推しと推しを出会わせてみた   作:黒阿修羅

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今回の話には「ひきこまり吸血姫の悶々」のネタバレが含まれています。
この小説を読む前に、ひきこまりの原作第1巻、もしくはアニメを第4話まで見ることをおすすめします。


第3話

 

 

 

 

 

 

 

 

(このままではテラコマリを殺せない!……どうすれば……なにか方法は!!!)

 

ミリセントは自分の置かれた状況に頭を抱えていた。

ここは札幌駅周辺の休憩所。

 

「ミリセントちゃん、はい」

「……………何よこれ」

「ぶどうジュース!あ、苦手だったら他の買ってくるよ」

「要らないわ」

ミリセントは野土香にジュースを押し返した。

「あ…うん…ごめんね…」

 

いつもの野土香なら「遠慮しないで!」と優しさを全面に出していたが、不機嫌なミリセントを見てどう接すれば分からなくなってしまったようだ。

野土香はシュンとした顔になった。

 

ふとミリセントは野土香の顔を見る。

 

(………………………)

「やっぱりよこしなさい」

ミリセントは野土香からジュースを奪い取った。

「え、あ、うん!」

「これどうやって飲むのよ」

「貸して!よいしょ、はい!」

「どーも」

ミリセントはジュースを一口飲んだ。自分のいた世界で飲んだものと大差ない味である。

 

ジュースを飲んで心を落ち着かせたミリセントは、しばらくして口を開く。

「さっきの学校で分かったことがあるわ」

ミリセントは、自分のいた世界がこの世界とは文化も世界観もまったく違う異世界であること。そして異世界に帰る方法など見当もつかないことを野土香に伝えた。

 

「そんな…」

「面倒なことになったわ」

 

(私だったらそんな状況耐えられない…自分を知っている人が誰もいない世界なんて……………あ……)

ふと野土香は朝の母との会話を思い出した。

 

「お母さん!おかえり!おはよう!」

「あら野土香、ただいま!おはよう!」

「あの、ミリセントちゃん知らない?あ、ミリセントちゃんっていうのは、昨日一緒に寝た子で…」

「あの子なら家の周りを見てくるって言って外に行ったわよ」

「あ、そうなんだ…」 

「それで、あの子のことなんだけどね…」

「ん?」

「あの子、自分の両親と長い間会ってないみたいなのよ…」

「え?」

「お父さんとは3年前から会ってないらしくて、お母さんとも連絡とってないみたい…」

「そんな…」

「知り合いはいるみたいだけど、今は連絡できないらしいわ…」

 

 

(ミリセントちゃん…知り合いとどんな関係なのか分からないけど、異世界に帰っても誰も親しい人がいなかったら…)

野土香はミリセントが異世界に帰った後のことも心配しているようだ。

(こんな時、ミリセントちゃんのためにできることって……………だめだ……思いつかないよ……………)

 

 

 

 

 

(………………でも)

 

(このまま何もしてあげられないのは嫌だ!) 

 

「ミリセントちゃん!」

「何よ」

「好きな食べ物何!?」

「は?何言ってんのよこんな時に」

「お願い!教えて!」

「だから何で…」

野土香はとてつもなく真剣な顔をしていた。

「!?……………オムライス…」

困惑したミリセントは思わず答えた。

「オムライス!よし、行こう!」

野土香はミリセントの手を引き歩き出す。

「ちょっと、何処に行くのよ!」

「大丈夫!私にまかせて!」

「はぁ?何を…」

 

野土香が連れてきたのはとあるレストラン。

 

「よし、入ろう!」

「おい!ちょっと…」

流れるように店に入る2人。

「いらっしゃいませ。何名様ですか?」

「2名です!」

「かしこまりました。ご案内します。」

そうして席に座った。

「ご注文、お決まりですか?」

「オムライス2つください!」

「かしこまりました。」

店員が離れ、ミリセントは野土香に問いただす。

「あんた、どういうつもりよ!」

「ここのオムライスすっごく美味しいから、きっとミリセントちゃん喜ぶよ!」

「訳が分からないわよ!」

 

そうこうしている間に

 

「おまたせしました。こちらオムライスになります」

2人の前にオムライスが運ばれてきた。

「ごゆっくりどうぞ」

店員が離れ

「あんた一体なにがしたいのよ!」

「ほら、冷めないうちに食べよう。いただきます!」

「はぁ…もう訳が分からない…」

呆れたミリセントは諦めてオムライスを口に運んだ。

(モグモグ…………!)

「どう?ミリセントちゃん、美味しい?」

「………………まあまあね」

そう言いながらオムライスを食べる手が止まらないミリセント。

あっという間に完食した。

(美味しかったのかな?そうだといいな)

「八木野土香、あんた結局何がしたかったのよ」

「えっと…ミリセントちゃんに元気になってほしかったというか……………その………………ミリセントちゃん!」

「何よ」

「他にも困ったことがあったら、なんでも言ってね」

「力になれるかどうか分からないけど、少しでも、ミリセントちゃんの役に立ちたいから」

「……あんたは私の味方ってこと?」

 

「うん!もちろん!」

 

 

その時、ミリセントは過去にある人に言われたことを思い出していた。

 

『世界が憎いだろう。復讐をしたいだろう。殺してやりたいだろう。そういう殺意を胸に秘めて修練していけばお前は無限に強くなれる。俺がお前を強くしてやる。俺だけはお前の味方だ』

 

『どんな手段を使ってでも殺したまえ。そのための力は、俺が与えてやろう。』

 

 

(あの人も私の味方だけど…あの人とは何かが違う気がする…)

 

「前も言ったけど、私はテロリストよ。何故私を警戒しないの?」

 

「その…ミリセントちゃん、悪い人にはみえないから」

 

「理由はそれだけ?」

「うん」

「…そう……」

 

 

 

 

 

 

 

(これからどうするか…)

レストランを出たミリセントは、自分の置かれている状況に正面から向き合っていた。

(私がこの世界に来る直前…任務を終えて逆さ月のアジトに戻り、確かに眠りについたはず…そして目が覚めると八木野土香の家にいた……………)

(やはり分からない………どうやってこの世界に来たのか…)

 

 

 

 

(あの時と同じ現象が起きるまで待つしかないのか…)

 

二度と元の世界に戻れない可能性を、ミリセントは考えなかった…いや、考えたくなかった。元の世界で絶対にやらなければならないことがあるからだ。

とりあえずミリセントはあの時と同じ現象が起きるまでしばらくの間待つこととした。

 

「オムライス美味しかった〜!この後どうしよっか?」

「とりあえず、私がこの世界に来た時の謎の現象が起こるまで、大人しく待ってみることにするわ」

「それまではこの世界を観察でもしようかしら」

そう言ってミリセントは適当に歩き出す。

「じゃあ、どこか行ってみたいところある?」

「そうねぇ…それにしても、さっきからすれ違う奴ら全員私のこと見てくるのよね」

「この世界だと今の私の容姿は目立つみたいね」

「それもあると思うけど…ミリセントちゃん、すっごくかわいいからだと思う!」

確かにミリセントはかなりの美顔である。それに服もドレスのような見た目で綺麗だし目立つのだろう。だが、服の露出度がおかしいことも原因である。しかし、野土香はそのことに触れることはなかった。

「そうだ!これからミリセントちゃんの新しい服買いに行こう!それなら、服で目立ちすぎることもないだろうし!」

「確かにそのほうがいいわね」

「よし!じゃあ早速行こう!」

 

 

 

「この服試着してみて!ミリセントちゃんきっと似合う!」

野土香は大量に持ってきた服の1つをミリセントに差し出す。

「なんでそんなに持ってきてるのよ」

「ミリセントちゃんに似合いそうな服、多すぎてなかなか決められなくて…」

「とりあえず貸しなさい」

試着室に入ったミリセントは早速服を着てみる。

「これで目立たないかしら?」

「うん!すっごく似合う!他の服も着てみて!」

「いや、目立たないならこれで………」

野土香はニッコニコの笑顔で次の服を差し出す。

「…………分かったわ」

そしてミリセントは次々と試着していく。

 

「かわいい!」

 

「うんうん!」

 

「これもいい!」

 

「どれがいいのかハッキリしなさいよ」

「う〜んどうしよう……他の店の服も見ておきたいな…」

「は?」

 

ミリセントの服選びは夜まで続いた。

 

「うん、その服が一番似合う!」

「じゃあなんで他の服も買うのよ」

「こっちの服も似合うから!」

「はぁ…」

 

ようやくミリセントの服を買い終えた。

夜の札幌駅周辺は人で賑わっている。

 

「もう夜だし、夕飯食べていっちゃおうか」

「そうね」

「ミリセントちゃん、羊のお肉って食べたことある?」

「羊?」

 

2人がやって来たのは、北海道名物「ジンギスカン」の店。

 

「羊の肉ねぇ…食べれるの?」

「とっても美味しいよ!もうすぐ焼けるから待ってて」

2人の前には、ラム肉が炭火で焼かれている。

店内にはジンギスカンの良い香りが充満していた。

 

「よし!焼けたよ!食べて食べて〜」

「じゃあ…パクッ」

「私もいただきます!パクッモグモグ…………」

「やっぱり美味しい〜!どう?ミリセントちゃん」

「モグモグ…………悪くないわね」

「良かった〜!どんどん食べてね!」

こうして2人はジンギスカンを堪能するのだった。

 

 

「美味しかった〜」

好物のジンギスカンを食べてご満悦の野土香。

 

(まさかあんな量を食べるとは………)

野土香はミリセントが引くほどジンギスカンを食べたらしい。いったいどれだけ食べたのだろうか。

「それじゃあ帰ろっか!」

「そうね」

2人は野土香の家へ帰っていく。

 

 

 

 

「ただいま〜!」

「戻ったわ」

「おかえり!野土香、ミリセントちゃん」

「あら!ミリセントちゃんその服似合うね〜」

「だよね!じっくり選んだ甲斐があった〜」

「それと、お風呂沸かしてあるから入っても大丈夫よ」

「ミリセントちゃん、先入る?」

「じゃあ入らせてもらおうかしら」

 

 

 

 

ミリセントが風呂に入ってる間、野土香は母親に今日の出来事を話していた。

「異世界ねぇ…」

「どうすれば異世界に行けるんだろう…」

「ミリセントちゃんの言う通り、不思議な現象が起こるまで待つしかないんじゃないかしら」

「そうなのかなぁ…」

テーブルに顔をうずめながら野土香はそう言った。

「………」

そんな野土香を見て、恵は

「でもミリセントちゃん、出かける前よりも顔が少し良くなった気がするわ」

「!」

「やっぱり!?良かった〜!お母さんのおかげだよ!」

恵は2人が出かける直前、ミリセントのリフレッシュも兼ねて行けるようにと、お金を多めに渡していたのだ。

「ミリセントちゃん、オムライスが好きなんだって!だから私おすすめのオムライスを食べてもらったら、美味しそうに食べてくれたみたいで…」

「あら、いいじゃない」

「夜は私お気に入りのジンギスカン専門店に連れて行ったんだ!ミリセントちゃん、少しは元気になったみたいで良かったよ〜」

「そうね!」

 

 

 

それからしばらくして

 

 

「風呂あがったわ。それで、今日分かったことだけど…」

「それは野土香に聞かせてもらったわ」

 

 

恵はミリセントに優しく話しかける。

 

 

「ミリセントちゃん、異世界に帰れるまでは、この家に居ていいからね」

 

「は?でも…」

 

 

 

 

「たとえずっと帰れなかったとしても、ここがあなたの家よ」

 

 

 

「いや、それは」

 

 

 

その時、野土香がミリセントをそっと抱きしめた。

 

 

「!あんた、急に何を…」

 

 

 

「いいんだよ。私たちはミリセントちゃんの味方だから」

 

「っ!……………」

 

 

野土香の言葉は、ミリセントの心を優しく包み込んだ。

 

 

 

ミリセントは長い間、誰かにここまで優しくされたことはなかった。

 

 

 

 

『どうして烈核解放が発現しないのだッ!』

 

 

 

 

ミリセントの記憶にこびりつく、父親の罵声。

 

 

 

 

『お前はガンデスブラッドの娘と比べたら、出来損ないもいいところだッ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『可哀想』

 

 

 

 

 

 

(………………………?)

 

 

 

 

 

 

 

『何か、悩み事があるの……?』

 

 

 

 

 

 

 

(なんで今………………あいつの言葉を……………)

 

 

 

 

 

 

「ミリセントちゃん?」

 

(……………はっ!)

 

「大丈夫?もしかして眠い?」

「出かけたから疲れたのね。今日はもう寝なさい」

「…………そうさせてもらうわ」

 

 

 

野土香の部屋に入り、ベッドに横になったミリセント。

 

(…………………………)

 

『たとえずっと帰れなかったとしても、ここがあなたの家よ』

 

 

『いいんだよ。私たちはミリセントちゃんの味方だから』

 

先程の2人の言葉が、ミリセントの脳裏に浮かぶ。 

 

 

しばらく考え事をした後、ミリセントは眠りについた。

 

 

 

 

 

翌日

 

起きたミリセントはテレビでニュースを観ながら朝食を食べていた。

(死亡事故・事件の情報が何度か流れている…六国だったらすぐに生き返るからそんな情報滅多に流れない…やはりこの世界には魔核がないみたいね)

ニュースを見ることでこの世界の状況を確認しているのだ。

 

朝食を食べ終わったミリセントは、野土香と恵に言う。

「あんたたち、何かしてほしいことはあるかしら?」

「「してほしいこと?」」

 

ミリセントは、野土香と恵にしばらく家に住ませてもらう礼をしようとしていた。

実はこの家、牧場を経営している。というわけで恵は牧場の仕事を手伝ってもらうことにした。

それとミリセントは魔法世界のテロリストなだけあって戦闘力が高い。ゆえに体力もあるので、牧場の力仕事を中心に手伝うことになった。(流石に恵にはテロリストのことは黙っている)

ちなみに野土香は、今してほしいことは特にないとのこと。

 

 

こうしてミリセントの新たな生活が始まった。

 

 

ところがある日…

「ミリセントちゃん!ちょっとお願いしたいことがあって…いいかな?」

どうやらミリセントにしてほしいことができたようだ。

「何かしら?私にできることならやってあげる。まあ教えてもらえれば大抵のことはできるけど」

「それじゃあ…」

 

 

 

そう言って野土香が連れてきたのは

「ここがカラオケ?」

「うん!ここでは自分の歌いたい曲が歌えるんだよ」

完全防音のカラオケルーム。2人の声が響き渡る。

「それで?ここに連れてきて、私は何をすれば?」

「その…私の歌を聴いてほしくて」

「歌?どういうこと?」

「実は私、今アイドルの大会に出場してて…アイドルっていうのは、歌を歌っていろんな人たちを喜ばせる人のこと」

「それで予選決勝まで進んだんだ」

「その予選決勝で歌を1曲歌うんだけど、私が上手に歌えてるか、ミリセントちゃんに聴いてほしいんだ!」

「…話は分かったわ。でも悪いけど、私は歌が上手とか下手とか分からないわ。こればっかりはどうにもならない。ここは私じゃなくてあんたの母親に聴いてもらうべきよ」

「お母さんにはもう聴いてもらったよ」

「?じゃあなんで…」

「どうせならミリセントちゃんの感想も聞いておきたいから。大丈夫!私の歌を聴いて、ミリセントちゃんが思ったことをそのまま言ってくれればいいから!」

「思ったことをそのまま…それでいいわけ?」

「うん!」

「そう…なら聴いてあげるわ」

「ありがとう!じゃあ早速歌うね!」

そう言って野土香は、カラオケリモコンで1つの曲を予約した。

 

マイクを口に近づける。

 

野土香の歌声は…

 

優しくて…癒される…そしてどこか安心するような…

そんな歌声だった。

 

 

「ミリセントちゃん、どうかな?」

「………良いんじゃない?よく分からないけど」

そう言ってミリセントはドリンクバーでとってきた紅茶を飲む。

「良かった〜!これなら安心して予選決勝に臨めるよ〜」

「っていうか何なのよ、そのアイドルの大会って」

「え〜っと、ちょっと待ってね」

野土香はスマホを取り出し、何かを調べだした。

「これなんだけどね…」

スマホ画面をミリセントに見せる。

 

 

 

「アイドルオーディションリアリティショー......」

 

 

 

「......SELECTION PROJECT?」

 

 

                     第3話 完

 




セレプロ編に続きそうな終わり方ですが、セレプロ編は書くかどうか分かりません!紛らわしいことしてすみません!
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