「誰もルシルが危険人物とは気付いていない件について」
ミア
「リーナ、失敬ですよ」
ルシル
「リーナ、アナル体験したいの?」
土下座するリーナ乙
放課後、生徒会室に呼び出されたルシルは廊下で憂鬱そうな様子の司波達也と自己紹介した。
「天海君と深雪はともかく、何故二科生の俺まで……」
「君達どこかで活躍していたりしない? それを見られていたりしないかな? 君は体術かなりできそうだから、風紀委員に勧誘されたとか?」
「…………確かに天海君の言う通り昼休み勧誘されたが……」
達也には心当たりがある。横浜ベイヒルズタワーで魔法師の元軍人脱走テロリストを無力化したが、あの映像処理が不完全だった可能性は否定できない。
「……本郷さんに、」
「ミアは無理。見た目通り荒事苦手だから」
「…………確かにそんな見た目だな……」
「お兄様、適材適所ですよ?」
「ミアを風紀委員になど、お兄様は極悪非道なの、司波さん?」
「い、いえ……、お兄様、女の子に押し付けようだなんてしないでください」
「すまなかった……、……しかし本郷さんも相当できると思うんだが?」
「最低限の嗜み?」
「そうか……」
お兄様はミアに瞬殺されるよ? 【隠】トランプを頭や心臓にサクサク刺されたら再成できるのかな? 【隠】トランプを分解できないだろうし、再成したら刺さったトランプで即死からの再成のループになりそうだ。ミアにそのようなことさせないけどね。
「それに総代の兄が凡庸な訳がない。人を見る目はあるのではないかな」
「天海君の言う通りです。お兄様はもう少しご自分のことを誇るべきです」
「…………天海君は昨日の一科生達とは違うんだな……」
「魔法だけが全てではない。身体を動かした方が速い、適切なケースも多い。もしも魔法師の家に非魔法師が生まれてきてもそれは個性だ。その逆もね。何かしらいいところはあるのだからそれを褒め認めて愛するのが常識だろう」
「…………天海君の家が羨ましい……」
「おい、一体どんな家庭に生まれてきた?」
思わずマジレスしてしまった。
「…………お母様が亡くなる前から別居状態、父は愛人のところに入り浸り、お母様の死後半年後結婚、愛人が後妻の家庭です……」
「ネグレクトの毒親か。母君が何歳でお亡くなりになったのかにもよるが、愛情深い世話係はいなかったのかな? 司波さんはマナーに習熟しているようだし」
「はい、その方も亡くなられてしまいました……」
「私が言うのもどうかと思うが、反りの合わない、子供の教育もできない父親と同居するよりも世話係の方が頼りになるだろう。完全に育児放棄された家庭や実験体よりも君達は余程恵まれている」
「なるほど……、そういう考え方もあるのか……」
「目から鱗が落ちる思いです……」
「思春期の子供達をネグレクトしていると話せば私の両親なら激怒するね。親権剥奪してやるくらいには」
「それは、天海君のご両親が人格者だからです……」
「天海君が羨ましいよ……」
これ、大人の方に問題あるよね?
「司波さん、もしかしてだけど、後妻を『お母様』呼びしなさいだとか、言われていたりする?」
深雪は目を瞠り、ルシルを見つめてきた。
「図星か。随分と典型的なデリカシーのない父親だな」
「典型的、なんですか?」
「義理の母親で大して親しくもない相手にはお母様呼びは典型的みたいだね。天海家では養女でも可愛がって、実子同様に愛して、母上を慕ってお母様呼びだから。君達の父親には思春期の娘にもっと配慮しろと言いたくなる」
アリサも母上の着せ替え人形状態だからね。土下座父上は『我が息子と娘達超可愛い』だから……
深雪と達也のルシルへの好感度はうなぎ登りした。
「司波さんの扱いとは別にお兄様はどうなの?」
ルシルは達也へと視線を向けた。
「お兄様は止めてくれ…………高校へ入学せずに会社の仕事を手伝えと、入学祝いの連絡もなかった……」
「それは、本当に父親なのか? ……ああ、なるほど……」
「天海君、何か気付いたことがあるのですか?」
「いや、昔は魔法師開発が優先されていたみたいだから、君達の父親の正体を連想してしまってね……」
「お父様の正体、ですか?」「親父の正体?」
「聞かない方がいい」
しかし兄妹の視線の圧力に負けたことにしておこう。
「…………恐らく君達の父親は単なる精子提供者だ」
種馬扱いね。膨大なサイオン保有量の持ち主のようだし、四葉は監視しておきたかったのだろう。籍を入れたのは形だけで愛人のところとの往復二重生活はあくまでも偽装結婚かな? FLT本部長、最大株主の地位は見返りと縛り付けるためか。
二人揃って試験管ベイビーの可能性があるな。調整体だから可能性は高いのか。
「!?」
「…………なるほど、俺に愛情がないのも当然のことだな……」
「どのような経緯があったのか知らないが、父親らしいことをしたこともないのに、厚顔無恥極まりないと思ってね。母方親族から父親達の扱い、心証は相当悪いのではないのか?」
「確かに……、天海君の指摘は否定できません……」
「決定だな……」
「縁を切れ。親が自由にできるのは名付けだけだ」
ルシルが吐き捨てたところ、司波兄妹は何やら難しい顔で考え込んでいる。
「しかし入学祝いか……」
「天海君はご両親からお祝いされたのか?」
「父上からは腕時計を買ってもらって、……母上はお祝いに料理しようとしていたから、全力で止めた」
「お父様からのプレゼントは素晴らしいと思いますが……」
「天海君が全力で止めるということは……、」
「絶望的。父上が母上に『もう料理だけは止めてください!』って土下座するくらいには」
「それは……、」
「母上に料理の才能は皆無。だから外食するか料理人をお抱えにするしか選択肢になかったし、私と妹のアリサは趣味で料理するようになった」
口にしたら意識が飛びかけるとかどんだけ……
「ええと……、随分と個性的なご両親ですね……」
土下座父上とポイズンクッキング母上だからね。
「母上の手料理は見た目はまともだから余計性質が悪い。アリサもあれで気絶したことあるし」
「天海君も苦労しているんだな……」
「本当に油断大敵なんだよ。まあ、そういうことも含めて楽しいけどね」
「家族仲が良好なのは憧れますね……」
「ああ、憧れるね…………どんな腕時計を買ってもらったんだ?」
ルシルは『これ』と袖を捲り見せた。
「……パルミジャーニ・フルリエ? …………スイスの凄まじい高級腕時計……」
画像検索した目を剥いた達也に深雪は興味深くどのくらいのものなのか尋ねた。
「…………学生の身に着ける物じゃない…………それは8,000万円するだろう……」
「はっせんっ!?」
学生どころか社会人でも難しいだろうと……
「金の使い道ないから、好きな物選べって感じ?」
「本当に天海家はどんだけだ……」
「庶民」
「庶民に謝ってください……」
「庶民がそんなもの買えるか……」
幸運の女神の愛子は父親まで金銭感覚がおかしいと……腕時計一つがフェラーリよりも高いというのはどういうことだと……
生徒会室入室後、ルシルと深雪ははんぞー君から歓迎されたが、達也のことはスルー。ルシルは生徒会長達と自己紹介してから、確認する。
「七草真由美さん、ド変態包茎ストリーキングの股間バッチリ見たよねwww」
「……………………なんのことかしら?」
「その間は肯定。マルチスコープで覗き見していたのかwww」
【円】で感知していたけど、あえて確認するべきでしょう。
「…………」
「警察署突撃まで確認しなかったの?」
「…………目を疑ってマルチスコープ切ったわよ……」
「それは残念、お腹痛くなる程に愉快だったのに」
「天海君、会長は小悪魔を気取っていますが、初心なためお手柔らかにお願いします」
「これは失敬」
知ってるけどね。
司波深雪渡辺摩利と服部はんぞー君の口論に対して、眉を顰めた。
「七草真由美さん、生徒会長や風紀委員長は人を見る目があると思っていたけど、何あの酷い差別主義者は?」
「これが一高の現状なのよねぇ。わたしもこの状態を変えたいのだけど……」
「そもそも生徒会長が推薦して風紀委員長が承認したのだから、副会長が口出しする問題じゃないよね。あとは本人の意思でしかない」
「天海君に同感です」
市原鈴音は冷静で仲良くできそうだ。
「私には服部はんぞー君が誰よりも幼稚に見える」
心の中であーちゃんよりもと付け加えた。
「あ、天海君、わたしは服部君よりも大人に見えますか?」
「圧倒的に」
外見は度外視して
あーちゃんが喜ぶ姿はほっこりするね。真由美と鈴音も生温かい目で見ているよ。
妹を侮辱されたと感じた達也は服部はんぞー君に模擬戦をしませんかと申し込んだが……
「七草真由美さん、模擬戦ってタイマンという認識であってる?」
「ええ、はんぞー君は入学以来負けなしなんだけど、」
「タイマンって決闘罪という犯罪なのは知っているかな?」
『はい?』
全員ピシッと固まり、首をギギギッと音が聞こえるようにして、私を見てきた。
「暴力行為自体、暴行罪か傷害罪になる。怪我をしていなかったか、していたか。服部はんぞー君、決闘で負けなしって聞いたけど、相当刑罰重くなるよ? 今の時点で生涯檻の中は保証する」
「…………」
「司波、妹のことで沸点が低くなるようだが、落ち着け」
「……すまない……」
「司波がCADの起動式を瞬時に読み取ることができるというなら、試しに魔法を誰かに起動してもらって、それがどのような魔法なのか解析させろ。服部はんぞー君はそんなことはありえないと、確認もしていないのに決め付けないように。実際司波のような激レアな眼の持ち主は他にも存在する」
「なんだって……?」
「実際、司波さんの言う通り、本当なら重宝する。流石は歴代圧倒的筆記1位だと納得した。司波の眼はそれだけの価値がある」
「……そうね。試しに摩利とはんぞー君で起動していって。達也君に解析してもらいましょう」
ということで、検証した結果、達也は全て解析した。
「本当に起動式を読み取ることができるのね……」
「今まで立件できなかった犯罪行為も達也君で証明できるな」
いや、それがどれだけ危険なことか理解していないのか? 白でも黒とできることを? 本当にこいつらは迂闊で考えが足りないな……
だから警察と検察を兼ねる体制は問題しかないんだよ。
原作でモブがしたことを嘘を吐き舌先三寸で誤魔化して庇っていたよね。結果モブは売国奴犯罪者になるのだから、『情けは人の為ならず』だ。
よくある誤解で「他人のためにならないから、情けはかけるな」という意味で解釈されがちだが、これは誤りである。が、モブに関しては完全にこちらの意味での解釈が正しい。
お前等の判断基準、そもそも可笑しいから。お前等に判断する資格ないよ。
精々遊ばせてもらおうか。
「どんだけ紛争地帯なのかな?」
真由美達は苦笑いしているが、本当にどうなってる?
「…………ですが、実力がなければいざという時に取り締まりに困ります!」
「処置なし」
不適切魔法を証明できるという実力があるよね? 面倒くさいから指摘しないけど。この手の輩は一回ポッキーのようにポキポキ粉砕してやった方が身の程を弁えるだろう。
「ねえ、ルシル君に決闘罪にならない方法で考えはないかしら?」
決闘は違法であることを指摘した結果、演習という形になったのだが……、しかもいつの間にか『ルシル君』呼び……、随分と距離の縮め方が独特な女だな……
司波達也が妹と一緒に事務室にCADを取りに行っている間に演習室でネチネチしてやる。
「ねえ、服部はんぞー君、私が通報すれば生涯檻の中だけど、理解しているのかな?」
これ、証拠のレコーダーだけどと、ボールのように指先でくるくる回して見せつけた。
「通報だけは止めてくれ!? なんでもするから!」
「じゃあ司波に負けたら在学中は月一で、ブリーフ一丁ネクタイで一高〜八王子警察署往復マラソンしろ(笑)」
吹き出す音が続出した。
「な、なんでブリーフ一丁ネクタイになるんだ!? しかも月一だと!?」
ふっふっふっ
「大丈夫、勝てばいい」
「そ、それもそうだな」
ルシルはニヤリと心の中で嗤った。
「ルシル君、なんでブリーフになるのかしら?」
「ブリーフなんてピュアな少年しか履かないからね」
「凄い罰ゲームね……」
「反省は形から」
「なるほど、確かに反省は必要ですからね」
「なんでそういう発想が生まれてくるのか聞いてもいいかい?」
「初日のド変態包茎ストリーキング、ブリーフだったからね」
「ええと……?」
「ドレスブレイクする一瞬の隙も私のスカウターは見逃さない」
「そ、そうか……」
「お笑い芸人でもブリーフ一丁いたかな? はんぞー君、負けたら一高ではブリーフ一丁ネクタイで、」
「月一マラソンで頼む!」
「えー、遠慮しなくてもいいのに」
「外聞が死ぬ!」
服部はんぞー君は万が一の場合を考えて恐怖したようだ。
「七草真由美さんの目の前でブリーフ一丁ネクタイで股を開いてバッチコイするとか興奮するんじゃない?」
「…………」
「はんぞー君?」
「( ゚д゚)ハッ! い、いえ!? 会長に対してそんな失礼極まりない真似できるか!?」
「妄想したよね? それか七草真由美さんの犬になるか?」
「はんぞー君がわたしの犬になるのかしら?」
「全裸で赤い首輪して四つん這いで、」
「ちょっと待て!? なんで全裸になる!?」「物理だった!?」
「犬は裸でちんちんと尻穴を誇らしげに晒しているじゃない」
真由美達は吹き出した。
「舌を出して「はっはっ」して、おしっこの時は片足を上げてシャーッとな」
「外聞!?」
「犬は外聞など気にしない」
「俺は人だよ!?」
「大丈夫。サングラスをかければいい」
「そういう問題か!?」
「首輪には「はんぞー」ドッグタグ付けて」
「隠すつもりもない!?」
「お手、お座り、お替り、伏せ、待て、ちんちんは必須だ。ちんちんする時は勃起しておくこと」
「おおい!?」
「ちんちんのポーズはこのように」
端末からちんちんポーズを見せたところ、「できるか!?」と不甲斐ない。
「それが作法だ」
「そんなことしたら警察に通報されるじゃないか!?」
「大丈夫。犬の全裸は仕様。犯罪にはならない」
知らないけど。超適当
「ルシル君、わたしは全裸のはんぞー君を連れてお散歩しなければならないのかしら?」
「飼い主の義務として動物病院に連れていってね」
「何か義務があるのかしら?」
「去勢 ♪」
「おおおおい!? 洒落にならないぞ!?」
「大真面目だ。発情してそこら辺の雌犬妊娠させても迷惑だから」
「確かにそれは飼い主の義務よね」
「会長!?」
「これではんぞー君はオカマちゃん。真由美さんが発情される心配もなくなる」
「そうね。はんぞー君、動物病院に逝きましょう」
「勘弁してください!? ブリーフ一丁ネクタイ月一マラソンでお願いします!」
服部はんぞー君に土下座された。
ふっ、他愛もない。
「服部はんぞー君以外も他人事ではないよ? 決闘罪は当事者達以外にも立会人、見学者、場所を提供する側も同罪なのだから」
演習室の空気がピシッと固まった。
「渡辺摩利さんを始めとして立件できる証拠は揃っている」
「な、ん、だ、と……」
「天海を甘く見るな。決闘が増える風潮を作った貴女は悪質に過ぎる。懲罰、見せしめも兼ねて生涯檻の中にしてやろうか?」
「うっ……」
「ちょ、ちょっと待って、ルシル君!?」
「真由美さん、法律を遵守していれば一高の問題など余裕で解決できるのに、それでも十師族は七草のご令嬢なのか?」
真由美は怯んだ。
「それでは渡辺摩利さんは服部はんぞー君の月一マラソンの監視ね」
「うぅっ……、仕方がない……」
「何? SM女王様の格好したいのか?」
「いや!? 喜んで監視する!」
とここで司波兄妹が演習室に入ってきた。
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