「ハグリッド!ハグリッド!起きて!」
駄目だ、ハグリッドは完全に気を失っている。
死喰い人の攻撃をモロに食らったのがいけなかったのだろう。
サイドカーから身を乗り出し、ハグリッドの代わりにハンドルを握る。
だが始めての運転では、死喰い人とのカーチェイスなんてものは余りに分が悪いことは分かりきっていた。
「ぐっ!」
「おい、どうした──」
そんなハグリッドと自分の乗るバイクとの追いかけっこを余裕綽々といった風で続けていた死喰い人たち。
そのうちの一番先行していた者の様子が急におかしくなったかと思えば──
──閃光。否、爆発が当たりを照らした。
「がっ──!」
「……え?」
爆発した?
死喰い人が?
脳が状況の把握を拒む。
思わず固まっていると、今の衝撃で目を覚ましたらしいハグリッドが再びハンドルを握る。
「ハリー、捕まっちょれ!」
〜
同時刻。
ポッター&ハグリッドコンビから少し離れた上空でもフレッド&アーサーの親子コンビが死喰い人の爆発に巻き込まれていた。
「うわっ!」「おっと!」
「今の見た?皆落ちてった。」
「見たとも。フィグ先生がどうにかしてくれたみたいだ。」
「ジョージの奴も無事だと良いけど!」
「そうだな、私もジニーやモリーに早く会いたい!急ごう!」
〜
また同時刻。
ジョージ&ルーピンコンビは、スネイプらしき強敵に襲われるも、爆発によって難を逃れていた。
「スネイプが離れていった?」
「今のド派手な爆発のせいじゃないんですか?」
「だと良いけどね。油断はしないように。」
「はいはい、とは言っても皆落ちてったから大丈夫だと思いますけどねえ。この感じならフレッドも無事か。」
〜
第二陣も成功したようだな。
思ったより数が多くてヒヤヒヤしたが、大体は落とせたんじゃないだろうか。
しかし、ヴォルデモートへの対処は明らかに失敗だったな。
前回の襲撃でナイフを刺したのが裏目に出てしまった。
確実に首から下は吹っ飛ばせたと思ったのだが、対策されていたせいで右半身しか持っていけなかった。
逃げの技術についてはオレよりも上かもしれん。
しかも、逃げる際にしっかり切り裂き呪文で左肩を削がれた。
もう少し反応が遅れていたら左腕とはおさらばしていただろう。
アイツもただやられている訳では無いということだ。
反省しないと。
──それに、さっきから死喰い人の中に
人が苦労して集めたコレクションをバカスカ撃ち落としやがって。
一人一本しか手に入らない杖はなかなかに貴重だと言うのに。
加えて、本物のポッターがどれかにも気付いたようだ。
一気にそちらへ距離を詰めている。
観察眼も優れているとみた。
が、どうせスネイプ校長だろう。
というか、こんなのがゴロゴロ居られては困る。
〜
今回の作戦日時のリークによって、自分への信頼は更に高められただろう。
実際、ポッターが何人も居るとは知らないまま、闇の帝王は襲撃を仕掛けている。
問題を挙げるとすれば、エリエザー・フィグが作戦に参加しているなどとは自分も知らなかったということか。
お陰で死喰い人は殆どが壊滅──何人かの不自然な戦線離脱を除いて──という状況に追い込まれた。
このまま何もせずに自分も離脱出来ればいいが、現在の闇の帝王の位置が把握出来ていない上、どこから監視されているか不明である以上そんなリスクは取れない。
となれば本物のハリー・ポッターを特定し、撃墜するための努力をしたという結果だけは持ち帰らなければならない。
上手いこと死喰い人を追い払ってさえくれれば、騎士団と死喰い人の犠牲を抑えつつ、両者にそこそこの戦果を齎し、自分の地位を盤石にすることができたというのに。
いや、本来彼が飛び入り参加などしていなければそうなる予定だったのだ。
騎士団にも死者が出る可能性は大いにあったが、それはかえってリークをした自分がスパイとしてバレる可能性を大きく下げる要因にもなる。
だからこそ自分は覚悟を決めてこのような非道な行いをしてまで闇の帝王に取り入ろうとしていたのだが。
彼が出てくるとなれば話は変わってくる。
襲撃が明確に失敗したとなれば、元よりこのリークそのものが罠だったのではないかという疑念が生じるだろう。
これから起こるであろう
それに、さっきから独りでに動いているこの杖どもも鬱陶しくて仕方がない。
無視こそできるような数ではないが、動き自体は単調で、呪文の軌道も読みやすい。
避けられなくはない、といった具合だが、こんな芸当をしてみせるのもやはり彼しかいない。
さっさとポッターの乗るバイクだけ破壊して離脱させてもらおう。
本当に彼は余計なことばかり──
「あなたね!何本堕とすつもりですか!」
後方から猛スピードで追いついてきた白く濁った煙を纏う誰かに組み付かれる。
「死喰い人は全滅、ヴォルデモートも撤退済みです。」
「!」
「先生!」
ポッターもこちらに気付いたようだ。
「……後処理はしておきます。」
そう言うと、エリエザー・フィグは手を離して後方に離脱していく。
ポッターの前で話すのを嫌ったか。
しかし、彼がいるのならばバイクを破壊しても問題は無いということだろう。
「セクタムセンプラ。」
「ハグリッド!ハンドルを──」
斬り裂かれたことで操縦系に異常をきたし、そのまま緩やかに落ちていくバイク。
白いフクロウを抱えた彼がハグリッドとポッターを回収するのを横目に、自身も撤退するのだった。
人間爆弾を作る際には『操り杖』を体内に仕込みます。
つまり、駒となった人間に呪文を使わせると同時に体内で爆発呪文を使うことで二重の破壊工作を行うという寸法です。
たとえ人間側が殺されたとしても体内の杖が生きていればそこから大爆発が起こります。