前向きにいきたい僕のチェンソーマン (旧題:せっかく転生したんだし、前向きに行こう) 作:きりっと果実
他の作品にも手を伸ばそうとしちゃってて投稿遅れちゃいました。
ごめんちゃい♡
「ん」
前方からこちらへ手を振る男にデンジが気が付く
「ヘイよ〜元気?」
視線の先にはバディとなったコベニと暴力の魔人、二人の隣には怪我をした様子の見知らぬ男が歩いていた
久々に会うコベニにナツが目を付け、話し掛ける
「コベニちゃ〜ん!結構久々じゃない?ちゃんと食べてる?」
「んぇ…あ…」
「いやぁ元気そうでよかった〜」
「うぇ…?はい……」
実に一方的なコミュニケーションであった
「のぉ、あれはウヌの車か?」
ナツの肩に顎を乗せたパワーがコベニへと声を掛ける
「ふぁ……あ…お、お給料で買ったんです…家族の送り迎えもできるし…」
「ほお…」
コベニは嫌な予感がして冷や汗が止まらなくなった
「ワシは最近歩き疲れておったからのお…丁度いい!ワシを乗せろ!」
「え!?」
コベニは絶望した
「ちょっと、勝手に離れちゃダメだよパワーちゃん!」
「そ、そうですよね!」
コベニは希望を胸に抱いた
「僕も連れて行ってくれないと!」
コベニは希望など無い事を知った
「え!?」
「ワシの持っている車に似とるなあ…これワシの車じゃないか?ウヌは盗人なのか?」
「えっ!?」
「パワーちゃん車なんか持ってないでしょ」
ナツとパワーに勝手に乗り込まれ、コベニは哀れなほど慌てふためいている
「あっ、あの、ここっ、これ私の……ていうかそこ運転席…」
「何か文句でもあるかの?」
「じゃ、じゃあその……せめて助手席…」
「まあまあ、パワーちゃんのことは任せて後ろにいなよ!」
助手席すらコベニから奪ったナツはそういえば…とパワーに尋ねた
「…あれ?パワーちゃん免許持ってたっけ?」
「安心しろ、免許証くらい持っておるわ!」
「ならいっか!」
歩いてばっかりで疲れていた所為か、パワーの虚言癖を忘れ素直に受け入れてしまった
「良くないです!あっ、悪魔が免許なんか取れるわけないじゃないですかぁぁあああああ!?」
コベニがそう言うも時すでに遅く、パワーはアクセルをそれ以上踏み込めないほどに踏み込んでいた
「パワーちゃんブレーキ!ブレーキ!!そっち歩道!!うわわわわ!?」
「ガハハハハ!!」
「いやぁぁぁぁぁぁ!!」
バ ゴ ォ ッ
「……」
「……」
「……」
三者三様の表情で愕然としていた
パワーに轢かれた黒瀬とデンジ、破壊された柵を見て絶望するコベニ
そういえばこんな展開あった気がするし大丈夫なんじゃないか?と希望的観測を持つナツ
全部忘れて人の所為にすることにしたパワー
「キっきゅ…きゅっ…きゅっ…」
「元気だしてコベニちゃん!じゃ!」
バ タ ン
「ま…まっ、まっまって…待ってください!」
コベニは深く絶望した
「ウヌの車じゃ、ワシのせいじゃない」
「……!?」
コベニは悪魔と錯覚するほどに酷い顔色で絶望した
「まさか人のせいにするのか…!?この…人殺しがア!!」
バ タ ン
静かになった車内で失意の底に落ちたコベニはこれからの暗闇で彩られた人生に思いを馳せ泣いた
「ひっ……グス…うっオエ…ぐぅ……うぇ…」
「お前…お前がいてなんでこうなる……?」
「…ナツちゃんこれ大丈夫なの?」
「いやぁ、アハハ」
「ワシら関係ないもん。全部アイツがやったんじゃ」
「て、てめえら……」
全員が愕然とし、突然起きた人身事故にようやく脳が追い付き場に恐怖が広がり始めた頃
「なんて事だ…!早川君見ろ!!」
「顔が変わった…!!」
周囲が騒然とする中、額に仏の
「この顔は間違いない……アメリカで殺し屋まがいの事をしているデビルハンターだ」
「皮の悪魔と契約してる三兄弟の長男かな?死体の身なりを奪えるって聞いたことがある」
「じゃ轢いて正解だったって事?」
「良かったねナツちゃん、公安クビとかにはならなさそうだよ」
自分が轢いたクセに状況を理解していないパワーだったが、やがて自分の行いが
「やっぱりのオ〜…!敵の正体に気づいていたのはワシだけだったようじゃなあ〜!」
「ねえデンジくん大丈夫?」
「おご…だいじょぶじゃ……ねぇえ…!」
1人喜び舞うパワーを
「アキくんから血を貰ってくるから待っててね」
アキの元へ向かうナツと入れ替わり、パワーがデンジの側へズンズンと寄る
「ワシの手柄〜!!」
「てめぇ……」
「デンジ!仇は取ったぞ!」
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」
既に事が片付いたような雰囲気に、レゼと吉田が忠告する
「こいつらは三兄弟だからまだあと2人いるはずだよ」
「あぁ、既にこの中の誰かがなりかわっているかもね」
「ねぇ、被せてこないでよ」
「そう言うなよ、仲良くいこうぜ?」
境遇は全く違うものの、どこか自分と近しいモノを感じたのかレゼと吉田はあまり相性が良い様子ではなかった
「そーだよレゼちゃん。今は仲良くしとこ?」
「…え、ナツちゃんソイツの事気に入ったの?」
「ん?全然?」
「本人目の前にして言うか?傷付くなぁ」
そうはいうものの大して気にしている様子は見せなかった
「オエエエエ!」
ビシャ ビシャ
先程の事故を目撃した中年の男が路地裏で嘔吐していた。
人が死ぬ姿を見たのだからそれも当然と言えようが、当然それだけではない。
伏せていた顔を起こした中年が手を眼前に翳すと、瞬時に顔が変化する。
例の三兄弟のうちの一人だ。
「糞…!落ち着け!落ち着け!…クソ!」
それを眺めていた三兄弟のもう一人が汗をダラダラと流しながら必死に感情を抑えている。
殺し屋まがいの仕事をしているとはいえ、家族に情がない訳では無いのだ。
「畜生…落ち着けるわきゃねえ…!」
抑えきれない怒りの感情のまま路地裏を出ようと歩き出す。
「やっぱあの魔人ぶっ殺してやる……!」
しかし路地裏を出ようとしたその時、足が止まり口を開く。
今度は独り言ではなく誰かへと話しかけているらしかった。
「てめ…!うぇ」
ビチャ
男が引き込まれ、声が途絶えた曲がり角の向こうから何者かが歩み出た。
笑顔のはずなのに感情の読めない不気味な笑みを携えた男。吉田である。
吉田の視線の先には既に三兄弟の最後の1人ではなく中年の情けない男が吐いているのみであった。
「……大丈夫ですか?具合悪いみたいですけど」
僅かな沈黙を孕むも、直ぐに言葉は紡がれる。
「う、さっき…さっき…あ…人身事故を見て…しまって…」
それを耳にした吉田は振り返り一言呟いた。
「プロはゲロ吐かないか……」
奇しくも三兄弟の末っ子はその根性の無さが故に生き延びることとなった。
冷酷になり切れない彼が殺し屋まがいの仕事を続けられたのはこの悪運の強さもあったのかもしれない。
兄が2人とも殺された今もその悪運は健在だった。
ゴ キ ャ ッ
「全く、仮にも護衛なんだから疑わしきは罰さなきゃでしょ」
たった今人間の首を360度曲げ、折るどころかほぼ千切った者の声色とは思えない程に普通の声色でそう呟いた。
「…あ、良かった顔変わった。危ない危ない!……さて、私もナツちゃん達のとこ戻ろっと」
楽しんで読んでいただければいいなぁと思います。
また次回お会いしましょう。