一高でルシル君はリーナと一緒に司波達也の担当する競技の練習風景を見学した結果、部活連本部に三巨頭や生徒会、風紀委員、司波達也、問題選手達、SSボード・バイアスロン部部長、狩猟部部長を集めた。
ルシル君はお誕生日席に座っている。
「司波達也のエンジニアとしての腕前は素晴らしいと認めよう。が、正気か?」
「…………」
沈黙が訪れた。深雪は案の定やはり何かしら問題がありましたか的な諦めの表情になっている。
「まずはスピードシューティング、北山雫の能動空中機雷アクティブ・エアー・マイン。範囲射撃と範囲爆撃、あれは完全に競技の意義をぶち壊している。スピードシューティングはクレー射撃の魔法版だ。クレー射撃の起源は狩猟訓練にある。狩猟では獲物を一撃で撃ち抜き苦しめずに仕留めることがマナーモラルだ。あれで獲物はどうなる? 獲物が爆散して狩猟成果がなくなる」
「「あっ……」」
SSボード・バイアスロン部部長と狩猟部部長も気付いたね。
「司波君、うちの部員になんてことさせようとしてくれるのよ。クレー射撃でもSSボード・バイアスロンでも的を、獲物を射抜くものであって、爆散させるものではないわ」
「亜美に同感だね。生命を無駄にするなんて許されることじゃないよ」
「わたしは北山さんと光井さんの勧誘の時にそのように説明していたのに……」
部長達は完全に司波達也を睨んでいる。
「部長、申し訳ございませんでした……」
雫の謝罪に五十嵐亜美は指摘されなかったらわたしでも気付いてなかったと思うからと、ただし反省はするようにと諭した。
あれは鳥獣保護管理法で禁止されている爆弾罠猟に該当し完全に違法であり、生命を馬鹿にしていること。狩猟成果は美味しく味わうことが供養であること。汎用型CADと照準補助特化型CADを合体させた兵器であり、戦場扱いしていることなどを指摘していった。
「去年デュッセルドルフで発表された未完成の兵器を完成させるなど、一体何を考えている? 確か父親がFLT本部長だったか」
「はい……」
「ああ、だからデュッセルドルフか」
「ルシル様、どういうことですか?」
「デュッセルドルフは日本人街、ヨーロッパの日本というくらいだ。FLT支社もあったな。それでニュース以上の詳細な報告をされていたのか?」
「…………」
司波達也は沈黙を貫いているが、沈黙は肯定だぞ? 深雪は目を瞠っているよ?
「FLTは死の商人か?」
貴様等の開発してきた兵器がどれだけ輸出されてきたのか自覚もないのか?
ルシル君は自分が死の商人だと自覚しているよ? 敵国に麻薬を蔓延させている、三矢や九島に旧式武器を輸出させて反乱を煽っている黒幕だからね。
しかしルシル君と司波達也では決定的な違いがあるのだよ。
ルシル君は愛国者、司波達也は売国奴
「ッ!?」
「あの魔法は汎用的に過ぎる。あれがインデックスに登録されようものなら、戦場で使用されようものなら、開発者に、使用者に、一高にも非難殺到するだろう」
ほとんど顔色が青褪めている。
「誤魔化して使用者を開発者として登録するか?」
ふんっ、司波達也、ビクッとしたね?
雫とほのかは目を瞠っている。信じられないものを見る目で司波達也を見ている。他にも目で非難している者が多数いる。
「バカか。汚名を他人に押し付けるなど人でなしの、人倫にもとる最低な行いだ。その時の担当エンジニアなど少し調べればわかる。九校戦で活躍?したエンジニアは誰か、本当の開発者は誰かすぐに判明する」
本当に姑息で浅はかなバカだな。
雫の司波達也を見る目に侮蔑が混じっている。
「真由美さん、クレー用意してくれた?」
「はい、はんぞー君」
「はい、準備はできています」
真由美に促されたはんぞー君が部活連本部の入口側にクレーの的を持ってきてくれた。
私は指先に火を灯し圧縮して連射し、全てのクレーの的のど真ん中を射抜いた。
「凄い……」
「あれって現代魔法でいうならエレメンツの火なのかな?」
「うん、そうだと思う…………CADも使わずに本当に凄いね……」
「火を圧縮して威力を上げているのか」
「まるで古式のループキャストですね……」
「速度も凄まじいわね……」
全員がこれを確認してから告げる。
「派手な魔法で獲物を倒しても食材にならなければ意味がない」
「北山さん、天海君を見習いなさい」
「はい」
「狩猟成果というのは毛皮も含まれる。さて、司波達也の魔法では毛皮も台無しになり、買い取ってもらえなくなるのは理解できたと思う」
「はい……」
「圧縮せずとも極小の火を獲物の口の中に打ち込み肺を焼くこともできる。獲物は窒息死する。肺を焼いたところで肺の価値は低いからね」
私の場合はヴァッシェンや『血抜き』の魔法があるから、血抜きも問題ないし。
「それなら買い取り価格も下がらない、ということですね」
「毛皮というのは傷が少なければ少ない程価値が高い。司波達也の魔法は狩猟団体や温厚な動物愛護団体をも敵に回す」
「生命を馬鹿にする行為ですからね……」
「…………」
「司波達也、貴様には動植物を食べる資格さえない」
「…………」
『ピコーーーンッ!』
ふっふっふっ、い〜いこと思いついた ♪
「次にバトルボード、光井ほのかの水面へのフラッシュ、選手や観客、視聴者が失明や視力低下する危険性がある。それは傷害罪でありテロ行為だ。最悪集団訴訟沙汰になる。九校戦は海外でも放送される。世界中の反魔法師主義を煽ることにもなるなぁ?」
ほのかは光のエレメンツだけあってあれは過剰過ぎる。オーバーアタックだろう。バトルボードはサーフィンの魔法版だ。波乗りで対戦相手を妨害することは減点対象になる。あのような攻撃? サーフィンであのような真似したら即失格だ。というよりも『お巡りさん、こっちです』案件だよ!
「そんな……」
いや、SSボード・バイアスロンでも狩猟でも完全にアウトだろ。
「光の明暗によるコース妨害にしても同様に。下手したらコースに激突して大怪我する。ルールに載っていないからといってやっていいとはならない。ルールの前にマナーモラル、法律に違反している。あれも戦場扱いしているだろう。バトルボードの通称『波乗り』の起源はサーフィンというスポーツだ。バトルという名称にもある通り、魔法競技としてある程度の妨害は認められているが、限度がある。あのような妨害、競技を侮辱するのも、ふざけるのも大概にしろ」
「何も言い返せませんね……」
「ああ、全て指摘された通り反論できないな」
部長達は雫とほのかに、『天海君に感謝しなさい』と諭している。
「無自覚に競技を戦場扱いし、選手に犯罪行為を、テロ行為をさせるのは非常に性質が悪い。司波達也の最小限の起動式で最大限のパフォーマンスを発揮する、完全マニュアル調整技術は素晴らしいが、新しい魔法や兵器、作戦を採用するのは論外だ」
「達也君、反論はあるかしら?」
「いえ……」
真由美からの問いかけに達也は反論できないことを認めた。
「リーナからも指摘されているだろう。『魔法師の兵器からの脱却を目指している』? 誰よりも魔法師を兵器扱いしているのに、競技を戦場扱いしておいて、どの口が言う? それは一体なんのギャグだ? ああ?」
「…………」
「死の商人で手が血塗れな輩が『魔法師の兵器からの脱却』とはいい御身分だな。笑わせるな!」
ルシルの怒りに室内には沈黙が訪れたが、ここで真由美が挙手した。
「ルシル様……、『死の商人で手が血塗れな輩』とはどういうことですか?」
「FLTは兵器を開発製造販売しているということだ。FLTがこれまで開発製造販売してきた兵器がどれだけ同盟国に輸出されてきたと思う? それがどれだけ生命を奪ってきたのか自覚もないのか?」
あふぉなUSNAは北アメリカ大陸を統一したためにテロなど日常茶飯事だ。USNAの自業自得だが、それでどれだけ罪のない人が高みに上がっていると思っているのだか。
「…………」
「そこのところ聴かせてくれないかな、トーラス・シルバー?」
「え、まさか……?」
ほとんどの視線が司波達也に集中した。
「自分はトーラス・シルバーではありません」
「Mr. シルバー?」
「!?」
全員目をひん剥いた(笑)
「天海家の、時計塔の諜報力を甘く見るなよ? その開発調整技術力から、ソフト担当だろう?」
「…………」
「沈黙は肯定だ」
「確かに、あの技術力なら納得だよね」
「う、うん……」
雫とほのかが頷き合っている。
「FLT開発第三課に『アフロ主任』の牛山氏がいるな。名前から彼がトーラスで、ハード担当。つまりトーラス・シルバーとはチーム名だ」
どよめきが起きた。
司波達也は『アフロ主任』発言にこれ以上ないくらいに目をひん剥いた(笑)
「司波達也、深雪、『CADを提出しろ』」
「は、はい……」
言霊で、司波兄妹から提出させたCADをステータス解析した。
「最後に司波深雪のCADにインストールされているA級魔法 氷炎地獄インフェルノとニブルヘイム。一般人がプログラミングできる訳がない」
「!?」
「ルシル様……!?」
「司波達也のCADは軍事機密の塊だな。私にはCADにどのような魔法がインストールされているのか解析してしまう異能の目がある。魔法科高校史上初の推薦入学になる理由の一つでもある」
司波達也は完全に私に恐怖しているね。
「深雪さん、ルシル様のおっしゃることに間違いはないかしら?」
「他のCADを解析していただいて証明する手もある」
真由美と克人も追い込みをかけた結果、深雪は「はい……」と認めた。
「これ以上ふざけた頭の中お花畑発言するようであれば、司波達也のCADの中身も含めて、
「ッ、お待ちください! 申し訳ございませんでした! なんでも言うことを聞きますから……」
司波深雪はもうほとんど土下座の勢いである。
「深雪……、申し訳ございませんでした……」
溜息を吐いてから、一高首脳陣に対して警告する。
「一高首脳陣には九校戦参加者にまずはどのような競技なのか、元々の起源、意義は何か、マナーモラル、法律があるのか座学研修から始めることを再発防止策のためにも勧める。人でありたければ」
その程度でこのキチガイ・サイコパスが止まるとは思えないが、念のため。
「かしこまりました」
「これから処分を決める。戻るまで『目を閉じて大人しく待機していろ』」
『言霊』で司波達也を縛った。あの不愉快極まりない目のためだ。まあ、私にあの目は通用しないけどね。『何もせずに待機していろ』では呼吸すらさせずに『再成』することすらできずに高みに上がってしまう。それではつまらない。
ルシルとリーナ、真由美、克人、鈴音だけでの話し合い…………え、何故摩利がいないのか? 奴もやらかしが過ぎる。理性的な話し合いには向いていない。
「案の定またやらかしたな」
「本当に、呆れちゃうわね。深雪から相談されなかったら危ないところだったわ」
「ルシル様は時計塔CEOだけあって法律にも詳しいですね……」
「!? それは本当ですか?」
鈴音が驚愕に目を瞠っている。
「ちょっ、真由美!」
「あっ、ご、ごめんなさい……」
まあ、いいか。真由美は嘘吐いてないよね。
あぁ、頭が痛い。バショウ煙草で一服しながらブルーマウンテンを、気分が落ちついたところで真由美に質問だ。
「それよりもあれを本当に九校戦のエンジニアにするのか?」
「うっ、エンジニア不足は深刻なんです……」
「一高の評価基準と教育、CADに依存した現代魔法師の弊害だな」
「耳が痛いです……」
「そもそも何故エンジニアが作戦を考案している? 奴は作戦スタッフを兼任しているのか?」
この疑問に全員( ゚д゚)ハッ!とした。
「放送室占拠の時といい、奴はでしゃばりが過ぎる。お前が口出しすることではないと何故指摘しない?」
「わたしはあの後で達也と深雪に指摘したわよ?」
「盲点でしたね……」
「うむ……」
「奴の魔法兵器作戦は公序良俗にも反する。どうしてもエンジニアとして採用したいなら……」
司波達也には選手の起動式の改良だけに注力させ、新魔法兵器は禁止、作戦については関わらせないこと、九校戦入りはさせない、自宅謹慎させることに決定した。自宅謹慎は四葉真夜から通達させる。
それから、雫とほのか達の担当エンジニアから外す。選手の信頼を裏切ったのだから当然だ。
これでほのかが司波達也に依存することはなくなった。
え? 一年女子の担当エンジニア? 必要ないだろう。予めシルバーが改良しておくのだ。これだけで十分過ぎるアドバンテージだろう。日々の体調によって調整など非効率極まりない。だから現代魔法師はCADに頼り過ぎだというのだ。体調が悪いのであれば出場辞退しろ。
原作終了後、消防やレスキューではあれが調整したミラージの起動式がそのまま使われているのだ。人によって魔法力は様々、あの起動式であれば対応範囲内だろう。いくら未成年で成長著しくても10日間程度の短い期間だから問題ない。それくらいシルバーは反則だ。
ルシルは深雪を呼んだ。
「深雪、あれの目、精霊の眼エレメンタルサイトだろう?」
「!? …………はい……」
「あれには種類があってね。調整の際に透視しているね?」
「!?」
「ちょっ、それ、犯罪じゃない!」
「そう、不愉快極まりない悪質な性犯罪だね。深雪があれの力を抑制しているように見えるが、透視を禁止することは可能かな?」
「…………いえ、そこまで精密な制御はできません…………完全に目を封印することは可能ですが、」
「深雪の魔法力も更に制限される、か」
「は、はい……」
「……司波、お前達は十師族だな?」
克人の確信した問いかけに深雪はビクッとした。
「深雪、もう諦めろ。他言無用を誓ってもらえばいいだろう」
「は、はい……」
「克人さん、真由美さん、その家の過去から素性を隠す必要がある家は何処か想像してみなさい」
「……四葉、ですね」
「納得しました」
「……ルシル様はご存知だったのですね……」
「君には深夜さんの面影がある。それに精神干渉系魔法への高い適性と強力な魔法力。見た時にすぐに四葉だと確信した」
「お母様をご存知なのですか……」
「天海当主継承儀式の際に十師族から、四葉からは当主名代として深夜さんが出席していた」
「申し訳ございませんでした……」
「まさか、四葉ご当主の双子の姉の、四葉直系でしたか……」
「四葉当主真夜さんから発表があるまで口外禁止するように。大漢崑崙法院の怨霊がまだいるからね」
「かしこまりました」
ということで司波達也を呼び出し、精霊の眼を封印して、妹への情動も消した。
司波達也を退室させた後でルシルは真由美と鈴音達に質問した。
「過去九校戦スピードシューティングで振動系などでクレーを破壊した選手はいないか?」
「それは……、少々お待ちください」
鈴音が調べた結果……
「ご指摘の通り何人も存在しています」
「おい……、もう禁止を通達するしかないレベルか…………私は九校戦に興味も関心もなかったからね……」
「ルシル様のおっしゃる通り、現代魔法師は狂ってると指摘されても否定できませんね……」
「軍事パフォーマンスはピラーズとモノリスだけだと理解してもいないのか? 真由美さんはクレーを打ち抜いているよね」
「はい……」
「烈爺にも通達しておくが、臨時師族会議でこの問題を共有認識させる。七草と十文字当主には予め真由美さんと克人さんが知らせておくように」
「かしこまりました」
「全く、今まで指摘されて炎上しなかったのが奇跡だ」
「御前様のおっしゃる通りですね」
頭が痛い
ルシル君とリーナの帰り道、真由美と深雪、雫、ほのかまで付いてきた。
「何か用?」
「ルシル様にお礼をさせてください」
「ルシル様になんでもすると約束したからです」
「わたしとほのかが大変なことをすることを防いでくれたお礼になんでもします」
「なっ、なんでもします!」
えぇ……
持ち物の一つのホテル最上階の部屋に入ってから、女の子達はリーナと一緒に美肌温泉で入浴後、寝台に座ったルシル君に跨ってきた雫、足に跨ってきた真由美と深雪……
「わ、わたしは、」
「ほのかは見ていなさい」
「は、はい……」
顔が真っ赤な三人とヤッてしまい、リーナも混じり、ほのかにはずっと見学させた(笑)
ほのかはこの織地でもドMだな(笑)本当にどの織地でもほのかを抱く気にはならないから仕方がない。ほのかに見られているというシチュエーションだけで雫も興奮するから最高だ(笑)
後日、雫とほのかも九校戦を辞退して一高首脳陣は混乱した。
「北山さん、光井さん、辞退する理由を聴かせてもらえないかしら」
「ルシル様に指摘されなければ犯罪行為をすることになっていたことに愕然としました。わたし達には将来軍人や犯罪者になる意思も予定もありません。やる気がなくなりました」
雫にほのかも頷いている。
「まさか犯罪者テロリストになることになっていただなんて思いもしませんでした……」
「しかしそれは天海君が未然に防いでくれたじゃないか」
「ルシル様が指摘してくれなかったらどうなっていましたか?」
ここで一高首脳陣は呻いた。
「一高は信頼できません。まさかあんなことまでされていただなんて……」
「嫌悪します……」
裸を透視されていたことを暗に示し、真由美と克人、鈴音は諦めた。
「わかりました。北山さんと光井さんの辞退を認めます」
「真由美!?」
「渡辺さん、彼女達の信頼を失うだけの理由があるのです」
「渡辺、諦めろ」
「市原と十文字まで……」
では失礼しますと去っていった雫とほのか。
「…………真由美、北山と光井に何があったんだ?」
「名誉に関わることだから口外できないわ」
「渡辺さん、詮索無用です」
「知る者は少ない方がいい」
人の口に戸は立てられないから。
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