五十嵐一輝が瑞穂と優吾に会っている最中、夏木花は御霊華也からスノウ製菓の過去を聞き出していた。その夕暮れ時。彼女は聞いた話をメモを読みながら一輝たちに話した。
「要はあの会社に元々いて祀られてたモノと、創業者の妻が混ざり合って出来たのが"あじゃさま"と」
「そういうことになるわね。それとその妻である雪子さん、どうも死ぬ前も奇妙な儀式? をしてたみたいで、自分の孫の死体を会社の地下に埋めてたそうなの」
「自分の……孫を……?」
さくらは自分の知らない世界に出会ったような気分に陥る。
「それで、そういうのもあって元々祀られてたモノが変質してしまったんじゃないかって思ってる」
「……でもそれとあのセールスレディとどう繋がってるんだろう?」
そんな花の疑問には、今日会って得た情報を踏まえての考察を一輝は語る。
「それなんだけど、瑞穂さんと優吾さんに聞いてきた話が繋がる気がするんだ。例えばこの結婚報告の手紙。佐川湊って人宛に芹山翔一と美羽(旧姓 田崎)って書かれてるんだけど、この家族、とても幸せそうには……というか生きてるようには見えないんだ」
「そして花が言ってた死んでも働かせる"あじゃさま"と俺と、瑞穂さんのところに来たセールス。……つまり家族だから、アットホームだからと無限に働かせるブラック企業……なんじゃないかな。そしてその家族にさせられるトリガーは会社で朝かかってる社内用に"調整"されたCMソングってことまで掴んでる」
「……今日の一輝兄、冴えてるね」
「そうか? はは、まぁ……皆の命がかかってるからな」
「頼もしいや。でもどうするの? 確かに悪事はわかったけど、そのあじゃさま? をどうにかしない限り無理だし、あるの地下でしょ?」
「それについてはもう分かってる。瑞穂さんが見つけたこのエレベーター使用中止の張り紙、この手順じゃないかって思ってる」
そういうと一輝はある張り紙のコピーを机の上に置いた。不気味な文の中に一、五、三、四の順でエレベーターの階を押してくださいと書かれている。
一輝は今日会ったばかりの2人に電話をかけ、しあわせ湯に避難することを提案する。
「さくらと花はここを頼む。もし次に襲われるのなら、1番可能性が高いのはあの2人かセールスレディが来たここ付近の住人だ」
「もちろん。誰1人怪我人も出させないよ」
「わかったけど、そっちはひとりで大丈夫なの?」
「大丈夫……とは言いきれないけど……」
でも、と彼は続ける。いつも根拠の無い言葉だった。それでもいつもやり遂げる、それが彼、五十嵐一輝だったのだ。
「こっからは兄ちゃんに任せとけ!」