【AI小説】異世界でスラムに転生したらカルトの教祖になっちゃった   作:けろかろ

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現地民の章
プロローグ


 青年の名はアレン。

 農村から荷車に揺られて街に入ったその日、初めて踏みしめた石畳の広場で人だかりに出くわした。

 

 「何だ……祭りか?」

 遠目に壇上と群衆の熱気が見え、そう思った。

 だが近づいた先にあったのは祭りではなく――処刑台だった。

 

 縛られた少年が立たされていた。年は自分よりも若い。痩せ細った体、だが瞳だけは不思議な光を宿している。

 その目が人々を見渡し、やがて声を放った。

 

 「……忘れるな。小さき者を――忘れるな」

 

 次の刹那、空が裂けた。

 稲光が広場を白く焼きつけ、腹の底に響く雷鳴。

 そして滝のような豪雨が石畳を叩きつけた。

 

 人々は一斉にざわめき、誰かが呟いた。

 「神が……怒っている」

 「いや……天が泣いているのだ、あの子のために」

 

 やがて群衆の声は祈りへと変わった。

 「忘れるな……」

 「小さき者を……」

 冷たい雨に打たれながら、老いも若きも同じ言葉を口にする。

 それは合唱のように広がり、雷鳴さえ覆い隠すほどだった。

 

 アレンは立ち尽くしていた。

 処刑ではない、これは儀式だ。

 神がこの街を選び、この少年を通して声を下したのだ――そう確信した。

 

 やがて人の波は散り始めた。

 だがアレンだけはその場から動けずにいた。

 石畳に残った血と雨水が混ざり、小さな流れとなって足元を濡らしていく。

 冷たさの中に、逆に熱が灯るようだった。

 

 耳の奥ではなおも、あの言葉が響いていた。

 ――忘れるな。小さき者を。

 

 農村で働き、ただ穀物を運び、日々を消費するだけだった自分の胸に、初めて火が灯った気がした。

 誰に頼まれたわけでもない。だが、自分だけは決してこの祈りを忘れない。

 

 アレンは拳を握り、雨に濡れた顔を上げた。

 「……俺は、この祈りを忘れない。

 忘れることなく、生きて……広げる」

 

 

 

 数日後。

 アレンは荷車に揺られながら、故郷の農村へと戻っていた。

 街の石畳に残った血と雨の匂いは、まだ鼻の奥を離れない。

 耳には、あの声が何度も繰り返し響いていた。

 

 

 

 ――忘れるな。小さき者を。

 

 

 

 村に着くと、親族や隣人たちが家の前に集まってきた。

 「どうだった、街は?」「何を見てきた?」

 好奇と不安が入り混じった目が、アレンを取り囲む。

 

 

 アレンは答えをためらった。

 だが胸の奥でまだ燃えているものを、黙っていることはできなかった。

 「……俺は、子どもの処刑を見た」

 

 

 その一言に、人々はざわめき、息を呑んだ。

 アレンは続ける。

 「その子は最後に言ったんだ。“忘れるな。小さき者を”って。

 刃が振り下ろされた直後に雷が落ち、空が裂けて、大雨が降った。

 広場にいた人々は皆、その言葉を祈りのように唱えていた」

 

 沈黙。

 古びた杖を持つ老人が、震える声で呟いた。

 「それは……神の声ではないのか」

 

 

 その日を境に、村の空気は少しずつ変わっていった。

 食卓に並んだパンを口にする前、誰かが「忘れるな」と囁く。

 やがて家族全員が同じ言葉を唱えるのが習慣となった。

 

 

 収穫祭の日。

 子どもたちは小麦の穂を手に「小さき者を」と声を揃えた。

 村人たちは互いに目を見合わせ、その響きを祈りとして受け止める。

 

 

 アレンは胸の奥で確信した。

 イノの声は死んではいない。

 生きて、この村に、そして自分の中に宿っている。

 

 

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