翌日
ガチャっ
「ただいまー!」
「野土香〜1人にしてごめんねぇ、大丈夫だった?」
どうやら野土香の母親、恵が帰ってきたようだ。
だが野土香の返事はない。
「まだ寝てるのかしら?」
恵は野土香の部屋へ向かった。
コンコン
「野土香〜?入るわよ〜」
ガチャっ
「ただいま〜…あら!友達を家に呼んだのね!それにしても見慣れない子ね…外国から来たのかしら?」
恵は野土香の隣で眠るミリセントを見つけた。
「…………ん…………」
ミリセントが目を覚ます。
「あら、ごめんなさい起こしちゃった?」
「ん………あなたは?」
「おはよう、私は野土香の母です。昨晩は野土香と過ごしてくれてありがとね!この子1人じゃ寂しかったと思うから」
(八木野土香の母親か…)
「私はミリセント・ブルーナイトよ。一昨日の夜までは…自分の家で眠っていたはずなんだけど、昨日の夜、目が覚めるとこの家の庭にいたのよ」
「それで八木野土香に会って、この家に泊まらせてもらったってわけ」
「あら!そんなことがあったの!?それじゃあお父さんお母さんも心配してるわよねぇ…連絡は取れるのかしら?」
「……父とは3年前から会ってないわ」
「え…そうなのね…じゃあお母さんと連絡は?」
「……………」
「ごめんね…嫌なこと思い出させたわね…」
「じゃあ、他に連絡取れる人はいるかしら?」
「今は連絡できる道具を持っていないわ。ところであなた、六国に帰る方法を知ってるかしら?」
「六国?確か中国のことかしら?」
「また私の知らない国…確かここはニホンだったわね?地図はあるかしら?場所を調べるわ」
そう言ってミリセントはベッドから出る。
「えーっと世界地図ならたぶん野土香の社会の教科書に…ゴソゴソ…あった!これよ」
ミリセントは野土香母から渡された地図を見る。しかし…
「………?これは私の知ってる地図じゃない…ムルナイトも白極連邦もラペリコ王国も…他の国もないじゃない。でもこれは天照楽土の文字ね…他の地図も見せてもらえるかしら?」
「その地図に全部の国が載ってるはずだけど…ごめんね、地図はこれだけなのよ」
「なんですって?これが全ての国なの?」
「えぇ、地図を見ても分からないならスマホで調べてみましょうか」
「スマホ?何よそれ?」
「これよ。電話やメール、調べ物とか、いろんな機能があるの。六国について調べてみるわ」
数分後
「う〜んだめね…何も出てこないわ」
(どうなっている?六国の情報が何も出てこない…それにアメリカやオーストラリアとか、聞いたことのない国が存在している…それなら…)
「少し家の周りを探索してみるわ」
「だったら、その前に朝ごはんを食べましょう!野土香を起こしてくるわ」
「すぐに戻るからその後でいいわ」
「そう?じゃあ朝ごはん作って待ってるわね!」
そうしてミリセントは外に出た。今日は良い天気である。
(さてと…)
(………………?)
(…………おかしいわね……………………?)
ミリセントは何かしようとしているが、どうやらそれができないことに困惑しているようだ。
(なぜ飛行魔法が使えないの?ていうか他の魔法は?)
(…………魔弾も撃てない…)
どうやらミリセントは普段魔法が使えるらしいが、今はなんらかの理由で使えなくなってしまったようだ。
魔法を使おうと何度も試したが、やはり使えないらしい。
(どの魔法も使うことができない…どうして?)
(…………ここには魔力が存在しないの?それなら八木野土香が魔核のことを知らなかったのも説明がつく)
ミリセントはしばらく考えた後、野土香の家へ戻る。
ガチャっ
「あ、ミリセントちゃんおはよう!どこ行ってたの?」
家に戻ると、野土香も起きていた。
「あら、思ったより早かったわね。朝ごはんもう少しでできるから待っててね」
するとミリセントが口を開く。
「あなたたちは魔法を使えないの?」
「「………魔法?」」
2人はきょとん、とした顔で言った。
「魔法かぁ…もし魔法が使えたら、ほうきで空を飛んだり、どこにでもすぐ行ける魔法を使ってみたいなぁ。あ、呪文を唱えると美味しいものが出てくる魔法も!」
「魔法があれば生活も楽になるわねぇ」
「そう…やはり使えないのね」
「もしかしてミリセントちゃんは使えるの!?」
野土香がキラキラした目で言う。
「ここでは使えないわ。どうやら魔力がないみたいね。飛行魔法で家の周りを探索するつもりだったんだけど」
「魔力?」
「あなたが住んでいる国のこと、いくら調べても何の情報も出てこなかったから、もしかしたらまだ誰も知らない未知の国なのかもしれないわねぇ。だから魔法が使えても不思議じゃないわね!」
「えぇ!すごい!私もミリセントちゃんの国行ってみたいなぁ。ええと確か…なんだっけ?」
「六国よ」
「朝ごはんできたわよ〜」
(思ったよりも面倒な状況ね…そもそも帰れるのか…いや、どんな手を使っても帰ってやる。目的を果たすために…)
そう思いながらミリセントは朝食を食べるのだった。
朝食後
「じゃあ、私はこの国を探索してくるわ。さっきできなかったからね」
「私も行く!北海道には詳しいんだ!」
「野土香が詳しいのは食べ物のことでしょ」
「えへへ…」
「まぁでも、野土香も北海道のことはある程度知ってるから、一緒に行ったほうがいいわよ」
「ホッカイドウって何よ」
「日本にはね、47つの都道府県…あー都道府県っていうのは、日本の中にたくさんある小さな国?みたいなものだよ。それが全部で47つあって、私たちが住んでる場所が北海道っていう都道府県!」
「なるほどね」
「あ、そういえば…トコトコ」
何かを思い出した野土香は席を離れ…何かを持って再び戻ってきた。
「ミリセントちゃんのドレス、直して綺麗にしたよ!」
「あら、とっても綺麗なドレスね!」
(歯型であんなにボロボロだったのに…)
「八木野土香、感謝するわ」
「うん!じゃあ早速準備しよう!」
「ミリセントちゃん、このお金、持っていきなさい」
(これが日本の金か…)
「ありがたく使わせてもらうわ」
「お母さん!行ってきます!」
「2人とも、気をつけて行ってきてね」
「じゃあ行ってくるわ」
そうして2人は家を出た。
(まずは情報収集ね。スマホとかいう道具はあてにならない…六国の情報を持ってそうな奴を探すか)
「あんた、六国の情報を持ってそうな人間を知ってるかしら?」
「う〜ん……世界中の国に詳しい人に聞けば分かるかな?でもどうやって探そう…そうだ!学校の先生なら知ってるかも!私の学校に行ってみ…あ、でも今日休みだからいるか分からない…」
「いる可能性もあるんでしょ?他に思いつかないならその学校に行くわよ」
「ミリセントちゃんがそういうなら…」
2人はとりあえず野土香の通う中学校に向かうことにした。
そして学校に到着した2人。学校には部活動に励む生徒たちがいた。
「社会の先生いるといいけど…」
そう言いながら職員室の扉を開ける。
「こんにちはー!◯◯先生いますかー?」
野土香が社会の先生を呼ぶと…
「はーい、あら野土香ちゃん…と…あなたは?見慣れない顔ね…野土香ちゃんの友達?」
(すっごい綺麗な子…というかすごい服装ね…)
「やった!◯◯先生いた!」
「私はミリセント・ブルーナイトよ。ところであなた、六国について何か知ってるかしら?」
「六国?六国っていうのは、中国、春秋戦国時代の六つの国よ。斉 せい ・ 楚 そ ・ 燕 えん ・ 韓 かん ・ 魏 ぎ ・ 趙 ちょうがあるわ」
「私の言っている六国っていうのは、ムルナイト帝国・ゲラ=アルカ共和国・天照楽土・夭仙郷・白極連邦・ラペリコ王国のことよ」
「?どれも聞いたことない国ね…あなたはその国をどこで知ったの?」
「そう…あなたも知らないのね」
「先生!ミリセントちゃん、その六国から来た子なんです!でも帰り方が分からなくて…どんな些細なことでもいいんです。なにか知りませんか?」
「野土香ちゃん…………分かったわ!2人ともついてきて」
「何処に行くの?」
「図書室よ」
図書室に入るやいなや、先生は世界の国の本を大量に持ってきた。
「この中から、ミリセントさんの故郷のことを調べましょう」
「先生…!」
「よし、3人で手分けして探すわよ!」
数時間後
「ない……」
「そんな…」
「書物を漁っても駄目か…」
「世界についての本、他にあったっけ〜」
3人がそれぞれ六国について書かれてそうな本を探している時。
「ん?」
ミリセントはある本を見つける。
その本の名前は【吸血鬼について】。
(吸血鬼…)
ミリセントはその本を開いた。
その本の冒頭にはこう書いてあった。
吸血鬼とは、人間の血を吸うと言われている、人間に似た見た目をしている生き物である。だが、吸血鬼は架空の生き物であり、この世界に存在しない。しかし、吸血鬼以外にも人間の血を吸う生き物は存在する。それはヒル、蚊、ナミチスイコウモリなど実在する生物である。
その本は、吸血動物について書かれたものであった。
(………この世界には存在しないのか?)
なぜミリセントがこの本に興味を持ったのか、その理由は単純だった。
(私のような吸血鬼が)
ミリセントが吸血鬼だったから。自分と同じ種のことが書かれていると思い、この本を読んだのだ。
するとミリセントはもう一つ、気になる本を見つける。
(異世界について……?)
ミリセントはその本も手に取る。
(異世界…パラレルワールド…マルチバース…)
(異世界とは、この世界と文化や世界観がまったく違う、魔法などが存在する異界のことである…)
(………この世界には魔法が存在しない?)
「あなたも魔法が使えないの?」
ミリセントは唐突に先生に聞く。
「え?魔法?使えないよ。っていうか存在するの?」
「……………」
ミリセントはしばらく考えた後
「北海道で最も栄えている場所はどこかしら?」
「え?…ここから近い場所だと札幌駅とかかなぁ」
「たぶんそうだね…それがどうかしたの?」
「確認したいことがあるの。その場所まで連れて行ってくれる?」
そうして2人は札幌駅へ行くこととなった。
そして到着。
「……………………」
ミリセントは驚いた。
そこにはミリセントが見たことのない文化、建物、世界観が広がっていた。
野土香の家の周りは自然に囲まれていたが、札幌駅周辺はまさに都会であった。
(私の考えが正しければ………この世界に私の知っている六国はない……)
(……ここは私のいた世界ではない、別の世界…)
「ミリセントちゃん……?大丈夫?」
ミリセントは落胆した。元の世界に帰る方法など分からない。未知の世界に迷い込んでしまったのだから。
第3話へ続く