とある屋敷。
世間では魔法省で起こっている紛争について持ちきりだった頃。
椅子に深く腰掛ける男と、その前で跪く男が会話していた。
「お前が、サロウか?」
「はい、いかにも。我が君。」
「おお、歓迎するぞ。サロウ。お前をわざわざ呼んだのは他でもない、お前の家に伝わるという秘宝についてだ。」
「お言葉ですが我が君、それはご報告したように、既に私の母の手によって失われております。」
「おお、分かっているとも。だからこそ探させているのだ。」
「……」
「既に目星はついているとも……」
「目星、ですか。」
〜
分霊箱を破壊できるアイテムの一つであるグリフィンドールの剣と、当の分霊箱の手掛かりを探していたハリー達は、ゴドリックの谷を訪れていた。
辿り着いたのは、ハリーが生まれた家。
本来ならそこで今も楽しく過ごす三人の家族が居たはずの家。
そしてヴォルデモートが自分の肉体を失った家でもあった。
外観は既に廃屋そのものであった。
家の電気は点かず、床は軋み、割れた窓からはひんやりとした風が入り、雨漏りした水が天井を、そして床をも腐食させていた。
しかし、予想とは裏腹に何も見つからない。
そうして、皆が諦めかけたとき、ロンがなんとなしに点けた火消しライターから光が飛び出し、何処かへと向かっていく。
──そうして導かれた先にあったのは、ハリーの両親の名も刻まれている小規模な墓場。
そこに刻まれた謎のシンボルであった。
「火消しライターは何だってあんなものに僕たちを導いたんだ?」
「でも火消しライターが無かったらきっと気づけなかった。何か意味があるんだよ、あのシンボルには。」
「私にもアレが何なのかは分からないが、ダンブルドアが何かを伝えようとしていることは確かだろう。」
「……ねぇ、ハリー。確かルーナのお父さんがこんなアクセサリーを──」
〜
とんてんかん、とんてんかん。
ホグワーツの、与えられた自室。
住み始めてからそれなりの歳月が経っているにも関わらず、一部を除き、棚の中身から家具の位置まで殆ど変わっていない部屋。
唯一増えたのは、お菓子の入った袋──ほんの少し中身が減っている──ぐらいだろう。
とんからとん、とんからとん。
そんな部屋に設置された、人ひとりが眠るには少し豪華なデザインのベッド──
──の下に隠されたトランク。
そこへ、一枚の手紙がほんの少しの隙間から入っていく。
トンテンカン、トンカラトン。
トランクの中にあったのは、雄大な自然。
ところどころをやたらデカい魔法動物が彷徨いている。
しかし、そんな自然の風景の中心には小屋があった。
見た目は質素だが、側には餌やり用の巨大な箱がある。
古ぼけた玄関扉だが、下部には手紙を投函するための真新しい穴がある。
どこかチグハグなその小屋の中へ、手紙はヒラヒラと向かっていく。
……よし、良い感じだ。
見た目も随分と近くなったな。
今までで一番良い出来なんじゃないだろうか。
これなら本物と見分けだって──
──と、考えていると、工房の扉の下から手紙が入ってくる。
こちらにゆったりと向かってくる手紙を掴むと、仄かな温かみを感じる。
部屋にある暖炉経由で来たらしい。
この綴じ方はハグリッドからだな。
中を見てみると、まずは△と○と|を組み合わせたシンボル……死の秘宝を表すシンボルについて記されていた。
なるほど。
アルバスはポッターたちに分霊箱探しのついでに、死の秘宝とその意味を教えたかったらしい。
てっきりブラックかグレンジャーあたりは知っているものかと思ったが、まあそもそも死の秘宝自体が眉唾ものだからな。
シンボルの意味を知らなくても不思議ではない。
オレだって、試練で手にするまでは存在さえ知らなかった訳だし。
……それはそれとして、これはアルバスが遺したものな訳で、分霊箱の隠し場所と直接の関係はないだろう。
ああ、そのことについても書いてあった。
分霊箱探しのヒントは無いかと書かれている。
そういうことなら、リストアップして送りつけておこうか。
まだ自分も行けていない所がいくつかあるしな。
たとえば、グリンゴッツ銀行とか。
正直に言うと、世間が言うほどあそこは安全じゃあないと思うが、何よりオレがあそこに行って誰も殺さず帰ってこれる気がしない。
とにかく、思いつく限り書いてみよう。
あそこと、あそこと、あそこ。
あ、後あそこもあったな。
あれ、あそこは古代魔術がないと入れないんだったか。
どうだっけ。
そういえば、ホグワーツの近くにも洞窟があったな。
確か、ブラック校長の屋敷しもべ妖精に頼まれて行った……
そうだ、思い出した。
リチャード・ジャックドウ関連だ。
懐かしい。
……ここは自分で見に行けばいいか。
あとは、そうだな。
きっとヴォルデモートは手元にも一つ分霊箱を持っているはずだ。
これは同じ魂を裂いた者としての勘だが。
それについても一言書いておこう。
……何だか色々書きすぎて凄い文量になってしまった。
そう言えば、この返事をどう届けるか考えてなかったな。
今まで一方通行だったし。
もし、この手紙が途中で失われでもしたら面倒だ。
分霊箱の隠し場所の変更もあり得る。
──となれば、直接届けたほうが早いか。
実はグリフィンドールの剣くんはポッター達の行く先々で先回りして待っていましたが、小さなトラブルや火消しライターのせいで見つけてもらえませんでした。