死体の数を確認したエレナはサラへと声を掛けた。
「サラ、大丈夫…………?」
「なんとか傷は塞がったけど……………もう動けそうにないわ…………」
「ここまで車を持ってこれたらいいのだけど、流石に狭すぎるわ」
何とか意識が回復したが、既に息を切らした様子のサラにエレナが決意を固めた。
「そのままここで待っててサラ、すぐに戻るわ!」
壁に背を預けたサラを気に掛けながらエレナは鹵獲した銃を構えて遮蔽物から飛び出した。
「(連中の装備を取りに来るわけでもない…………助けた報酬を要求するつもりもない。お人好しがすぎて正直不気味という他ないけれど)」
なんとか情報収集機器で索敵範囲を広げ、先程まですぐ近くにあった反応が遠ざかる様子に目を向けながら、その後を追いかける。
「(……動きが早い……、強化服を着ているのかしら。……!速度が上がった……もしかして私たちから距離を取ろうとして……)」
情報収集機器の反応が急に動きを速めたことに気づいたエレナが急いで声をあげた。
「お願い、ちょっと待って!私たちを助けてくれた人でしょう!?お礼もしたいし、話がしたいから少しだけ待ってくれないかしら!」
索敵の反応がある瓦礫の奥を前にしてエレナが助けを求めるべく声をあげた。
『そういえば最後の2人のハンターだけど、どうしてすぐ撃たなかったの?』
ある程度の距離をとったアキラとソラが移動する速度を走りから歩きへと変えて息を整えている中でアルファが声を掛けた。
『いやー……アルファさんが言ってたじゃん、装備は僕たちより向こうの方が上だって』
『あぁ。俺とソラも油断するつもりは無かったが、わざわざ向こう側からその装備を捨てて、更には当たりやすい位置に移動してくれたんだ。訓練で少し良い結果が出せたからといって実力に驕れるほど俺たちは強くはないんだ』
『安全に殺せるなら、それに越したことは無いもんね。僕たちだってまだアルファさんの依頼の前払いを貰っている中で勝手に死んで持ち逃げるほど堕ちてはないよ』
『あら、そうだったのねアキラ。ソラも依頼についてしっかりと考えてくれていることが私も分かって嬉しいわ』
2人と1人がそんな会話を続けていると、ふとアルファが声を掛けた。
『アキラ、ソラ。さっき助けた女性のハンターたちの内の1人が追ってくるわ』
『───!え、なんでだ……?』
『────もしかして僕たちが獲物を横取りしたから、その復讐とか……?』
『あの場面から反撃に移れるのだから、もしかしたらあの2人に奥の手があったのかもしれないわね』
『……そうなると、ソラの言う通り復讐に来たって可能性もあるわけか……』
『マジかー……まぁ勝手に助けたのは僕たちだし……。なら、それに合わないためにもさっさと逃げようよ』
『あぁ……アルファ。案内を頼む』
『わかったわ。既に色無しの霧が晴れてきているからこちらの位置が補足されていることを前提に指示するわね』
『了解、アルファさん』
『訓練に来たはずだったのに、なんでハンターに追われなきゃいけないんだよ……』
『遺跡には来たけれど遺物も集めてないから弾薬費や2人の体力を考えると収支はマイナスね。でもまぁ私のサポートがあったとはいえ、ハンターたちの狙撃の結果は良かったから訓練の成果を確かめるにはよかったと思うわよ?』
『まぁ……ならいっか』
『あぁ、さっさと帰ろう』
そうして2人は歩きから再度走りへと移行するが、直後瓦礫を挟んだ奥から声が掛けられた。
「お願い、ちょっと待って!私たちを助けてくれた人でしょう!?お礼もしたいし、話がしたいから少しだけ待ってくれないかしら!」
思わず脚を止めて2人は顔を見合わせた。
『……アキラ。これで馬鹿正直に顔を見せて撃ち殺されたらどうしよう』
『そうだな……スラム街でのお礼って言葉は弾丸が基本だ。アルファの言う奥の手もあるみたいだし、さっさと逃げよう』
『本当に2人は過酷な日々を送ってきたのね。でもまぁ、奥の手はあくまでも私の推測だから、ないかもしれないわよ?それにせっかくハンターたちを殺してまで助けてあげたんだし、少しは反応してあげたら?』
『反応したら声でバレるじゃん……』
『なら……ソラ。何か書くものはあるか?』
『ん?そうだね……勉強用のノートでもいい?』
『頼む、1ページくれ』
『わかった』
バッグを背中から身体の前に回して中身を漁るソラは、そのまま普段の勉強で使っている白紙のノートを取り出すと、一番後ろのページを破いてアキラに渡した。
アキラもまた筆記用具を出して受け取ったノートの切れ端に文字を書き込んだ。
『……チ・カ・ヨ・ル・ナっと』
『文字は覚えれたみたいだから、次は綺麗な字を書く練習ね』
『アキラは筆圧が強いんだよ。ほら、銃を撃つ時みたいにやさしく書いたら?』
『……ソラが書き直してくれ』
『えー……もう書いちゃったしソレでいいんじゃない?汚い字はある意味で偽装できるかもだし……』
『汚い字で悪かったな…………そうだな……なにか重りは……』
『ちょっと待ってねアキラ』
字を書いた紙を瓦礫の向こう側へと投げるためにちょうどいい重りを探すアキラにソラは手に持ったAAH突撃銃をバックに掛けると、胸部に取り付けたホルスターからARH自動拳銃を取り出した。
拳銃の
『はい、アキラ』
その操作によって空中へと放り出された銃弾を捕まえたソラはそのままアキラへと手渡す。
『へぇー……そんなことも出来るのか』
『僕も最近知ったよ』
AAH突撃銃と同じ弾薬を使用している為、対人用の拳銃の弾丸よりも大きくて長い弾薬を受け取ったアキラはチカヨルナと書いた紙と一緒に丸めると、そのまま瓦礫の向こうから声を掛けるハンターへと投げた。
『届いたか?』
『大丈夫よアキラ。しっかり届いているわ』
文字を書き記した紙を投げて数秒後、瓦礫の向こう側から再度声が掛かった。
「仲間が撃たれて動けないの!助けてもらった身で虫のいい話だけどもう少しだけ助けてくれないかしら!この近くに車を停めてあるから、そこまで仲間の護衛と運搬をお願いしたいわ!もちろん報酬は払うから……」
チカヨルナと記された紙を見たエレナはそのまま去っていきそうな気配を感じ取って声をあげる。報酬を払うとは言ったが、彼女たちにその当てはなく、噂を当てにこの遺跡へと足を運んだ理由もそれであるが、ここで命を失うよりはいい。
報酬として自身の身体を差し出すことも覚悟したエレナは声を張り上げた。
『───とか言ってるけど、どうする?』
『……だからと言って助けにいった後に難癖をつけられるのがオチだ』
『まぁそうだよねー……なんで早く助けなかったのかー……とか、僕たちが子どもだから報酬はこの程度だー……とか言われて300オーラムを投げつけられて終わりそう』
『もしくは300オーラムの代わりに銃弾が飛んできそうだな』
エレナに声を掛けられた2人は、その後に起こるであろう展開を予想するように念話で口々にしていた。
『2人とも、少し卑屈に捉えすぎじゃないかしら?少なくとも瓦礫の向こう側のハンターが助けを求めているのは事実よ?』
『いやいや、アルファさん。さっきから僕たちが話してたのは実際にスラム街で体験したことだよ?』
『あぁ、スラム街で300オーラムを持ってるだけで銃を突き付けられて襲われるんだ。遺跡の中ではもっと酷いだろ*1』
アキラとソラは生まれてからずっとスラム街で育ってきただけあってか、その年齢とは反対に中々に仕上がった考え方をしていた。
なお、この2人の考え方は他にも、2人の装備と実力が助けを求める相手の装備と実力が離れている無意識的な認識から生まれていた───ということをアルファは察知していた。
『……しょうがない。アキラが持ってる回復薬貸して』
『ん?あぁ……』
ソラに言われるがままに回復薬の錠剤が入ったボトルをアキラが手渡すと、ソラも同じく回復薬を取り出した。
あの日、アルファにサポートを受けて遺物を集めた2人は万が一のことに備えてそれぞれが回復薬を複数所持していた。2人のうちのどちらかが怪我を負った場合にすぐに治療できるように買い取りには出さずに所有していたため、両者のバッグから同じパッケージのボトルが出てくる。
『……んー、こっちの方がすくないかな?アルファさん』
『そうね。ソラが右手に持ってる回復薬の方が中身は少ないわ』
カラカラと回復薬の容器を振って中身の量を確認するソラにアルファが声を掛ける。
『なら、あの人たちの怪我が治せるのは……このくらいあれば十分かな?』
容器に入った回復薬の量を調整して、余剰分をもう片方のボトルに移すとそのまま再度封をして瓦礫の反対側へと投げた。
『まぁ、強いハンターみたいなんだし回復薬の使い方くらいわかるでしょ。はい、アキラ』
同じく封をして回復薬をアキラのリュックに仕舞うと、そのままAAH突撃銃を構えた。
『よし、帰ろっか』
『襲っていたハンターを殺して旧世界製の回復薬も分けた────人助けで運を稼いだというには十分だろ』
『そうね。あのまま逃げてもいずれ追いつかれる可能性があったから、良い判断だったと思うわ』
回復薬を投げて数秒後、再度声が聞こえてきた。
「これって回復薬よね!?貴重なもの分けてくれてありがとう!ここに私のハンターコードを書いておくから、連絡してくれると助かるわ!」
そのまま走る去っていく様子をアルファから聞いた2人は、質問を投げた。
『アルファさん、ハンターコードって何?』
『アキラとソラが情報端末を買った時に手に入れることが出来る身分証みたいな物ね』
『へぇー……そういうのがあるんだな』
『お互いの連絡を取ったり、ハンターオフィスから依頼を受ける時に使うものだから情報端末を買ったら手続きしましょうか』
『わかった。そういえば、本当に殺したハンターの装備は持って帰らないの?』
『んー…いいかな、変に荷物になりそうだし』
『あぁ。それにあいつらの装備を集めている最中に助けたハンターに見つかったりでもしたら大変だ』
『せっかく姿を見せずに助けたのに、それじゃ本末転倒だよね』
『そう』
アルファにとって2人が殺したハンターたちと以前の2人組のハンターの違いは分からない。前回はしっかりと所持品を持ち帰って金に換えていた為に不思議に思うアルファだが、アキラとソラなりの基準があるのだろうと判断して、短く答えた。
『よし、向こう側のハンターも行ったみたいだし帰るか』
『ハンターコードとか言ってたけど、今の僕たちじゃ意味が無いしね』
そうして2人はアルファの案内の下、エレナのハンターコードを手にするどころか取りに行くそぶりも見せずにクズスハラ街遺跡を足早に去っていった。
「仲間が撃たれて動けないの!助けてもらった身で虫のいい話だけどもう少しだけ助けてくれないかしら!?この近くに車を停めてあるから、そこまで仲間の護衛と運搬をお願いしたいわ!もちろん報酬は払うから……」
そう瓦礫の向こう側にいつ人物へと声を上げたエレナは、返事がないことに僅かな焦りを覚え始めた直後、先程の弾丸を丸めた紙と同じように何かが飛んできた。
飛んできたソレはエレナの足元へと転がり動きを止めると、拾い上げる。
「……これは───」
丸い容器にパッケージが印刷されたそれを見たエレナが再度声を掛けた。
「(───これで治せってことよね)これって回復薬よね!貴重なもの分けてくれてありがとう!」
手に取った物に見覚えがあったエレナは続けるように声を上げる。
「ここに私のハンターコードを書いておくから、連絡してくれると助かるわ!」
投げられた紙を大事にバッグへと仕舞い、代わりにメモ帳を取り出して一枚破り取るとスラスラと自身のハンターコードと書き記して近くの岩に置いた。
「(……これ以上話掛けるのは相手が不快に思うかもしれないわね)」
あの場所に長い時間、サラを置いたままにするわけにもいかずエレナは投げられた物を掴んで見えないであろうが関係なく頭を下げると、そのまま先程の場所へと走り出した。
戻ってきたエレナにサラが息も絶え絶えの状況で声を掛けた。
「おかえり……エレナ。無事で良かったわ……助けてくれた人は?」
「ただいまサラ……そうね。信じられないかもしれないけれど、まずは話を聞いてほしいの」
そういってエレナは先程の出来事をそのままサラへと伝えた。
「……私たちの命の恩人で報酬も要求せずにハンターたちの装備を漁らずに去っていく。良いところだけ言うと惚れたいくらいだけど……」
「姿を見せない、声も聞かせない、近づかせずにむしろ逃げていくような素ぶりすら感じたわ」
助けてくれたことに感謝はすれど、ここは弱肉強食の世界。恩の一つも要求しない人物像に2人は警戒せざるを得なかった。
「……それで貰った回復薬だけど、使った方が良いのかしら?エレナはどう思う?」
「使って大丈夫……だと思うわ。何もない容器に入っていたら怪しかったけど、この容器は見覚えがあるわ」
そういって情報端末に保存した画像を表示したエレナはサラへと見せる。
「この容器のパッケージ……旧世界製の回復薬よ。中身も比較して間違いないと思う」
「きゅ、旧世界製の回復薬って……オーラムで買うとすごく高いものじゃないかしら?」
「えぇ、最低でも200万オーラムはするわ*2。中身はさすがに未開封から減っているけど、それでも50万オーラムはするでしょうね」
「200万オーラムって……そんな高価な物を対価すら要求せずに……?」
「だから私としても考えているの。これと同じものを沢山持っているのか、単に助けようとして渡したのか……」
エレナとサラを助けた者の裏側を探ろうと思考を巡らせるが、流石に情報が少なすぎる為に打ち切った。
「考えていても仕方がないわ。せっかく貰ったことだし使っちゃいましょう」
「いいの?」
「まずはサラを回復させることが最優先よ。一応助けてくれた人たちにハンターコードを書いた紙を書き置きしてると言ってきたから、もし代金を請求されたらその時に支払いましょう」
「……わかったわ。ならありがたく使わせてもらうわ」
そうして投げられたボトルを開け、中に入っている錠剤タイプの回復薬を取り出した。
「……錠剤タイプね。飲むだけでいいのかしら?」
「回復薬の中には中身のナノマシンを直接振りかける使い方もあるみたいだけど、幸い傷は塞がっているから大丈夫ね」
「なら遠慮なく……ん。エレナも使っておいたら?」
「そうね」
容器に入った回復薬の半分以上を両手に乗せて口に放り込んだサラは、そのままなんのためらいもなく飲み込むと、残りの回復薬をエレナに使うよう促した。
錠剤を一度に飲み込むのには身体の構造上、人は不快感を覚えやすいが、彼女たちは経験豊富なハンター。なんの抵抗も咽ることもなく体内へと取り込んでいった。
そうして数十秒後、なんのためらいもなくサラが立ち上がった。
「……サラ!もう大丈夫なの?」
「えぇ、大丈夫よ。流石は旧世界製ね、効き目が早いわ」
「……私も頭痛が引いてきたわ。200万の回復薬、高いだけはあるわね」
サラの回復速度に驚くエレナもまた回復薬を服用したことで、頭の奥深くで続いていた鈍い痛みが急速に引いていく様子に言葉を漏らした。
「……さすがにこんなに効き目のある回復薬をくれた人を疑うのはよくないわね……」
「そうね……きっと何か事情があったのよ。勝手に不審者と決めつけていたのが恥ずかしいわ」
お互いに言葉を口にし、苦笑いを浮かべた。
「なら、その声も姿も性別も人数も不明な命の恩人に報いるためにも、その下準備としてあいつらの装備を剥がしましょう」
「助けてくれた人たちはおそらく2人……だと思うけど、自信はないわね」
「いいじゃない、いずれ会う機会があればわかることよ」
そうしてエレナとサラは体調や装備を整えた後に都市へと帰還した。死体を除いて銃から防護服、情報端末に至るまでのすべての装備を一つ残らず回収して売り払った額は、命の恩人に借りを返すには十分な下地となるものになった。