「ほら見て、この傷跡。治ってもまだある」
「ひぇ〜…痛そうじゃなぁ」
「私がこんな深手を負ったのは初めてだもん。驚いたよね」
「人型の時は脆いのか…」
布都と話していると、と直に呼ばれる。私は今、ご主人と共に聖徳太子の仙界へと来ている。私の血の跡はなかった。優秀な掃除屋がいるらしい。布都は多分、この中で唯一暇な人間なんだと思う。実際私の話をよく聞くし、寺を燃やしに来てたのもこの人だし。一番関わりたくないのはやっぱり刺してきた聖徳太子だよね。あれは流石に死ぬかと思った。それがなければ、多分青蛾。あいつ、吐き出すときに腹の中にいなかったんだよね。得体の知れない術を使う奴は嫌いだ。
「ねえご主人」
「なんですか?」
「どんな話してたの?」
「…寺を燃やさないこと、無闇に対立しないこと。それらを伝えるだけでしたよ。彼女たちとしても、恐らくは我々とは構えたくないでしょうから」
「私は良いけどね」
「貴女も不意打ちさえなければ負けない相手でしたからね。」
また話があるから、と言って放置。ご主人がいないと帰れないため、また布都と話す。屠自古も混じる。と、なんか頭に衝撃。痛いな、もう。屠自古さんが指鉄砲したらしい。理屈はよくわからないが、多分電気か何かだろう。前見た覚えがある。ちょっとムカついて睨みつけると少し怯えてしまった。今日はここに加えて命蓮寺もあるんだよなぁ…私としては気が重いのなんの。やっぱり部下を置いておくべきだったかな。五番目くらいに大きい奴。そんなに死にはしないし、多分良いでしょ。
「人化の術とな。ふーむ、妖怪が人に化ける事は知っておったが、そんな術が…」
「そんな術っていうか、習性とかだと思ってたぞ?幻想郷だとかなり多いらしいしな。」
「ま、強い妖怪だからって人化が得意なわけじゃないんだよね。鬼みたいに人に近いからって変化してないと下手になったりね」
「ぬぅ…恐ろしく得意妖怪は強いのか?」
「いや?強いかどうかはそこでは判断できないからね。」
「なるほどのう」
「最悪殴っても妖怪だからって通じるのか」
なんか法律の悪用を考えてる人がいる。逃げるか。丁度ご主人の会話が終わった。難しい話、嫌いだから。ご主人の話には一切ついて行くことはない。だって難しいんだもん。お説教も、気持ちのある部分だけ聞き取ってる。ちなみに茨木童子は只今仙界でお留守番。へっ、そっくりさんが。神霊廟を抜け出し、そのまま命蓮寺へ。私が言ったら勘違いを生みそうだが、改めて見るとかなりデカいな、この寺。私よりは小さいと付け加えてはおく。ま、私よりデカいものなんか山しか存在しないってね。
「足月、今回は、申し訳ございませんでした」
「頭上げろよ寅丸〜」
「あと、これも…」
「ん、私の武具とか言ってたやつね。」
「あの、本当に忘れたんですか?」
「うん。さっぱりきっぱりわかんない」
「…この武具は、貴女の物です。能力として、貴女の望んだ武具になります。」
「へぇ」
試しに槍が欲しいなと思ってみると、確かに槍に変化した。刀が欲しいと思えば刀に、弓矢が欲しいと思えば弓矢に。矢は放ってみると地面に刺さって少ししたら消えた。そんで私の手元に矢が戻っていた。はー、こりゃ便利。腰にしまうタイプの短刀が欲しいと思い、腰にしまう。これはかなり便利だ。だけども…ムカデである私が、なぜこんなものを持っていたのだろう?今まで誰のを盗んできたのかわからないものはあったが、この武具自体どうやって手に入れたのかもわからない。私が神になったときに持ってたのかな。
「代わりの百足を置く、と?」
「私の部下ってそんなに大きさ自体は変わらないからね。個体差が出るのは出来ること。力が強かったり、足が速かったり。」
「なるほど」
「ここに置いて行くのは対話が可能なムカデかな。寅丸、人化の術を教えてあげてね」
「ちゃんとやらせていただきますよ」
「あと強さは寅丸とトントンだから、暴れた時は私を呼ぶか聖って人呼んでね。」
「えっ」
ご主人と聖白蓮の会話が終わる。こっちはかなり早く終わった。ま、あんなことは言ったけど。吐き出した百足を見てこんなのがと驚いてはいたけど、人間の時はかなり脆い。そこらへんもどうにかしておいてあげてと伝えたんだけど、大丈夫かな。私の死因になりかけた物だからね。傷をつけることは許されない、絶対に。私はご主人と共に仙界に帰り、茨木童子の出迎えを受け、イェーイとアピールしながら家の中へ。ご主人に呼ばれてご主人の部屋へ。やはり外観と同じく和室の部屋だった。これで一部屋洋室だったら笑ってたけど。
「足月」
「はい」
「貴女に、少し提案をします。」
「はぇあ?」
「その人型を維持しながら私と暮らすか、百足の姿になって今まで通りに暮らすか。…それらか、私と縁を切り自由に生きるか。」
「一つ目!!」
「即答ですか」
「私の武具も取り返したし、一生をかけてお守りするよ!」
「なら私も同じ布団に入って良いよな」
「あ、嫌です。それと同じ布団で寝る話そもそもしてません」
「えぁっ」
「確かに…」
抗議に抗議を重ね、ここで暮らして寝る時は隣に布団を敷くことで決着をつけた。喜ぶ私の横で、私はダメなのかとご主人に詰め寄る茨木童子もいたが…知らんぷり。と言うか両隣にご主人顔があれば私はどっちを向いて寝れば良いんだ。私は…こう、『私のために争わないで』とか言えないんだぞ。仰向けで寝るしかないのか。…地中で寝てた私が仰向けで寝れるかなぁ。まあそんなことは頭の隅から外へ出して、私はこの状況を喜ぼう。祝、同棲開始!最高!!
「足月が大きすぎて入る布団がないですね」
「ええ!?」
「うーわ、頭か足どっちに合わせても全然入り切らん。」
「仕方ありません。右腕、貴女は今日布団なしです」
「は?」
翌日、足月の寝相のせいで蹴りを喰らう茨木童子。
終わり。