4000日以内にログアウトしないと死ぬ!? ニューゲーム+を開始したらデスゲーム? だった件について   作:匿名係

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仲間ができたよ!!

人化の魔法。全てのモンスターが備えている力で、大抵は綺麗な外見になる。ただし人化をしても、元のモンスターの持つ特徴などは肉体の一部に残るようにはなっている。

 目の前で少女になったヒッポグリフにしても、背中には青と白が混ざり合ったような翼が生えている。

 なお人化ができるのは製作会社の趣味だ。モンスターと人の姿があれば一粒で二度美味しいとか制作秘話に乗っていた。私はこの趣味に対して、心の中で何十回も同意として頷いている。

 というのはさておき、命乞いしてきたならこれ以上攻撃するつもりもない。それよりも、私が倒すべき連中は裏切った傭兵達だ。あいつら絶対に許さん。許さないが、私が直接手を下すのはまずい。場合によっては殺人犯になる。なので、目の前のヒッポグリフに協力して貰う事にする。

 

「こちらはそちらの降伏を受け入れる。その代わりに、そちらにはこっちの軍門に下って貰うぞ」

「ええと……手下になれってこと?」

「そうだ。命を見逃す代わりに、私と共に行動して貰う。それで良いな?」

「わ、分かった」

「よし。それでは契約だ」

 

 私は調教技能で獲得できる、モンスターテイム用の魔法を発動する。これは弱らしたモンスターに使う事で捕獲し、自分の仲間にするためのスキルだ。

 いざ使おうとして、ふと思い立つ。ここがゲームなら問題ないが、もしもずっと疑問に持っている異世界だとして、ヒッポグリフとはいえ見た目少女を調教魔法で捕まえ、手足として働かせるというのは倫理上どうなのだろうか?

 改めて少女を見る。背は私より小指一本分ほど低く、猛禽類のような目には怯えの感情が見て取れる。羽と同じ色の白を基調とし、先端部分が青色になっているショートカットの髪の毛は非常に特徴的だ。

 あと特筆すべき要素として、現在の少女は服を一切着ていない。1周目の時には人化すると服が生えて来ていたのに、今は生まれたままの状態だ。

 それらを見ても、あまり感情が動かない。あー、裸だなみたいな感想が先に出てくる。元の男性の体だったら、絶対にガン見してたな、これは。

 そんなしょうもない考えが湧いてきたが、頭から追い出して捕獲の魔法を発動。少女の頭上に一瞬だけ魔法陣が浮かび上がり、彼女の目からハイライトが消える。

 数瞬待つと目に光が戻ってきた。これは……捕獲成功なのか?

 

「気分はどうだ?」

「大丈夫です、マスター!」

「……え?」

 

 マスター? 何それ?

 

「そのマスターというのは、一体何かな?」

「マスターはマスターです! それとも、御主人様の方が良かったですか?」

 

 ヒッポグリフは上目遣いに、こちらの様子を伺うように見上げてくる。まさか二周目のAI強化された状態だと、こんな反応をするようになっているのか。

 ううむ、これはなんだかすごい犯罪的な気がする。今日出会ったばかりの相手を捕まえて、洗脳魔法で御主人様と呼ばせる。捕獲魔法はそんな魔法だと言われたらそんな気もするが、客観的に見たら私はどんな人物に見えるのだろうか?

 

「……こほん。これを考えるのはまた後の話だな。とりあえず、私のことを味方と認識している。それでいいのかな?」

「はい! 私は御主人様の忠実な僕ですから!」

「そ、そうか。それは嬉しいよ……では君に……君と呼ぶのも少しあれだな。何か名前などはあるかな?」

「名前……ないです。お母さんはお馬さんで話せなかったですし、お父さんは私が小さいときにすぐどこかに行っちゃったので。誰かと話をするのも、すごくすごく久しぶりなんです……人化したのも、生涯で初めてですから」

 

 モンスターの生態か。確かにグリフォンがまともに子育てしますなんて設定は無かった筈。設定上、モンスターが人化するのも稀な話だ。なにせ人化すると筋力などの能力値が低くなり、モンスター形態に比べると大抵は弱体化にしかならない。だからこそ降参するなら、人化しろと命じたところもある。

 

「名前が無いのは不便だな……白色に青か……良し。今日から君の名前はクーリーだ」

「クーリーですか?」

「クーリーだ。よろしく頼むぞ、クーリー」

 

 青と白と言えば、私の中ではクーリーカラーだ。もしも知っている人がこの名前を聞いたら、鈴菌めと言うかもしれない。

 ともかく捕獲したヒッポグリフにクーリーと名付けた私は、彼女にこれからして欲しいことを教えておく。それをうんうん頷き聞いたクーリーは、分かったよ! と元気に返事してくれた。

 よし、あとはあいつらに追いつくだけだ。

 私はすぐにステルスモードに入り、森の中を疾走する。目指す場所は豪商が襲われたと言う地点だ。近くまで行くと、人の気配を感じ取る。木に隠れながら、様子を伺うことに。

 

「お前ら早くしろ! あの女がヒッポグリフに喰われる前に、ここからとんずらしなきゃいけねえんだぞ!」

「分かってるよ、団長。分かってるからあんまり大声を出すなよ。ヒッポグリフ以外のモンスターが寄ってくるかもしれねえんだぞ」

「おっと、そうだったな」

「けど馬鹿な女ですね。あんな分かりやすい囮作戦に、自分から志願してくれたんですから」

「見た目は良いからぶち込みたかったな、俺は。あんな上玉、首都にもそうはいねえぞ」

「よせよせ。あの女、1対1なら俺らの誰よりも強いぞ。下手に襲おうとしたら、お前の粗末なもん千切られるわ」

 

 わいのわいの言いながら、好き勝手に話をしてくれている。そうかそうか、お前ら全員私が死んでもいいと思っていたのか。そうか……ならこちらも遠慮はしない。体に泥を付けて、足を怪我したように見せかけて、と。

 

「……みんな。どうして、私を助けにきてくれなかったの?」

「へ……うわぁ!!」

 

 私が足を引きずりながら木陰から出ていくと、一番近くにいた男が驚いて尻もちをついていた。その様子に気づいたのか、全員こちらに注目してくれる。それらを無視して、私は団長の元に近づいた。

 

「どうして……どうして、私を囮にしたんですか? あんな、あんな強い化け物の足止めなんて……」

「お前……イオリ……いきて……いたのか? どうやって?」

「なんとか……倒してきたの。でも、足が痛いの……腕も痛いの。どうして、私を捨て駒にしたの?」

 

 私が弱弱しく語り掛けると、団長は少しだけ目を逸らした後、こちらに向き直って言葉を吐き出した。

 

「ヒッポグリフにしろ、グリフォンにしろ、俺たちの手には余る。全員で立ち向かったところで、死人が増えるだけだ。それなら、一番強いイオリが一人で足止めをして、犠牲者を減らす方が良いに決まってるだろ」

「それなら……どうして事前に言ってくれなかったの? あんな不意打ちで魔石から音が鳴るようにしておいて。あんなことをしなくても、私は最初から戦ってほしいとお願いしてくれていたら、ヒッポグリフが寝ていたところを攻撃していたのに」

「……昨日今日あったばかりのやつに、足止めをお願いして、本気でしてくれると思うのは馬鹿の発想だ。お前さんがそれをしてくれる保証がない以上は、俺は団員を守るためにお前を捨て駒にでもなんでもするぞ」

 

 ああ、そう。別にこっちの命なんて、どうでもいいと言う訳か。非情であることが傭兵を率いる条件か何かか?

 

「それよりも、随分と手傷を負っているみたいだな」

「う、うん。薬草や魔法薬を頂戴。怪我を治したいの」

「……足もやられているみたいだな」

「え? そうだけど……」

「そうか……ふん!」

 

 そう言って、団長は腰の剣を抜き私を斬りつけようとしてきた。とっさに地面に転がって、その太刀を避ける。

 

「なに……するの?」

「口封じだよ。それに分け前を減らすためだ。お前がここで死ねば、俺たちの悪評が広がることもない。足の速さが御自慢のようだが、怪我をしてたら機動力もおしまいだよな? ……お前らも全員抜刀しろ。こいつをここで殺すぞ!」

 

 団長がそう命じると、周りの傭兵達も全員剣やその他の武器を手にし始めた。そうか、ここでまだ助けようとしてくれるなら見逃そうと思っていたが、そっちがその気なら仕方ない。お前たちがこちらを見逃してはくれないように、私もお前たちを見逃さない。

 

「殺すことにするよ」

「なに?」

「やれクーリー! この場にいる人間、全員皆殺しにしろ!!」

 

 私が森に向かって言葉を投げかけたら、ばさりと大きな翼が大気を打つ音がした。皆がその方向に視線をやると、奥から大きな影が飛び出してくる。

 

「へ?」

 

 一番近くにいた男が、クーリーの前足に踏みつぶされ砕けて絶命した。その光景を見て呆気に取られていた男は、翼に打たれて飛び上がり、木に頭からぶつかった後地面に落ちた。首が妙な方向に捻じれて即死していた。

 そこからはクーリーの蹂躙劇だ。嘴で突かれた人物は心臓に穴が空く。巨体に弾き飛ばされたら小石のように宙を舞い、地面を何度も転がったあと動かなくなった。

 その光景を団長は呆然と見つめていた。自分の部下達が、容赦なく抹殺されていく姿をだ。

 

「お前……ヒッポグリフは倒したって……」

「嘘だよ、そんなの。本当はテイムしたの」

「テイム……捕まえたのか! 捕まえて、自分のものに!? なら、今すぐに止めさせろ!! お前がやっているのは人殺しなんだぞ!!」

「そっちはこっちを殺そうとしたじゃない。なんで今更、自分達が善人みたいなことを喋ってるの?」

「それは……は!?」

 

 私に気を取られ過ぎたのか、団長はクーリーの接近に気づかなかったようだ。横から突撃してきた彼女に口で捕えられて、玩具のように振り回されている。1分ぐらい経過しただろうか。クーリーが彼を口から離す。

 地面にぼたりと落ちた団長は、腕や首がぶらんぶらんになって絶命していた。

 その光景を見て、私は特に何も感じなかった。

 

「……私はここが異世界だと思っているのかな? それともゲームだと感じている?」

 

 最初に殺した賞金首と野盗の時には、ゲームだと思っていたから容赦なく殺害した。その時とは違い、今の私はここは異世界ではないのかと疑問を持っている。

 なのに人を殺すことに躊躇が無い。ああ、敵が死んだ。そんな感想しか心に湧いてこない。

 

「これは、心底ではここがゲームだと思っているから? それとも……この体だから?」

 

 答えは出ない。私はクーリーが残党を追いかけ殺している間に、彼らの荷物と商人の荷物を漁る。持ち帰っても問題ない物品と、今回の本命である神像。

 それを見つけた時には、周囲から悲鳴は消えていた。前回の賞金首の時と違い今回はクーリーがいるので、彼女にも荷物をそこそこ持ってもらう。

 誰一人として生き残りがいないことを確かめてから、私はスターリアの街に戻ることにした。

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