「うおおお!?」
大穴の先はまさかのスライダーになっていた。
もうちょっとこう、なんか無かったのか。
『秘密の部屋』の入り口が女子トイレ+スライダーて。
……サラザール・スリザリンもこのスライダー使ったんだろうか。
スライダーを抜けた先に進んでいくと、次第に周囲がホグワーツの壁から岩肌へと変化していった。
この辺りはサラザール・スリザリンの独断で創った場所ということなんだろう。
どんどん狭くなってきた。
いよいよ洞窟という感じに──
──誰かの声がする。
「もう!お前があんなことしなきゃこうはならなかったのに!お前も少しは手伝えって!」
「??……いやはや、すまない?何が何だか、あー……私は何を手伝えばいいかな?」
「どうみたって僕は石を退けてるんだから自分がどうするべきかくらい分かるだろう!?」
「??」
……ウィーズリーとロックハート先生の声だ。
ウィーズリーの方は相当苦労しているみたいだが。
「ウィーズリー!無事か?」
「!!フィグ先生!それが大変なんです!この先にハリーが取り残されてて!」
「分かった。そっちは?」
「あー、事故に見せかけるために僕の杖を奪って忘却呪文を使ったら、そのー……」
「『ナメクジ事件』の再来って訳か。この崩落の原因だったり?」
「はい、その通りです。」
「あー、私のことをご存知で?何も思い出せなくて。」
「……もうずっとこんな調子で。」
「『これでも喰らえ』!─これで静かになる。」
「うっ……」
「?急に静かになったけど、何したんです?」
「君の魔法を参考にさせてもらった。まあ直ぐに分かるよ。」
今コイツの胃の中には水分を吸って増えるワカメが大量に出現している……
気分が悪くてしょうがないだろう。
取り敢えず崩落に気を付けながらこの岩をどかさねば。
「トム・リドルの日記に、よいしょ……バジリスクねぇ。まさか……っと、パイプを使われていたとは。」
岩を最小限の魔法と素手で慎重にどかしながら、ウィーズリー達が得た情報を共有してもらっていた。
「よっ……ふぅ、しかも、ハグリッドがアクロマンチュラを飼っていたなんてな……」
「それも、っしょ……僕たちあと一歩でその蜘蛛に食べられる所だったんですよ!」
ロックハート先生が口からワカメと泡を吹いている。
だがそのおかげで情報共有しつつ作業でき、なんとか人一人なら通れそうな隙間も作り出せた。
よし、これでようやくポッターの所に─
「っ危ね!」
──赤い鳥に先を越された。
人が一生懸命作った穴を勝手に使いよって。
たぶんアルバスのとこの不死鳥だろう。
放っておいても害はない。
オレもさっさと行こう。
……あの不死鳥、何か持ってたな。
「──君が、トム・リドルかい?」
「……ほう、ポッターの後を追ってきたか。だが遅かったな。今ごろポッターはバジリスクに骨まで食われているだろうさ。」
「『穢れた血』さえロクに殺せん老蛇に、か?」
「ふん、そう余裕ぶっていられるのも今のうちだ。この場所でポッターも、ウィーズリーも、お前も死ぬ。そうしてこの学校から『穢れた血』を消し去るのさ。」
「純血至上主義は、いつか魔法界を滅ぼすぞ。」
「フ、フィグ先生!」
ポッターがコチラを見つけて駆け寄ってくる。
バジリスクは見当たらない。
まさか目を一切見ずに撒いたのか?
「バジリスクはどうした?」
「フォークスが目を潰してくれて、なんとか。」
「なら先ずはコイツからだな。エクスペリアームス!」
「ッ!プロテゴ!」
「君も生徒だ、殺しはせんよ!ボンバーダ!」
足元を狙う。
体勢を崩したいが、最悪足一本くらいなら良いだろ。
だがさすがというべきか。
後ろに転がって避けたな。
「隠れろポッター!ステューピファイ!」
だが返ってくるのが基礎呪文ばかりだ。
それも狙いは精確だが大した威力じゃない。
何を狙っている?
さっさと終わらせた方が良さそうだ。
「ボンバーダ!」
先ほどよりも力を籠める。
「もうそれは見た!」
だが土埃と飛び散る水飛沫のせいでコチラの姿が見えんだろう!
それが命取りよ!
「なにっ!?コイツ!」
自ら飛び込んでトム・リドルの胸ぐらを掴む。
勢いそのままに二人一緒に転がっていくが問題ない。
「捕まえた!」
体格を活かして馬乗りになり、顔面を殴る。
魔法で口を封じたって、無言呪文というものがある。
なら、物理的に脳を揺らして考えさせないこと、呪文に集中させないことが一番の対策になる。
特に、魔法一辺倒のお坊ちゃんには!
殴った瞬間、理解した。
コイツ、実体はあるが手応えがない。
ただの人間じゃないな。
なんだ。
人間じゃないならそこまで手加減しなくていいか。
とにかく殴る。
脳を揺らす。
思考を殺す。
魔法使いにあるまじきバカバカしさだが、だからこそ効くのだ。
だってこんなことしてくる奴はいないから。
「ぐっ、このぉ!」
抵抗を物ともせず両拳で殴り続ける。
ボコボコにしている筈なのに一向に血が流れない。
むしろコチラの拳から血が出始めた。
その時、水面を破るようにしてバジリスクが顕現する。
間に合わなかったか!
「ポッター!お前を狙ってるぞ!」
床に置かれていた古ぼけた帽子の中に剣が出現する。
ポッターはそこから白銀の剣を取り出し、バジリスクとの攻防を始めた。
なんとか支援しないと。
「ディフィン──!?」
「おっと、余計な真似はしないでもらおう?」
腕を掴まれ、杖の動きが邪魔される。
コイツ、全くダメージが入っていない。
それどころか力が増している。
恐らく別に本体がいるな。
ポッターはサラザール・スリザリンの巨大な顔岩を登っていく。
その間にもバジリスクはポッターを喰い殺さんと攻撃を続けていた。
なんとかしてバジリスクを邪魔出来ないか!
やがて両者の戦いの場は、顔岩の頂上へと移った。
剣という対抗手段を手にしたことで、ポッターはバジリスクと一進一退の攻防を繰り広げることが出来ていた。
だがその戦いに、終わりが来た。
ポッターは今まさに噛み付かんとするバジリスクの、口の中を狙う。
チャンスは一瞬。
失敗すれば自分もジニーも、フィグ先生だって死ぬかもしれない。
そんな思いを胸に剣を構え──
「ッアレストモメンタム!」
動きが急激に遅くなったバジリスクに喉から頭蓋へと剣を突き刺し、トドメを刺したのだった。
なんとか隙を見つけてバジリスクの動きを止められた。
依然としてトム・リドルはピンピンしてるが、もう殴り続けるしかない。
物理的にコイツを止めておかないとどんな策を弄してくるか分からん。
もう魔法を使わせてはくれんだろうし、本当に殴るしかないのだ。
ポッターには悪いが、何とかしてもらおう。
「ポッター!コイツは、本体じゃ、ない!たぶん、その、日記だ!破壊、して、くれ!」
トム・リドルの顔がオレの血で真っ赤だ。
屈辱を感じていそうな表情だが、それでもダメージは入っていない。
「普通の、日記じゃ、ない、から!そいつの、牙で、刺せ!」
たぶんバジリスクの牙ともなれば特別な魔法道具も破壊できるはずだ。
頼む、日記が本体であってくれ!
もう疲れた!
ポッターが死体から抜いた牙で日記を突き刺す。
すると─
トム・リドルの体が光り始めた。
──クソッ罠か!
……と思って咄嗟に避けたのだが途轍もなく苦しんでいる。
今まで必死こいてぶん殴っていたのはなんだったのか。
ポッターが日記を捲ってまた刺す。
本当に苦しんでいそうだ。
日記からは血のようにインクが溢れている。
それを見たポッターは牙を日記にグリグリ押し込んでる。
マジかよポッター。
そうして日記を裏返して最後の一刺し。
トム・リドルは光を伴い、消滅したのだった。
やがて目覚めたジニー・ウィーズリーはポッターとの再会を喜び、同時に自らの行いを告白し始めた。
邪魔しては悪いので離れて待っておく。
──今日はワサビ味か……
涙が溢れてしょうがない。
傷を治しているはずだったのにめちゃくちゃ痛い。
しかもフォークスは普通に二人の間に入ってポッターの色んな傷を治してた。
オレも治してもらえばよかった。
フォークスにはポッターとウィーズリー兄妹を。
オレは飛行魔法でロックハート先生を運び、脱出した。
脱出後、アルバスへの報告を終えて、ポッターより一足先に校長室を出る。
トム・リドルが若きヴォルデモート卿であったという話がポッターから飛び出したときは驚いたが、あれが分霊箱だという話なら納得はいく。
分霊箱うんぬんはポッターもいたので話さなかったが、恐らくはアルバスも同じ結論だろう。
と、丁度階段を降りた所に例の金髪役人がいた。
当たり障りのない会話だけしてさっさと別れたが、明らかにこちらへの憎悪というものが節々から溢れ出ていた。
御付きらしい屋敷しもべ妖精も怯えていたように見えた。
それから少しして、マンドレイクを用いた薬が完成した。
それによって石化していた生徒たち、ミセス・ノリスも帰ってきた。
そして──
──無実が証明されたハグリッドもまた、帰ってきたのだった。
後でお土産にこのバジリスクの牙をあげよう。
指とか切ったら死ぬかもしれんけど。
トム・リドルもポッターにもう少し話したいことがあったと思うのですが、レガ主くんが彼をぶん殴り続けたので言えませんでした。