幻想郷は常識の半歩外でして。
「何?」
「私に喧嘩を売ってきたのよ。守矢神社とか言うやつが。」
「それは、私をこの姿に留めてまで言うことなの?」
「人型にさせるのに力なんか使ってないでしょ。そういうお札なんだから。」
「んで、何させられるの?」
「乗せて」
つまりはこう。博麗の巫女、縁側でゆったりしていたところに守矢神社のカスが強襲、その際に少し怪我をしてしまい、飛べるかどうかがわからない。だから連れて行け、とのことだ。神社を出てからお札取ってくれるんだって。変なの。まあでも、怪我の件は確からしいので、連れて行くことにする。何やってんのかな、私。嫌だなー、こういうのって。ご主人とか主人様以外乗せたくないけど、まあそこは仕方ない。後頼み事を承諾しないとここでは生きづらくなるからね。バランサーってそういうもん。
「ところでどこなの?」
「妖怪の山。さ、捕まってるから早く」
「了解」
「っ早っ!?」
「着いたよ」
「はっや…ねえ足月、私のペットにならない?」
「足として使わないでよ」
お届けしたので去ろうとすると、なんだかわからないが天狗に囲まれた。話を聞けば大百足である私が妖怪の山にカチコミを仕掛けたという話になっているらしい。博麗の巫女に私のご加護を与え、頑張れと言ってみる。先に進ませることは成功した。私としてはああ言う加護を与えていることしか神らしいことはしないので、ちゃんと出来たか不安である。さて、周りをうろうろする天狗に対し無視を決め込みますか。いやでもダメだな。人型の時に蚊が耳の周りをうろついてる感覚に近い。体を捩らせて天狗を一掃。
「私も行こうかなぁ」
「待ちなさいそこの百足!」
「?」
「ここから先に進むことは妖怪の山全てと戦うことになる!それをわかって━」
「邪魔ね、お前」
ぷちっと軽快な音を鳴らして、手先に空気の膜がついたことを確認してから進む。うーん、少し嫌いだな。弱いのに邪魔をする方が悪い。私は悪くない。よし、それで行こう。山の頂上に行ってみようかな。それとも、神社でも見に行こうかな。山の側面をヨジヨジしながら進むも、なんか建造物が見えない。私潰しちゃったかな?そしたら賠償かな。ま、そんなわけないよね。人型になって辺りを捜索する。道中会った妖怪は全て蹴散らします。これが私の流儀。思い知れ。私だって怒るんだもん。
「霊夢〜」
「あら、来たの?」
「待ってるだけなのは癪だからね。で、その子は?」
「私に喧嘩売ってきた早苗ってやつ。今弾幕ごっこでボコボコにした」
「いや、多分プラスチック製品投げてきてましたよね。私見ましたよ。そもそもとして、陰陽玉はなんなんですか?」
「使えないの?」
「巫女がみんなあれ使えたらここに妖怪はいませんよね!?」
「それもそうね」
「だいたいその人はなんなんですか!?高身長イケメンって!!」
「女だけど?」
「女でこんな…え、女!?この身長で!?」
少しムカつく。ので、割と本気の百足ビームを上に放った。ちなみにムカデビームとは、そのまんま百足が放つビームのことだ。そのままだなとか考えたやつは是非とも殺すから住所年齢受験番号暗証番号か必要となる。是非とも快く名乗り出てほしい。ムカデ風呂で何時間耐えられるのか試してやる。ただの人がやるには十分発狂するだろう。この緑髪の巫女にはそれでも良いかもしれない。あーでも、私の手持ちに小さい百足いないんだよなぁ。
「お前か、早苗を傷つけたのは」
「うっさいわね、私の邪魔しないで」
「百足の加護があるから楽勝必然!」
「なんですかそれ」
「百足って武力にも財力にも顔を出す神だからね。すごいっしょ」
「何言ってるんですか」
私もわからなくなってきた。土の中でもう一眠りしたいが、全然そう言うことができる雰囲気ではない。ドンパチやってる奴の下で地面なんて掘ってみろ。多分集中砲火を喰らうことになるだろう。私は嫌だよ。倒れかけのもう一人の巫女を頭に乗せる。あまり怪我はしてないみたい。乗せた理由の一つに、おそらくあの神は危害を加えてこないだろうと思ったから。この巫女を大層気に入っている。それを盾に私は弾幕ごっこから逃げる。苦手だもん、弾幕ごっこ。派手に出来ないし。
「ひぃ!む、百足…!」
「え、なんで怯えるの!?外の世界だと私の信仰皆無!?」
「虫が苦手なんです!」
「早苗!」
「神が余所見なんて、叶えられる願いが無さそうね」
「なんだと…!」
何やらガチでドンパチやり始めたな。上の様子を伺う気もないけど、まあとにかくなんとかなれ。私はその間に自分の身を守るから。ウネウネと動き、早苗とやらをなんとか落ち着かせる。こんな手を使わせたのはいつぞやの赤子以来だ。あんま好きじゃないんだよ、こう言うの。とりあえずは私は何もしなくて良いんだよな。人型になってほら気持ち悪くない。ほーら良い子。あ、なんでまだ怯えてるの。私、そんなに怖い顔してる?…してないよね?あれ、不安になってきた。
「ねえ霊夢、私って怖い顔してないよね?」
「女にしては怖い顔。男なら普通。そもそも身長が高いからそれで怯えてんのよ」
「私と出会った頃の霊夢みたい」
「なんですかこの妖怪!」
「一応神よ」
「バカ言わないでください!」
「は?」
「そういえば、神奈子様は!?」
「そこ」
「負けた」
「えぇ!?」
「…あ、そうだ。アンタ、こいつの腹の中は百足大量だから、喧嘩するんじゃないわよ」
「気持ち悪い…」
「外の世界だと虫は大量にいただろ、早苗」
「大きいのは無理なんですよ!」
諏訪子「…蛇とカエルに慣れさせようとしたのが失敗だったかな…?」