いつも通りの日常の中、突然訪れたセールスレディ。そして翌朝ポストの中に入っていたのは奇妙なチラシとネズミの生首。
一輝は湧いてくる頭を落ち着かせ、家族を居間に集める。現在ブルーバードの仕事で出張中の大二には電話を繋げ、五十嵐一家は勢揃いとなった。
「……母ちゃん父ちゃん、さくら、それに大二も聞いて欲しい。昨日の夜、怪しい訪問販売の女の人が来たんだ」
「夜? でも俺は12時くらいまで動画編集してたけどそんな気配……」
父親の元太がそういうと一輝は少しトーンを落として返した。
「2時だった。深夜の2時に、いきなり扉を叩く音が聞こえて、それで向かったら新作お菓子の勧誘で……」
「そんな非常識な……」
「それで俺も言ったんだよ、何時だと思ってるんですか、とかこんな時間まで働かせる会社おかしい、とか。でもそんなこと聞こえてないみたいにあの人、話続けてさ、それで名刺渡されて……これ」
そう言って、一輝は名刺を懐から出した。
「田崎……みう? みはねか?」
「読み方はいいよパパ。で、この電話番号……会社のだよね? かけたの?」
「……いや、明日……っていうか起きたらかけようと思ったんだけどこんなことが起きて、まだなんだ」
「さっきの人もそんなこと言ってた……夜中がセールスが来たって。掛けてみれば何か……」
「ちょっと待って兄ちゃん、花に調べて貰っ……」
「……なんか、勝手にかかっちまった」
「なにしてんの兄ちゃん!?」
「わ、わかんねぇよ……。……もしもし」
「お電話ありがとうございます。株式会社スノウ総務部芦原瑞穂がお受けいたします」
「あの、先日ですね、そこの会社から深夜に訪問販売が来まして……うち以外にも来たってことで代表して掛けたんです」
少しの無言の後、電話相手の芦原瑞穂と名乗る女性は返答した。
「すみません、セールスに来た方のお名前をお伺いしてよろしいでしょうか?」
「田崎美羽って人です。美しい羽って書いて」
すると電話からヒュッという息を飲む音が聞こえた。
「嘘だ……そんなことありえない.…あれはただのモキュメンタリーなはず……」
すると突然電話相手が代わり、野太い男の声になる。
「大変申し訳ございません! お電話変わりました総務部の織田と申します。お客様にも時間がある中押し付けがましいセールスを行った社員がいたということで、ご迷惑をおかけしました! こちらといたしましても謝罪に伺いたいのでお名前とご住所お聞きしてもよろしいでしょうか?」
途端に捲したてるように放たれた言葉。しかし……。
「あの……なんで直前の会話知ってるんですか?」
「なんでって……かぞくだからに決まってるじゃないですか!! かぞくの喋っていることなんて手に取るようにわかり────」
ダメだ、これ以上この男と話していてはおかしくなると、そう思った一輝は電話を切る。
「ど、どうだった?」
おずおずとさくらが問いかける。
「……多分やばい会社だと思う。名前出した途端に驚く人がいて、そしたら電話相手変わって住所教えてくれってさ」
「なにそれ……おかしいよそんなの」
「兄ちゃん、兄ちゃんが電話してる間、花に依頼したんだけどその会社ちょっと前に、ある事件に関わってる」
「事件……?」