【AI小説】異世界でスラムに転生したらカルトの教祖になっちゃった   作:けろかろ

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祈り

 夜。

 焚き火の輪の奥、炎が壁のように揺らめく場所で、イノはウラとシンを呼び寄せた。

 火の粉が空気に散り、三人の影が地面に長く伸びる。

 

 「……俺は長くは持たない」

 

 イノの声は囁きに近かったが、その重みは焚き火の爆ぜる音を消した。

 ウラが目を見開き、思わず身を乗り出す。

 「イノ、何を言っている。まだ十四だぞ」

 

 だがイノは静かに首を振った。

 「名を持ち、祈りを広げた時点で、俺はもう“人”ではなくなった。

 教会が動く。俺を殺すだろう」

 

 焚き火の光に照らされた横顔は、少年のそれではなく、誰かの記憶に刻まれる像のように冷たく整っていた。

 

 「――だから、お前たちに託す」

 

 シンが拳を握りしめ、唇を噛んだ。

 「俺たちが……祈りを守る」

 その声はまだ幼いが、芯のある震えを帯びていた。

 

 イノはうなずき、炎を見つめ続ける。火の色が瞳に映り、赤い影が深く沈む。

 「いいか、祈りは俺ではない。

 俺が死んでも“イノの輪”は残せ。

 ――俺の死を、祈りの証にしろ」

 

 ウラとシンは返す言葉を持たず、ただ焚き火の音だけが三人を包んだ。

 その瞬間、少年イノはもはや“象徴”に変わりつつあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その夜、少年イノは焚き火の前に座し、仲間たちを見渡した。

 炎は彼の頬を赤く染め、その瞳には深い影と揺るぎなき光とが宿っていた。

 輪は静まり返り、子どもも老人も息を潜め、ただその言葉を待った。

 

 やがてイノは口を開き、ゆっくりと語った。

 

 

 

 

「聞け、小さき者を忘れぬ者たちよ。

 我が日は尽きようとしている。

 明日、我は石畳に引き出され、人々の前にさらされるだろう。

 縄は我が手足を縛り、刃は我が首を狙うだろう。

 だが恐れるな。

 肉は裂かれても、祈りは裂かれぬ。

 血は流れても、祈りは濁らぬ。

 

 

 

 

 

 人々は顔を伏せ、すすり泣く声が夜気に混じった。

 イノはなおも炎を見つめ、声を強める。

 

 

 

 

「我は一人にすぎぬ。だが祈りは多くに宿る。

 我が声は沈黙しても、汝らの声が続く限り、祈りは絶えぬ。

 忘れるな。小さき者を忘れるな。

 彼らは弱く、名もなく、力を持たぬ。

 だが彼らを支えるとき、人は真に人となる。

 

 

 

 そのとき、炎が高く揺らぎ、輪の全ての顔を朱に染めた。

 イノは瞼を閉じ、まるで来るべき光景を見透かすように言葉を紡ぐ。

 

 

 

 

「もし我が血が地に落ちるなら、それを種とせよ。

 その種は芽吹き、輪となり、輪は街に、街から国に、国から大地に広がるだろう。

 我は斬られようとも、祈りは立ち上がる。

 我は沈もうとも、祈りは昇る。

 我は死すとも、祈りは生きる。

 

 輪に集う者たちは涙に濡れた顔を上げ、彼の姿を凝視した。

 彼は最後に、炎に向かって低く、しかし確固とした声で言った。

 

 

 

 

「忘れるな。小さき者を――永遠に忘れるな。

 もし我が身が消えようとも、この言葉を絶やすな。

 この言葉が残るかぎり、我は常に汝らと共にある。」

 

 その夜、焚き火は風に消えることなく燃え続けた。

 人々は誰も眠らず、ただ炎を囲み、その言葉を胸に刻み続けた。

 のちの世に、この祈りは「予言の祈り」と呼ばれ、処刑の日の前兆として聖典に記された。

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