「ぐっ……!」
マズイことになった。
早く治療をしてポッターの元へ向かわないといけないのに。
ここまで酷い『バラけ』方は初めてだ。
痛すぎる。
「セブルス!応急処置を!マクゴナガル先生は医務室に連絡を─」
「ッ応急処置だけで結構!スネイプ先生!っはぁ、とりあえず右脚と左手をくっつけて下さい!」
スネイプ先生がオレの『バラけた』手足をくっつける。
その上応急処置ではあるものの治療を施してくれた。
ありがたい、後は薬でどうとでもなる範囲まで治った。
並みの魔法使いじゃここまで精確な魔法は使えまい。
「ふぅ、ふぅ……ありがとうございます。」
「待つのじゃエリエザー、一体何があった?」
「優勝杯がポートキーにされていた……狙いはポッターでディゴリーは邪魔だったんだ。あと少し遅かったら彼は殺されていた。」
そのへんに転がって気を失っているディゴリーを横目に見る。
「……闇の帝王か?」
「たぶんな、それよりもこのパニックを鎮めとけよアルバス!」
/
姿くらましってほんと便利。
─というかさっきよりもズレてるな。
痛みに動揺したせいでブレてるのか?
ウィゲンウェルド薬を飲もう。
これは……何味だこれ。
まっず。
まあ回復はしたので。
もう一回。
/
今度はちゃんと着いたな。
ただ、先客もいる。
黒い装束に身を包んでいるが、特に顔を隠したりはしてないみたいだ。
まあ空に闇の印が打ち上がっている、ということは死喰い人だろう。
で、あの目立つハゲがリーダーね。
ポッターは何故か石像に拘束されている。
今石像の後ろ側にいるからポッターからコチラは見えんだろうが。
死喰い人どもはコチラに気付いたか。
「おや……これはこれは。お前たち、見てみろ。ホグワーツの勇敢な教師が一人でポッターを助けに来たぞ。」
「我が君!あれが同胞を殺してまわったエリエザー・フィグです!」
「ほう、そうだったのか。これは失礼。あの『ランロクの亡霊』が、いまや教師とは。」
「フィグ先生!?ダメです!逃げて!」
「ポッター、我々は今大人の話をしているのだ。子供は黙っているがいい。」
「……悪いがポッターはウチの大事な生徒でね。できればさっさと返して欲しいんだが。」
「フッフッフ……行け、お前たち。この身の程知らずの教師に教えてやれ、偉大なる闇の帝王の復活を。俺様はポッターと話がある。」
「素直に返す気は無いわけね。」
後ろに控えていた死喰い人がぞろぞろとコチラにくる。
みな顔に嘲笑を浮かべているが、オレを囲んでいるからと既に勝った気になっているらしい。
「あーちょっと待って欲しいんだが、オレ実は荒事って得意じゃなくて─さ!」
両手を挙げる。
フリをしながら呪文を放つ。
左手は『アクシオ』で一番近い左端にいる奴を引き寄せる。
右手は『ディフィンド』でその引き寄せた奴のクビを切り落とす。
これで即席肉壁の完成。
「っコイツ!エクスパルソ!」
「インセンディオ、デパルソ、コンフリンゴ!」
左手で肉壁に火をつけ、相手に飛ばし、爆発させる。
火の付いた肉片が広範囲にバラけて空間を焼き、人を焼いていく。
「がああああっくそ!」
「クソ!火が!」
そちらに気を取られている間に袖から杖を滑らせ、右手で握る。
「アバダケダ─!」
「ディセンド!」
「ぐぅっ!」
面倒な呪文を放つやつは先に潰す。
このくらいなら左手で充分だ。
地面に強く叩きつけられたソイツは、胸を強く打ったことで一時的に呼吸ができなくなる。
「エクスパルソ!」「ステューピファイ!」「エクスペリアームス!」
「プロテゴ!」
最高のタイミングで呪文を張る。
それぞれから放たれた呪文は綺麗に跳ね返り、それぞれの懐へと返っていく。
それと同時に『プロテゴ』から放たれた衝撃波は周囲の死喰い人を吹っ飛ばしていく。
やるなら今か。
「ボンバーダ!」
体勢を崩している奴らに向かって杖をふるう。
大きな爆発が起こり、断末魔を挙げることもないままバラバラになる。
その周囲には黒焦げの肉片が散乱し、残る死喰い人は恐怖を顔に浮かべる。
「バ、化け物が……!」
「『呪い』とはこう使うのだ!アバダケダブラ。」
「アバダケダブラァ!おい、今だ!」
「ッアバダケダブラ!」
死喰い人に放った緑の閃光が、相手が放った閃光と繋がる。
そこを狙って更に横からも閃光が飛んでくるが、甘い。
杖を一瞬、ほんの少し横にズラしてやることでその閃光も繋ぐ。
三者から放たれた緑の閃光は繋がった。
数としては二体一だが、こんな雑兵に負けはしない。
「何!このぉ!」
現在はオレを頂点としたピラミッドのような形状で繋がっていたが、コチラが力を籠めればあっという間に均衡は崩れ去る。
そもそも死喰い人は二人の位置が離れすぎていて上手く力を伝えられていなかった。
本来は奇襲のつもりだったのだから当然とも言えるのだが。
正面の一人が力負けをして死の呪いを食らったことで、『呪い』を通して死が伝播していく。
残るは二人。
「ひぃ、ははっはっ助け─」
「グレイシアス。」
氷像となった体を体重を乗せて蹴る。
蹴られたところはバラバラになり、全体のバランスが崩れたことで像はその形を保てなくなった。
よし、ちゃんと残りの一人は逃げたな。
既に『座標』は仕込んだ。
せいぜいマーカーとして上手く生きてくれよ。
「お辞儀を、するのだ!」
石像の方に戻ってきたんだが……
ポッターが愉しそうなハゲにお辞儀をさせられている。
何やってんだこいつ。
「おい、ポッター、帰るぞ。」
声をかけたことで両者がコチラに気付く。
ハゲはポッターにかけていた呪文を解き、警戒を始める。
ただのハゲって訳でもないな、コイツ。
「まさか、我が下僕を退けるとは……驚いたぞ。『亡霊』の名は伊達ではないな。だが俺様は今からポッターと正式な決闘を行うのだ。邪魔はしないでもらおう。」
「そういう訳には行かないな。とうに子供は寝る時間だ。」
ニヤついていたハゲからだんだん笑みが消えていく。
「あなたが誰だか知らないが、子供相手に決闘を挑むような小物と遊んでいる暇はないのでね。」
「ほう、俺様が小物だと?ならば本当に小物か身体で確かめて見るといい。」
ターゲットがコチラに移ったな。
この程度の挑発に乗るとは、やはり小物では?
さり気なくポッターの前に割り込む。
「アバダケダブラ!」
「アバダケダブラ。」
丁度中心地点で呪文が繋がり、火花を散らす。
その余波で石像が壊れ、地面が焼ける。
なかなかやる奴だ。
補助無しとは言え、結構本気で力を籠めているんだが。
多少はコチラが勝ってはいるが、均衡がなかなか崩せない。
空いている左手─呪文はハゲのと繋がっているが、杖だけでも充分そうなので左手で補助する必要が無かった─をポッターの方に差し出す。
「ポッター、優勝杯を!」
「ッはい!」
だが増援が来ないとも限らない。
さっさと殺して退散するとしよう。
均衡が崩れる。
否、崩す。
「アクシオ!」
オレの左手をつかんだポッターが優勝杯を引き寄せる。
それとほぼ同時に、ハゲの身体を緑の閃光が包んだ。
優勝杯兼ポートキーをポッターが手にしたことで移動する瞬間。
オレが目にしたのは─
─咆哮をあげる、ヴォルデモートその人であった。
/
あれが、ヴォルデモート。
死の呪いが効かなかったとなれば、分霊箱持ちのヴォルデモート以外いないだろう。
「エリエザー!ハリー!無事か!」
「ダンブルドア先生!ヴォルデモートが─」
「アクシオ、インカーセラス!」
コチラを陰から見ていた偽ムーディことクラウチ・ジュニアを引き寄せ、拘束する。
アルバスには悪いが呑気に話をしている余裕はない。
「ぬぅ!何をするかっエリエザー!」
「レベリオ。」
ムーディの化けの皮が剥がれていく。
突然の出来事の連続で会場は既に大パニックだ。
「これがックラウチ・ジュニア……」
「腐ったポリジュース薬のお味はどうだったかな?クラウチ・ジュニア。」
クラウチ・ジュニアは息を荒くしながらも何も喋らない。
記憶の中で見た、舌を出す癖は未だに治っていないようだが。
「本物のムーディはコチラで既に保護している。お前もアズカバンに逆戻りだな。」
「……」
「ヴォルデモートについても、知っている情報を吐いてもらうぞ。」
「!!」
分霊箱についても気がかりだ。
コイツが知っているかどうかは分からないが、情報を絞り上げねば。
そうして、対抗試合は終わった。
ヴォルデモートの復活という事実を残して。
「フィグ先生、本当にありがとうございました。」
「無事で良かったよ、ディゴリー。」
「……あの日、一体あの墓で何があったんですか?」
「校長が発表したように、ヴォルデモートが復活したということ以上の事実はないよ。」
「それも、コチラに誰ひとり犠牲を出さずに。」
「?ああ、ポッターがコチラの指示にきちんと従ってくれたお陰でね。」
「フィグ先生、あなた一体─」
「─何者なんですか。」
オレは曖昧に笑って誤魔化した。
今回の事件含め、今後レガ主くんは死喰い人狩りで多くのスリザリン生の親族を惨殺することになります。