リビルドワールド もしもアキラに双子が居たら 作:バグキャラ
エレナとサラを助け出した2人は訓練と遺跡探索の日々を送っていた。
荒野と宿を行き
射撃訓練では静止する目標には難なく銃を当てられるようになっており、ここ最近は小石ではなくウェポンドックを相手にすることが多くなっていた。
遺跡探索はいまだクズスハラ街遺跡で行っており、取り残された僅かな遺物をコツコツと集める日々が続いていた。また、集めた遺物を買取所へと持ち込む量を調整したことでアルファは遺物の相場を把握して、日常の使用用途へと的確に振り分けている。
その内訳は訓練で使う銃弾の弾薬費や2人が宿泊する宿代に、今後の新たな装備や万が一に備えた再起用の貯金などである。
また、宿代は以前まで一泊2万オーラムの部屋を利用していたが現在は部屋のランクを落として一泊5000オーラムの部屋に宿泊している。
この部屋は以前の部屋よりも狭く、風呂が代わりにシャワーへと変更になっていることにアキラは不満の声を挙げていたが、ソラはベットがベッドで狭くなったことでいつもよりくっ付いて寝られることに喜んでいた。
クズスハラ街遺跡はアキラとソラが装備を整えたこと、遺物の持ち込みの頻度や量を調整したことで噂が沈静化していき、遺跡内でハンターを見かけることは少なくなっていった。それを利用してアルファの指示の下で誰にも見つからない場所に集めた遺物を隠すようにしていた。
「……ここに隠すたびに思うんだけど、バレたらヤバいよね」
「ヤバいどころじゃないだろ……いくらぐらいの遺物がここに集まってるんだ?」
『そうね。まだハンターオフィスが定める遺物の相場を完全に把握したわけじゃないからハッキリとは言えないけれど、初めて2人が遺物を持ち込んだ時以上の額になることはたしかよ?』
今日もまた日課の遺跡探索に来ていた2人と1人は集めた遺物を、すでに崩れて侵入すら難しくなった廃ビルから入れる地下室の棚へと集めていた。
「……ふとした時にここの遺物が無くなったら、立ち直れないかもしれないな」
「その時は僕が胸を貸してあげるよアキラ」
『私も貸してあげたらいいんだけど、残念ながらね』
「だれが借りるかよ」
「恥ずかしがらなくてもいいのにー。それにしてもアルファさん、ここの遺物っていつになったら売るの?」
『あんまり溜め込みすぎると今度は逆に持ち帰りづらくなるからね。そろそろかしら』
「……早く風呂付の部屋を取り戻すんだ」
「ベッドは今の大きさで満足してるんだけどねー」
「ソラは苦しくないのか?」
「全く」
アキラの言葉に即答するソラをよそに、集めた遺物を部屋の棚へと預けるアキラにアルファが声を掛けた。
『さて、そろそろ帰りましょうか。色無しの霧が近づいてきているわ』
「……あー……あの日のやつか」
「なんか久しぶりな気がするね。……色無しの霧って結構な頻度で出るものなの?」
『状況と場所によるわね。それこそクズスハラ街遺跡の奥部だったり最前線と呼ばれている東部の端は色無しの霧が高頻度に出ているから調査が進んでいないのよ』
「へー……ここの奥から来てたりするのかな?」
「どうだろうな……まぁアルファの通信が切れる可能性があるならあまり行きたくないな」
『そうね。アキラの言う通り、私との通信が切れる可能性もあるから極力入らないようにしてね』
「わかった」
そんな話をしながら今日もまた遺跡探索を終えて2人は宿屋へと戻っていった。
それから数日後。訓練と遺跡探索を続けていた2人の日常に変化が起きた。
「こんにちわーノジマさん。また遺物を持ってきたよ」
「あぁ、鑑定を頼む。リュックは私物だからそれ以外を買い取ってくれ」
「……ん?お前達か」
貯めていた遺物を少しずつリュックに入れて持ち帰り始めた2人は、重そうな音を立てながらノジマのいるカウンターに置いた。
「ほう……これはまた中々な量を集めてきたな」
手慣れた様子でリュックから遺物を取り出し、種類ごとに買い取りトレーへと分けていく様子をアキラとソラが興味深そうに眺めている。
「いつ見てもすごい手さばきだね」
「そうだな。俺とソラの2人でやるより何倍も速い」
「そりゃ、長い間ここに居るからな。それにお前たちにやらせると時間が掛かりすぎる」
「いやー、カウンターが高いから作業しにくいんだよねー」
「踏み台くらいはあってもいいんじゃないか?」
「ここに遺物を持ち込む子どもはお前たちくらいだ」
既に顔なじみともいえるほどには顔を合わせる2人が話す様子にノジマも会話に付き合う。
本来であればここの買い取り所に遺物を持ち込んだ場合、自身で専用のトレーに乗せてカウンターへと提出するのだが、2人の手慣れぬ様子と仕分ける速度の遅さに苛立ちを覚えたノジマ自身が声を掛け、仕分けをしてやるとアキラとソラに提案したのだった。
「……良し、仕分けは終わりだ。そうだな……お前たちが持ち込む遺物の種類は決まっているからな。買い取り代金はある程度把握している」
そういって持ち込んだ遺物の鑑定を待たずにノジマは、遺物の買い取り代金を全額前金で2人に支払った。
「……え、いいの?」
「また次回の買い取りの際に貰えるかと思っていたんだが」
「お前たちの遺物回収も今回で10回目だ。アジラ、ソバ」
「だれがソバじゃい」
「俺はアキラだ」
「ふっ、だがこちらのデータベースではそう登録されているからな。職員の立場上、登録された名前で呼ぶ必要がある」
わざとらしく間違えた名前で2人の名前を呼ぶノジマはどこか笑ったようにそう返事をする。
それを2人も分かっているのか、カウンターに置かれたリュックを手に取り、買い取り代金を仕舞って店を出ようとしたときに再度、声が掛けられた。
「ちょっと待ちな。
「「ん?」」
次に違う名前で呼ばれたら無視してやろうと考えていた2人が名前を呼ばれて振り返った。
「コレを持っていきな」
「……なにこれ?」
「……これは……地図か?」
カウンター越しのノジマから手渡された紙と黒いカードを反射的に受け取った2人は興味深そうに視線を向ける。
「そのカードを地図の場所に持っていきな」
「……?」
「……持っていったらどうなるんだ?」
「ん?あぁ、そこに行けば間違って登録されているお前たちの名前を直せるぞ」
「え、本当!?」
「……ようやくか」
「いつまでも間違った名前で呼ばれたくないだろ?ほら、とっとと行ってこい」
「分かった!いこ、アキラ!職員さんもありがとね!」
「あ、あぁ……助かった」
「元気でな」
そうしてアキラの手を引くように店を出ていく様子をノジマはどことなく上機嫌な様子で見送った。
「……あいつらももう10回目か。早いもんだな」
クガマヤマ都市の中央を囲む強固な防衛力を誇る防壁。中位区画を守るべくして建てられた防壁に一体化するようにして聳えるクガマビルと呼ばれる建物の前に2人は足を運んでいた。
ノジマから渡された紙に記された地図をなんども見直して、勇気を振り絞った。
『ここはクガマビルと言って壁内外の都市経済を繋ぐ為の中継地点よ。簡単に言えばクガマヤマ都市の要所ね』
『こ、ここであってる……よな?』
『大丈夫……だと思う。地図を4回も見直したし……』
『そこまで緊張する必要はあるかしら?』
地図の印は確かにこのビルの一階を指しており、どこか緊張した様子で身構えていた。
『あ、アルファさん。ちょっと先に進んで……』
『……頼む』
『仕方ないわね』
アキラとソラに言われるがままにアルファは2人の前を進み、それを追うようにして2人も進んでビルの中へと入っていった。
2人ではビルの中へ入るのにも結構な時間が掛かるはずであったが、アルファの先導によってその時間を短縮できていた。
『……おぉ……広いね』
『………ここに居るやつは全員ハンター……なのか?』
『クガマヤマ都市の職員とハンターオフィスの職員を除けばおそらくそうね』
2人の視界に入るのはハンターオフィスの受付とその周りに居る装備を身に付けた者たちであった。
身の丈を超える銃を背負う者や高性能の強化服を着用している者。一目
『2人ともそこまで慌てなくてもいいわよ。彼らは2人の敵というわけではないし、以前のように襲われるわけでもないから落ち着きなさい。ほら、ここに突っ立っているだけだと邪魔になるから整理券を取って待ちましょう?」
『わ、わかった……』
『ソラ、手と脚が左右同時に動いてるぞ』
アルファに言われるがまま動き出した2人は入り口付近にある機械から整理券を取って備え付けられた椅子へと腰掛けた。
『あ、アキラ……なんか見られてる気がする……』
『そ、ソラもそう思うか……?』
『気にしすぎよ2人とも。単に子どもが珍しいと思っているだけよ』
それはアルファの言う通りであり、子どもが2人そろって整理券を持ち椅子で待っている様子を他のハンターが近くを通る際に興味深いような表情で見ていた。
最近とあるハンター徒党が若手のハンターを集めているという話を思い出したり、子ども型の義体者ではないかなどの推測を建てながらも、特にアキラとソラに話しかける様子はなく離れていく。
『ここもハンターオフィスなんだな……』
『僕たちの知ってるハンターオフィスとは全然違うね……天井も高いし……』
『2人がこれまで行っていた場所は支店。ここはクガマヤマ都市の本店────まぁハンターオフィス自体は統企連が運営しているから本店というのもちょっと違うのだけれどね』
『へー……』
『強そうな人がいっぱい……』
『ここのハンターはその辺にいるようなハンターとは格が違うと言っていいわ。難易度の高い遺跡に何度も足を踏み入れて成果を上げて、それに見合った力を手にしているの。いずれ2人にはここにいるハンターを追い抜いて貰うからね?』
『が、頑張ります……』
『先は長そうだ……』
他者に聞かれることのない会話、念話でアルファと話を続ける中で2人の持つ整理券の番号が呼ばれた。
『……お、呼ばれたか?』
『僕たちの番号だね』
『文字の読み取りは問題ないみたいね。なら早速受付に行ってみましょうか』
促されるまま2人は席を立ち、ハンターオフィス支店のカウンターとは比較にもならないほどの受付に向かった。
「あのー、これを見せろって言われたんですけど……」
「ノジマさんっていうハンターオフィスの支店の職員さんからもらいました」
受付に付くと担当の者であろう女性の職員がカウンター越しに姿を見せ、2人の対応を始めた。
「確認致しました。アジラ様並びにソバ様でお間違い御座いませんか?」
黒いカードを見せるなり、わずかに驚いた表情を浮かべたが直ぐに事務的な表情へと顔を戻す。
「あ、はい……いや、違います。俺はアキラで───」
「僕はソラです。ハンター証に登録したときに間違って登録されちゃったみたいで……」
データ上に登録された名前を読み上げた職員に2人は自身の名前と状況を伝えると、目の前の職員は恭しく頭を下げて非礼を詫びた。
「大変失礼いたしました。では改めましてアキラ様並びにソラ様。この度はハンターランク10へのご昇格、おめでとうございます」
「は、はんたーらんく?」
「……あー……そういえばノジマさんも1は信用がどうとか言ってたような……」
『ようやく2人は自称ハンターから一般的なハンターになれたってことよ』
『え……僕たちは普通のハンターじゃ無かったの……』
『残念ながらねソラ』
『……なんかハンターランクを上がるようなことをしたか?』
『そうだよね……せいぜい遺物を買取所に持ち込んだくらいで……あ、もしかして』
『そう、遺物を何度も持ち込んだことが評価されたのよ。ハンターランクが上がれば普通では買えない装備が買えたり、機密性や難易度の高い依頼が受けられたりの優遇措置があるみたいね』
一体どこから持ってきたのか、アルファは手に表示された本を読むようにしながら2人に説明をする様子に、アキラとソラは目の前の職員に怪しまれぬように目線は向けず耳だけを傾けていた。
「アキラ様、ソラ様。この度は登録内容の名前の修正をご希望とのことですので、修正登録する名前を再度お聞かせ願えますでしょうか」
「アキラです」
「ソラです」
「ありがとうございます。アキラ様、ソラ様。今回の登録処理は支店で行われた仮登録から本登録への更新という意味合いが強く、登録情報は不足情報の追記が基本となります」
今回の手続きを子どもの2人にも分かりやすく丁寧に教える様子の職員にアキラとソラは集中して話を聞いていた。
「お二人の名前は、ハンターオフィスが識別するための重要な要素であり、説明・認識・確認する固有要素でもあります。対象が所属する血族・土地・国・文化・階級などをこちらに含めること踏まえて、登録名は
「「……」」
職員の言葉に2人は一瞬、間を置いた。
2人はスラム街で生まれてずっと過ごしてきた。お互い、兄弟以外に信じられる者は居らず親の名前も記憶も姿も知らない。
だが、最近。2人の名前を呼ぶものが現れた。
『アキラ、ソラ』
笑顔で語りかける人物を脳裏に浮かべ、お互いに笑いあった。
「はい。俺たちはアキラと───」
「ソラです。それでお願いします」
「かしこまりました、登録処理は以上になります。アキラ様とソラ様のこれからのご活躍を心からお祈り申し上げます」
「はい、ありがとうございました」
「……あ、それともう一つ聞きたいことがあるんですけど────」
そう言って手続きが終わった2人は職員に感謝を述べると、ふとソラが質問をした。
『これで2人はハンターランク10になった訳だけど、どうかしら?』
クガマビルの前の階段を下りるアキラとソラにアルファは声を掛けた。
「正直実感がないな」
「僕も。アルファさんのサポートがあってこそだし……」
『そうよ?私のサポートがあってこそよ』
2人の言葉に自信満々の表情で自身の活躍を訴えるアルファとは対照に2人は表情を引き攣らせた。
「だけど、このハンター証が俺たちの身分証ってわけか」
「第一歩ってやつだね。無くしたら再発行にお金やら時間やら掛かるみたいだし大切にしないとね」
『よかったわね二人とも』
2人は満足そうな表情で一泊5000オーラムの宿へと向かった。
4畳という狭さの部屋には座る場所もない為、2人は備え付けのベッドの上に胡坐をかいて座り、購入したばかりの機器を手に持って弄っていた。
「まだ掛かるのー……?」
『そうね、あと数時間は掛かるかしら?』
「そんなに!?」
ハンターオフィスを出てから宿屋に向かう途中、アルファの指示によって情報端末を販売する店へと赴いていた。
五大企業───統治企業とも呼ばれる独自の企業通貨を発行して広めるほどの影響力を持つ企業の内の一つ、多津森重工が開発し量産化にも成功したハンター向けの必需品、情報端末を購入するためである。
ハンター向けの連絡手段でもある情報端末は、これを用いることで遺跡やモンスターの情報を交換・共有・売買を可能としており、東部全体に広がっているということもあって多くの企業やハンターオフィスからの依頼が届くこともあった。
東部全域で構築されたネットワークへの接続も可能としており、遺跡の地図を入手することも出来る代物である。
そんな端末に有り金をつぎ込んで二人分を用意したアキラとソラはアルファの指示の下、情報端末の設定へと取り組んでいた。
「買った時に設定したけどあれじゃ駄目なの?」
「あぁ。しょきせってい?って言うのか。普通に使えそうだったが」
『私からしてみれば全然駄目ね。2人に万全のサポートができるように端末の中身をガッツリと書き換えるわ』
「…………壊さないでね?」
『誰に言っているのかしら?』
「ごめん」
『いいわ。今2人に操作してもらっているのは、私でも2人の端末を操作できるようにするための設定よ』
「?そんな機能があるのか」
「アルファさんも携帯を持つようになるんだね」
『少し違うわ。私の姿を発信している遺跡の通信施設の情報をこの端末で受信できるようにするの。遠隔操作と言った方がいいかしら』
「「へー」」
『本当に興味無さそうね…………まぁ細かいことは私がするから、ひとまずは最低限の設定だけしてくれたらいいわ』
「わかった」
「早く寝たい………」
そう話しながらも2人は指示されたように指先を動かし、ネットへ接続してよく分からないものをダウンロードしたり、正体不明のアプリを起動して何かと連携したらなどの操作を繰り返すこと数時間。
『よし、これで大丈夫よ』
「やっと終わったー!」
「射撃訓練よりも指が疲れるなんてな」
「もう画面ポチポチはしたくない……」
アルファの言葉で2人は端末を床に置き、そのままベッドへ転がった。
『お疲れ様、二人とも。あとは私がやっておくから休んでいいわ』
「ならお言葉に甘えるとするか」
「おやすみーアキラ」
提案に有無を言わない2人はそのまま布団に潜り込むと数分も立たぬうちに寝息を立て始めた。
2人が床に置いた端末はアキラとソラが寝た後も独りでに画面が動き続けていた。
「おはよう二人とも!」
「なんで端末のなかに居るの?」
「……なんか姿も変わってるし……」
翌日起きた2人はアルファの姿が見えないことを不思議に思ったが次の瞬間、寝る前に床に放り投げた端末から声が聞こえてきた。
そこに目を向けると、表示された画面にはデフォルメされたアルファが映っており、笑顔を浮かべている。
「どう、凄いでしょ?この端末は私が乗っ取ったわ!」
「なんかやりづらいね……」
「あぁ……声もこの端末から出てきてるし……早く出てきてくれ」
アキラとソラに言われるがまま、端末から現実へと姿を戻したアルファに再度2人は声を掛けた。
「というか昨日に持ってるお金を全部使っちゃったけど、どうするの?」
「今日の宿代すら払えるか怪しいぞ、大丈夫なのか?」
『大丈夫じゃないわよ?』
「「 え 」」
『大丈夫ではないから、今日は遺跡に向かうわ』
「あー……そうだね。お金を稼がないと……」
「路地裏の生活はもういやだ……」
『あと2人の銃の腕はかなり上がってきているから、今後の訓練の比率も変えていくわ』
「ん-……具体的には?」
「遺跡探索の数を増やして金を稼ぐのか?」
『それに近いわアキラ。具体的には私の索敵がない状態である程度は動けるようになってもらいたいの』
「……つまりそれって」
『今日の遺跡探索は私がいないものだと思ってね』
「「 え 」」
その言葉に2人は絶句した。
クズスハラ街遺跡の外れ。碌な遺物も残ってない廃墟同然の中で2人は銃を構えて進んでいた。
『……アキラ、一旦ストップ』
『わかった。まずは目視……双眼鏡で周囲を確認───』
『僕は地図で現在地を把握……なんかこの地図間違ってる気がする』
『ネットで手に入れた無料のやつだからな……よし、モンスターはいない』
『この辺りは何回も来た事あるはずなのにアルファさんが居ないだけで全然違うね』
お互いの死角を補いつつ、進行方向に警戒を向ける2人は念話で逐一の状況報告を行っていた。
『この地図だと……この先に道が安全みたいだけど、多分違う気がする……』
『地形も全く違うしな……こっちのルートはどうだ?廃ビルの中を進んだ方が見つかりずらいと思うんだが』
『ならまずはビルの中の安全確認からだね』
『そうか……まずそこからか。危険な場所が多すぎる……』
『遺跡ってそれだけ危険な場所だよね。アルファさんのおかげで忘れかけてたよ』
移動する際はできる限り素早く、身体を遮蔽物外に出す時間を短くして遺跡の中を進んでいく。
『……くそ、一時間以上かかってまだ遺物を溜めた場所の半分すら来れてない……」
『だからといって確認をおろそかにしたらモンスターが出てきてガブッ……といかれるね』
『たったそれだけで俺たちの人生は終わりだ』
『時間を掛けてもいいから、まずは安全確認が大事』
『違いない』
息を絶やしながらも的確に遺跡の様子を確認して進んでいく2人の様子を視界外からアルファは見守っていた。
日が落ち始めた時間帯。遺跡からスラム街へと戻ってきた2人は回収した遺物を背に、ふらふらとした足取りでハンターオフィス支店へと向かっていた。
『2人ともよく頑張ったわね。射撃訓練と同じく初めてにしては上出来だったわ』
『本当か?』
『いつの間にかアルファさんに甘えてたのが自覚できてたよ』
『特に地図の間違いに気づけたのは良かったわ』
『あー……やっぱり間違っていたのか、あの地図』
『通った道が行き止まりだったときあったもんね』
『ネットで無料で手に入るような代物は基本的に精度が低いわ。精度が高い物を手に入れるには相応の金を出して地図屋と呼ばれる専門の者から買うか、自分で作るか。結局作成した時期の時のままの情報だからそれもまた正しいというわけではないのだけどね』
『考えることが多いなー……』
『金で安全が買えるってことを考えたら、地図もハンターの立派な装備ってわけか』
『予備の銃弾を買う余裕すらないけどね』
『そこは勿論私がサポートするわ。私の予想以上に2人の遺跡探索は良かったから、今後はある程度の情報収集機器を持った前提で探索する方向にシフトしていくわね』
『情報収集機器なんて持ってないけど』
『アルファさんがその代わり?』
『そうよ。どんな情報収集機器よりも高性能だと自負しているわ』
『分かってるよそれは……あとアルファ』
『その凄い高性能な情報収集機器ことアルファさんに聞きたいんだけどさ────もしかして僕たちって誰かに尾けられてる?』
『あら、2人とも。今日は勘が冴えてるのね』
『え、やっぱり?』
『勘違いじゃなかったかー』
『この前に行ったことだけど、意外と分かるものでしょう?』
『うん、片方だけが気づいてもう片方が気づかない状況は少ないってやつだよね』
『さっきからすれ違うやつらの視線があからさますぎたな。ガキの癖に銃と遺物を背負ってるみたいな視線だ』
『そこまで分かっているのであれば私から言うことはないわ。──さて、移動するわよ』
『了解』
『わかった』
アルファの指示に2人は銃を構えてスラム街の道を走り出す。
その様子を見ていた者たちが声をあげた。
「おい、そっちに行ったぞ!逃がすな!」
「こっちから周りこめ!」
『うわー……思ったより多かった』
『ガキ2人に大人が大勢で……くそっ』
『この人数から考えてスラム街の徒党かしら。スラム街では珍しく武器を揃えているみたいね』
『今度は徒党かー。いい思い出がないね』
『強盗のハンター、強姦のハンター、次は徒党のハンターかよ』
『スラム街の子どもが高値の遺物を持ち帰ったという噂が彼らの心をがっしりと掴んでしまったようね』
『汚い野郎どもの心を掴む噂もたかが知れてるのに……』
『ぼくらはあいつらのお財布じゃありませーん』
『というかハンターランク10になって一端のハンターになったばかりなのに、初めて戦う相手が人ってどうなんだよ』
『別に僕たちを襲おうとしてる時点でモンスターと大差ないんじゃない?スラム街って荒野と変わりないし』
『ソラの言う通りね。今後の2人の為にも、ここでしっかりと殺しておきましょうか』
『だね。アルファさん、サポートをお願い』
『もちろんよ、1人ずつ確実に殺していくわ。まずは武器を持った者からね』
『あぁ、俺とソラを狙うやつは皆殺しだ』
そう2人は意気込み、アルファのサポートが入って視界が拡張されると近くの曲がり角へと身を隠した。
『今の2人の実力なら十分やれるけど、私が危ないと判断したときはちゃんと指示に従ってね』
『そりゃ勿論』
『俺たちだって死にたくないからな』
『ならいいわ。2人で手分けして効率よく行くわよ』
そのまま銃口を出して追ってきたスラム街の徒党の者へと射撃を始める。
2人の視界は遮蔽物に身を隠した者の身体の輪郭がしっかりと見えており、正確に頭部を撃ち抜いていく。
「おい!俺たちの動きがはあくっ────」
「冗談んじゃねっ───」
「う、うわああ!」
「ま、待って!」
銃を持って2人を追っていた者たちは次第に頭部を失って数を減らしていき、その状況に怯えて路地裏へと逃げ出した者もまた頭部に銃弾を喰らって死亡した。
その場に残った人物は2人。逃げた路地裏で待ち構えていたアキラと逃げようとした者を追って続くように路地裏へと入り銃口を向けられたシェリルという少女であった。
「っ!」
「────」
アキラの殺意の籠った瞳が2人を襲ったハンター徒党と共に来ていた少女、シェリルを捉えていた。