「ご主人〜」
「なんですか」
「地中で星熊勇儀と会ったよ」
「…はぁ…ぁ!?」
「可愛い服持ってた。ほらこれ」
「は…?フリフリのワンピ…は…?」
「私もギリギリ着れた」
「…はい?」
とにかくだ。温泉で服を取られた後から今に至るまで、私はこのフリフリの可愛らしい勇儀ちゃんが持っていたワンピースで凌いでいた。ご主人、新しい服作って。私このままだとそのフリフリのワンピース着なきゃいけないの。お願い。そういうと、ご主人は毛を刈り取りに行った。私の服って、誰の毛から出来てるんだろ。少し気になったけど、まあ触れるのは野暮って奴だよね。だからその妙な量の毛は無視するね、ご主人。バリカンで行った?それともナタで行った?流石に多すぎでは?
「採寸するから、人型に」
「なりました!」
「…いつ見ても縦に大きいわね」
「良いでしょ?」
「中の百足はどこへ行くのやら。はい、万歳」
「…」
これは恥ずかしいな…いや、でもこれはこれで…だとしても恥ずかしい。前やってもらったのはいつだっけな。ペットになって三年くらいしたらもらった気がする。あんまり覚えてないな。でもあの服お気に入りだったんだよなぁ…あいつから八咫烏の力奪っておけば…いやそれでも無理はあったか…?まあ何にしろ、それでも服を作って貰えばよし。服も返ってくればさらに良しだ。あとでワンピースも返しに行くか。勇儀ちゃんのワンピースを。ダメだ笑いそう。
「これは私から返しておきます。貴女は余計なことをしないでください」
「はーい!」
「…余計なことをした瞬間、その服は男装に変わるよう作っておきましたからね」
「えっ!?」
「服のサイズは合ってますか?」
「あってる」
「では、地上へ。私はこれから用事があるので」
「ぶーぶー」
「…貴女の苦手な者が2人来ますから、争い事を避けるためにも。」
「はーい」
どうやら本当に面倒な人らしい。ご主人が私を突き返すときは大体そんな時だ。さて私はどうしよう。せっかくなのでこの服を自慢しに行こうか。霊夢にでも自慢しようかな?それとも…ムフフと考えながら歩いていると、八雲藍に出会った。あれ、八雲紫が恐らくご主人の所にいるはずなのに、こいつはここなのか。私と同じで厄介払いって感じかな。話しかけちゃえ。
「ん…ああ、足月か。どうした?」
「ご主人に服を作ってもらったら厄介払いされてね。暇してたし、主人トークでも出来ないかなぁって」
「なるほど…買い物の帰りだし、私の家でやろうか?」
「どこなの?」
「以前来ていただろう。忘れたのか?」
「…もしかして、地中にあったあの家?」
「違う。地中にはない。結界の中だ。」
らしい。八雲藍が何やら指を動かしたかと思えば、それに沿って空間が裂けた。なるほど、これと私の寝相を利用して顔だけ出させたのか。ふーん…ふーーーーん?ま、地中にあるのに屋根ぶっ壊したら空ってのも今思えば変か。私の勘違いって奴だな、恥ずかしい。まあとにかく、私はその家に招かれたので今度は意識的に入る。買い物帰りなのは事実らしく、よくわからない箱に野菜を詰めていた。うーん、私にはよくわからないな。あの箱って何か保存する役割でもあるの?
「…さて。何から話す?」
「ご主人の愚痴?」
「不満か…まあ、ないことはない」
「それではどうぞ」
「…私に、構わなくなった」
「…あぁ、そういう…ね。」
「私が小さい頃は悪戯をするかのようによく構ってくれたのだが…なぜか、私に構わなくなったのだ」
「貴女が成長したからね」
「そう思ってたまに些細な失敗をする。すると何か、驚いたかのような目で見てくる。最近では私に目を向けるときはその驚いた目くらいしか感情が見えない。私はそれが悲しい…」
「こりゃ参ったな。私もご主人が好きだけどさ、貴女のそれってつまり…成長しきれてない子供のわがままって言うか」
「私が、子供だと?」
睨まれる。仕方ないじゃない、私にはそう見えるのよ。少なくともね。私だって八雲藍赤ちゃんプレイ大好きだったなんて…いやこれは違うか。とにかく、八雲藍が構ってちゃんだったなんて。小さい頃と同じように…って、八雲藍は八雲紫と同じように従えてる猫がいるって聞いたけど。ならなんで貴女はまだその立場に甘んじていられると思ってるの?世代交代とでも言うべきかな。貴女は構われていた自分から、構っていた八雲紫になる世代…だから構わないってだけじゃ…?
「私は…」
「親が子供のつもりでいたのなら、その式も育たないかもね。あ、私の愚痴良い?」
「…自分のことが話したかっただけだろう」
「主人様、ご主人とは別に仕えてる相手がいるんだけど。主人様が全然連絡寄越してくれないんだよね。噂じゃ代理を立てたとか聞いたんだけど、私じゃないし。誰なのかしらねーって」
「連絡を無視しているのでは?」
「ない。私の古い住処に行ってもなかったんだもの。幻想郷の外ね。」
「紫様の許可は?」
「いらないでしょ」
「はぁ…」
「…ただ、つい最近の地底探索で聞いたのよ。仲間の噂。」
「ふむ?詳しく聞きたいが」
「私の仲間が鬼に喧嘩売ってたってだけ。そのついでに何か流布してるみたいだけど、そっちは知らない」
実際、地中で何やってるかなんて私には関係ないし。え、なんでそんな目でこっち見るの。やめてよ。私は特に聞いてないんだから。詳しいことは星熊勇儀に聞いてね。知り合いでしょ。…訂正、知り合いの知り合いでしょ。え、そうでもないの?…いやいや、鬼の知り合いが確かいたでしょ。ほら、萃香とか言った…そもそも、私のご主人がいるでしょ。
「…まあ、訪ねるか」
「うん、それが良い。じゃ、私はご主人に会いに行くから」
「…貴女が聞けば良いだろうに」
華扇は昔の同期と会いたくない人なので。