エリカは帰宅後、ルシルにお願いされたことを寿和に伝えた。
警視庁のH/Pを確認した寿和は眉を顰めた。
「本当に指摘された通り土曜日しか開催してないな」
「でしょ? 旧埼玉なんて木曜か金曜だし、一カ所だけ。他も平日。魔法科高校は土曜日午前中授業あるんだし、講習会丸一日なんて学校休むしかないじゃない。ただでさえ詰め込み教育なんだから、日曜日に開催してもらいたいって」
「あのお方は本当に法律に詳しいな……警察の俺よりも詳しいと思い知らされるよ……」
「一銃一許可」といい、公安が刺されるのも洒落にならない。
「あのお方? …………なんかルシル君って相当な権力者に思えるんだけど、一体何者なのよ?」
寿和は真剣な表情でエリカを見つめた。
「…………極秘だぞ?」
「え、う、うん……」
「『時計塔』ザ・ルシフェリアCEOだ」
「はあっ!? 無茶苦茶大物じゃない……」
「そういうことだ。多国籍企業の、電力水素他資源金融で圧倒的だからな。政府も逆らえないんだよ」
「納得したわ……」
「時計塔の要求は理不尽なものじゃない。至極真っ当なものだ。消費税諸々の廃止改正減税で日本はバブルになった」
「時計塔の要求だったの!?」
「ああ、財務省は怠けるのも大概にしろ。財源を確保するのが貴様等の仕事で、消費税は貴様等が楽をするためだろうがってな」
合法的に、時計塔が日本に納税しないようにしてやろうかと、お話し合い(メンタルアウト)したという裏話もある。
「結果が物語ってるわね……」
「他にも選挙カーの騒音は公害だってな。妹姫達の安眠を妨害されてガチギレしたとか……」
「ああ……、あれはあたしも鬱陶しいって思っていたわ……」
「選挙管理委員会や警察にもクレーム入れたんだよ。民主主義ふっざけんな、ってな?」
「うわぁ……、民主主義否定しちゃうんだ……」
「エリカ、自分の子供や弟妹が選挙カーの騒音で眠れなかったら、ようやく眠ってくれたのに、安眠を妨害されたらって想像してみろ」
「頭にくるわね」
「そういうことだ。大声で名前名乗るだけで投票してもらえると思ってるバカ、嫌悪しかしないから投票しないだろ。むしろ選挙投票なんかいかないよってな。……野党とか政治に携わったこともない連中が与党になったとして、政治できるのか?って論破できるくらいのお方なんだよ……」
「…………ルシル君、年齢偽ってないかしら?」
「生まれながらにしてエリート貴族教育を施されたとしか思えないんだよ……」
「ルシル君、そっちの方面でも化け物だったのね……」
改めてルシルの、時計塔の権力を認識させられたエリカは本気で天海家就職を決意した。
「魔法科高校が無法地帯だなんて洒落にならないからな。法改正されるだろ」
とそこへ寿和に連絡が……
「はい、藤林さん、どうかされましたか? ………………………………それは、はい、派遣します。どうぞよろしくお伝えください」
通話終了後
「エリカ、「年少射撃資格」の件で連絡があった」
寿和から二高の事情説明をされたところエリカは納得した。
「藤林さんって、もしかして古式の名門、藤林?」
「ああ、電子の魔女エレクトロン・ソーサリスの異名で呼ばれてる藤林響子さんだ。時計塔CEO秘書だな」
「うわっ、有名人じゃない。和兄貴がそんな有名人とプライベート・アドレスどうやって交換したのよ?」
「一高で殺人未遂事件あっただろ? あの時通報されて以来のお付き合いだな」
「えっ、お付き合いって、」
「交際してる」
「えっ、そんな高嶺の花と和兄貴が!?」
「エリカ、お前な……、あのお方からの紹介なんだよ。古式の名門藤林と実質古式の千葉なら相性抜群じゃない、ってな」
「なるほどね〜 和兄貴チャラチャラ遊んでないでさっさと身を固めた方がいいわよ」
「あのお方の紹介で遊べないだろ…………美人でスタイル抜群だし、性格もいい。真剣に交際してるよ」
「うわっ、惚気られた。次兄上もあんな女じゃなくてもっとまともな女と付き合えばいいのに……」
「……お前の口出しすることじゃないって言いたいところだが、一高の色々な問題が発覚してから、俺にも思うところはできたよ」
「でしょ? 小手先の技に傾倒して、」
「エリカ、お前も摩利同様にでしゃばりが過ぎるのは控えろよ」
「うっ!?」
「一高放送室占拠事件だったか? 確かに風紀委員の口出しすることじゃない。魔法を使ってないんだからな。騙し討ちのやり口を聞いた時には俺も嫌悪した。普通は話し合いからだ」
「えっ、そんなことあったの!?」
「司波達也が主犯だ」
「え……」
「しかもその妹はそのやり口を笑っていたそうだ。エリカ、それがどれだけ異常なことなのか考えてみろ」
「…………警察なら普通は登降を呼びかけるわよね……」
「そういうことだ。疑似キャストジャミングの無自覚テロ行為の件でも形だけの謝罪だったからな。反省する様子もなかった。あれはキチガイ・サイコパスそのものだよ」
エリカは否定できなかった。
「…………あの事件の時に狩猟部の馬が暴走したそうだ。馬もサイオン感受性が高いんじゃないのかってな……」
「えっ……、それ、大丈夫だったの?」
「幸い振り落とされるくらいで済んだみたいだが、下手したら死ぬぞ?」
「そうよね……」
「エリカ、キャストジャミングもどきについて、喫茶店で奴等は自慢気に話していたんだろ?」
「う、うん……」
「だから考えが足りないバカだって言われるんだよ。サイオン波酔いして倒れる生徒が続出したのに、それを自慢する神経が理解できない。…………しかも、本人達はアンティナイトによる本物のキャストジャミングを経験しておきながら、だ」
「……もしかして、達也君と深雪が退学したのって……、」
「退学になったのか? ……大方また何かしらやらかしたんだろうな」
「和兄貴が知らないなら、公安かしら?」
「公安は警察とは別組織そのものだ。奴等のやり口はえげつないから、碌なことになってないだろうな」
「そうよね……」
「エリカは摩利の二の舞にならないようにしろよ。迂闊な言動行動で摩利も問題視されてるみたいだからな……」
兄の忠告にエリカは青褪めた。
「最悪檻の中だぞ?」
「うっ……、き、気を付けます……」
警察の身内に犯罪者とか勘弁してくれと。
「わかればいい。修次のことは見守るしかない」
寿和は内心、問題はすぐ下の妹の早苗だなと呟いていた。エリカへの嫉妬とネチネチした嫌がらせが醜い。もう嫁き遅れ確定である。
「それでね、あたしルシル君の妹さん達の護衛側仕えに勧誘されちゃった」
「マジか……。いや、エリカなら勧誘されて当然なのか」
「もう凄い金額だから快諾しちゃった。お茶とお花への習熟、秘書検定1級は必須だって釘刺しされたから頑張るわ」
「厚遇されるのにも理由があるからな。天海家側仕えなら求められても不思議でもないな」
「やっぱり天海家って名家なのね」
「明らかだな」
千葉寿和は警察署の「年少射撃資格」講習会日曜日開催のために動いた。下手したら警察省にも飛び火しかねないため、即座に日曜日開催が決定した。これが功績として認められ、寿和は警視に昇進した。もうトップクラスのキャリアだ。時計塔CEOからの覚えがめでたいということで異例の昇進をしていくことになる。
これをエリカから報告されたルシルはそういえば今更だけどと……
「エリカ達は何故居残りなんかしていたの?」
「レオと揃って1秒切れないでいたのよ。美月は待ってくれていたの」
「速度、か。そもそも1秒切れないでも別に問題なくないかな」
「なんでも工夫よね」
「制御力訓練の方が大切だと思う」
「制御力訓練ってどんなの?」
「千葉にはないのかな?」
指先サイオン文字高速変換していくとエリカは目を瞠った。
「千葉では『見て覚えろ。盗め』なのかな?」
「え? それは当然でしょ?」
「……例えば自転車に乗るのに最初は親兄姉の補助があるものだけど、それと同じで魔法訓練にも最低限の補助は必要だと思うよ?」
エリカは愕然として「…………うちって脳筋だったのね……」と呟いている。
「ルシル様、エリカはもう矯正しなければ治らないのではありませんか?」
「だろうね」
ミアがエリカにサイオン同調の説明をしたところ、保健体育閨実技になってしまった(笑)同調すると女性は興奮して止まらなくなるとリーナとミアは証言している。
閨実技の後でエリカからキチガイ・サイコパス兄妹について知っていないか質問された。
「SAN値直葬」
「産地直送? …………そういうことだったのね……」
エリカは奴等がどこぞの研究所の調整体だと判断した。それで失敗作として実験体になったのだと。
調整体というのは事実だが、SAN値直葬を勘違いしているね。ああ、産地直送でも間違いではないか。四葉という産地に直送したのだから。
「…………ルシル君、明らかにあたしのサイオン量増えてるのはどういうことかしら?」
「私とすると上がるんだよね」
「え……、」
「誰にも話さないように。リーナとミア達にも口止めしてある」
「はい、わかりました。…………ルシル君謎な体質してるわね……」
エリカも益々積極的になった。
後日実技レベルが大幅に上がったエリカに驚愕した幹比古がルシルを紹介してもらうことになる。
「ルシル君が古式に精通しているって本当かい?」
「一通り烈爺に習ったからね」
という設定だ。
「ちょっと相談に乗ってもらいたいことがあるんだけど……」
ミキヒコの奢りで外食に行って、一高に戻ってミキヒコのCADを調整した。
「はい、終わり」
「え、ルシル君指トンってつついただけだけど……」
演習室を借りてミキヒコに魔法を発動してもらった結果、違和感なく使えると感動している。
「ルシル君一体どうなってるんだい?」
「私の特技。CADにどのような魔法がインストールされているか、一目で理解できる。どのような無駄があるのかもわかる。それを調整するのもあのように」
「…………魔法科高校史上初の推薦入学になるレベルって凄いんだね……」
「古式特有の隠蔽はCADには不要だから消しておいた。今までスムーズに発動できなかったのは儀式により感覚が狂っていたからだろう」
「ありがとう……」
ミキヒコにはこれは極秘にとギアスで誓約してもらった。もしこれがバレたらエンジニア要請が鬱陶しいことになるから。
「でも幹比古、汎用型CAD使う必要あるの?」
馬鹿になりそうだということを説明したところ、幹比古は難しい顔になった。
「リーナとミアもCAD使わないんだって」
「ルシル君達凄いね……」
「エリカと幹比古は精神修養きちんとしているだろうけど、入学初日のいきがったバカといい、CADは害悪極まりないのではないかとね」
「普通に銃刀法違反で犯罪ね」
「なんでもかんでも暴力に頼るのも頭が可笑しいと思います」
「私達のような社会的弱者を守ってくれるのが法律だ」
「ルシル君達のどこが社会的弱者なのよ……」
「あるものは有効活用しないとねwww」
エリカは内心『ルシル君インテリ系ヤクザじゃない』とツッコんでいた。
「失敬な。誰がインテリ系ヤクザだ」
「わたしの心の中どうやってわかったのよ!?」
「顔に書いてあった」
開心術超便利
「ルシル君、反則……」
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