生徒のコリン・クリービーが石にされた。
奇妙な手口だと感じた。
『ペトリフィカス・トタルス』のような魔法による一時的な石化とも違う、恒久的な石化である。
怪物とやらにそのような力があるのなら殺すことも可能、いやむしろその方が簡単なはずだ。
わざわざ石化という手段を取っていること、それがやけに奇妙に思えてならない。
コリン・クリービーのカメラの中身は既に焼けていた。
どうやら継承者サンは手がかりは残さん主義らしい。
こうしたのは何かの見せしめか?
しかしそれならクビだけにして廊下にでも置いておけばいいだろう。
それをしない、できない理由があるはず……
ただ一つ言えるのは、『秘密の部屋』は、間違いなく開かれたということだ。
教師陣、そして学校全体にどこか緊張した空気が広がりつつあるこの頃、ロックハート先生が決闘クラブを開いた。
何でも生徒たちが身を守れるようにするためらしい。
闇の魔術に対する防衛術の教師としては正しい判断だろう。
皆が不安がっている中のこういった催しは勇気を与えてくれる。
これで生徒たちが少しは自信をつけて安心できるといいんだが。
ただ、2年生はまだ決闘をしたことがないため、手本も兼ねて先ずは先生同士で模擬戦をすることになった。
今回のルールは、相手の杖を奪うこと。
要は武装解除呪文をメインに使ってくださいねという話。
「では、スネイプ先生──」
「その前に。そこで自分は無関係とばかりに暇そうな顔でコチラを観ているフィグ先生とやってみてはいかがかな?」
えっ
「ふむ、いいでしょう。ではフィグ先生、こちらへ。勝ったほうがスネイプ先生と闘いましょう。」
「あぁ、はい。分かりました。あ~っと、ネビル?杖貸してくれない?」
「えぇ!?僕のですか?別に良いですけど……」
「ありがとう、しっかり見ててくれよ。」
こんな所で自分の杖は抜きたくないのでね。
その代わり、情けない姿は見せられんな。
先ずは挨拶。
そして後ろに下がって位置につき、構える。
3つ数えたら、決闘が始まる。
今回はあくまで手本なのでロックハート先生が口に出して数えてくれるが。
「アン、ドゥ、トロワ!エクスペリアームス!」
杖を落とさないよう呪文を体で受ける。
ロックハート先生のターン中なのにすぐ反撃したり取られたら手本にならないしね。
「今のはフィグ先生にも効いたかな?」
ちょいと余韻が冷める時間を作ったらこちらのターン。
杖を奪う手段が一つじゃないことをお利口さんたちに見せてやろう。
「アクシオ!」
ロックハート先生の服を全力で引っ張り、自分も前傾姿勢になり、前へ。
空いた左手は握りこぶしを作り、引く──
「ぐおっ!フィニー──」
「遅い!」
既に懐に入っているさ!
こちらに引っ張られる先生を迎え撃つようにしてこちらの拳が鳩尾に刺さる。
「ぐぉッ……」
その場で膝をついて崩れ落ちる先生の手から、杖を無理やり奪った。
嗚咽を吐きながら蹲るロックハート先生に対し、女子は悲鳴をあげ、男子はどこか白け気味、あるいは嘲笑を浮かべていた。
ゴメンよ先生、そしてそのファンの女子たち。
右手の魔法で引っ張ると同時に左手の拳で沈める。
これ一回やってみたかったんだ。
実戦じゃなかなか検証できないしさ。
正直手本とかもうどうでもよかったんだ。
グロッキーになった先生を端に運び、手に無理くり杖を返したので、再び壇上に立つ。
「さ、やりましょうか。スネイプ先生。」
「……」
なんか気まずいな。
進行役を潰しちゃったから余計かな。
スネイプ先生は無言で位置につく。
結構やる気まんまんっぽい。
……これオレがカウントした方がいいか。
「いち、に、さん──」
「エクス・ペリアームス!」「エクスペリアームス!」
呪文同士が繋がり、拮抗する。
バチバチと大きな火花が散り、視界一面が紅に染まる。
──これ収集つかないかも!
この拮抗状態のままだと生徒にまで被害が出かねない、のでちょっと本気を出す。
「……ッ!」
さすがはスネイプ先生。
負ける前に上方向に呪文を切ってみせた。
そこからはとにかく基礎呪文の応酬が続いた。
お互いの放つ眩い閃光が床や壁を焼き、体を掠めていく。
もう普通にお互い『プロテゴ』を合間に挟んでいる。
致死性のある呪文を使っていないという事実だけがこの決闘をお遊びの範疇に収めていた。
もはや手本のことなど本当にどうでもよかった。
もっとこの時間が続いて欲しかったが──
──視えた!
「エクスペリアームス!」
オレの手の中に、スネイプ先生の杖が収まった。
vsロックハート戦でレガ主くんは多くの女子からの不況を買いましたが、そのあとのvsスネイプ戦で全部吹っ飛びました。