足月のせいで巫女が早く辿り着き、早期解決ということで。
「全く。関係がないと言うのならば、異変には関わらないでください」
「ごめんなさい」
「足月!二人の輝かしい未来を祈ってお酒を呑みましょう!」
「寅丸は呑まねえだろ」
「聖も許可を出してくれました!…あれ、出しましたよね?」
聖白蓮の下では、酒は禁止。煙草も禁止。私はどちらも嗜む程度にもしないため、あまり影響はない。寅丸が代理をしている毘沙門天様に仕えてるだけなので、そもそも私に影響はない。異変解決の後に行われるこの宴会、何故かご主人も参加しており、巫女に寅丸と一緒に退治されかけたことを怒られていた。ひーん。ま、事の経緯を聞いてくれたら納得はしてくれたけどね。しかしそんな説教の時間を悉く破壊してきたのは寅丸。ふざけんな恋心はご主人に預けて忠義心は毘沙門天様に預けた身。お前にやる心はない。
「…貴女の今の主人は?」
「華扇!」
「宜しい」
「毘沙門天様は?」
「主人様」
「じゃあ代理である私は!」
「そんなに好きじゃない」
「聖ぃ〜!」
だって、私はご主人LOVEだし。大好きだし。大体、お前元ストーカーじゃん。ダメでしょ、そう言うの。聖って人も…なぁ。魔法使うんでしょ。そんなに好きじゃないんだよね、魔法。風見幽香のせいだけど。その点ご主人は素手だからね。ペットにされた時は流石に死ぬかとも思ったけど。山の妖怪がどうにかしてくれって言うから来たのに、その場にいた妖怪全員その争いを娯楽にしてたし。その後かなり凹んだし。ま、全ては山の妖怪が悪い。私は悪くない。以上。
「宴会もそろそろお開きですか。帰りますよ、足月」
「は〜い」
「うぎぃ…ひ、聖!あの者から足月を取り返してください!」
「星がやれば良いでしょう。無闇に争い事を起こすべきではありません」
「ま、ご主人倒しても私は私で戦うけどね」
「卑怯な!」
翌日。地中深くで寝ていたところ、何やら叩き起こされた。誰かと思えば、寅丸。ごめんけど今は面倒ごといやだから二度寝するね…と行きたかったが、そうは行かず。何やらよくわからないうちに引っ張り出された。何がしたいのかわからん。と、引きずられてたどり着いた先には寺があった。なるほど総本山。ただそれをするなら妖怪の山でやれば良いのに。あそこは神社があるから無理か。じゃあしかたない。そんで何がしたいの?私、一応神だけど今は主にペットやってるんですよ。
「一緒に寺、やりませんか?」
「…は?」
「おお、これが噂に聞く大百足ですか」
「聖、どうです?一応、毘沙門天様の眷属です。代理をやる前の私と同じ位ですよ」
「ふむ…」
「悪いけど、私もご主人に許可取らないといけないんだよね」
「私が説得して見せます!どうですか、聖!」
「…まあ、星の力に惹かれた愚か者が来るのは目に見えてますから。もう一人居ても別に悪くは…」
「私と違って足月には商売繁盛のご利益があるんですよ!」
「いえーい」
「即採用ですね」
と、そこまで喜んだところで。口から百足を一匹吐き出す。私の腹の中で五番目くらいに大きい百足だ。私の威厳があるためこいつを大百足とは呼ばない。注目するべき点として。この百足も、私と同じようなことが出来る。この百足は私と同じように商売繁盛のご利益を持つからここに置く。大きいのに商売繁盛できない奴や苦手だけど出来る奴がいる中でこの百足は立派である。言いたいことはわかったね。こいつ置いてくからそれで御勘弁。この百足なら性格も穏やかだし、力をつけたからと言って暴れることもないよ。
「足月本体でお願いします」
「すみませんが、戻ってもらえます?」
「ぐちぎぎ」
「ごめん、出した私のミス。ほら戻って。あー」
「私も」
「星?」
「うっ…と、とりあえず!貴女の主人に許可をとります!ですので、その方の場所まで案内してくれませんか?」
「良いよ」
人型になり、空間の扉を開ける。やり方は感覚で教わった。詳しい理屈は知らない。中に招き、ご主人を呼ぶ。すると…なんだ。出てきたのはご主人ではあった。そういえば、八咫烏ぶっ飛ばした後に聞いたわ。自分の左腕探してるとかなんとか。元々の鬼に戻ったご主人が出迎えて来た。…というよりも、ご主人が迎えに来させたと言った方が正しい。恐らくは見つけたのだろう。私を一目見て鼻で笑ったところが昔のご主人らしい。ま、どうでも良いや。星を中に招き入れ、ご主人に会わせる。
「…足月。そう言った物事は貴女が決めることなのですよ」
「私がここを去ると思ったから右腕を戻したかったんですか?…ご主人、私がここを去る時はご主人が言わない限り訪れませんよ」
「いえ、我々は足月の神としての側面だけでも宜しいのですよ。貴女たちの関係に立ち入るつもりはありません」
「『私』がそう容易く部下を手放すかよ。カスみたいなこと言ってねえで」
「過去のお前は黙れ」
「…私はお前の飼い主の腕だぞ」
「腕がでしゃばらないでください。私は足月の判断にも任せます。しかし、私個人の意見としてはここに居てほしいと言う思いがあります」
「ご主人!」
「ただの偶像崇拝です。足月は既に信仰を得て長いので、おそらく無茶苦茶な信仰はされませんよ」
「変わることがないのなら良いです」
こうして決まった。ご主人の喜ばしいご意見を気に入ったので星を帰らせる。いやっほぅ、私はこれだけで三千年は生きていける。茨木童子は死ね。ご主人がわたしに茨木童子について説明してくれはした。探していた腕が何故か自ら進んでご主人の前に現れ、更にはその鬼としてのご主人を形取ったらしい。なるほど。その右腕だけでも地割れを起こす腕力はあるらしく、つい先日、異変の宴会前にどうにかさせたのだとか。ご主人すごい!
「…な、なんだよ」
「ご主人の昔も麗しいなぁ」
「なっ」
「バカ言えペットが!お前なんかに褒められても嬉しくねえ!!私を捨てた『私』に言ってろ!」
「…ご主人はいつも麗しい!」
「足月、急にはっちゃけないでください」
華扇の前に腕が現れたのは、『お前私以上に便利そうな右腕持ってるよね、嫌味???』と思ったから。であれ。