「ヒヒーーーン!?」
涎物
「ヒヒーーーン!?」
「馬がお肉にされるって怯えてるからルシル君はもうここにこないで!?」
「なんて失敬な。美味しくなれと可愛がっているのに」
『出禁!!!』
部活連本部に私と真由美、克人、鈴音、由紀、狩猟部が集まり、会議になった。
「狩猟部が今のままでは銃刀法違反で犯罪、イメージ最悪ということは理解したわ。でもだからってお肉にすることはないじゃない」
「馬に罪はないです!」
「今のままでは何一つとして身に付かないよ? どんだけ属性あるのかな?」
「純粋な狩猟部になるか。馬術部になるか。どちらにする?」
克人も決断を迫った。
「純粋な狩猟部になりなさいよ。そうすればクラウドボール部のコートできるし」
「それが本音か!? 風波あんたやり口汚いわよ!」
「あ、それは誤解。私の発案だから」
「ルシル君だったの!?」
「た、確かにルシルさんを見て馬達は異常に怯えていましたよね……。『幸運の女神の愛子』って有名な資産家のルシルさんが愛馬主だったりしますか……?」
遺憾なことに人でなしを見る目でルシル君は見られている。
残念。それは褒め言葉だ ♪
「ピンポーン! エイミィにはルシル君お馬さん検定8級を授けよう。表彰状〜〜〜」
「そんな表彰状、嬉しくありませんよ!?」
「しかもお馬さん検定レベル高いわね!?」
「ルシル君、天使の顔なのに悪魔だったの!?」
「それは褒め言葉だ」
「ーーーッ(# ゚Д゚) 確かに嘘は吐いていないけど、風波、あんたなんでこんなことに頷いたのよ!?」
「一々移動時間も送迎予算ももったいないじゃない」
「魔法科高校は国立であって、国民の血税で運営されているって理解しているのかな? 何一つ学ばないようであれば、税金の無駄遣いで売国奴認定されるよ?」
ルシルの指摘に狩猟部は全員たじろいだ。
「…………部長、わたしは馬術部を選択します」
エイミィの選択に部長は頷いた。
「わたしも馬術部を選択するわ。皆それでいいわね?」
狩猟部部長に部員は全員頷いた。
えぇ〜〜、ビジネスマンとしてそれはどうなのよ?
「馬術部になってもブラック過ぎるから農業高校馬術部などに求人を出して朝の餌やりや厩舎掃除は委託しなさい。大会がなくなればその分予算も浮くだろう」
馬術部経験者は馬に関わる仕事をしたい人達も多いのではなかろうか。いや、家畜の奴隷だから忌避するか?
「朝4時起きがなくなるのは嬉しいです」
「馬の維持費用馬鹿高いけど、この予算から賄えているとは思えない。その辺りどうなのかな?」
馬術部の馬一頭の維持費はエサ代や装蹄費、医療費などを含め月間約15万〜20万円以上が目安だ。年間一頭あたり200万円〜300万円を超えるケースも珍しくない。
ここ農業高校でも農大でもないから、エサ代平均よりも馬鹿高いな。
それを七頭もってねぇ……
「うっ、……ルシル君に指摘された通りバイトしてます……」
「でも魔法師のアルバイト代、高いの多いから……」
「せめておやつのニンジンとリンゴ、トウモロコシだけでも一高で収穫できるようにすれば予算削減できるだろうね。園芸部に栽培してもらうとか。堆肥を園芸部に譲渡しているのだから、交渉の余地はあるだろう」
「トウモロコシはおやつにもなるの?」
「スイートコーンはおやつ、デントコーンは家畜用飼料という違いがある。デントコーンは人が食べる物ではない」
「へえ〜、トウモロコシにそんな違いがあったのね」
「スイートコーンを間引いたヤングコーン、間引く理由は栄養を集中させるため。馬はヤングコーンも大好き」
…………ほとんどヤングコーンについて知らなかったとは……
「天海君、気候的にリンゴは難しいのではありませんか?」
「時計塔の電力安いから、ガラス温室の空調を調節するとか、氷炎地獄インフェルノのダウングレード版エアーコントロールか刻印式魔法陣でガラス温室内の温度を下げるとかやりようはある。魔法の場合は刻印式魔法陣の方がお手軽かな」
「問題はガラス温室ですね。予算的に無理があります」
「寄付しようか?」
「それは助かりますが、よろしいのですか?」
「所詮その程度端金」
「流石は超絶資産家ね……助かります……」
「ここは魔法科高校だからな。電力よりも魔法で温度を下げる方が好ましいだろう。二年の五十里に相談してみよう」
ということで園芸部と五十里啓も参加して会議になった。
「園芸部は賛成します。ガラス温室の寄付もありがたいです」
「五十里啓さん、氷炎地獄インフェルノのダウングレード版エアーコントロールの刻印式魔法陣を作ってみないかな?」
「そうだね。僕もその魔法陣に興味がありますから協力します。でも天海君、刻印式魔法陣はサイオン消費量凄いものがあるよ?」
ちょっと内緒話
「自然に漂うサイオンを吸収する仕組みを考案した」
「!? それは、凄いね……」
「国防軍にこの技術がバレると、非魔法師にも流出したら非常にマズいので内緒にしてね。五十里は刻印式魔法の権威だから誘拐対象になる」
「それは、確かに……わかった。内緒を誓うよ」
内緒話終わり
「刻印式魔法陣で亜熱帯エリアと寒冷エリアに分ける。亜熱帯エリアではカカオやバナナなども栽培する」
「何故カカオとバナナになるの?」
「コンパニオンプランツとして相性がいい。バナナの木が日陰になってカカオの成長を助ける。馬はおやつにバナナも好きだからね。バナナの皮はカリウム爆弾で発酵させれば液体は肥料になる」
「ルシル君本当にお馬さん好きね……」
新生馬術部が『お肉にしようとしていたくせに』と内心ツッコんでいる。
「他の野菜芋果物は園芸部や料理部が使えばいいし、チョコはバレンタインにも使えばいいんじゃない?」
「無駄がありませんね。第一次産業と魔法の融合というのも素晴らしいと思います」
「しかし天海は農業にも詳しいんだな?」
「農業は国の基本、礎。人間食べなければ生きていけないからね」
「確かにその通りだ」
「ということで、馬、お肉にしよう♥️」
『止めてください!!!』
ちっ
ということでガラス温室をインベントリから園芸部に移築した。
『…………』
「…………ルシル君、まさかインベントリ?」
「そういうこと」
「…………何故ガラス温室を収納していたんだ?」
「現代魔法で創れないかなって。錬金で鉄骨鉄筋にしてある」
「まるで夏休みの宿題感覚ね……」
「これは……、どのくらいの面積があるのですか?」
「10a」
「10アール…………1,000㎡、……市場価格は2,300万〜ですね……」
「高っ!?」
「それを自作しちゃうのね……」
「ちょっと待ってね」
指をパチンッとな。
ガラス温室に入ると、空間圧縮された広大な空間に誰もが驚愕している。空間魔法のことを説明したところ、やはりお馴染みの反応をされた。
「五十里啓さん、エアーコントロール断熱の刻印式魔法陣こんな感じでどうかな?」
「啓でいいよ、ルシル君。…………なるほど、よくできてるね。(……これがサイオンを吸収する仕組みか……)……断熱はなんのためにあるのかな?」
「ガラス温室、夏は太陽の熱がこもって灼熱地獄になるからね」
「なるほど…………この部分は?」
「作物毎に時間帯で気温コントロールする」
「凄いね…………うん、問題ないと思うよ」
「それでは、はい」
亜熱帯エリアと寒冷エリアの間の壁とエリア毎に刻印式魔法陣をコピペした。
「ええと……、ルシル君、いきなり刻印式魔法陣が現れたのは何故かな?」
「私の開発した『コピーアンドペースト』略してコピペ魔法」
「凄いね……」
魔法陣は隠蔽しておいた。
「え……、ルシル君、魔法陣消えたけど……」
「技術漏洩対策のために隠蔽した」
「本当に凄いね……」
隠蔽が終わったところで他の入室を許可した。
「うわっ、本当に寒くなったわね…………ルシル君、この水のトレーは何に使うの?」
「いちご水耕栽培」
「いちごまで作れるのね……」
温度調整するけどね。寒暖の差で農作物が美味くなる。
「…………亜熱帯エリアは本当に暑いな……」
「さて、地面にトウモロコシの種植え、棚のプランターに種芋、大豆野菜の種植えよろしく。私はバナナとカカオ、リンゴの苗など植えていくから」
園芸部の指導で、馬術部や料理部、クラウドボール部、テニス部、生徒会も参加した。クラウドボール部とテニス部の参加は美味しい果物目当てだ。園芸部は料理部とのかけ持ちも多いらしい。
「…………十文字君と摩利もよく参加したわね?」
「天海が率先垂範しているのだ。それにこれは貴重な体験だからな」
「あたしだってもう天海君に刺されたくないんだよ……」
「会頭と風紀委員長に同感です。自分もこれは貴重な体験だと思いますし、天海君にこれ以上刺されたくない……」
決闘常連者の摩利とはんぞー君は今度ルシル君の不興を買うと檻の中ということを理解している。
「自分達で育てた野菜芋果物の収穫って楽しみですよね」
あーちゃんからも好評だ。
「ルシル君、種植え終わったわよ」
「お疲れ様。それでは」
〈シュトレイトコルベン〉
フリュートレーネの杖を具現化してから祝詞を唱える。
『癒しと変化をもたらす水の女神 フリュートレーネよ
側に仕える眷属たる十二の女神よ
御身に捧ぐは命喜ぶ歓喜の歌 祈りと感謝を捧げて 清らかなる御加護を賜わらん
あるべき姿を取り戻すため 清き流れをこの地に』
「ええっ!? 芽が出てきてどんどん成長してる!?」
「木も成長しているぞ……」
「リンゴが実った!?」
「他の野菜や果物も!?」
ヤングコーンを間引いていけと促したところ、慌ただしいことになった。
……………………
「終了」
身食いが生まれたらマズいため、魔力は回収した。
「……………………ルシル君、一体どういう魔法なの?」
「天海家古文書にあった今では喪われた西洋魔法魔術の一つで癒やしの儀式」
「……あの呪文?は英語やドイツ語フランス語などとも違うようでしたが……」
「今では喪われた謎言語で呪文ではなく祝詞」
ユルゲンシュミット語です。
「……その杖はどういうものなんだ?」
「伝承では水の女神の杖とある」
〈リューケン〉
「消えちゃった……」
全員でガラス温室を見学したところ……
「ルシル君、これ、なんの実なのかしら?」
「黒胡椒」
「胡椒まで栽培できちゃうの!?」
「よくそのような苗まで持っていましたね……」
パイナップル、コーヒー、マンゴー、マンゴスチン、シークヮーサー、ドラゴンフルーツ、パッションフルーツ、パパイヤ、カラマンシー、ランソネス、ランブタン、バンレイシ、チェリモヤ、アテモヤ、ココナッツなどの南国フルーツにも驚愕している。
ココナッツはジュース、クリーム、シュガー、オイル、ヨーグルトなど副産物も美味しい。
「バナナ収穫して」
「ちょうど食べ頃の香りね」
「バナナを収穫直後に食べることができるのは嬉しいですね」
バナナは普通なら収穫後、追熟保存する必要がある。癒やしの儀式の裏技だ。バナナの親株を剪定してから試食会だ。
「美味しい……、なんなのこのバナナ……」
「…………味が濃厚でこれ程まで上品な甘さのバナナは初めてですね……」
「美咲さん、バナナの皮を切り刻んで水に浸けて発酵させて液肥にしておいて」
「う、うん、わかったわ。ルシル君、農業詳しいのね?」
「目指せ、スローライフ」
「それはわかるわ。自分で作ったもの食べた時最高よね」
意気投合しているルシルと料理部部長花山美咲に、雫やほのかは眉を顰めた。
「…………リーナ、ミア、あれいいの?」
「ルシルさん花山先輩と仲良くなっちゃってるよ?」
「ルシルは年上好きだから、それに家庭的な女の子どんぴしゃなのよね」
「…………ルシルさんを盗られないかって不安にならないの?」
「優れた男の魔法師は多くの女と子供を作ることが推奨されているじゃない」
「ルシル様の義務です。スタイル的にも美咲さんはルシル様の好みですね」
「…………リーナとミアは嫉妬しないの?」
「? 別に誰と恋愛しようと自由じゃない。それにわたしは料理できないから、料理のできる女の子大歓迎するわ」
「役割分担ですね」
それにルシルはあなた達とも仲良くしているわよねと。
ルシル君の最愛はリーナとアリサ、ミアであるため、毎日毎晩激しいため、心配していないというのもある。アリサはまだだし、負担が大きいし、お願いだから他の女の子達と発散してきてと……
リジェネにより絶倫ですwww
「…………リーナ、正妻ポジションとして安定感あるね……」
「それで壬生先輩とも仲良いんだね……」
「それにしてもこのバナナ美味しいわね」
「バクバク食えるな。部活前の栄養補給に丁度いいぜ」
「これ、他のバナナは食べられなくなりそうですね……」
「(これ、時計塔の美食かな? やっぱりルシル君は……)」
エリカとレオ、美月、幹比古もバナナを堪能している。
時計塔のH/Pからバナナの価格を確認した幹比古は目をひん剥いた。
「…………レオ、あんまりバクバク食べたらマズいよ」
「ん? 幹比古どうかしたんか?」
そこで幹比古から差し出された端末に表示されていたバナナの価格に全員目をひん剥いた。
「(これ、一本3,000円するの!? た、確かに時計塔の美酒美食有名だから……)」
「(…………ここのお馬さん人よりもエンゲル係数高いよ……)」
「(…………羨ましい家畜がいたもんだぜ……)」
お肉にされる運命から脱したところ、まさかの待遇について……
寒冷エリアでは……
「天海君、あのたわわに実っている大きな白い実はなんですか?」
「フルーツミルクの実。ホルスタインと水牛タイプがある」
「え……、それってまさか……?」
「成分的には生の牛乳と変わらない。ゴーダチーズやモッツァレラチーズ、バター、生クリームやホエーもできるよ」
ホエーのプロテインダイエットは有名だ。
味見したところ、絶賛された。
「生の牛乳はほとんど市販されていないけど、フルーツミルクなら合法。食品衛生法および乳等省令(乳及び乳製品の成分規格等に関する命令)に基づき、原則禁止されているからね」
「そのような法律まであったのですね……」
農家でもなければ知らないことだからそこは刺さないよ。私も前世大学生時代に戦友の実家で知ったことだからね。
「生の牛乳ってこんなに美味しいのね……」
「市販されている牛乳は低温殺菌牛乳以外は腹を壊す人が多い」
瞬間加熱殺菌牛乳とかお断り。
「あ、そういえば牛乳を飲むとお腹がごろごろします……」
「安かろう悪かろう」
「そういうことだったんですね……」
「ルシル君、ミルクでわたしの胸大きくなるかしら?」
「由紀さん、多分それ、デマじゃない?」
「そ、そんな……」
「大丈夫、お胸様に貴賤はない」
多分水の因子故のコンプレックスなのだろうけど、大丈夫、本当にお胸様に貴賤はないから。
…………水のエレメンツって、ロリコン体型が反映されていると思うのは私だけだろうか?
…………エレメンツって、エロ爺の欲望の体現なのではなかろうか?
水×風×光とか狙っていたとか? …………ドン引きするよ……
「天海君、あのまるで卵の実はなんですか?」
「フルーツエッグ」
「え……、それはまさか、鶏の卵そのものなんですか!?」
「正解。中身も成分的にも鶏の卵同様だね。殻は粉々にして撒けばいい。肥料になる」
さてさて、ここで始めるのは収穫したフルーツエッグとフルーツミルク、ココナッツシュガー、インベントリに収納しておいたバニラエッセンスを使ったアイスクリーム作りだ。
「障壁魔法をボウル状態にして、卵とココナッツシュガーを入れて、湯煎は振動加速系で加熱しながら念動力でよく泡立てる」
『…………』
もったりしてきたところで、
「バニラエッセンスを入れる」
「いい匂いね」
「バニラの香りは素晴らしいですよね」
「さて湯煎は止めて、別のボウルを振動減速系で氷水のように冷やしながら、マルチタスクで抽出した生クリームとココナッツシュガーを混ぜておいたものを泡立てる。香り付けでラム酒」
『…………』
「この二つをざっくりと念動力で混ぜていく」
『…………』
「はい、完成。空中から水分を抽出して氷のカップとスプーンにして、盛り付けて、どうぞ」
「ありがとう、ルシル」
「ありがとうございます、ルシル様」
「……………………初めて見たわ、こんな魔法の使い方……」
「ああ……、障壁魔法を容器にするなど考えたこともなかった……」
「素晴らしい魔法の使い方だと思います」
「天海君凄いです……CADも使わずに……」
「やっぱりルシルの手作りアイスクリーム至福よね」
「はい、姫様達も大好きですからね」
「……これは手作りというのかしら? ……氷のカップとスプーンなのに冷たくないのはどういうことなの?」
「想像力だよ」
「…………本当に美味しいわね……」
アイスクリームも絶賛された。
「ねえルシル君、お菓子作り以外にも魔法使えたりするのかしら?」
「普通に使えるよ? マルチタスクに慣れてくるとTV見ながら季節の天ぷら揚げたり、蕎麦切りしたりできる」
「目から鱗ね……」
しかも具体的に過ぎると……
「なんていうか、料理番組の3分クッキングみたいよね……」
「正にそれだよ、エリちゃん……」
「料理は制御力訓練になる」
「凄い訓練ね……」
「…………ルシル君は農家でも余裕で左団扇、お貴族様生活できるんじゃないかしら……」
「間違いない(ですね)」
「収穫して馬のおやつに、生徒会や園芸部、料理部、クラウド、テニスなども利用すればいい」
『ありがとうございます!!!』
「余った分は農業高校のように販売すればいい。地域との交流の一環だね。園芸部、料理部、馬術部、クラウド、テニスはきれいどころ揃ってるから交代で売り子すれば人気になるんじゃないかな」
「ありがとうございます。予算が増えますね」
一高が始めた農作物直売が報道されて話題になり、直売日は多くの客で賑わうことになった。
クラウドボール部のコートは部室を空間圧縮して解決した。
感想大歓迎です ♪