そおれ!アバダケダブラ!   作:味噌カツ伝説

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サロウ家に伝わる秘宝についてのお話です。


55:蒼い秘宝

悲鳴が轟く。

赤子は泣き叫び、その側にはうめき声をあげる母親がいた。

 

「──」

 

窓から緑の光が漏れる。

そうして直ぐに、また閑散とした住宅地へと戻って行く。

 

玄関に転がっている父親の死体を踏み越え、男は家を出る。

まるで、始めから何も起こっていないかのように、ごく自然に。

 

「どうだ、調子は。」

 

「……例のブツが見つかった。これであの方もお喜びになるぞ!」

 

そう呟くと、男は袖を捲り、露わとなった印に杖をあてがう。

すると、後から来た男もおもむろに杖を取り出し─

 

「そうか、アバダケダブラ。」

 

「くっ──!」

 

袖を捲った男が、力無く倒れていく。

 

「気をつけろ!エリエザー・フィグが近くにいるぞ!」

 

そう叫ぶと、周囲の建物の陰から人影が次々と姿を現す。

 

「っこいつ!」

 

倒れた男の首が180度回転し、喉奥から覗く杖が呪文を放つ。

男はすんでのところでそれを避けると、全員に向かってハンドサインを出した。

 

そうして導き出された選択は、全力の逃走だった。

 

──既に、彼らの間で闇の印によるサインは禁止されている。

なぜならば、操った人間を使い闇の印で合流させ、直ぐ様自爆させる戦法が複数回行われていたからであった。

 

もちろん、不死鳥の騎士団は認可していない作戦であり、とある男の独断である。

 

 

「例のブツ……?」

 

わざわざ追う必要はないだろう。

どうせあのうちの何人かは自爆してくれるからな。

 

それより、奴らは一体何を探しているんだ?

最近、明らかにポッター以外の何かを探しているような動きをしていたんで気になってはいたんだが。

奴らは何か、形ある物体を探しているみたいだ。

 

アルバスがオレの知らない何かを遺しているのか……?

 

 

──赤子が、また泣き出した。

 

 

 

 

 

 

「ルシウス、よくやったぞ。褒めてやろう。」

 

「あ、ありがたき、幸せにございます。」

 

「さあ、みなに言ってやれ。これが一体どこで見つかったのかな。」

 

「……サロウ家の屋敷しもべが隠しておりました。」

 

ざわめきが広がっていく。

 

「どういうことか、説明して頂けますな?まさか、あの闇の帝王を欺こうなどと考えていたわけではありますまい。」

 

「……この箱を開けようとした人間は、みな死んでいます。高名な魔女でさえ、命を落としました。」

 

「では、闇の帝王をお守りするためだと?」

 

「はい、闇の帝王に万が一があってはいけないと、秘匿しておりました。」

 

誰かが嘲笑する。

 

「なんと、闇の帝王が古ぼけた箱一つも開けられないと?」

 

「そういう訳では!」

 

「──俺様を欺くつもりが無かったと言うなら、その箱を開けてみろ。サロウ。」

 

「!」

 

「そして中身を献上するのだ。そうすれば、今回のことは不問にしてやるとも。」

 

「……寛大な措置、感謝いたします。」

 

テーブルの中央に置かれた小ぶりな箱へ、サロウと呼ばれた男は対峙する。

何やら特殊な鍵が掛けられているらしく、杖をあてがいぶつぶつと何かの呪文を唱え始めた。

 

五分が経過した頃だった。

カチンという音と共に、箱の蓋が僅かに上へと上がった。

 

男は箱の正面をヴォルデモートへ向け、蓋をゆっくりと上げていく。

そうして、その中身が露わになろうという時だった。

 

「受け継がれてきた想いは──」

 

突如、蓋が勢い良く開けられた。

箱からはドス黒い煙のような物体が飛び出す。

 

「──僕が守るッ!」

 

それはヴォルデモートへと向かっていき、その姿を呑み込もうとし──

 

「出来の悪い、古ぼけた呪いですな。」

 

セブルス・スネイプの手によって、いとも簡単に振り払われた。

 

「なっ──!」

 

「アバダケダブラ。」

 

男の小さな反逆は、あっさりと失敗に終わった。

 

 

ヴォルデモートは箱に入ったそれを取り出す。

それは、石だった。

ガラス細工のような透明感と美しさをあわせ持つ、瑠璃色に輝く、宝石のような石だった。

 

「これは、分霊箱ではない──!」

 

 

 

 

 

 

それは、激しい雷雨の日だった。

 

ドンドン、と扉を叩く音がした。

 

「はい、どちら様?」

 

「──久しぶり、セバスチャン。」

 

「お前!……今更何の用だ。」

 

「どうしても、渡したいものがあるんだ。」

 

「……取り敢えず入れよ、寒いだろ。」

 

「ありがとう。」

 

「違う、風が寒いんだよ。」

 

「……」

 

「で、お前今何やってんだよ。」

 

「何って?」

 

「とぼけるな、新聞に載ってんだよ。何でこんなことしてるのか聞いてるんだ!先生の名前を使ってこんなこと!」

 

机の上に広げられた新聞を叩く。

その新聞には、大見出しである男の顔と名前が公開されていた。

 

「『連続殺人犯エリエザー・フィグ』だと!……お前、ホントに何してんだよ……!何でこんなことしてんだよ!」

 

「……」

 

「こんなことして、一体誰が喜ぶんだよ!」

 

「セバスチャン、まだ残ってる。」

 

「は?」

 

「アッシュワインダーも、密猟者も、ランロクの手下も。まだ生きてる。」

 

「……おい、待て。冗談はよせよ。お前、皆殺す気なのか?あの事件に関わったやつみんな、殺すなんて──!」

 

「無理かもしれない。でもやるんだ。ランロクの遺志を継ぐやつも、アッシュワインダーの残党も。密猟者だって誰かが潰さなくちゃいけないんだ。」

 

「そんなのをお前が背負う必要なんてないだろ!魔法省だってバカじゃないんだ。お前がやらなくても、他の奴がやるって!」

 

「でも僕たちがやらなきゃ、ランロクやシオフィルス・ハーロウ、ビクトール・ルックウッドだって野放しだった。」

 

「だからって!」

 

「安心してよ、セバスチャン。君たちを巻き込んだりはしないよ。」

 

セバスチャンは、はっとしたような顔をする。

そしてどこか、諦めてしまったような雰囲気を纏う。

 

「……なら、なんで来たんだよ。指名手配犯のお前が。」

 

「言ったでしょ、渡したいものがあるんだ。」

 

「……」

 

「ようやく完成したんだ。これ、アンに渡してくれる?この石を使えば、アンの呪いが解けるかも──」

 

「アンならもう七年も前に死んだよ。」

 

「!」

 

「ランロクを先生とお前が倒したのだって、もう十五年は前の話だ……確かにアレは忘れたくても忘れられない経験さ、でも、一体いつまで過去に囚われているつもりなんだ?」

 

……知らなかった、アンが死んでたなんて。

 

「アンの呪いは結局、解けなかった。お前が教えてくれた薬のおかげで多少なりともマシにはなってたけどな……本当はこのことももっと早く教えたかったよ。アンは最期までお前に感謝してた。」

 

「……なら、これはセバスチャンが持ってて。きっといつか役に立つよ。」

 

「これから、どうするんだ。」

 

「やらなくちゃいけないことが、まだ残ってる……さようなら、セバスチャン。」

 

もう行かないと。

立ち上がって、玄関へと向かう。

 

「──待て、待ってくれ!『──』!」

 

「オブリビエイト。」

 

 

セバスチャンの手に握られた、石が蒼く輝いていた。




セバスチャンはこの日の出来事を忘れていましたが、会ったはずの思い出せない誰かにレガ主くんを感じ、なぜだかこの石だけは護らなければいけない気がする、と箱に封印しました。
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