というか基本無縁なので人より耐性はないです。
「クルーシオ!」
杖から飛び出た閃光が己を包む。
言葉に形容出来ない程の痛みが襲ってくる。
「ぐっ……!」
「先生!」
思わず膝を曲げそうになる。
今すぐ膝をつきたい、蹲りたい、叫びたい。
体中から汗が吹き出す。
やめてくれと縋りたい。
助けてくれと泣き叫びたい。
足が竦む。
それでも、立たなければ。
「はっ……ぐぅっ……!」
考えがまとまらない。
痛い、痛い、痛い。
視界が明滅する。
何も考えられない。
早く終わってくれ。
吐き気がする。
足が震える。
拳を力一杯握る。
歯を食いしばる。
何も聞こえない。
息が出来ない。
体中の感覚がない。
それでも、真っ直ぐ立たないといけない。
目をしっかり見開いて。
ネビルに、見せてやらなきゃならない。
跪くわけには、折れるわけには──
「──っは!はあっはぁ……」
──動いた!
無限にも思える苦痛だったが、ようやく解放された。
体が自由に動かせるのを確認する。
実際はきっと10秒程度しか経っていないはずだが、セバスチャンに食らったときよりもよほどキツかった。
だが、勝ったぞ。
これでネビルに磔の呪文で誰かが再び苦しんでいる姿を見せずに済んだだろう。
検知不可能拡大呪文をかけてあるポケットからウィゲンウェルド薬を取り出す。
正直今は会話を出来るほど余裕はない。
瓶に入っている緑の液体を、一気に飲み干す。
──あっっっま!
今日は砂糖だったみたいだ。
だがおかげで意識がハッキリした。
「すぅ……はぁ……どうです?満足いく授業は出来ましたか?」
「……あぁ、嫌というほどな。」
やっぱりオレは、この科目の先生とは仲良くなれない運命らしい。
〜
「い、イかれてる……!」
闇の帝王でさえ苦痛の余り死を求めると言われている磔の呪文を自ら受けるなんて、イかれてる。
誰かが思わず零した呟きであったが、それはこの場にいる生徒たちの総意であった。
しかし、それを受けてもなおエリエザー・フィグは倒れるどころか膝さえ折ることはなく、普段と変わらぬ様子で涼しい顔をして、ただ立っている。
既に呪文をかけられてから優に20秒は過ぎている。
にも関わらず彼は目を開き、相手の目を見て、今にも雑談でも始めてしまいそうなほど自然な立ち姿である。
先ほどまで辞めるように叫んでいたグレンジャーでさえ、見入っている。
それほどまでに彼は自然だった。
ただ彼が額から垂らす二滴の汗だけが、彼の感じている苦痛を体現していた。
──それに気付いたのは、最前にいたネビルただ一人であった。
〜
その日から暫くして。
今日は対抗試合に出場する選手が発表される。
各校一人ずつ、つまりはその学校の代表として挑むことになる。
炎のゴブレットからは青い火が立ち昇り、中から出た紙をアルバスが読み上げていく。
生徒たちの熱気はピークに達しようとしている。
ダームストラングからはビクトール・クラム。
ボーバトンからはフラー・デラクール。
そしてホグワーツからはセドリック・ディゴリー。
と、ハリー・ポッター。
──は!?
ちょっと待て、なぜポッターがいる。
そう思ったのはオレだけではないらしい。
とんでもない空気になってる。
さっきまでとは大違いだ。
……これ明日の朝にはポッターが遺体で見つかるんじゃないの?
偽ムーディも磔の呪文を根性だけで耐えられると思ってなかったので普通にビビってます。