そおれ!アバダケダブラ!   作:味噌カツ伝説

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お尋ね者仲間なので、レガ主くんとブラックは案外話が合います。


49:パーティ

夜。

屋外に張られたテントの内部で、ビル・ウィーズリーとフラー・デラクールの結婚パーティが開かれていた。

みな魔法で拡張されたテントの中で踊り楽しみ、死喰い人やら闇の帝王やらといった不安から隔離されたその空間の中心で、新たに誕生した夫婦が幸せそうに抱き合っている。

 

「良いの?先生は中に来なくて。」

 

「こういう時こそ、一人くらいは気を張らなくてはね。さあ、中で楽しんで。」

 

「……うん、先生も気を付けてね。」

 

変な、いや個性的な格好だったなあ。

奥から心配そうにコチラを伺っていたのが父親か。

どうやらラブグッドの独特な感性は父親譲りか、もっと言えば一族の伝統なのかもしれない。

 

「良かったのか?」

 

「オレだってお尋ね者さ。一般人がいるのに無闇に出ていけるかよ。それに、そういうのはお互い様だろう、ブラック?」

 

「はは、それもそうだな。俺たちは日陰者だ。」

 

闇に乗じて死喰い人が来ないとも限らない。

『操り杖』を展開しつつ、『レベリオ』も忘れない。

 

「それより、さっきあっちの方でポッターを見たぞ。今のうちに会っておいたらどうだ。この後は暫く会えなさそうだぞ。」

 

「……お言葉に甘えよう。」

 

そう言ってブラックは狼へと変身し、その場を去る。

 

 

昨日の戦いで駒にした個体がこちらへと向かっている。

それもほど近い位置だ。

ある程度目星をつけた所に姿くらましで飛んできたらしい。

つまり、この場所は既に割れているということだ。

 

まあ、あの駒は適当な位置で爆破して撹乱に使えば良いが、反応を見るに奴らわざと分散して行動しているな。

昨日の爆殺がよほど効いたとみえる。

出来る限りバラけた状態でこの家を囲み、一気に堕とす算段か。

 

「プロテゴ・マキシマ。」

 

半球状の空間が、辺り一帯を包む。

取り敢えずこれで家とテントは保護された。

 

全員を一度に殲滅するのは難しいか。

的が小さいし、なにより暗闇だ。

それも四方八方から来るとなれば難易度も上がる。

 

となれば、各個撃破。

出来れば纏めてから一気に攻撃したいが、前回はそれで逃げられてしまったからな。

大人しく一人ずつだな。

 

そうと決まれば、先ずは撹乱。

駒に仕込んだ『操り杖』が、ある呪文を放つ。

 

すると斜め上、遠くの方の暗闇で巨大な炎が姿を現す。

きっとこれで多少なりとも動揺させられただろう。

なんせ仲間が身体中の穴という穴から悪霊の火を出して死んだのだから。

 

パーティ中の彼らはまだこの異変に気付いていない。

このまま一人ずつ─

 

「!」

 

自分の反対側、つまりはテントと家を挟んだ向こうから来た死喰い人の攻撃で、空間を覆う境界に大きなヒビが入る。

 

「そんなにヤワに創ったつもりはないぞ!あれか、レダクト!」

 

下手人と思われる者を上空に発見したため攻撃を試みるも、素早い動作で躱される。

スネイプ校長、いやヴォルデモートか。

 

雑魚用に飛ばした『操り杖』を直ぐ様呼び戻し、奴へと差し向ける。

アレになら盾呪文が破られかねない。

中の人々も直ぐに気付くだろう。

自分も妨害して時間を稼がなくては。

 

「─は?」

 

そうして飛び立つと同時に、先ほどまで自分がいた場所を中心として大地が溶けていることに気付く。

足元まで熱気は達し、直ぐ様急上昇することで離脱する。

 

その事象を呑み込むよりも早く、盾呪文は破られた。

テントには炎が降り注ぎ、人々はパニックとなって逃げ出していく。

その場にいた者の多くは騎士団含め戦闘経験のある者ばかりだったが、残る者は殆どいない。

 

そんな彼らの視線の先を見て、初めて、自分は理解した。

 

「ドラゴン!」

 

ドラゴンの成体。

人を簡単に踏み潰せるほどの大きさを持ち、簡単に街を焼け野原にできる炎を吐く。

それも現代ではなかなかお目にかかれない大きさの個体だ。

ここまで体がデカくなるのは本当に珍しい。

 

だが、何かがおかしい。

このドラゴンは他の個体とは違う。

 

「まずい。」

 

白い煙を纏ってドラゴンから円をかくように飛行していたが、一瞬ドラゴンと目が合ってしまった。

コチラを見つけたドラゴンは一直線にこちらへと飛んでくる。

 

「来る!ステューピファイ!」

 

ターンして、すれ違いざまに呪文を放つ。

呪文は正確にやつの頭部を穿った。

だが、それでもドラゴンは止まらない。

 

炎を撒き散らし、力強い羽ばたきで全てを蹴散らしていく。

テントを焼き、家を破壊し、死喰い人もろとも吹き飛ばす。

複数名が呪文で応戦するも、あっという間に焼かれて死んでいく。

今のはパーティに参加していた勇気ある一般人か。

 

しかしそんなドラゴンの行動の目的は、いささか不明瞭であった。

 

そう、目的だ。

感じていた違和感はそれだった。

こちらを攻撃してきたと思ったら、また直ぐに別の標的へと破壊活動を始める。

普通、ドラゴンは比較的知能の高い生き物であるため、標的をコロコロ変えたりはしない筈だ。

 

操られているのなら、尚更行動には一貫性が生まれているだろう。

破壊活動に専念させたほうが、死喰い人にとっては得になる。

 

このドラゴンの行動はちぐはぐだ──

 

「ップロテゴ!ディフィンド!」

 

地面に降り立った途端、周囲の背の高い草むらから呪文が飛んでくる。

複数の杖で草刈りついでに攻撃を仕掛けるも、既に奴らの姿はない。

撤退したか、あるいはそう思わせるための罠か。

少なくともヴォルデモートはまだ居るはずだ。

 

「レベリ──あつっ!」

 

あまりの熱さに呪文を中断し、稲妻による高速移動で離脱する。

 

「コイツ、また……!」

 

こちらを見下ろすドラゴンの虚ろな目を見て、気付く。

 

─呪文が効いていないのではない。

コイツは既に気絶しているのだ。

しかし、それでも止まらない、あるいは止まれない理由があるのだ。

 

「母親か……?」

 

ある、一つの仮説を立てる。

 

怒り狂う母ドラゴンを、姿くらましで無理矢理呼び寄せたのではないか?

例えば──

 

──目の前で子供を殺すとか。

 

子育て中の身であるのなら、体が異様に大きいことにも説明がつく。

ともすれば、そもそも始めに襲ってきた死喰い人はみな囮で、我々の正確な拠点の位置を割り出すための行動だったのではないだろうか。

姿くらましで拠点の真上に呼び出し、死喰い人は順次撤退する。

 

そうすれば我々は居るかもしれない死喰い人及び闇の帝王と、今まさに上空で暴れ回るドラゴンの両方を相手取らなければいけなくなる。

 

我々は逃げ出せばバラバラになって狩りやすくなるわけで、かと言ってこんなのと戦えばまず勝てない。

 

冗談じゃ──!

 

 

 

 

パーティの最中に放り込まれた、魔法界をひっくり返す手紙。

そこには、魔法省が陥落したことが記されていた。

 

程なくして、ガラスが割れるような甲高い音と共に、テントに火がつく。

会場はまたたく間に大混乱となり、逃げ出す者と戦うべくして備える者に別れた。

しかし、そうして備えた者たちも、現在起こっている激しい戦いを見て直ぐ様撤退を決意する。

 

「な、あれって……!」

 

「ドラゴンだ……!」

 

「ッ家の中へ!ここは直ぐに焼け落ちるぞ!」

 

何か出来ることがあるのではないか。

子供たちを姿くらましで避難させてすぐ、足止めをするべく残った者たちも炎から逃れるために一旦家の中へと隠れていた。

 

「はぁ、はぁ……クソッ、あっちぃ!」

 

「壁には触るなと言った!奴の炎でここもいずれ溶けるぞ。」

 

みなの背中を冷や汗が伝う。

いや、これが恐怖から来る冷や汗なのか、それとも炎で家が熱されたことによる汗なのかは当人たちにも分かっていない。

 

ここにいる人々の大半が騎士団のメンバーだとは言っても、普通、ドラゴンの相手をしたことがある人間というのはなかなかいるものではない。

それも怒り狂うドラゴンと出会って生き残ったものなどは尚更である。

 

家がガタガタと揺れる。

ドラゴンの攻撃か、はたまた死喰い人の攻撃か、中にいる彼らには分からない。

 

「ええい、ここに居ても埒があかんぞ!」

 

「良いか、1,2,3で出るぞ!1,2──」

 

その時。

家の壁をぶち破って何かが入ってくる。

 

「何だ次から次へと!」

 

「構えろ!」

 

瓦礫の山と砂煙の中から、声がする。

 

「いったぁ……!」

 

「エリエザーか!」

 

その男は瓦礫を掻き分けて出てきたかと思えば、すぐに懐から瓶を取り出し中身を一気に飲み干した。

 

「んぐ、ふう。ここは撤退が吉だな。流石にドラゴンとヴォルデモートのサンドイッチは無理だろう。それもワケアリの個体みたいだしな。」

 

「ワケアリ?」

 

「たぶんアレは母親だよ。子供に何かしたらしいが、とにかく我々も姿くらましでさっさと逃げるべきだな。もうすぐヴォルデモートが──」

 

言い切るよりも早く、建物が大きく揺れる。

細かな石がポロポロと落ちてきたかと思うと、突然熱風が身体を包む。

それは建物の片側の壁が吹き飛び、天井部分までが大きく露出したためであった。

 

「それ見ろ。さあ、どうするムーディ。」

 

「……コイツの言う事には従った方が良いだろう。騎士団はこれより撤退する。新たな集合場所は決まり次第伝達……全員生き残れ!」

 

そう言うと、その場に居たものは続々と姿をくらましていく。

 

撤退を進言した当人である、エリエザー・フィグを除いて。

 

 

 

 

「ふんっ!」

 

背後から迫ってくるナイフを体をずらすことで避ける。

そのまま左手で持ち手を握り、右前方から襲ってくる二本のナイフを捌く。

 

直ぐ様悪霊の火を放ち、杖でコントロールすることで周囲の背の高い草むらを円形に焼いていく。

これで視界を確保すると共に、ナイフ擬きを含めたいくつかの鬱陶しい杖を破壊する。

恐らくこれで殆どは破壊できたか。

 

「フフッ!」

 

思わず笑みがこぼれる。

炎によって生まれた明かりに照らされて、残った杖の動きがよくわかる。

あの動きは変身術だ。

しかし、その杖はこちらを向いていない。

何をしようとしているのか、考える前に破壊する。

 

これで残りは二本。

 

「?」

 

明かりが届かない程の遠くから、何かが弧を描いて飛んでくる。

段々と近づいてくることで、そのシルエットが明らかになっていく。

 

樽である。

ただの樽が、随分と遠くから放られたのである。

迷わず破壊する──

 

「ッ!」

 

すると、眩い光を伴って飛来物が爆発する。

飛んできたのは、火薬の入った樽だった。

先ほど堂々と姿を見せた杖は囮だったのだと気付く。

 

と同時に、後ろから何かが迫る気配を感じるも、衝撃波を周囲に飛ばすことで容易くへし折る。

どこまでいってもこれらはただの杖だ。

 

「ええい、まだいたか!」

 

一本の杖が、草むらを飛び出していく。

こちらではなく、ドラゴンの方へと向かっていく。

 

しかし、それならそれで丁度良い。

これで家に残って俺様の不意を打とうなどと考えている愚か者を殺しに行けるというもの。

 

そう思い、ゆっくりと歩いて近付いていく。

手始めに家を軽く吹き飛ばしてやる。

中に居る者は恐怖しているだろう。

エリエザー・フィグも家に居るはずだ。

さっき吹き飛ばしてやったのだからな。

 

既にドラゴンも家に標的を定めたようだ。

口の端から火が漏れている。

これで確実に──

 

「良い作戦だったが、コイツは貰っていくぞ。」

 

──暗闇。

ほんの一瞬前まで炎を吐かんとしていた最も大きな光源が消えたことによる、刹那の錯覚。

 

ドラゴンが消えた。

あの男の声がした。

 

今や星々の明かり以外に、光はない。

既にテントは完全に焼け落ち、家に明かりは何一つ灯っていない。

自分の呼吸音以外の音さえも。

 

最後の最後に、一杯食わされた。

 

 

己の底から湧き出る怒りを元に、空っぽの家を完膚なきまでに破壊した。




ヴォルデモートはレガ主くんに嫌がらせされ過ぎて身体のパラメーターが変に上がってます。

ちなみに、ゲキオコドラゴン拉致作戦の担当者はベラトリックス・レストレンジです。
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