前向きにいきたい僕のチェンソーマン (旧題:せっかく転生したんだし、前向きに行こう)   作:きりっと果実

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あんまし上手く書けなかったけど、あたたかいめ募集中ですぜ!



契約

 

 

「なんだよ、これ」

 

幸か不幸か。

銃の悪魔の影響が出る、ほんの少し手前。

 

僕は、そこに立っていた。

 

目の前に広がるのは荒野。

 

ついさっきまで家が並び、人が暮らしていたはずの場所が、

ただの瓦礫と土の平地になっていた。

 

慣れ親しんだ家も。

お世話になった人たちの住む住宅街も。

 

全部。

 

なくなっていた。

 

それを理解するまで、ずいぶん時間がかかった。

 

警察や公安、消防。

いろんな人たちが駆けつけてきた。

 

でも僕は、

 

ただ立ち尽くしていた。

 

一言も話さず。

動かず。

反応もしない。

 

間もなく保護されたらしいが、

しばらくは抜け殻のように過ごしていたそうだ。

 

その頃の記憶は、今ではほとんど残っていない。

 

ただ。

 

心の奥に落ちた火種だけは、はっきり覚えている。

 

怒りだった。

 

小さかったそれは、時間とともに音を立てて燃え上がる。

 

原作の早川アキも、こんな気持ちだったのだろうか。

 

激情が渦巻いているはずなのに、

頭は妙に冷静だった。

 

冷静なのに、

 

腸が煮えくり返るような怒りだけが

体の奥で暴れている。

 

色んな感情がひしめいて、ぐちゃぐちゃだ。

 

まともに動けるようになってからも、

この不安定な情緒には、ずいぶん苦労した。

 

 

 

 

整えられた石畳の道を歩く。

 

最近できたばかりの墓地だった。

 

雑草一つ生えていない。

土もまだ新しく、墓石も白く整っている。

 

それなのに。

 

並んでいる墓は、やけに多かった。

 

この辺り一帯は、銃の悪魔の被害地域だ。

 

周りの墓はきっと、

 

同じ境遇の人(銃の悪魔の被害者)だろう。

 

僕は、目の前の墓石を見下ろした。

 

骨すら入っていない、名前だけの墓。

 

「僕はさ、最初は父さんが幸せになれればいいと思ってたんだ」

 

「父さんが幸せなら僕も幸せだったから」

 

「だからわざわざ危険な道に足を踏み入れることは考えもしなかった」

 

静かな墓地に、自分の声だけが落ちていく。

 

「あの生活を続けたくて」

 

「僕を見て幸せそうに微笑む父さんを見るのが嬉しくて…」

 

「段々とこの体にも慣れて、歳相応に遊べるようになって……」

 

「でもそれも全部だめになっちゃった」

 

風が、墓地を抜けていった。

 

思い描いた幸せは叶わなくなってしまった。

 

「女であることにも慣れて、子供の顔とか見せてやれそうだったんだけどな」

 

だめだった。

 

…無駄だった。

 

 

 

「だから」

 

僕は小さく息を吐いた。

 

「これが正しいことかは分からないけど」

 

「優しい父さんならきっと嫌がるし止めるだろうけれど」

 

「僕、デビルハンターになるよ(原作に介入する)

 

そう、骨も埋まっていない墓石に告げた。

 

両の眼から溢れた涙が、顎の先でぶつかり合って地面に落ちる。

 

いっそ、ここで全部出し切ってしまえ。

 

こいつら()に出番などない人生を送ってやる。

 

僕はただ、前だけを向いて生きる。

 

ただ、明るく笑って、幸せに生きるんだ。

 

静かな、静かな覚悟が、虚しく胸の奥に響いた。

 

 

 

それからは早かった。

 

東京の公安に入るため、何も残っちゃいない地元を出た。

 

東京へ行き、その日暮らしでひたすら鍛えた。

 

命知らずにも、弱そうな悪魔を一人で狩ったりもした。

 

ズボンの悪魔や眼鏡の悪魔……。

 

弱そうで、ちゃんとそこまで強くない奴らばかりだった。

 

戦った中で一番強かったのは、ほうれん草の悪魔だ。

 

やっぱ野菜系は強かった。

子供達の天敵なだけはある。

 

僕一人でもどうにか倒せるような奴らばかりだった。

 

……命懸けではあったけれど。

 

 

 

自分で言うのもなんだが、かなり強くなったと思う。

 

最初は悪魔の攻撃をまともに受けながら戦っていたが、今ではある程度避けられるようになった。

 

治療費で馬鹿みたいに金を使うこともなくなった。

 

倒した悪魔は、どうにか交渉した東京のヤクザなんかに安く買い取られて、それで得た金で日々を生きていた。

 

くそ、アイツら僕が女だと知ると途端に足元見てぼったくってきやがる。

 

まぁ、安いとは言っても相場と比べたらの話だ。

 

普通にウン十万手に入るので、その日暮らしをするのに困りはしない。

 

……命懸けの戦いの対価だと思うと、安い気はするけど。

 

 

 

そんな暮らしを続けて数年。

 

あることに気付いた。

 

 

 

これ以上は、一人でやっていたってどうにもならないんじゃないか、と。

 

 

 

僕も結構強くなった。

 

悪魔の攻撃を避けられるし、倒すこともできる。

 

いや、まあへとへとにはなるんだけど。

 

もうそろそろ、原作に向けて動いてもいい頃合いだろう。

 

そう思い立った僕は、公安に入ることにした。

 

あまりにも急かもしれないが、いい加減足踏みしている場合じゃない。

 

本当なら、原作に介入するため公安に入るのは早ければ早いほどいい。

 

それが、僕が若干ドジなせいで成長が遅く、ズルズルと先延ばしになってしまっていた。

 

学校は地元でどうにか高校までは出た。

 

学力試験があっても問題なく通過できるだろう。

 

実技試験も……まぁ、どんな試験があるかは分からないが、不合格になるようなことはないはずだ。

 

そうと決めたからにはと、デビルハンターの試験を受けに向かった。

 

会場は知らないので、とりあえず公安へ行ってその辺のデビルハンターに聞くことにする。

 

 

 

「東京は道が入り組んでてすぐ向こうの建物行くのにも時間かかるな……」

 

高いビルの隙間を歩きながら、ぼやく。

 

人も車も多く、地元とはまるで違う。

 

「…ん?」

 

ふと視線を向けると、細い路地が一本伸びていた。

 

あそこを通れば、ちょうど近道になりそうだ。

 

 

 

 

 

「成程…成程ね……成程…」

 

油断していた。

近道のために通った路地裏で、不定形の妙な悪魔と出くわしてしまった。

 

路地裏は薄暗く、昼間だというのに妙に静かだった。換気扇の音も、車の音も聞こえない。

まるでこの場所だけ、世界から切り離されたみたいに。

 

(クソ…!こいつ…姿はよく見えないけど、なんだこの存在感…勝てる気がしない!)

(なんだってこんな路地裏にこんなヤバいのがいるんだ?)

 

悪魔の輪郭は、見ようとするたびにぼやける。霧の塊のようにも見えるし、骨の塊のようにも見える。

よく分からない。

 

(どうする…!?よく見たらこいつ、ちゃんとした形を保ててない…!!多分弱ってる…)

(今の僕なら倒せる、か…!?)

 

纏まらない思考をどうにか纏めようと苦労していると、あちらから声が掛かった。

 

「そんな怯えなくてもいい。キミのこと取って食ったりしないから」

 

「ッ?」

 

その声は、確かに聞こえた。

けれど——どこから聞こえたのか分からない。

 

目の前の悪魔の口が動いたようにも見えないし、背後から聞こえたような気もする。

 

視線を巡らせた先、路地裏の奥。

そこに、何かがいた。

 

形が定まらない。煙のような、影のような。

しかし、確かにそこに存在している。

 

「ああそうだ。人間でそんな形の魂は初めて見たから。キミ、面白いね」

 

ゆらり、と闇の中のそれがゆっくりと揺れた。

その輪郭が、一瞬だけ——鎌のような形を作る。

 

だが、次の瞬間には崩れる。

まるで、観測を拒んでいるみたいに。

 

「魂?……契約の条件は、何?」

 

僕の言葉に、それは少しだけ黙った。

そして、くすりと笑う気配がした。

 

「へぇ……やっぱり肝が据わってるね。いいね」

 

その瞬間、路地裏の壁に伸びていた影がふっと揺れた。

太陽は動いていない。

なのに——影だけが、少し形を変えた気がした。

気のせいかもしれない。

……そう思うことにした。

 

「…そりゃどうも」

 

「そうだね……じゃあ、ボクがキミの心臓になる代わりにキミの心臓を貰う。それだけだとちょっとつまらないな」

 

奴の、恐らく腕に当たるものが蠢き、顎であろう部分を手でさすっているように見える。

 

「それじゃあ、これから先のキミの辿る道を見せてくれ」

「何?どういう…」

 

(なんだ、この悪魔…何を考えてる…?そもそもこいつ、なんの悪魔だ?弱ってるからか妙な姿をしているせいで正体がイマイチ分からない…)

(心臓って…つまり僕は、武器人間になるのか?こんな急に?)

 

「まぁ、そう悪い話でも無いだろう?キミが失うのは人間性くらいなもので、あとは得るばかりだ」

 

(…なんでもないみたいに言ってるが、デメリット結構デカイじゃないか)

 

冷や汗を流しながら、そんな詮無いことを考える。

 

(でも武器人間になれるとしたら、そう悪い話でもないんじゃないか?)

 

「ほら、受け入れなよ。悪魔がここまで譲歩するなんて珍しいんだからさ」

 

(くっ……急かさないでくれよ。こっちからしたら重大な決定なんだぞそれ!)

 

「……フン、鼻の良い奴だ」

 

鼻?いきなりなんの……

 

「悪いけど、もうそんなに時間が無いから」

 

そう告げると、悪魔がずいっとこちらへ近付いてきた。

 

「僕は——」

 

ポ ン

 

「僕は鎌の悪魔。君の二度目の人生、面白いものをボクに沢山見せてね」

 

(鎌…!こいつが僕の心臓になるってことは…やはり僕は武器人げッ…!?)

 

今まで不定形だったそいつの姿が、まるで物語に出てくるような所謂死神に近い姿へと変わった。

姿が変わったことを認識した次の瞬間、僕は悪魔の腕に胸を貫かれた。

 

「がッ…ぉぶッ…!?」

 

貫かれた胸の穴からは、痛みの割に血が出ない。

しかしその穴から鎌の悪魔が入り込んでくる。

 

『これは契約だよ。期待してるから、面白いものを沢山見せてね。草薙ナツ』

 

(あぁ、くそ…意識が……!)

 

ナツは仰向けに倒れ、鎌の悪魔は忽然と姿を消していた。

 

「…ちょっと遅かったか」

 

路地裏に倒れ伏す少女を見下ろす、赤い髪の女。

 

「へぇ…こんな短時間でもう契約しちゃったんだ」

 

少しだけ感心したように呟く。

 

「まぁ、大して支障も出なさそうだし、このまま連れて行ってもいいかな」

 

同心円の瞳で見下ろす女の後ろから、黒服の男が二人現れた。

 

マキマさん、鎌の悪魔はどうなりましたか?」

「先に契約されちゃったみたいだね」

「…殺しますか?」

「いや、いいよ。このままで」

 

この程度なら、躓く小石にもなり得ないから。

 

無機質な目が、そう語っていた。

 

「…知らない天井だ」

 

そんな場合じゃないことくらい知っているが、一度は言ってみたかった。

憧れのセリフではあるが、達成感は別にない。

 

知らない天井。……だけどまあ、警戒する必要は無いだろう。

自分が寝ているベッドや周りの道具から察するに、ここは病室だ。

 

「目が覚めたかな」

 

「!」

 

恐らく路地裏であのまま倒れた僕を介抱してくれた人だろうか。

そう思い顔を右に向けると、その視線の先には——

 

「大丈夫?」

 

チェンソーマン第一部における実質的な黒幕、マキマがいた。

 

「…え、あぁ、はい。大丈夫…です」

 

冷や汗が首筋をつたる。

内心を悟られないよう、どうにか表情を保つ。

 

「私は公安のデビルハンター」

「そう、なんですね」

「そう。じゃあいくつか質問があるんだけどいいかな」

「…はい、大丈夫です」

 

「君、名前は?」

「草薙ナツです」

「そう。じゃあナツちゃんは、なんの悪魔と契約したか覚えてる?」

「…鎌の悪魔と、そう名乗っていました」

「ふぅん…じゃあ最後に」

 

「人として飼われるか、悪魔として殺されるか、どっちがいい?」

 

やっぱり来た。原作でデンジにしたのと同じ問いだ。

 

「飼うなら餌はちゃんとあげるよ」

 

「……僕は、元々公安のデビルハンターになるつもりだったんです」

 

選ぶ余地は、ない。

 

「なので…人の方で、お願いします」

 

「いいよ、分かった。」

 

それ以外の選択肢は選べない。

 

「それじゃあ、また明日来るから。詳しい話はその時にするよ」

「これから…よろしくお願いします」

「うん、じゃあまた明日。それまではゆっくり休んでいて」

 

そう言い残し、マキマは部屋から去っていった。

 

「この一日でイベント起きすぎじゃないか…?」

 

公安に入ると思い立ってから、ほんの数時間なんだけど。

 

それにしても——

路地裏で出くわしたあの“鎌の悪魔”。僕の中に入ってくる寸前、ステレオタイプな死神の姿をしていた。

 

悪魔にしては少しシンプルな姿。そこらの雑魚でさえ、もっと複雑で醜悪な姿をしているというのに。

しかし、弱っている雰囲気だったし、完全に顕現するには力が足りなかったのだろうか。

 

…僕の魂が観測されていたのは、魂を狩る死神が使う武器というイメージから来た力だろうか。

 

そんな強そうな悪魔と僕が契約……僕の心臓は、もう悪魔のものになってしまっているんだよな。

 

そう思い、胸に手を当ててみる。

 

…普通の心臓との違いが、まるで分からない。

 

武器人間とはいっても、トリガーになる部分以外はほんとにそのままなんだな。

実感が湧いたり湧かなかったりだ。

 

原作では悪魔に変身するためのトリガーは武器人間ごとで違っていた。

デンジなら胸のスターター、レゼなら首のピン、クァンシなら右目の眼窩に隠された矢。

 

僕のトリガーはどこだろう……と思ったが、誰に教わらずとも何となく分かる。

 

多分、お腹ら辺……かな?

所謂丹田と呼ばれる場所にある。

 

イメージが頭に流れ込んでくる。あの悪魔に頭の中を覗かれているみたいで、なんだか不快だけど、悪魔は悪魔だと割り切ることにした。

 

「…僕、もう公安に入るんだよな」

「どちらかと言えば人外枠だし…四課に入ることになるのかな…」

「…どうせなら思いっきり介入して、みんな幸せにしてやりたいんだけど……」

 

出来るだろうか?僕に。

 

「いずれにせよ、もう後戻りできる段階は通り過ぎたんだ…あとはなるようになる、かな」

 

先に不安を抱く自分をどうにか納得させ、後のことは明日の自分に丸投げすることにして、疲労に耐えきれずナツは目を閉じた。

 

「目標だった悪魔の方はもう解決しちゃったし、今からゾンビの悪魔の方に行こうか」

「了解しました。本庁には戻らずに現地に向かいますか?」

「そうだね。思いの外余裕出来ちゃったし……向かおうかな」

 

 

 




面白かったら感想くれよな!
つまらなくても感想くれよな!
なんか変なとこあったら教えてくれると幸いです!

レゼの心理描写入れたいんだけど、解釈違い?

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