本好きの念能力者 @ 魔法科高校   作:avagnale

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生臭坊主と達也


九重寺にて

 

 早朝訓練後、達也が九重八雲和尚に天海ルシルについて知っていることはないかと質問した。

 

「そうか、ルシル君と同じクラスになったのか、深雪君は」

 

「天海君をご存知だったのですか?」

 

「飲み友さ」

 

 茶飲み友達とは表現しない生臭坊主だ。普通に酒をルシルと飲んでいる。

 

「10年前だったかな? 突然東京湾に謎の超巨大タワーが出現した。それがザ・ルシフェリア、通称「時計塔」。彼処に忍び込もうとしたら、後ろをいつの間にか取られちゃってねぇ」

 

「まさか、師匠がですか!?」

 

「そう、当時5歳の幼子に、ね? アポくらい取れって、簀巻きにされてお説教されちゃったよ」

 

「……それは本当に5歳児ですか?」

 

「そうだね。信じられない気持ちも分からなくはないけど。時計塔内部は案内してもらえたよ」

 

「…………あのザ・ルシフェリア内部では一体何をしているのですか?」

 

「農業畜産漁業製塩製糖業製茶業林業などなど、様々なことをしているよ。あれのお陰で日本の食料自給率は大幅に向上したからねぇ」

 

「資源商社として有名なのは頷けますが……正直深雪を上回る魔法力というのも信じられないのですが……」

 

「既に故人だけど父君は古式の家で、彼の母方の祖母がドイツから帰化したから、彼はクォーターだね。天海家は陰陽師安倍晴明縁の由緒正しい家柄さ。彼は「今晴明」と評判だ」

 

 達也は目を瞠った。

 

「家柄的にも君達の叔母上も頭が上がらない存在だよ、天海家は」

 

「そこまで……」

 

「絶対に彼を敵に回さないようにね? 社会的に抹殺されるから」

 

 達也は驚愕に目を見開いた。

 

「食料電力水素を含めた資源供給止めるぞ?って脅されたら、ねぇ?」

 

「納得しました」

 

 八雲は「これは表向きは公開されていないんだけどねぇ」と続けた。

 

「旧私立魔法自然科学高校……現国立魔法大学付属「私立」第十高校の設立者もルシル君だ」

 

 達也は目を瞠った。

 

「魔法科高校の中で唯一の私立だ。そして十高に改名する過程で十山がルシル君の逆鱗に触れて数字落ちした原因でもある」

 

「……十山が数字落ちしたのは国防軍との癒着が過ぎるのと、まるで特高のような在り方が問題視されたからではなかったのですか?」

 

「あくまでもそれは表向きの理由さ。あそこの理念は魔法と第一次第二次産業の融合、魔法の平和利用だ。国防陸軍情報部のエージェントであった十山つかさは魔法大学に第一期卒業生を200名進学させたことに目を付けて、もっと実践的な軍人教育を、将来は国防軍に進路をと要求したそうだ」

 

「それは……」

 

「特に目を付けられたのが主席の十神遼介君だ」

 

「十神が在籍していたのですか……」

 

「十神のリアクティブアーマーは国防軍としても欲しいのだろうけどね。遼介君はルシル君への恩返しのために将来は時計塔の警備部門や十高の教師になりたいそうだ」

 

「なるほど……」

 

「十高の理念と遼介君達への干渉に「ホルスタインがふざけるな」と激怒したルシル君に十山つかさは八つ裂きにされて、廃人になってしまった」

 

 何故にホルスタインか? あの無駄に大き過ぎる胸である(笑)

 

「十山の魔法障壁を物ともしなかったのですか……」

 

「ルシル君曰く「薄っぺらい紙装甲、ホルスタイン詐欺」だってさ」

 

 達也の口が引きつっている。その様子を見て八雲は愉快そうに続けた。

 

「数字落ちエクストラの「十神」が復権したのもルシル君……御前様があれの研究成果を昇華した結果、鶴の一声だね」

 

「それは……御前様ですか……」

 

「日本政財界最大の、フィクサーでもある。御前様の前では立ち居振る舞いに気を付け給え」

 

 元老院の頂点だ。今生でも幸運の女神グライフェシャーンの加護は抜群だ。

 

「わかりました」

 

「国防陸軍情報部は天海家がどれだけの権力者か認識していなかったんだろうね。陸軍大将が顔面蒼白を通り越して真っ白な表情で土下座して謝罪したそうだよ?」

 

「陸軍大将自らですか……」

 

「首謀者達は降格、十山つかさのいた防諜工作部隊は解体されて全員島流しさ」

 

「良くそのような裏事情を師匠はご存知ですね……」

 

「飲み友だからねぇ。御前様は温厚な人柄で平和主義だけど、害虫には苛烈になる。十山つかさを廃人にした精神崩壊の過程なんて拷問という言葉ですら生温いよ」

 

 その後の末路もねと内心呟いた八雲。

 

「…………もしや精神干渉系魔法も相当な資質なのですか?」

 

「深雪君が可愛く見えるレベルだね」

 

「…………天海君を怒らせないようにします……」

 

「友人になればあれほど頼もしい人間もいないだろう。仲良くすることをお勧めするよ」

 

「そうですね……、深雪の初恋想い人でもありますから……」

 

「ほう、それは初耳だね! お似合いじゃないか」

 

「ありがとうございます。……彼が転校してしまって深雪は嘆き悲しんでいました。一高で再会が叶って本当に良かったと思います」

 

「あ〜〜、それはあの時期に前御前様が御逝去されたことから、時計塔CEO就任なんかで多忙故の退学じゃないかな」

 

 いや、アバターもあるし、多忙とは無縁だ。深雪の、四葉の反応を見極めるため、原作のようにキモウトになろうものならポイ捨てするためだ。

 鬼畜? それは褒め言葉だ(笑)

 

 達也の分解などルシルには通用しない。お守りもあるから分解されるのは達也だし、そもそも念能力の【発】により、ルシルにこの世界の魔法など効かない。

 

「それは……、確かに仕方がないですね……」

 

 仕方がないことだったと納得した達也。そのような大物なら迂闊に事情を説明できないのだから。

 

 

 

 

 

 




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