前向きにいきたい僕のチェンソーマン (旧題:せっかく転生したんだし、前向きに行こう) 作:きりっと果実
デパートら辺のくだり考えなきゃ……!
男が右手の槌を振り上げる。
その動作に呼応するかのように、ナツの頭上の空間が歪み──再び巨大な槌が出現した。
空気を押し潰すような重圧とともに、それは真っ直ぐナツへと落ちてくる。
だが、ただ黙って潰されるようなナツではない。
ナツは足元へ鎌の破片をばら撒いた。
次の瞬間、地面が裂けるようにして無数の鎌が生え上がる。
金属同士が激突した。
巨大な槌は、地面から突き出た鎌の群れに受け止められ、鈍い衝撃音を辺りに響かせた。
(なんだ、この男.....)
ナツは目を細める。
(このデカい槌、どこから出してる?......仕組みが見えないな)
考えるより早く、ナツは地面を蹴った。
男との距離を一気に詰め、鎌を振り下ろす。
男は当然のように身を翻してそれを避けた。
だが、避けた瞬間に生まわちーーほんの僅かな隙。
ナツはそれを見逃さない。
体を捻り、男の腹へと鋭い蹴りを叩き込んだ。
しかし男もまた、完全な
咄嗟に両腕を交差させ、蹴撃の衝撃を受け止める。
それでも、衝撃は完全には殺しきれない。
男の体は数歩分、後方へと弾き飛ばされた。
「.....靴裏に刃物でも仕込んでいたか」
男は腕を下ろす。
服の布越しに、じわりと血が滲んでいた。
「つまらない小細工だな」
不満そうな声音だった。
ナツは肩をすくめる。
「そんなことよりさ。アンタ、同じことしか出来ないの?」
「.....ならば、これはどうだ」
男は左手をナツへと翳した。
その瞬間だった。
ナツの体が、突然凍り付いたかのように動かなくなる。
「なんだコレ!?」
「さっきの言葉を訂正しろ」
男は淡々と言う。
「俺は、同じことしか出来ない無能などではない」
「そこまで言ってない!」
「そうか.......訂正しないか」
男は静かに槌を握り直した。
「ならば仕方あるまい」
(ヤバい!滅茶苦茶油断した.....!)
ナツの背筋を冷たい汗が伝う。
(何が来る──)
男が右手の槌を振り上げた。
そして、左手へと叩きつける。
カアアアン
その刹那、
ナツの両腕両脚に影が落ちる。
上空に突如として槌が出現していた。
次の瞬間には四肢が同時に叩き潰される。
衝撃で地面に叩き伏せられ、ナツはその場に這い蹲る形になった。
(......クソッ!なんだこのカ......!)
「訂正しろ」
男が見下ろす。
ナツは歯を食いしばった。
(......あれはガベルか?さっきから罪だの裁きだの言ってるし)
(右手のアレを叩くと、槌が出てくる......?)
「.....だから、そこまで言ってないって」
「まだ意地を張るのか」
男はため息をついた。
「罪深い女だなお前は」
ナツは土に顔をつけたまま笑った。
「よく言われるよ」
そして続ける。
「それとさ。両手両足潰したくらいで調子乗りすぎじゃない?」
男の眉がわずかに動く。
「そこからどうやって──」
言葉は途中で止まった。
切断された四肢の断面から、黒煙が吹き出していた。
煙は蠢きながら形を取り、腕と脚の輪郭を作り上げていく。
やがて。
完全な四肢が再生した。
ナツは何事もなかったかのように立ち上がる。
「まったく」
土を払う。
「女の子の顔に土つけるなんて、教育がなってない男だね。紳士失格だよ」
男は舌打ちした。
「チッ......その姿で女の子だのと抜かすな」
吐き捨てる。
「悪魔風情が!」
「そっちもだろ!」
男が再び槌を振り上げる。
(来る!)
ナツは身構えた。
頭上からの攻撃を想定し、いつでも回避できる姿勢を取る。
ナツの想定通りに空間が歪み、巨大な槌が出現する。
それが振り下ろされた瞬間───
ナツの鎌が閃いた。
巨大な槌はナツを再び襲うこと無く、瞬く間に細かく切り刻まれる。
粉々にされた槌の破片が空中で弾けた。
男の動きが、ほんの一瞬止まる。
その瞬きにも満たないわずかな隙をナツは逃さない。
男の腕に仕込んでおいた破片に変化が起きた。
生成された巨大な鎌が刃先を男へと向け、腕を貫通した。
刃先が男の体を貫く。
「ぐアっ!?」
男の体が震え、膝をついた。
腕に刺さった破片を「小細工」と吐き捨てた男に、防ぐ術はなかった。
唐突に生成された鎌が、確実に肉を貫いていた。
ナツは肩を回す。
「やっぱ芸が少ないな」
軽く笑う。
「僕一人でも充分相手できちゃうよ」
「侮辱罪だ!」
「さっきから心狭いな!」
男は怒りに任せ、乱雑に槌を振り上げた。
再び巨大な槌が振り下ろされる。
だが。
結果は同じだった。
地面から生えた鎌が、再びそれを受け止める。
そして。
槌と鎌が同時に崩壊する。
その瞬間、ナツは地面を蹴った。
一直線に男へ突っ込む。
だが、ただ突っ込むだけでは意味がない。
既にデンジが同じような事をしてやられている。
ナツは鎌を男へ投げた。
しかし鎌は男に当たらない。
男の背後へと突き刺さる。
「愚か者が!」
男が嘲笑う。
「自ら武器を手放すとは──」
「ばあか」
ナツが鎖を引いた。
男がナツの手に握られた鎖に気付いたときには、もう遅い。
背後の鎌が引き戻される。
飛来する大鎌が、男の体を斜めに切り裂いた。
「.....馬鹿な」
男が崩れる。
「そんなサイズの鎖鎌があってたまるか」
ナツは呆れたように語る。
「頭硬いなあ…鎖ついてる鎌なんだから鎖鎌でしょ。大きさなんて関係あるもんか」
「横......暴だ......」
男の声が弱くなる。
「横暴も何も……」
ナツは首を傾げた。
「え、あれ」
「死んだ?」
(やっば)
ナツは内心で焦る。
(こういうのって生け捕りの方がよくない?)
「おいナツ、大丈夫か?」
声をかけたのはアキだった。
ナツは服についた土を軽く払いながら振り向く。
「あ、アキくん。うん、特に問題は無いよ」
「そうか.......」
アキは小さく息を吐いた。
「俺達も手伝おうと思ったんだがな。加勢しようとしたら、アイツに止められた」
「アイツ?」
ナツは首を傾げる。
そしてすぐに気付いた。
「.....え、レゼちゃん?なんで止めたの。ひどい」
アキが親指で後ろを指す。
そこには、壁にもたれながらニマニマと笑っているレゼの姿があった。
「えー?」
レゼは肩を竦める。
「だってナツちゃん、楽しそうだったし~」
軽い調子で続ける。
「邪魔するのも良くないかなって」
「手伝ってくれたらあんな痛い思いしなかったのに!」
ナツが抗議する。
「痛いの嫌いだって言わなかったっけ!?」
レゼはくすくす笑う。
「そんなこと言ってたら、この仕事は務まりませんよ〜?」
「クソ....!」
ナツが拳を握る。
「後輩のレゼちゃんに言われた!悔しい!」
(くそう!)
ナツは心の中で叫ぶ。
(僕だって出来ることなら誰かが戦ってる後ろでぬくぬくしたい!)
(護衛対象だぞ僕は!)
(.....まあ、楽しくなかったといえば嘘になるけど)
「パワ子.....それ俺の血イ.....!返せ!」
情けない声が響いた。
振り向くと、デンジが地面に座り込んだまま腕を押さえている。
その横では、パワーが日下部が持っていたであろう輸血パックに口をつけていた。
「嫌じや」
パワーはきっぱりと言う。
「ウヌが動けんうちにワシが全部飲む」
「そいつが動けなかったら困るだろうが!」
日下部が眉をひそめる。
「早く飲ませないか!」
襲撃者が事前に手を回していたのか、周囲への被害は驚くほど少なかった。
瓦礫もほとんどなく、一般人の姿もない。
結果として負傷者は、ナツとデンジの二人だけで済んでいる。
その安堵からか。
緊張の糸が切れたように、デンジとパワーは血を巡って取っ組み合いを始めていた。
「こらお前ら!」
日下部の怒声が飛ぶ。
「こんなところで騒ぐな!」
「で、コイツどうする?」
ナツが足元の死体を軽く蹴る。
アキが答えた。
「死体はマキマさんのところに送る」
「人に近い悪魔や、悪魔と契約してる襲撃者の死体は送ってくるよう言われてる」
ナツはマキマに淡々と詰められる未来を想像して顔をしかめた。
「.....真っ二つにしちゃったけど、僕怒られないよね」
アキは肩を竦める。
「さあな」
「覚悟はしておいた方がいいんじゃないか?」
「僕ほぼ一人で頑張ったのに!」
ナツが声を上げる。
「酷い!」
ナツが騒ぐその後ろで。
死体の傍にしゃがみこんでいた天使が、ぴたりと動きを止めた。
「どうしたの天使くん?」
ナツが振り向く。
「あ、いや......」
天使が曖昧に答える。
「ん?」
不審に思い、ナツは後ろから覗き込んだ。
そして気付く。
天使の口元。
そこには、悪魔の血がついていた。
ナツが小さく笑う。
「あららぁ」
天使は顔をしかめる。
「全然笑い事じゃないんだけど.....」
「一緒に怒られようね、天使くうん.....」
ナツがにやりと笑う。
天使は天を仰いだ。
「最悪だ......」
誰に聞かせるでもない言い訳を小さく呟く。
「ご飯前でお腹空いてたばかりに.....」
アキが引き気味に言う。
「なんでも食うんだなお前」
その言葉に、天使はむっとした表情を浮かべた。
楽しんで読んでくれたら幸いです〜!
オチは食べ物の趣味が悪い天使くんです。
この子人間の食事もめっちゃ食うのにゾンビとか食ったりしてて結構趣味変ですよね。多分お腹すいてたら悪魔も食うやろ!って思って食べさせました。
味は鉄分多めな感じらしいです(適当)
デパートら辺どんな感じにしようか悩んでます。
地獄のとこは随分と前からもう決まってるんですがね。
ちなみにナツ視点で基本進むのでナツのいないとこで起きてる戦闘とかはよっぽど重要でなければ描写しないです。原作にあった描写がなければ原作と大差ないと考えてください。
この男、デビルハンターやってる歴はナツより長いですが、戦闘経験はナツより浅いです。
大国でも無い国出身ですから、他国のつよつよスパイとかと戦闘したりしませんからね。