土の中で眠るようになったのは、確か私が今より一回り小さかった頃に背中に草が生え始めたからだ。ご主人に草抜きをしてもらって以来、土の中で種子をつけないように寝ている。ミミズが体につくことはあるけど、出る時には出てるからね。さて、私は今土の中で寝ていた訳だ。なのに、目の前には何か変な空間が広がっている。なんだろ、これ。そう思っていたらなんか…そう、前話されただらしない大妖怪、八雲紫がいた。実は前会った時のご主人との雰囲気から、少し嫌い。
「少し、お話がしたくてね?」
「いや」
「断らないで。それに、貴女は今動けないでしょう?体節にスキマをはめてるんだから」
「…人型になれば関係ないけど?」
人になってスキマとやらの中に入る。入り込んだ後で周りを見渡すと、どうやら日本家屋。こんなに大きな家が、地中にあったのかな。もしかしたら空間移動でもしたんじゃないかな?とか思ってたら、八雲紫が椅子を叩いた。どうやらこちらにお座りくださいということらしい。従ったままに座る。お話がしたいなどと言っていたが、なんだろうか。私は話すことなんてないと思うけど。ないでしょ?じゃあ帰らせてもらえる?無理?そっか。出されたお茶…紅茶。紅茶?
「紅茶は嫌い?」
「お前、日本産でしょ。なんで紅茶?」
「残念だけど、日本人も紅茶は飲むのよ。」
「あっそ。」
「…口が悪いわね。華扇のところじゃ習わなかった?」
「ペットに言葉を教える奴はいないと思うけど」
「…変わり者じゃなかった?貴女の飼い主」
「少しは同意。私みたいな大百足を飼う妖怪なんていないからね」
んー、やっぱり嫌い。私の性分だろうけど、ご主人を馬鹿にされるのには少し腹を立てる。これで主人様まで馬鹿にされたらもうここで百足に戻ると思う。大体人型って集中力必要だから、好んでなりたくはないんだよ。ご主人とかのためならまだしも。八雲紫のためっていうのがなぁ。気に食わない。なんて思っていると噂に聞く九尾が私に茶菓子を渡して来た。食べてみると、なかなかに美味しい。へー、こんなのが幻想郷にあるんだ。どこで売ってるんだろ、後で聞いてみるかな。
「私の式、貴女と同じ立場だけど…自分で動くし、忠義もあるのよ。素晴らしいでしょう?」
「…私にも手下がいるからね。ご主人との関係は悪くないし、むしろ可愛がられてるよ。これも飼う側と飼われてる側の一種の関係。」
「あら、そうなのね。で、本題に入りましょうか」
「遅いよ」
「ごめんなさいね」
第一問が出るまで少し時間がかかったな。聞きたいことがあるんだったら早くしてほしい。私にだって予定があるのだ。寝るという予定が。お昼寝したい。大体今は何時なんだ。日は沈んだの?それとも寝る前と変わらない?それだけでも聞こうと思っても、何故か八雲紫は微笑を浮かべたまま何も話さない。何こいつ、ムカデ砲撃つよ。ムカデいっぱいだよ。私はそのムカデ達結構好きだけどね。ご主人でさえも嫌うから、少し自信無くなって来てるんだよね。
「貴女、強いでしょ」
「そりゃまあそれなりに」
「華扇より」
「いえいえとんでもない」
「貴女が本気なら、妖怪の山に華扇ごと巻き込んで突っ込んだでしょ?」
「そんなことしたら面倒なことになるからやらなーい」
「そう?じゃ、二つ目。」
「何?」
「私が今華扇を殺せるた━━」
「死ね」
大百足となり、容赦なく八雲紫を咥えたまま空を登る。途中で咥えていた感触がなくなる感覚を覚えたため止まる。すると目の前に八雲紫。やはり空間移動の能力か。扉を作ってどうこうするタイプ。歳下が。何か喋ろうとする八雲紫を遮り、大量の百足を口から出す。タダの百足ではない。一匹ずつがかなりデカい百足達。その大きさは大体そこら辺の木々に匹敵する。怪我した時の養分は体内のこいつらだから、あんまり出したくないんだけど。ご主人殺すなら仕方ないよねって。
「っ」
「捕まえた」
「冗談よ、冗談。それも私じゃなくて藍だから。」
「…ぅあっ、本当だ」
「死、死ぬかと…!」
「すごいでしょ?この式。貴女も華扇に結んでもらえれば?華扇の力も手に入るのよ?」
「…私とご主人は対等だからね。貴女と八雲紫みたいに主従がきっちりしてないの。」
「…普通、こんなことされたら完全に騙されるはずよ?」
八雲紫と八雲藍は互いに化けた。化けたタイミングは、私が八雲紫を捕まえた後。恐らくだけど奴らは互いに化けた。証拠に、八雲紫は八雲藍を指して私の式などと宣っていたが、先ほどはこの式と呼んでいた。忠誠心か何かから来た、八雲紫を呼び捨てることへの抵抗心だろう。笑える。式って大変そうだね。私は知らないから。そう言って帰ろうとして、帰り方わかんねーことに気付く。帰せ。そう言うと、まだ二個目の質問があると言われた。人型に戻り、席に着く。不服ながら。
「…貴女は、華扇を好いている?」
「っ」
「好いてるって言うのは分かる?友愛じゃなくて、恋愛。どう?答えられる?」
「好きだよ。結構」
「…常日頃からぞんざいな扱い受けてそうだけど」
「長い付き合いだからね。ご主人は好きだよ。忠義と恋心は区別してるつもり。」
「意外ね、意外。まあ…そんなに意外じゃないのかも。これで以上、話すことはもうないわ。人型のまま返してあげる」
下に落ちる。落ちた先は、どうやらご主人の家らしかった。辿り着いて一つ。…これ、竜とか踏んだらどうすんだよ…?
「ご主人〜!」
「わっ足月」
「怖かったぁ!」
「え!?え、え!?」
紫「大量の百足が来た時、少し漏れそうになったのは内緒。は?年寄りでトイレが近いだけ?お前の明日は今潰えた。」