本好きの念能力者 @ 魔法科高校   作:avagnale

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念能力万能説


ブランシュ事件

 初登校したルシル君は一高図書館特別閲覧室に籠っていた。なんでも黒視蝶でハッキングはチート過ぎてつまらない。こちらが暇になってしまう。

 

「ここでの煙草とコーヒーは至福。さてさて」

 

 バショウ煙草に今日は気分的にマンデリンだな。インベントリから出したカップに流水の短剣で水を入れてドリンクフリーでマンデリンに。

 

 ふんふんふ〜ん

 

 

 

 次は紅茶でアッサム。これも半分飲んだところで酒を注ぐ。

 

 

 

 

 次はディアンプルーラかな。これも以下略

 

 

 

 

 …………騒がしくなってきた。私の至福の一時を邪魔してくれたので閲覧室から出たところ、そういえば今日だったかと思い出してコインを両手に多数具現化した。

 コインを指弾で放つ。イメージはHUNTER✕HUNTERのエリート暗殺一家ゾルディック執事ゴトーだ。

 

 両手に多数のコインをヂャリヂャリと握り、薄く鋭くした【周】オーラで纏い放った。

 

 

 

 ブランシュの尻穴と股間は爆散して、頭はパチュンッと潰れたトマト状態になっていく。図書館突入部隊のエガリテは全員洗浄魔術ヴァッシェンで洗脳を洗い流して、言霊で従わせ、壬生沙也加はブック・オブ・ジ・エンドで『ルシルのスパイ』設定しておいた。

 図書館の外に出たところ、まだまだ蝿が鬱陶しいため、コインで殲滅した。

 

「ルシルさん!?」

 

 おや、深雪達が駆け付けてきた。

 

「うわっ、今まで見たことないレベルの絶世の美少年ね」

 

「君が天海ルシル君か? 俺は深雪の兄の司波達也だ。ブランシュの下半身と頭が突然破裂したんだが、何か知らないか?」

 

「これだ」

 

 コートの袖から両手のコインを出して見せた。

 

「指弾で放った」

 

「…………一高を襲撃してきたブランシュの下半身と頭が全てほぼ同時に破裂したようだが、どうやったんだ?」

 

「私には距離など関係ない。そういう異能がある」

 

 【発】MAPと次元刀の応用だ。全ては私の【円】の中だ。

 

「…………それでも指弾で下半身と頭が破裂するか?」

 

「回転に力を入れたからな」

 

「凄まじいですね……」

 

 売国奴、即滅斬だ。

 

「頭はわかるけど、下半身まで必要あるの?」

 

「股間と尻穴にぶち込んだ。売国奴の嫌がることは積極的にしましょう(笑)」

 

 可笑しい、何故に引きつっているのだろうか。ここ笑うところ。

 

「後ろにいる壬生先輩は、」

 

「彼女はブランシュに潜入していた私のスパイだ」

 

「あたしの主はルシル様なの」

 

「そういうことでしたか……」

 

「しかし汚い花火跡が見苦しいな」

 

 指を鳴らして一高内の死体をエバネスコで消した。そしてヴァッシェン・バリアを一高全体に広げて血痕や汚物を洗浄した。

 

「死体と血痕が全て消えた……深雪が言っていたのはこれのことか……全くどのような魔法なのかもわからないな……」

 

 ホグワーツ魔法魔術とユルゲンシュミット魔術なのでね。本物の魔力を知覚できないこの世界の人間ではわからないだろう。前世でも私の魔法魔術を見破ることは困難極めるとフェルディナンドやダンブルドア達から断言されていた。

 

 保健室に主要メンバーが集合してから、エガリテのメンバーを全員連行させて、ヴァッシェンで洗脳を洗い流す。

 

「ルシル様、水が凄い渦巻いていますが、」

 

「これは洗浄魔術ヴァッシェン。洗脳を洗い流している」

 

「凄い魔術ですね……」

 

「洗脳とはどういうことですか?」

 

「邪眼イビルアイという手品でブランシュ日本支部長司一に洗脳されていたのさ」

 

「なんて卑劣なっ!」

 

 深雪に同感だけど、売国奴などそのようなものだろう?

 

 洗浄後、真由美が気不味そうにエガリテ・メンバー達に「洗脳されていたとはいえ、貴方達のしたことは犯罪行為であり、ルシル様のスパイである壬生さん以外は、」という説明に、「ストップ」と声をかけた。

 

「彼らが洗脳されたのは一高のどうしようもない環境に付け込まれたのが原因だ。制服のエンブレムの有無による差別や侮辱罪傷害罪談合癒着隠蔽など訴えられたら炎上するぞ?」

 

「うっ……」

 

「会長、自分も天海君に賛成です。彼らには同情の余地があります」

 

 司波達也、お前は自分達兄妹のことを調べられたくない、自分達の平穏のためだけだろう。

 

 ルシルは真由美と克人だけを呼び、認識阻害遮音結界を張ってから告げた。

 

「エガリテの連中には銃刀法違反の罪もあるが、司波達也のシルバーホーン、あれも銃刀法違反に該当する。しかも限定モデルだ。一般人を装っているが、正気か? 下手に蛇を出すことのないように揉み消せ。他の一高生がCADにインストールしている魔法も銃刀法的に怪しいものがある」

 

「かしこまりました」

 

 ハラキリという前例を思い出した克人は即座に頷いた。

 

「彼らもブランシュに潜入していた私のスパイということにすればいい」

 

 瞬間真由美の顔が輝いた。

 

「ありがとうございます!」

 

 結界解除後、克人にブランシュのアジトから死体や武器などを回収するよう指示した。

 

「死体、ですか?」

 

「私に距離など関係ないと言っただろう。ブランシュは全員コインで殲滅した」

 

 全員絶句している。あれ、リーナも? あぁ、コイン指弾を見せたことはなかったか。

 

「アンティナイトと武器はアジトに派遣する時計塔のエージェントに引き渡すように」

 

「はっ、かしこまりました」

 

 頷く克人に疑問の声が上がる。

 

「時計塔のエージェント、ですか?」

 

「ルシル様は時計塔でもかなり上のお方なのよ」

 

 真由美の暴露に知らなかった者達は驚愕している。

 

「天海家は十師族など比較するのも烏滸がましい家柄だ。無礼を働くことのないように注意しろ」

 

「真由美や十文字が注意する程か……わかった」

 

 私は三矢元に連絡した。

 

「ブランシュから回収する武器、香港支社から反大亜に流しておいて」

 

『かしこまりました』

 

 この会話に唖然とする者達が多い。

 

「ルシル様、今会話していた相手は一体、」

 

「とある当主。時計塔香港支社に海外部門を提供してね。大亜で反乱を煽ってる」

 

 十師族の三矢だ。香港マカオには九島にも提供しているが、今回の武器は一高に近い三矢に任せる。

 

「…………」

 

「敵国の嫌がることは積極的にしましょう(笑)」

 

「…………」

 

「さて、リーナ帰ろう」

 

「そうね」

 

「待ってください、天海様。よかったらお茶を一緒にしていきませんか?」

 

「まあいいけど。司波君だったかな。私的な場ではフランクで構わないよ」

 

「……わかりました」

 

 アイネブリーゼに移動しながら自己紹介した。

 

 ルシルとリーナ、司波兄妹、エリカ、レオが参加している。席はルシルはリーナと深雪に挟まれ、対面はエリカだ。

 

「天海君は問題の本質を見極めるのが的確ですね」

 

「本当に。差別の根本問題が制服のエンブレムだなんて」

 

「不愉快極まりないだろう」

 

「ホントよね。わたしもまさかあそこまで酷いとは思わなかったわ。筆記が二の次って、間違ってるじゃない」

 

 ルシルとリーナの指摘に達也は苦い笑みを浮かべている。

 

「仕方ない。一高の基準は速度規模強度だからな」

 

「会社や研究所では頭脳優先なのに?」

 

 ルシルの指摘に達也は言葉に詰まった。

 

「世の中学歴社会、それが全てではないが。どんなにいい大学を出ていても仕事のできない人間もいる。協調性に欠ける扱いに困る者もいる。中卒高卒でも頭のいい者、仕事のできる者もいる。コミュ力抜群な者もいる。ただでさえ今は頭のおかしい詰め込み教育だからね。中卒でも立派に一般企業で働いている人達も多い」

 

「頭のおかしい、ですか?」

 

「興味があったらここ百年の教育の移り変わりについて、それから昭和の団塊の世代について調べてみるといい」

 

「……後で調べてみます」

 

 コナコーヒーにブランデーをタラリとな。

 

 リーナ以外は目を瞠っている。

 

「…………それは酒ですか? 一体どこから……?」

 

「固有魔法『インベントリ』異空間に収納している」

 

「ルシル様、お店でマスターに見つかったら、」

 

「大丈夫、認識阻害遮音結界を張ってある」

 

「いつの間に……」

 

 天海家倉橋家は古式の名門だと達也は確信した。

 

「ですがカップを回収される時に匂いで、」

 

「洗浄魔術ヴァッシェン超便利 ♪」

 

「…………」

 

「ルシル君、コーヒーにお酒って美味しいの?」

 

「カップの半分くらい入れてなかったか?」

 

「美味しいよ。味変だね」

 

「ルシルはどれだけ飲んでもほろ酔いまでだから心配ないわ」

 

「仕事上会食や試飲会もあるからね」

 

「試飲会ですか?」

 

「毎年目黒の雅叙◯でワイン試飲会がある。急性アルコール中毒で救急車は恒例行事だね(笑)」

 

 リーナは苦笑いして、他は口がヒクヒク引きつっている。

 

「試飲会は普通口に含んで味わってから容器に吐き出すものなのに、アル中は平気でガブガブ飲んでるからね」

 

「ルシルもね。あの試飲会で『ワインはのど越しだよね〜〜』って、のど越しはビールじゃない…………ワインを蒸留したジンもあるけど、あれアルコール37.5%あるのに、平気で飲んでるし…………ルシルの部屋の中にあるBARのお酒アブサンだったかしら、アルコール89%って、」

 

「ちょっと待って! 色々ツッコミたいんだけど、部屋にBARがあるってどういうこと!?」

 

「一々BARに行くのは面倒くさい」

 

 私がバーテンダーになろうとしたら大門や響子から全力で止められた。趣味だけにしてくださいと。

 まあ、だから持ち物のホテルのテナントに全てBARがある。

 

「じゃあアルコール89%って!?」

 

「あれを冷凍庫でキンキンに冷やして目覚めに一杯呷ると最高」

 

 皆なにやら理解できないのか、眉間を揉みほぐしたり、コメカミを抑えたりしている。

 

「ルシルの体質も固有魔法なんじゃないかって思うわ……」

 

 リーナは日本に帰化して倉橋家養女になってから、天海家次期当主の毒耐性訓練を、ルシルのしでかしたことを聞いて、声にならない声を上げていたことがある。

 

「それは確かにあり得るな……」

 

「名付けるとしたら『アルコール無効化』でしょうか……」

 

 それどころじゃないけどね。アルコールだけでなく毒や麻薬、状態異常も無効化するから、【発】状態異常無効化、最高。

 

「あの試飲会では酒の肴が欲しくなるって認識阻害使って『インベントリ』からテーブルセットと天海家専属料理人に作ってもらったアミューズやアンティパスト盛り合わせまで出して一杯やってるし……」

 

 リーナもワインとのマリアージュを楽しんでいたよね。

 

「凄い魔法の使い方ですね……」

 

「なんていうか、誰にも迷惑かけないし、頭のいい使い方なのかしら?」

 

「振り切れてる気がするぜ」

 

「平和的で素晴らしいと思います」

 

「人生楽しまないとね。マスター、次はキリマンジャロで」

 

「ちょっと待ってね」

 

 さてカップをヴァッシェンして、キリマンジャロがきた。

 

「……………………結界を張っていたのでは?」

 

「マスターに声をかける時に結界の一部だけ穴を開けた」

 

「ということよ」

 

「…………本当に何をしているのかわかりませんでした……」

 

「極めてるわね……」

 

「お得意様になったら個室と料理人手配してくれるようになったから、あの試飲会ではもう使うことないかな」

 

「お得意様っていくらワイン買ってるのよ?」

 

「億〜? 時計塔でもワイン試飲会するようになったし、彼処に任せてる」

 

 この暴露にリーナは遠い目をして、他は引きつっている。

 

「まさか、時計塔でワインまで作っているのですか?」

 

「海外でも高評価だよ。階層毎にシャトー……ブドウ栽培から醸造、熟成、瓶詰めまでを一貫して行ってるし。様々な果実から100種類以上作ってる」

 

「凄まじいスケールですね……」

 

「酒は人生を豊かにするのさ。だから時計塔にワインバー『アクアウィタエ』を作った。リーナ、今日は視察がてら彼処でデートしよう」

 

「やった。ワインバー楽しみね」

 

「うわぁ、なにこの無茶苦茶甲斐性ある恋人婚約者」

 

「エリカに同感ね。ルシル様以上の男性はいないと思います」

 

「憧れるわ。リーナが羨ましいんだけど……」

 

 

 

 それはともかくとして

 

「君達なら時計塔に勧誘したいくらいだね」

 

 これに達也たちは食いついた。

 

「司波君は研究所向き、エリカは護衛かコンシェルジュ、レオは警備部門で活躍できる。君達二科生詐欺だろう」

 

 リーナと深雪が小さく吹き出した。

 

 司波達也は研究所に閉じ込めて研究課題を与えて研究させておいた方が世のため人のためだろう。

 

「時計塔の研究所か……、惹かれますね……。俺の憧れはDr. クレープ・シュゼットなんですが、時計塔の研究所に就職が叶えば会えるんですか?」

 

「シュミルのぬいぐるみ姿だけどね。時計塔トップシークレットだから、絶対に素性は明かせない」

 

「Drと研究談義してみたいんです」

 

 フェルディナンドやドレヴァンヒェルの研究馬鹿の類か? 研究に夢中になり寝食を疎かにする連中の?

 

「時計塔研究所に就職すれば可能だ。が、迂闊なことはお勧めできない。暗部が動くからね。どのような能力者であろうと無力化されることは保証する」

 

「…………肝に銘じます……」

 

 もうこれ以上ないくらいに肝が冷えた司波達也(笑)

 

「ルシル君、これまで登校しなかったのはなんでなの?」

 

「忙しいから」

 

 海外バカンスと美酒美食巡り、閨に

 

「じゃあ今日図書館にいたのは?」

 

「沙也加さんから今日ブランシュが一高を襲撃して、図書館特別閲覧室からアクセスできる魔法大学の最新研究データを盗み出すと連絡があってね」

 

 大嘘である。本当は忘れていた。どうせ私がいなくてもブランシュなど鎮圧されていたから。この織地で真新しい興味深い研究データはないか暇潰しに確認しにきただけだ。

 

「本当に壬生先輩はルシル様のスパイだったのですね」

 

 ブック・オブ・ジ・エンド超便利 ♪

 

「…………ブランシュの裏にいた輩のことは知っていますか?」

 

「達也、どういうことだよ?」

 

「大量のアンティナイトといい、あの武器の数々といい、バックボーンがあるのは当然だろう」

 

「なるほどな。で、ルシルは知ってるのか?」

 

「大漢崑崙法院の怨霊」

 

 この暴露に司波兄妹は息を呑んだ。

 

「大漢が四葉に徹底的に復讐されて滅んでから、大亜は現代魔法後進国のままだ。日本と大亜を潰し合わせたいのさ」

 

「なるほど……」

 

「つまり、どういうことだよ?」

 

「レオ、少し考えればわかるでしょ? 大亜に現代魔法の最新研究データを盗ませて復讐したいのよ」

 

 達也は納得し、レオは疑問の声を上げ、エリカが説明した。

 

「そういうことかよ」

 

「表向きは大亜、ベラルーシ再分離独立派。アンティナイトと邪眼の出処だね。まあ、害虫ゴキブリの類だ」

 

「本当に害虫ってわらわら出てくるわね」

 

「邪眼を開発したのはベラルーシですからね」

 

「あの、ルシル様、邪眼イビルアイが手品というのはどういうことでしょうか?」

 

「光波振動系の光信号による催眠術に過ぎない。機械でもできることだ」

 

「それは、確かに手品の類ですね」

 

「ほのかが使えば手品の域を超えるかもしれないね。図書館に資料がある筈だ」

 

「ああ、確かにほのかなら。この前みたいなことがあったら危ないから教えておくわ」

 

 すぐにルシルの意図……ほのかは光のエレメンツということを汲み取ったリーナは流石はルシルの恋人である。

 

 リーナの頭を撫でておいた。

 

「えへへ、ルシル〜」

 

「流石は恋人婚約者同士ね。阿吽の呼吸って奴かしら?」

 

「正にそれだな……」

 

「女の子に対するさりげない気遣い、ルシル君相当モテるでしょ?」

 

「モテるわよ。ルシルの恋人婚約者多いもの」

 

「「「「はい?」」」」

 

「ルシルは優れた魔法師だから国から重婚推奨されてるのよね」

 

「子供を沢山作って分家を多く創設してくれという父の意向もある」

 

「マジか」

 

「ルシルが喪われた西洋魔法魔術を復活させたから、伯父様と伯母様もルシルの子供達に期待しているのよ」

 

「納得したわ。ルシル君の子供なら超絶可愛いだろうし」

 

 達也は深雪に視線を向けたところ、深雪は意を決したように頷いた。

 

 

 

 その後十文字家がブランシュアジトから死体やアンティナイト、武器を回収して時計塔に引き渡して終了した。

 

 

 

 アンティナイトの指輪が多数集まったため、これで刀を錬成してみた。これでこの世界の魔法を切ることができたが……

 

「使い道ないよね」

 

「そんなこと言えるのは御前様くらいのものですね」

 

 オリハルコン刀やヒヒイロカネ刀には到底及ばないからね。

 

 

 

 

 後日一高では真由美が頭を抱えていた。

 

「頭破裂の光景がトラウマで未だに精神不安定の生徒が多くて、カウンセラーの先生達からも超過労働だって悲鳴が上がっているらしいわ……」

 

 中には脳みそトマト爆発を顔にブシャアッと浴びた生徒達もいる。ルシル君に助けられたのだから感謝し給えよ。

 

「……あの光景を作った張本人はどう言ってるんだ?」

 

「『ここは魔法科高校の教育確立者の権威の出番でしょう(笑)』だって……」

 

「……盛大に皮肉ってるな……」

 

「えぇ、もう権威も何もないわよ…………しかも政府から辞任は認めないって通達がきているらしいわ……」

 

 全員口が引きつっている。

 

「政治でも時計塔は圧倒的だから……」

 

 辞任を認めるなら電力水素他資源供給を停止すると警告してある(笑)時計塔に依存しているから絶対に逆らえない。

 そもそも天海家は元老院頂点であるため、逆らうことなど考えもしない。

 

「時計塔怖すぎるんですが……」

 

「所詮一高校長なんか蛙だって…………世の中魔法力ではない。金と権力が全てって……」

 

「時計塔の発言は重みがありますね」

 

「市原先輩!?」

 

「時計塔が政府よりも権力者なのは明らかです」

 

「鈴ちゃん、Dr. クレープ・シュゼットのことリスペクトしてるものね……」

 

「魔法大学卒業後は時計塔志望です」

 

「わかります」

 

 中条あずさも時計塔志望だ。飛行魔法CADや完全思考操作型CADなど非売品であるため、時計塔に就職が叶えば使えるのではと考えている。

 

 真由美はこの問題をリーナに相談したところ、ルシルにヴァッシェンしてもらえばいいんじゃないかしらと……

 

「ヴァッシェンってそこまで万能だったの!?」

 

「トラウマを洗浄しろとイメージすればいけると思うわ。ちょっと待ってね。ルシルに確認してみるわ」

 

 リーナがルシルに連絡したところ、真由美と通話を代わって……

 

『真由美さん? それをすることで私に利はあるのかな?』

 

「うっ……、わたしにできることならなんでもします」

 

『では今日一晩朝までデートね』

 

「それは、そういうことですよね……ルシル様なら光栄です」

 

 真由美は内心『やったーーー!』とマラカスを振っていた。天海当主継承の儀式で見惚れていたこともあり、久々の再会では絶世の美少年になっていたこともあり、ブランシュ事件ではルシルの冷たい笑顔をマルチスコープで見ていた真由美は『ルシル様カッコいい!』と恋をしていた。

 

 ルシル君との通話終了後、真由美は端末をリーナに返した。

 

「それで、ルシル受けてくれるの?」

 

「ええ、それで、打ち合わせも兼ねてルシル様と今日天海家で打ち合わせあるから、リーナさん、帰りは同行させて」

 

「いいわよ」

 

「え、リーナ、もしかして、」

 

「天海家にはわたしの部屋があるのよ。お父様お母様もルシルに変な女を寄せ付けるなって、押せ押せ行け行けだし」

 

 勘のいい者は察した。絶対に最後までヤッてると。

 

 

 

 ということで、一晩のデート後、真由美から懇願されたルシル君は生徒達のトラウマをヴァッシェンで洗浄した。

 この光景を見ていた司波達也もルシルのことを『御伽の魔法使い』と称した。

 

 …………しかし中には「溺れ死ぬかと思った」という感想も多数……

 

 現代魔法師はもっと鍛え給えよ。軟弱過ぎると思います。

 

 

 

 後日カウンセラーからの診断結果が真由美に届いたのだが……

 

「……………………はい? 男性恐怖症もなくなった?」

 

「はい?」

 

 生徒会役員達や達也は耳を疑った。

 

「…………過去トラウマがあって男性恐怖症になった子がいるんだけど、ヴァッシェンで治ったって……」

 

「それは……」

 

「残念ですが公にできませんね。天海君は多忙を極めていますから」

 

「リーナはヴァッシェンを使えないのかしら?」

 

「無理ね。あれは喪われた魔術の一つで、天海家でもあれを使える人はルシルだけらしいわ」

 

「天海君は魔法医としても重宝されるな」

 

「時計塔があるから無理ね。学生時代は短いモラトリアムなのかしら?」

 

「いや、本当に天海君は『御伽の魔法使い』そのものだと思うぞ?」

 

 内心、ウェッとしたリーナは生徒会室から「あ、バイトの時間だから」と立ち去ろうとしたところ、深雪に腕をガシッと掴まれた。

 

「リーナ? 誤魔化されないわよ」

 

「ほ、本当なのよ!?」

 

「ルシル様に恋する乙女として知る権利があるわ」

 

「プライバシー!?」

 

「さあ、親睦を深めましょう」

 

 深雪の愉快な仲間達にリーナも加わり、アイネブリーゼでルシルとリーナについて根掘り葉掘りと……

 

「リーナ、入試筆記ではお兄様に次ぐ二位だったわね。一体どのような勉強をしているのかしら?」

 

「え、そうだったの?」

 

「あはは……、ルシル、スパルタだから……」

 

 グリードアイランドの景品『記憶の兜』でズルしているなんて口外できない。あれは非常に重くて疲れるし……

 

「入学試験、七教科平均、百点満点中九十八点はリーナだけよ。魔法理論と魔法工学で、両教科とも小論文を含めて文句なしの満点はお兄様だけだけど、お兄様は七教科平均九十六点だったのに」

 

「凄っ、魔法以外の教科だとリーナが一位だったの!?」

 

「たった二点差じゃない。魔法理論と魔法工学では達也に到底及ばないわ。わたし感覚派だし、魔法工学苦手なのよね」

 

 CADをあまり使う必要がないというのが大きな理由だ。

 

「実技はわたしと大差ないわよね」

 

「実技試験は本当に不愉快だったわ。何あの機械、馬鹿にしてるのかしら」

 

「どういうこと?」

 

「あなたは魔法を使えますか?って試されてる気分になったわ」

 

「それはわかるわ。あんなノロマな機械、無駄にしか思えないもの」

 

「実技トップ二人は三位以下と比べものにもならないね」

 

「次元が違うよ……」

 

 それからはルシルとリーナがどこまで進んでいるのか恋バナに……、この日帰宅したリーナは疲れ果てていた。

 

 

 

 

 




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