前向きにいきたい僕のチェンソーマン (旧題:せっかく転生したんだし、前向きに行こう)   作:きりっと果実

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書きたいこと多すぎて何を書いて何を省くかクソほど悩みました。
今回割と好き嫌い分かれるんじゃないかなって思います。
どうか嫌いな展開でも僕のことは嫌いにならないでください!!




その腕から逃れる術は無く

 

 

前ヨリモズット弱クナッテイル筈ナノニ!!何故!!何故!!

 

「お前が僕より弱いってだけだよ!現実みな!!」

 

 

鎌を振り回し、ひたすらに台風の悪魔を斬り刻む

突風で体が浮き上がる。

 

それを利用して、ナツは鎌を振り抜いた。

 

巨大な肉塊に刃が食い込み、

巻き込まれたビルの外壁ごと裂ける。

 

時々鎌の能力を駆使して斬った肉が突然逆回転した。

 

台風の肉体がねじ切れる。

 

ギャアあああああアアアア!!!

 

やり方は簡単だ。ただ回転が逆だったと運命を決めればいい。

鎌は因果に触れる。

だから結果を少しだけ曲げられる。

 

すると面白いほどに、逆へと回転しはじめた内蔵のような肉が周囲と干渉して台風の悪魔の肉体がめちゃくちゃになっていく。

 

効果時間はほんの数秒なのでそこまで一度の影響は大きくないが塵も積もればなんとやら、台風の悪魔は次第に弱っていった。

 

 

的がデカいおかげでレゼを相手にするよりもずっと楽であった

その上、おそらく幼体で本来の力の半分も出せていない

幼体とはいえ台風の悪魔だ。

油断すれば一瞬でミンチになる。

 

それでもナツは笑った。

幼体のお前に負けてたまるか、と。

 

 

「イった」

 

ナツが台風相手に大立ち回りしている間、レゼの片足がデンジに切り落とされた

 

「あ!ゴメン!!」

 

女の子を傷付けると後が怖いとナツから学習したデンジの口から謝罪の言葉が咄嗟に飛び出す

 

ナツに斬り刻まれ苦悶の叫び声をあげていた台風の悪魔がレゼの負傷に気が付き、己の体に無限に走る痛覚を遂に無視した

 

レゼ様!ワタクシノ血ヲ!!

 

口から血を吐き出すのでなく、身体中から溢れ出る血液を上手いことレゼの周囲へと降り掛からせた

 

台風の悪魔の血は血を失いすぎたレゼに力を与え、足を再生させた

しかし無傷なデンジとビームに血は意味をなさず、ただ視界を遮る煙幕のような効果を果たした

 

「うお、見えねえ!」

「あ、足くっついてるよかった!…よかね〜か!」

 

「なんだかもうメチャクチャだ!」

 

 

「僕を無視するとはいい度胸だね!なあオイ!?」

 

ギャアアア!!

 

己を無視してまでレゼを助けた台風の悪魔に苛立つ

 

まったく呆れた忠誠心だ。

心臓を狙ってなかったら部下とかに欲しい。

 

しかし台風の悪魔を楽しく斬り刻んでいるとナツの耳に姫野の叫びが届く

叫び声の方に目を向けると、遮蔽に守られている姫野と今にも吹き飛ばされそうな天使とアキが居た

 

 

「アキ君!!」

 

「何っ、してるんだ!!」

 

アキの奇行に天使が困惑の声をあげる

 

「いいからっ…!何かにつかまれっ!!」

 

「なん…なんで!?僕と君は他人だろ!放せばいい!」

 

「ぐうう…!」

 

天使の言い分はある意味正しかった

いくら同じ課に所属する仲間といえど、悪魔は悪魔

助ける義理などない

ましてや己の命をかけるなど

しかしアキの言い分は違った

 

「お前はアイツ(ナツ)のバディだろうが!みすみす死なせてたまるかよ!!」

 

「な…なっ…」

 

 

 

オオオオオ!!鎌アアアァァ!!

 

「…クソッ!!!」

「デンジくん!!こっちも頼んだ!」

 

レゼと戦闘を繰り広げるデンジが辺りに散らばり始めた台風の肉体を駆使して爆撃を避け、ナツの元へ辿り着く

 

「っしゃア、おラアッッ!!!」

 

ギャアアアアアアア!!

 

台風の悪魔をデンジに預け、ナツは風に煽られ上手く飛ばない鎖鎌をどうにか使ってアキと天使の元へと駆け付けた

姫野は遮蔽に身を隠しているので無事らしい

 

「アキくん!もう離していい!」

 

ナツは周囲の地面に固定された棒状の物…電柱や標識、信号機などとにかくありとあらゆる物に鎖を巻き付け、アキの手から離れた天使を間一髪片腕で抱え込んだ

 

「ふ〜〜……」

鎖に繋がれたナツは強風の影響を受け、風に流される風船のようにされるがままの状態で安堵の息を吐いた

 

折角幸せな毎日送れてるんだ。

ここでアキくんの寿命を縮めるわけにはいかない。

触れる前に天使を助けられてよかった。

 

にしてもなんでこの子は生き延びて少し残念そうな顔してるんだ……

 

「…天使くんは死にたいとか思ってるかもしれないけどさ」

「僕が生きてる間は簡単に死ねないぜ」

 

天使がやや目を見開き、顔を伏せる

 

「…分かってるさ」

 

 

 

「…ちょっと、アレやばくない?」

 

「へ?」

 

姫野の言葉を耳にしたナツは彼女の視線の先に目をやった

 

崩れていく台風の悪魔と、津波のように押し寄せる血液の海が目に映る

押し寄せる血の海に為す術がないと判断し、皆ひとまず死なないように上手く流されることを決意した

 

「勘弁してよぉ……」

 

大量の血が一帯に溢れナツは流されてしまった

自分に巻き付けていた鎖を天使に巻き付け直したので天使はその場に留まれているだろう

 

 

 

 

「レゼはどこだ!?」

 

「あ!?チェンソー様!!」

 

 

ボ ッ

 

 

上空から迫るレゼに気付いたビームが咄嗟にデンジを口内へと避難させ、爆発を一身に受けた

黒く焼け焦げたビームが墜落し、口からデンジが這出る

 

 

ド シ ャ ッ

 

 

「いってぇ〜…!」

「助かったぜビーム…」

 

「きゃ…き……」

 

遅れて2人の傍にレゼが着地する

 

「……もうこんな意味のないことしたくないんだけど」

 

「レゼ!ようやく見つけたぜ、後でビームに謝れよ!」

 

「後なんて無いよ。もうそろそろあきらめない?」

 

「ん〜……やだ。悪いことしたらごめんなさいするもんなんだぜ」

 

呆れてしまう

謝罪が受け入れられるのは取り返しが着く時だけだ

これだけ騒ぎを起こしたのだからきっと何人も無関係の人間が死んでいるだろう

 

しばし2人は見つめ合う

いつまで経ってもデンジが攻撃をしてこない

それが何を意味するのか、彼女はよく分かっている

これ以上の戦闘に意味は無い

だってもうきっと、間に合わない

けど、それでも──────

 

(可能性のある任務を放棄する戦士に価値は無い)

 

レゼが指を弾き、デンジの右腕が爆破される

続けて爆破されやや離れた位置にデンジは吹き飛ばされた

 

「…クッソ」

 

吹き飛ばされた先でボロボロのデンジが立ち上がる

 

タ ン ッ

 

そこへ再び着地するレゼ

 

 

「いい加減にして。さっさと死んでくれないかな」

 

「そんなに殺してーなら初めて会った時に殺しとくんだったな…!」

 

 

分かっている

そんな事は

とんだ失敗だ

とんだ失態だ

 

 

「もう逃げ道はないよ」

 

「さて、ど〜かな」

 

デンジの後ろには何処までも暗い海が広がっている

薄く伸びる月の光が無ければ広がっているのが海だと認識すら出来ないほどだった

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「え〜泳ぐの〜?」

 

デンジがスターターを引くが、腕が爆破される

デンジの腕が爆破で千切れるが千切れた腕はチェーンで繋がっていた

 

「チェーン?」

 

伸びたチェーンをめちゃくちゃに振り回し攻撃をするかのように見せ掛け、レゼの全身に絡める

 

「なっ!?」

 

指すら動かせないほどに密着した2人が、勢いそのままに海へと投げ出された

 

「シケてちゃ爆発出来ねぇよなァ〜!?」

 

 

ボ チ ャ ン

 

 

 

月の光が遠のく

 

(あぶく)と共に消えてゆく

 

沈んでいく

 

沈んでいく

 

深く

 

深く

 

 

 

 

(くら)

 

(くら)

 

(くら)

 

 

 

 

何処までも闇が拡がる

 

月の光に飛び込んだのに、拡がっているのは淡い光ではなく仄暗い闇

 

(日常)に魅せられ、限り無い闇(殺し合い)に飛び込む愚かな()

 

 

 

 

彼を殺してあんな場所へ帰るくらいならばいっそ……

 

 

 

 

レゼの両腕が爆破する

 

水に濡れ、僅かな威力しか出ないがそれで十分だった

 

ただ沈み続ける為にはそれで事足りた

 

沈み続けた2人はやがて底に辿り着く

 

 

 

 

 

あぁ、何故今思い出すのか

 

 

 

 

 

『デンジ君もおいでよ!』

 

 

 

 

『ははあ〜んわかった!さては泳げないからプール恐いんだな!』

 

 

 

 

『あはははははは!』

 

 

 

 

 

死にたくは無い

 

 

 

 

 

『デンジ君の知らない事、できない事』

 

 

『私が全部教えてあげる』

 

 

 

 

 

 

でも、安全な場所などどこにもないと言うのなら

 

もういっそ、このまま

 

 

 

 

 

意識が沈んだ

 

 

 

 

 

 

 

バ シ ャ バ シ ャ

 

 

「うわは!っはは!」

 

「キャキャキャ!!」

 

ザ ッ パ ァ ン

 

「うわズルい!サメになるの禁止だよそれ!!」

 

「キャキャ!お前、遅い!」

 

「なんだとぉ!」

 

 

喧騒に目が覚めた

全身が苦痛に悲鳴をあげている中、上体を起こす

前方に視線を向ければ全身ボロボロで馬鹿みたいにはしゃいでいるバカ達(ナツとビーム)

横にはそれを大人しく見つめているデンジが座っている

シャツを着ていないデンジを目にして、ここでようやく己が服を着ていることに気がついた

 

 

「信じられない…どうして」

 

()()()()()()()()()って言うんだろ」

 

「……………」

 

「オレは今…素晴らしき日々を送ってる」

「何回ボコされて死ぬほど痛い目みて死んでも、次の日ウマいモン食えりゃそれで帳消しにできる」

 

 

 

 

 

『都会の方がウマいモンあるし楽しそうじゃん』

 

『キミは食えて楽しけりゃいいのか?』

 

 

 

 

 

「…そう」

 

 

「でも……ここでレゼを捕まえて公安に引き渡したら、素晴らしき日々が欠けちまう気がする」

 

「俺ァ最低なやつだからさ……ナツもレゼも居なくなって欲しくない」

 

「もしもどっちか居なくなっちまったら、素晴らしき日々は全部パァだぜ」

 

 

レゼが目を伏せる

以前とは違い胸の内がまるで読めない表情だ

やがて立ち上がったレゼがデンジに問う

 

「今私に殺されても同じこと言える?」

 

「ん〜…殺されんのはゴメンだけど」

()()()()()()()()()ってのが俺の座右の銘」

 

 

 

 

 

『下ネタは制覇したんだよ!睾丸だって書けるぜ俺は』

 

 

 

 

 

「っぷ」

「あはははははははは!!」

「はああ〜!あ〜」

 

レゼが一頻り笑ったかと思えばそれらが幻だったかのように冷徹な顔をデンジに向ける

 

「もしかして…私がまだキミを本気で好きだと思っているの?」

「キミに会ってからの表情も頬の赤らめも全部嘘だよ。訓練で身につけたもの」

 

突如明かされる衝撃の事実にデンジが口をあんぐりと開ける

 

 

馬鹿みたいな顔。

 

 

「私は失敗した…大失敗だよ。こんなの初めて」

「時間をかけすぎた」

 

 

本当に、馬鹿みたい。

 

 

「じゃあ私は逃げるから」

 

そう吐き捨てた彼女はデンジに背を向け去って行く

 

「ウチに来ねえ?」

 

「…へ?」

 

「俺ら多分、相性最高だろ?3人合わされば向かうところ敵無しだぜ?」

 

 

何を言ってるんだろう。

そんなの──────

 

 

「私のせいできっと沢山の人が死んだよ?私を仲間にするってことはデンジ君人殺しの仲間って事になるけど、わかってる?」

 

「1人も死んでねーよ?」

 

「え?」

 

「だから、1人も死んでねえって」

 

 

死んでない?

あの被害規模で?

1人も?

 

 

レゼがもしやと海ではしゃぐナツに目を向けた

 

 

本当に私の襲撃を見越してたとでもいうの?

 

 

「よく分かんねえけどあの辺の建物は全部立ち入り禁止だったらしいぜ」

「車乗ってたヤツらも公安の誰かが逃がしたみてえだし」

「建物は壊れちまったけど、俺らも普段壊しまくってるから多分大丈夫だろ?」

 

「……でも、私は」

 

「なんか事情あったんだろ。仕方なくねえけど仕方ねえよ、俺ぁレゼん事好きだし」

「全部嘘だっつーけど、俺に泳ぎ方教えてくれたのはホントだろ?」

「レゼから貰ったモンは俺ん中に残ってる。これは全部嘘じゃねえ」

 

 

真剣な表情のデンジと微笑むレゼが見つめ合う

2人が近付き、唇が触れ──

 

ることなく、デンジの首がへし折られた

 

ゴ キ ッ

 

「あっ!」

 

首が折れ、体を動かせなくなったデンジは地面に倒れ伏す

 

「あっ…」

 

「…デンジ君、もう少し賢くなった方がいいよ」

 

 

馬鹿みたい、本当に。

本当に……

 

 

「レゼ!!なあっ、レゼ!!」

「今日の昼!あのカフェで待ってるから!!」

「だから…!」

 

ザ パ ー ン

 

「…ッ!ナツ!!いつまで遊んでるんだよ!!」

「手が動かねえ!エンジン吹かしてくれ!!追いかけないと……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

『11時8分山形行き新幹線つばさ、間もなく発車します』

 

プ シ ュ ──────

 

 

「…………」

 

 

乗れなかった

 

 

なんで、戻ってるんだろう。

 

 

駅の階段を降り、外へ出た

 

 

この風景も見納めだと思っていたのに。

 

 

電話ボックスを通り過ぎた

 

 

本当に馬鹿みたい。

 

 

階段をおり、自動販売機を通り過ぎた

 

 

こんなの賢くない。

 

 

路地裏を通る

薄暗く、小汚い

まるで路地の先とこちらで世界が違うかの様だった

 

 

どうしてだろう。

 

 

やがて白飛びしていた景色が明確になっていく

カフェだ

二道だ

 

 

自分から突き放したのに会えなくなるのが惜しいだなんて。

 

 

日に照らされ、まるで彼女の心情を代弁するかのように光り輝く

 

 

居た。デンジ君。

 

 

 

 

ネズミが一匹、足元を通り過ぎた

 

 

一匹通り過ぎた、それだけだった

 

 

 

 

薄暗い路地を抜け、光に照らされ歩く

 

彼の背中を見つめ、扉へと近付く

 

扉に手を掛けゆっくりと引いた

 

 

賢くなくてもいい

 

だから

 

 

ガ チ ャ

 

 

花束を抱え

頬を染め

滝のように汗を垂らし

喜びを隠しきれない驚愕の表情でこちらを見つめている

 

「…ホントにいたんだ」

 

外から見えていたのだから居ることくらい知っていた

ただ、こうして目にして改めて思ったのだ

 

「な、あっ、えっ…あっ!」

 

まるで言葉を喋れていない。

それがなんだか可笑しくて、

変に緊張していた自分が馬鹿らしかった。

 

「っふ…あはは!なんじゃそりゃ!」

 

「あっ、わ、笑うなよ!バカにすんな!」

 

「キミが来いって言ったんでしょ?なんで驚いてるの」

 

「言ったよ!!ありがとう!!」

 

考えるよりも先に言葉が出ているらしい

 

「ありがとうって……何が?」

 

「だってホントに来てくれたから…!」

 

「来てくれたからありがとうって…ふふ、デンジ君てウブだね?」

 

「悪かったなウブで!」

 

やや言いにくそうに口を開く

 

「なあ……来てくれたってことは、いいんだよな?」

 

「ん〜?何が?」

 

彼を試すように少しとぼけてみる。

特に意味は無い。

 

ただ嘘に塗れていたあの眩しい日常が恋しかった。

だからあの頃みたいにからかってみる。

 

この気持ちは、嘘では無い。

 

「何が……って、ウチに来てくれるのかっていう……その…」

 

「いいよ」

 

「!!」

 

彼が露骨に嬉しそうな表情をする

何処までも素直だ

 

渡した分だけ返ってくる

夏祭りの時のように

 

渡さなくても何かが贈られてくる

初めて会った時のように

 

何も無かった私が

人を殺し騙す(すべ)のみを与えられてきた私が

初めて返された

初めて与えられた

 

だから、殺せなかった

 

「ってことは…レ、レゼは俺の事……好き、なの?」

 

好き………

じっくり考えた

じっくり考えて、答えを出す

 

「分からない」

 

「えぇ…?」

 

「私、デンジ君に嘘ついてばっかだった」

 

学校にだって行ったことはない

 

「ホントはデンジ君と一緒で初めてのことばっかり」

 

だから、今度は君が

私が教えたように、

 

「だから、デンジ君が私に()()を教えて?」

 

何やら顔が熱い。

なるほど、自然に頬が上気するとこうなるのか。

 

2人は暫し見つめ合う

しかしレぜがあることを思い出した

 

店内を見回す

彼女も居るものだと思っていたのだが

 

「…ナツちゃんは、いないの?デンジ君と一緒だと思ってたんだけど」

 

「あ〜…俺も誘ったんだけど……」

 

 

 

 

 

 

 

「デンジくん怒んないでよ〜ちゃんと起こしてあげたじゃ〜ん」

 

「ナツが遊んでるからレゼ追いかけられなかっただろ!」

 

「もおそんなに怒んないでよ〜」

 

「テメェもだぞビーム!!」

 

「ヒッ!ゴメンナサイ!!チェンソー様ゴメンナサイ!!」

 

「でも約束したんでしょお?絶対来てくれるから大丈夫だってぇ」

 

「…ナツも来るよな?」

 

「え?」

 

「え?って……来んだろ?お前もレゼと仲良いんじゃねえのかよ」

 

「あ〜……その…」

 

「なんだよ」

 

「…マキマさんにお呼ばれしてて」

 

「はあ〜?」

 

「僕もレゼちゃんとお話したいし、あとでちゃんと行くから!二道で待っててよ!」

 

「…絶対来いよ?」

 

「分かってるって!!」

 

「ビームは罰として公安で留守番だ」

 

「ゴメンナサイ……ゴメンナサイ……」

 

 

 

 

 

「って…」

 

デンジの話を聞いたレゼが閉口する

 

「……マキマ」

 

「どうしたんだよ?」

 

「…あ、いや、なんでも……」

 

「ああ…?」

 

窓の外に映る路地に目をやる

あちらは陰鬱な気配が漂っている

先程まではあちらとこちらで明確に世界が別れている気がしていた

 

でも今では境界線など感じられない

むしろどちらも別の何かに変わっていくような……

ただそう感じた

 

「…ナツちゃん」

 

 

 

 

 

 



 

 

 

 

 

今日は天気が良くて気持ちがいい。

 

雲がちょくちょくあるけど、まぁそれでも気分は良いもんだ。

 

 

潮風の匂いが鼻をくすぐり(さざなみ)の心地よい音が耳に響く

 

 

己の意思で来ていたのならもっと心地よかったんだろうけど。

 

 

「マキマさん」

 

「おはようナツちゃん。待ってたよ」

 

ナツはマキマに呼び出され海辺に来ていた

 

「…わざわざ海辺でですか?」

 

「場所は別にどうでも良かったんだけど」

 

だったら公安にして欲しかった。

あっちならすぐに二道に行けたのに。

 

「じゃあなんでわざわざここに呼び出したんです?」

 

「なんで知っているのか聞いてもいい?」

 

 

突然意図をつかめない質問が投げかけられる

 

到着してから一度もこちらに向けられなかった瞳がこちらに向けられた

 

人外であることを示す様な瞳がただおぞましかった

 

 

「何を……」

 

「デンジ君にはレゼちゃんが出来たからもう大丈夫かなって」

 

 

また突然話がすり替わる

まるでこちらの返答などどうでもいいと言うかのように

 

 

「だから私と契約して欲しいな」

 

 

もはや悪魔であることを隠さなくなった

聞きたいことは後から聞けるから僕の言葉など今はどうでもいいのか

 

不味い、これは

まさかこんな早い段階で

 

 

「……それは、その」

 

 

嫌だ、そんな

 

 

「これは命令です」

 

 

ここまでずっと上手くやってたのに

 

 

「契約するといいなさい」

 

 

助けて、おと──────

 

 

 

 

 

 

 

貸1(かしいち)

 

 

 

 

 

 

 

ポ ン

 

 

 

 

 

 

──何かが、喪われた気がした

 

あれ、何だったっけ?

マキマさんが何か喋ってる。

 

()()()()()

 

あぁ、いや…()()()()

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()って言われたんだった。

 

 

「ナツちゃん、レゼちゃんの事お願いね」

 

「あ、はい!勿論です!!」

 

そんなやり取りを交わした後、マキマさんは車で帰っていってしまった。

 

にしても良かった!まさかこんなに簡単に受け入れてもらえるなんて……

レゼちゃんを殺す理由を片っ端から潰してよかった〜!苦労が報われたよ……

 

いや〜…

 

雲ひとつない青空が気持ちいいな〜!

折角の海なのに潮風も波の音も無いのは残念だけど

 

さて、早く二道に行ってレゼちゃんにこのこと伝えなきゃ……

 

…あれ

何か忘れてるような……

 

う〜ん……?

 

「ま、いっか」

 

忘れることってのは大抵大したことは無いんだ。

大したことあってもどうにか取り返しがつくものばっかり。

忘れたことより次の事見据えなくちゃ……

 

 

 

 

世界にはありとあらゆる()()がある

人類圏ではそれが顕著で、大抵の者は死んでも何処かに痕跡が残る

それは役所の情報だったり、写真だったり、誰かの記憶だったり、思い出であったり

 

だがこの時、その痕跡は《意味》を失った

 

残された写真を見ても、それは人ではなく背景と処理される

 

幸か不幸かその者は既に死人であった

大統領や王が消えた訳でもない

なんの弊害も出ていない

 

僅かに残った痕跡

 

写真も、記憶も、思い出も

全てが認知の外だ

 

そこに《何か》があったはずなのに

 

誰一人それを理解できない

 

誰にも記憶されない者は

存在しないのと同義だ

 

確かに何者かがいたはずなのに

そこにあるのは理解できない空白

 

まるで無が生きていたかのように、空白

 

誰かにとって最も大切な痕跡は

誰かにとって最も愛おしい記憶は

誰かにとって最も残したい思い出は

誰かにとって最も忘がたい痛みは

 

この日この時

《認識》から零れ落ちた

 

取り戻されることは、きっと無い

 

 

世界は理解しなおされた

 

 

喪われたモノが入り込む隙間は喪われた

 

 

果たしたい理想は体現され

 

誰かの原点は淘汰された

 

得る為に喪った

 

強大な力にはそれほどの対価が必要だ

 

本来ならこんなものでは足りない

 

()もコイツに情が湧いてしまったか

 

コレを消されたと知ったら怒るだろうが

 

まあどうだっていいだろう

 

前を、先を、未来を重要視するお前に過去は不要だ

 

過去に囚われることに意味は無い

 

他の誰でもなくお前がそう唱えたのだ

 

だから、

 

恨んでくれるなよ、草薙ナツ

 

 






本当に難産でした。
レゼは無事救えましたね。
同じ部屋にゃさすがに入り切らないんでお隣さんです。
多分ご飯の時とか入り浸るんじゃないですかね?

マキマがレゼよりナツを優先したのは部下にした時ナツの方が応用が効くからですね。爆弾の悪魔より推定鎌の悪魔さんのほうが使いこなした時強いので。

今回ラスト何が起こったのかは特に隠す気はありません。
今回の所業から推定鎌の悪魔さんの真名を看破できる人は居るかな!?!?
多分いなさそう!

読んでくれてありがとうございました!
今回以降原作から大きくズレ始めそうなので好き嫌いが別れるところかと思います。
どうか嫌いな展開でも内容が面白ければ評価していただけると励みになります。
次回は多分遅くなります。3日後とか4日後とか……

僕の筆が早まることを祈ってください!!
では最後にもう一度、読んでくれてありがとうございました!!


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