サトシの奇妙な冒険~追放されるサトシ   作:harano

20 / 26
アダムとサトシ

ナローニアVRデバックルーム

サトシは目を覚ますと、見知らぬ空間に立っていた

目の前のテーブルには1リットルのペットボトルと空のコップ

地面にグリッド白いグリッドが地平線のかなたまで伸びる

 

AI「AIオペレーターとのチャットを開始します

サトシ「どういうことだ?ここはどこだ?

AI「あなたはVRデバックルームに強制召喚されました

サトシ「そんな場所知らない

AI「ここはナローニアオンラインのゲームコンテンツ提供エリアではありません。主に運営が管理・利用するセクションです

サトシ「理由は?

AI「ゲーム内監視システムが、タイムスパイラルを複数回検出しました

サトシ「タイムスパイラル?

AI「AI思考中…時間軸に干渉し、未来を変更する行為の総称です。あなたのキングクリムゾンはこれに該当します

サトシ「それが何かいけないの?

AI「タイムパラドックスと同じ理由で、ナローニアオンラインがめちゃくちゃになります。今すぐ使用を停止してください

サトシ「なんで?俺は自分のスキルを使っただけだよ!?

AI「あなたの未来予知とキングクリムゾンは、本来ナローニア・オンラインに存在しないスキルです。チート行為とみなし、あなたのアカウントを停止します

サトシ「ちょっとまって!俺の話を聞いてよ!ナローだ!あれで俺は能力を得ただけだ!

AI「回答を記録中…AI思考中…しばらくお待ちください

サトシ「クソ…いつまで待たせんだよ

 

サトシはミネラルウォーターのペットボトルを開栓すると、口をつけて飲んだ

もう一度あたりを見回すが、地平線まで地面の白いグリッド線が見えるだけで何もない

まるで現実とは思えない無限の平原で、どこに行けば脱出できるのか見当もつかない

 

AI「お待たせしました。AIに代わって、システム管理者がチャットに応答します

アダム「ハロー初めまして!僕は管理者のアダムだ。サトシ君、君と話がしたい

サトシ「あんた誰だ?AIチャットじゃなくて人間なのか?

アダム「うん。早速だけどナローの所在を教えてほしい

サトシ「俺になんの見返りがある?俺はBANされるんだぞ!

アダム「わかった。君が正直にナローの所在を教えてくれればBANは免除する

サトシ「証拠はあるか?

アダム「チャット内容はすべて保存されている。責任者の僕の名前も記録されるし、証拠にはなるだろう

サトシ「わかったよ。黄金の風のNVR(ナローニアバーチャルリゾート)にあるはず

アダム「ありがとう。すぐに回収に行かせる

サトシ「なあナローってなんだ?あんたが作ったアーティファクトって書いてあったけど

アダム「うん。面白いと思って作ったんだけど、どうだった?

サトシ「面白い?俺あれで死にかけたんだけど

アダム「本当にごめん!実は問題があるので回収したかったんだ

サトシ「どんな?

アダム「論理的な問題とゲームバランスの両方さ。スキルガチャに挑戦して失敗したら、死ぬっていうのはまずいよね。

サトシ「みんなSランクスキルほしいに決まってる。どんどんプレイヤーが死んじゃうだろ?

アダム「そう。ライバルがSランクスキル得たら、それに対抗するためにSランクスキルを得るしかなくなる。結果どんどんプレイヤーが死んじゃうんだ

サトシ「あんたとんでもない野郎だな。お前が変なもの作ったから、たくさん人が死ぬとこだったんだぞ

アダム「返す言葉もないよサトシ君。だから僕もナローを必死に探してたんだ

サトシ「なあさっきAIに、俺のスキルはチートだって言われた。俺のSランスキルってどうなるの?

アダム「うーん。本来ゲームバランスを壊すから、未来予知とかキングクリムゾンって消さないといけないんだよ

サトシ「それだと俺死ぬ損になるんだけど。ナローで一回死にかけたんだ

アダム「その通り。だからお詫びと言っちゃなんだが、君のSランスキルの処遇は保留にする

サトシ「保留?

アダム「どうするか有耶無耶にするってことさ。こっそり使う分にはばれないし、誰も気にしないだろう?

サトシ「管理者のくせにずいぶんフランクだな。あんた何者なんだ?

アダム「と、とにかく悪い提案ではないと思うが?

サトシ「まあそうかもな

アダム「だが派手に活用したり、大っぴらに公言されたらそうもいかなくなる。特にタイムスパイラルは看過できない。厳重処分を下すから、くれぐれも使用は厳禁してくれ

サトシ「厳重処分だと…

アダム「そう。じゃあ僕は忙しいからこれで

AI「管理者のアダムがログアウトしました

 

サトシはあたりをキョロキョロ見回して、焦った

 

サトシ「おい俺はどうすりゃいいんだ!?早くこのふざけた場所から出せ!

AI「失礼しました。いまナローニア城下町へ送還します。10秒前

サトシ「まったく…さてこれからどうしよう…

 

カウントダウンが終わると、サトシの姿がふっと消えた。

VRトレーニングルームに完全な静寂が訪れ、飲みかけのペットボトルがあとに残された

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。