雫とほのか、エイミィが剣道部部長の司甲を尾行していたのだが、撒かれてブランシュのド変態仮面ライダースーツによるアンティナイトのキャストジャミングで頭を抱えて蹲ったところで、突然一人がアンティナイトを身に着けている手を、腕を切り落とされ、悲鳴を上げた。
「ギャ、ぎゃああああああああーーーっ!?!???!?」
「五月蝿い」
ルシルはド変態達の心臓を全て抜き取り上空に手をスナップして投げた。
「…………頭痛いの止んだけど……」
「…………ほ、ほんとだ……」
「…………ど、どうなってるの?」
「雫、ほのか、大丈夫!? ……貴方がわたしの友人達を助けてくれたのですか? ありがとうございます」
「気にしないで」
「お名前をお伺いしてもよろしいですか?」
「山田太郎」
「あからさまな偽名ですね。綺麗なシルバーブロンドに様々な色で光り輝くパープルアイズの絶世の美少年なのに」
「流石に無理があります」
深雪と雫のツッコミにほのかとエイミィも首を縦に振っている。
「この人達どうしちゃったの?」
「死んでるよ」
「え……、どうやったのですか?」
「心臓抜き取った」
上空から落ちてきた心臓を四つ、順番に握り潰して、「汚い花火だな」と呟いたところ、深雪も含めて全員絶句している。
指を鳴らして呼び寄せ呪文アクシオでアンティナイトを回収してインベントリに収納し、消失呪文エバネスコで死体やバイクを消し、洗浄魔術ヴァッシェンで血痕などを隠滅した。
「凄い……」
「一回指を鳴らしただけでいくつもの魔法を……」
「じゃあね」
「( ゚д゚)ハッ! ちょっと待ってください。お礼をさせてください」
「気にしないで。女の子が襲われていたら助けるのが常識だから」
「そんなことを言わないでお礼をさせてください」
私の右腕を満面笑顔の深雪が、左腕を雫が抱きしめてきた。
「私は人?を殺したのだけど? 君達みたいなお嬢様なら忌避するものだろう?」
「わたしは助けてくれた恩人を忌避するだなんてしません!」
「わ、わたしもです!」
それを鼻で笑った。お前等自覚してないだろうと。
「吊り橋効果だろう。それ、勘違いだから」
「お礼をするのは人として当然のことです」
「ハニートラップの類? 君達、実はさっきのも芝居だったりする?」
「猜疑心が強すぎます……」
「わたしは自惚れてはいませんが、容姿が整っていると自覚しているのですが、」
「だからハニートラップを疑った。ちょっと失礼」
開心術で確認した。
なるほどねえ、純粋にお礼をしたいのと、好奇心からか。
そしてアイネブリーゼに案内された。
全員の注文が届いてから、人差し指をトンとテーブルをつつき、遮音結界を張った。店内の周囲の音が消えたことに気付いた女の子達は目を瞠った。自己紹介されてから改めてお礼を言われた。
「私は長谷川泰造」
「その容姿に全く似合わない名前ですね」
「絶対にまた偽名ですね」
「名前からして駄目人間な気がします」
「絶対に無職な名前ですね」
なんて失礼な女の子達なのでしょうか。マダオって有名なの?
「カジノで素寒貧になってパンイチになるまで毟り取られるおっさんだからね」
「駄目なおっさんがいたものですね」
「実在するんですね」
「そのコートやスーツ、凄い高級品ですよね。それにその腕時計も。そんな駄目なおっさんが身に着けることできませんよ」
「ルシル? 深雪達も一緒にどうしたのかしら? 隣失礼するわね」
リーナがアイネブリーゼに入店してきて、ルシル達に声をかけてルシルの隣に座った。
「え、まさか……」
「私は天海ルシル。よろしくね」
「貴方が……、魔法科高校史上初の推薦入学の……」
「納得しました……」
「何をしたのかもわかりませんでした……」
「指を鳴らすだけで魔法使えるなんて凄すぎます……」
「しかもこれ遮音フィールドですよね。いつ使ったのかもわかりませんでした……」
お互いに名前呼びすることになった。
ルシルはリーナに出会った経緯を説明したところ、リーナは対面に座っている雫達に呆れた目を向けた。
「ルシルに感謝することね。迂闊にも程があるわ」
「リーナに同感ね」
「いくら非魔法師のキャストジャミングでも古式の名門や十師族でもなければ耐えられないだろう」
三人揃って縮こまってしまった。
エイミィならゴールディの秘術『魔弾タスラム』を継承しているから先制攻撃すれば始末できたと思うが。『ゴールディ』のダブルファミリーネームの名乗りを許されているから使えるだろう。
っていうか、本当に設定無理ありすぎだろ。ワンダーランドで術式を狙う刺客を『魔弾タスラム』のトランプで始末していたよね。駄◯者、一生下痢に、トイレの住人になればいいのに。
「エイミィ、タスラム持ってなかったのかな?」
「!? ……ご存知なんですか?」
「何故使わなかった?」
「す、すみません……あの時は動転していまして……」
「? エイミィ、どういうことかしら?」
「あ〜〜、これは極秘でお願いしたいんだけど……」
ゴールディの秘術『魔弾タスラム』について簡単に説明された。
「……ルシル様はゴールディの秘術を何故知っているんですか?」
「君のグランマにでも聴いてみなさい」
「!? ……天海家ヤバいですね……」
エイミィは小さく呟いたが、天海家はヤバいどころではないよ?
後日エイミィはグランマに確認したところ、遥か遠い昔天海家とゴールディは親交があったこと。そして絶対に敵に回すようなことをしないようにと警告された。
…………江戸時代にイングランドを訪れた天海家次期当主がゴールディの秘術『魔弾タスラム』を見取ったとご先祖様の日記にある。その詳細も天海家図書館にある西洋魔法魔術大全に載っている。
フリーダムな正に天海家次期当主である。相当タヌキ幕府嫌いだったみたいで、鎖国なんか無視していたとある。鎖国? そんなの関係ない。
「ルシル様はリーナと親しいみたいですが、どんな関係なんですか?」
エイミィは知らなかったのか。
「倉橋家は天海家の分家でルシルはわたしの恋人婚約者よ」
「そうだったの!?」
「これまで見たこともないくらいの絶世の美少年と美少女のカップルでお似合いですね」
「ありがとう。今日はリーナを迎えにいく途中であの場面に出くわしたということ」
三人から謝罪された。
「流石は推薦入学する実力者ですね。これはマナー違反ですが、どのような魔法を使ったのか教えてもらえませんか?」
「連中を始末したのは純粋な体術だ」
ゾルディック暗殺術だから。あの程度の雑魚に念能力を使うまでもない。
「はい? ……心臓を抜き取ったのが、ですか?」
私は頷いた。
「魔法など一つの技術に過ぎない。アーサー・C・クラークの言葉を引用すれば『発達した技術は魔法と見分けがつかない』かな。一つの技術を極めればそれは魔法を超える」
全員、深雪も含めてルシルに惹かれた。
「…………アンティナイトを回収したり、死体を消したのはどういう魔法ですか?」
「現代では喪われた西洋魔法魔術。ゴールディが知らないのであれば、天海家にしか伝わっていないだろうね」
ホグワーツ魔法魔術だからね。今回の織地では司波兄妹は破門されてるからね。九重寺の代わりに死体を始末しておいた。
「あんな御伽の魔法使いみたいなことわたしの知る限り伝承してませんよ……」
「あの、あの人達のこと、」
この子達ぐいぐいくるな。
「連中はブランシュという国際犯罪組織テロリストだから関わるな。近い内に殲滅される」
「あの、ルシルさんはCADを使用しないのですか?」
「必要ない。『今果心』も指鳴らすだけだよね」
「九重八雲先生のことをご存知なのですか?」
「茶飲み友達なのかな」
深雪は八雲から警告されたことについて大体察した。確かに影でこそこそ探られたら不愉快にもなる。
「現代魔法師はCADに頼り過ぎ。特に汎用型は頭が馬鹿になりそうだ」
「どういうことですか?」
「アプリをインストールすれば使えるゲーム感覚というのかな。突然魔法を使えるようになってハイテンションになる、いきがった馬鹿? 入学初日に逮捕された馬鹿然り?」
念能力者でも目覚めるとハイになる輩は多い。外法で目覚めると、苦労を知らないと碌なことにならない。
それは魔法使いも同様だ。だからこそ私は『大天狗』が嫌いだ。糞餓鬼に玩具という名の兵器をホイホイ渡して、何様だ? ああ、『大天狗』だったね。ぷーくすくす
「それは……、確かに……」
沖縄での司波達也も例外ではない。CADという玩具に魅せられ、いきがった結果があれだ。それは今も続いている。あふぉな世紀末覇者だ。
「CADを一々操作するのも手間だし、致命的だよね。あの操作もゲーム感覚になる原因なんじゃない?」
「否定できませんね……」
司波深雪、君の兄のことだよ? 何故気が付かないかな? 既にキモウト化しているのか?
「確かにそうですね……」
「あぁ、あれが使っていたのは特化型だったか。全く、あのような馬鹿を育てた親もろくでなしだな」
「何かご存知なのですか?」
「蛙の子は蛙。あの家はガサ入れされて潰されたよ」
「!?」
全員目を瞠っている。
「近い内にあそこの警備会社、雫の家に吸収するよう通達あると思うからよろしくね」
「通達、ですか?」
「そう、通達」
全員天海家はとんでもない権力者だと悟った。
これからデートだからじゃあねと帰っていったルシルとリーナ。 深雪達が会計しようとしたところ、マスターから「天海君から既にもらってるから」と告げられた。
「はい? ……それではお礼になっていないではありませんか……」
「助けられてその上全員奢られて、納得できない」
「あはは、天海君が女性とお茶をするといつもだからね。男の甲斐性さ」
「マスター、ルシルさんを知ってるの?」
「4年前くらいからのお客様だよ。誰とお茶をしていたのかまでは話せない。ごめんね」
四人は店を出ると、「生活が厳しいって詐欺なのでは」と意見は一致した。
その夜司波家にて、深雪はポワーッとしていて、心配した達也からどうしたのかと尋ねられた。
「…………お兄様、わたしは気になる男性ができました」
「深雪が気になる男? 相手は誰だ?」
「…………天海ルシルさんです」
「は? 天海君と出会ったのか?」
深雪から達也に状況を説明された。
「…………キャストジャミングをものともせず四つの心臓を抜き取り潰し、指を鳴らしてアンティナイトを回収、死体処理……、規格外にも程があるな……」
「お兄様はわたしの答辞を覚えていますか? 『魔法以外にも等しく』と」
「ああ、素晴らしい答辞だったね」
「ルシルさんはそれを体現しているお方なのです。心臓抜き取りなど純粋な体術で魔法など使用していないと…………しかも動きすら見えませんでした……」
「…………深雪が惹かれるだけはあるな……こういう時は赤飯を炊くのだったか? 俺は料理をしたことがないからな……赤飯を食べることができる店などあるのか……」
「ふふっ、お気持ちだけで十分です」
夕食を食べながら……
「…………しかしリーナの恋人婚約者は天海君だと聞いたが……」
「……これは恋なのでしょうか? それなら失恋してしまいしたね……」
「…………親父達の例もある。籍を入れずに愛人になるというのも幸せの形の一つなのかもしれないな……」
「…………小百合さんの気持ちが理解できた気がします……」
大人になったね ♪
「…………天海家倉橋家は相当な名家なのだろう。叔母上も繋がりを求めていてもおかしくはない。そうすれば四葉から解放されるかもしれない。俺は深雪を応援するよ」
「お兄様……、ありがとうございます……」
はてさて
エガリテ放送室占拠解決の後で、カフェテリアでリーナは深雪達から顛末を愚痴混じりに説明された。
「……何故風紀委員が介入する必要があったのかしら?」
リーナはルシルと感覚同調している。ルシルのサポートでツッコミを入れるのだ。
「鍵を盗難して放送室占拠は明らかに犯罪だろう」
「剣道部員達魔法を使っていた様子なかったわよね」
「いや、だから犯罪だと、」
「風紀委員の役割は? 『魔法の不適切使用に対する取り締まり』でしょう? 風紀委員が介入する、口出しするのは明らかに越権行為じゃない」
この指摘に達也たちは言葉に詰まった。
「…………何故リーナは放送室を占拠していた剣道部員達が魔法を使っていなかったことを知っているんだ?」
「誰もいない放送室を占拠するのに魔法使う必要ないわよね」
リーナはルシルに教わった精霊魔法で覗き見していた。
何故に近未来の日本の国立魔法大学付属高校に放送室がある? あまり必要性感じられないよね? 生徒会室から放送できるようにした方が合理的だろう。
団塊老害え゙……
「魔法を使用する喧嘩に発展する前に仲裁拘束するためでもないのに、不適切魔法使用を止めるためでもないのに、風紀委員の管轄外なのに力尽くで捕まえて、そういうのを不当逮捕っていうんじゃないかしら? 少しでも怪我していたら傷害罪よ? 暴力行為だって訴えられることもあり得るわね」
「…………」
遂に達也は黙り込んだ。リーナの意見に深雪も黙っている。
「相手は剣道部だったのよね? 生徒会と部活連が対処することであって、摩利と達也の口出しする問題ではないし、あちらからしてみれば騙し討ち同然じゃない。そういうところも風紀委員が反感を買うんじゃないかしら」
「…………」
「それに二科生の言う差別って、今回の件が証拠って主張されたら否定できるの? 一科生は二科生と話し合いをしようともせず暴力で取り押さえたって。強盗なんかの立て籠もり事件なんかでも警察は犯人とお話して投降を呼びかけるものじゃなかったかしら?」
「…………」
「達也って無駄に敵を作るのを躊躇わない自己破滅型の無鉄砲さがあるわね」
「リーナ、それは妹のわたしも思っていることよ」
まだキモウトにはなっていないのかな?
「このままそれが続いてエスカレートすると社会から危険視されて最悪排除されるわよ?」
最悪妹が復讐対象になると考えに及ばない馬鹿だな。
「…………」
「冷静にお話して解決すればいいじゃない。文明人なんだから。達也って本当に一般家庭出身なの? そのヤクザ極まりない思考回路はちょっと信じられないのだけど。わたしはドン引きしたわね」
「…………」
「結局真由美が出てきて公開討論会することになったんでしょう? 達也野蛮で迂闊過ぎないかしら?」
「…………」
「そのうち公安にマークされそうよね」
「…………」
「それから達也は『魔法師の兵器からの脱却を目指している』そうだけど、考えなしに無自覚にテロ行為したり、どの口が言うのかしら? 矛盾しかしていないわね」
「それは……」
「達也、このままだと貴方日本に居場所なくなるわよ?」
達也と深雪は黙るしかなかった。
「達也、注意してくれる、叱ってくれる相手がいるのはありがたいことだと思いなさい。反省して改めないとそのうち見捨てられて誰も相手してくれなくなるから。じゃあね」
去っていくリーナの後ろ姿を見ながら果たして達也は何を考えているのだか……
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