11話でのチェンさんになった連中の後日談です
「また誰かに相談されないかなぁ。行ってみたいふぐ屋があるんだよねぇ」
「ふぐかぁ、食べたことないわね」
「ルシル君ならいつでも気軽に食べられるよね?」
「他人の奢りで味わう酒と肴は格別なんだよね」
「そ、そうなんだ……」
「鋼と幹比古の反応を見ると、また同じような反応を味わいたくなる。真由美さんや克人さんはしれっとこなすだろうし、つまらない」
「うわぁ……、ルシル君が生贄を探してる……」
「でも一回の相談で解決するんだから安いもの」
「雫に同感ね。ルシル君に感謝するべきよ」
「あぁ、そういえば遥ちゃんがルシルに相談したいことがあるって言ってたぜ?」
レオの先生を遥ちゃん呼びはどうかと、……ドジっ娘だから仕方ないな。
「遥ちゃんって、カウンセラーの小野先生のこと?」
「なんだろう、ルシル君に恋の悩み相談?」
雫の冗談に全員吹き出した。
「エリカにも一緒に相談したいんだと」
ルシルとエリカは顔を見合わせ首を傾げた。なんだろうと。ルシルはドジっ娘にメールを送信した。相談があるなら、花金の放課後、ふぐ屋でと。日時と場所指定の上で。
「エリカ、ふぐ楽しみだね」
「うん、わたし人生初めてよ! しかも奢りで!」
ルシルとエリカはドジっ娘と銀座高級ふぐ屋の前で待ち合わせをして、合流してから店に入った。
とりあえず、日本酒と前菜三種盛り、ふぐ刺し、からあげ、ふぐちり、ヒレ酒、白子三種、白子豆腐を注文した。
乾杯してからまずはふぐ刺しだ。
「ほら、エリカ、ふぐ刺しはこうやって何枚も取ってぽん酢で食べるんだ。ん〜〜、至福だね〜〜〜」
「うわぁ、贅沢ね……。それじゃあわたしも……」
エリカがルシルを真似してふぐ刺しを口に入れて味わうと、至福の笑顔になった。
「弾力があって繊細な味わいね〜〜」
「そして一緒に飲む日本酒も堪らない」
「日本酒ってこんなに美味しかったんだ……」
「あれ、小野先生、食べないのですか? 口が引きつってますよ?」
「え、えぇ、いただくわ」
ドジっ娘は吹っ切れたように食べ始めた。
「はぁ……ふぐ刺しと日本酒美味しいわねぇ……」
「それで、本日はどのような相談ですか?」
「……未だに校庭で素振りしている森崎君達のことよ」
「あぁ、今では日常風景と化してますね」
「未だに一人もクリアできないのよね」
「っていうか、名前初めて知ったよ」
エリカとドジっ子の口が引きつっている。
「このままだと、休日と夏休みを返上しても卒業が危ぶまれるから、もう勘弁してもらいたいって校長先生がね……」
「え、校長のカウンセラーも務めているのですか?」
エリカは小さく吹き出し笑いを堪え、先生は苦笑している。
「ほらほらエリカ、白子豆腐は白子の風味が効いてて、これも日本酒に合うよ」
「ほんとだ、堪らないわ〜〜」
「……週末のお酒、こんなに美味しかったのね……。……休日や夏休みは二科生同様、教師の指導なんてないから、もうそれを罰として、千葉家にも了承してほしいそうよ……」
「ルシル君、ヒレ酒ってどうやって飲めばいいの?」
「そのまま飲めばいい。香ばしくて酒の旨さが段違いだから。これも止められないね〜〜」
「美味し〜〜〜」
「はぁ……、美味しいわね……」
「ふぐちりはもう骨付きは食べ頃だね。しゃぶしゃぶをまたぽん酒で……はぁ〜〜〜」
「これは高いのも頷けるわ〜〜〜」
「そうね、高いのよね……」
「まあ、もう許してあげても良いのかな?」
「そうね、毎日汗と涙で凄いことになってるけど、もうあの光景も飽きたし、許してあげます」
ドジっ娘の顔が輝いた。
「ありがとう! これで心置きなくふぐと日本酒を堪能できるわ〜〜」
「あ、奴等に原稿用紙10枚分、反省文を手書きさせるようにしてください」
「あ、それいいわね」
「確かにそれくらいした方が罰になるわね」
以降、これが罰則として採用されるようになった。
「白子も絶品だね〜〜〜」
「ふぐの白子ってこんなにとろけるんだ〜〜〜」
「あぁ……、堪らないわね……」
雑炊で〆て、会計ではドジっ娘が涙目になっていたので、校長に必要経費として領収書を渡して請求してくださいと助言しておいた。必要経費として認めないと許されませんと(笑)途端に笑顔になったドジっ娘は足取りが軽快になって帰っていった。
「エリカは……、大丈夫? 一人で帰ることできる?」
「えへへ~〜、ルシル君〜〜」
エリカはルシルにしなだれかかり、抱きついている。これは一人で帰すのは危険だなと判断し、ホテルにチェックインした。
……翌朝、朝チュンである(笑)ルシルの隣には全裸のエリカが寝ている。
「ん、んん……ん〜〜」
エリカは起きると隣に全裸のルシルが優しい顔で見つめており、「おはよう、エリカ」と……、慌てて掛け布団の下の自分の身体を確認したところ……
「ま、まさか……?」
「昨日は激しかったね。可愛かったよ、エリカ」
「………………ル、ルシル君とまたしちゃったの?」
「うん、美味しかった」
ルシルはエリカを抱きしめ、濃厚なフレンチでエリカの口と舌を堪能する。お口ヴァッシェンでいつでも美味しい。またエリカと一戦交え、風呂でも互いに洗い合って愛し合った。
週明け月曜日、ルシルの部屋に友人一同が集まり、ふぐ屋の話題になった。
「小野先生にいくら奢ってもらったの?」
特に鋼と幹比古は興味津々だ。
「90万、チップ10万」
「凄っ!!!」
「いやいや、チップって!?」
ギャグだよ、ギャグ(笑)
「天然とらふぐだからね」
「ふぐと日本酒最高だったわね〜〜」
「会計の時は若干涙目になっていた」
「それはそうなるよ……」
「小野先生も気の毒に……」
「ルシル君の言う通り、他人に奢ってもらうお酒とご飯は最高ね。癖になっちゃうわ」
「うわぁ……、悪女が誕生したぜ……」
相談内容を教えたところ、全員納得した。いつもの風景が見られなかったからだ。校長の財布に請求しているだろうことを教えると皆で爆笑した。
「そういえばルシルはともかく、エリカは何故土曜日休んだんだ?」
「ルシルさんは週休四日が仕様だけど、エリカが休んだのは初めてじゃないかしら?」
エリカは挙動不審になり、焦ったが、ルシルがフォローする。
「エリカは人生初の二日酔い。帰りは酔って危なかったから、泊まってもらった。翌朝は大変だったね」
「エリカ……、貴女はルシルさんにご迷惑をかけて……」
「あはは……、ごめんなさい、ルシル君……」
「ははは、気にしてないよ」
うん、嘘は吐いていないな。泊まってもらったのはホテルで、翌朝は盛り上がって大変だったのも事実だし(笑)
校長はルシル君の財布だ(笑)