本好きの念能力者 @ 魔法科高校   作:avagnale

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ネタがわからないと面白くないかもしれない


四日目

 一高に司波達也の退学届が届き、生徒会は混乱した。

 

 昼休み、これでもかと絶望に染まった表情の服部はんぞー君が股間は黄色く、尻は茶色くなったブリーフ一丁にネクタイ、膝下ストッキング姿で一高校門前に登場した(笑)

 

「ぶふぉっ、ギャグセンス抜群だと思わない?」

 

 昭和〜平成にこんなお笑い芸人がいたとか?

 

「ふっ、ふふふふっ、ほ、本当に……」

 

「お、お腹が痛いです……」

 

 リーナとミアからも大好評だ。あの鈴音まで服部はんぞー君を見た瞬間に吹き出して口を手で覆い隠してぷるぷる震えている。

 しかし見物人多いな。一科生二科生問わずいるよ。それだけ反感を買っていたのだろう。

 

「…………あ、天海君、他になんでもするから、こればかりは、」

 

「新宿二丁目のガチゲイクラブでカマバッカのご奉仕を、」

 

「喜んでマラソンしてくる!」

 

 はんぞー君はダッシュしていった。それを追いかける監視役の摩利は同類と思われたくないと距離をとっている。

 

 

 

 今日のランチは蕎麦屋で一杯かなと向かおうとしたところ、真由美と鈴音が司波達也退学の理由を知らないか質問してきて……

 

「今日は蕎麦屋気分だからそれでいいなら」

 

 了承されたため、蕎麦屋にした。

 

「…………それにしても完全に公開処刑ね……」

 

「? お笑いは日本を明るくするから、服部はんぞー君はヒーローだよ?」

 

「ヒーロー……正しく英雄よね……」

 

「天海君は言葉遣いも上手いですね」

 

「次はどうしてくれようかな」

 

 真由美と鈴音は暫し沈黙した。

 

「……………………まさか、まだまだ公開処刑は月一マラソン以外でも続くのかしら……?」

 

「色々とアイデアはある。時計塔資本のTV局で放送してやったり」

 

「TV局まで買収していたの?」

 

「金の使い道に困っていたから」

 

「スケールが違いますね……」

 

「スポンサーには逆らえない。これ常識。反日記者達は首切りしたから」

 

 上層部は真っ先に首切りした。ほとんど檻の中で実験体だ。他にも誘導されたバカとかもね。義憤に駆られるって青二才だな。

 

「なるほど……、◯◯新聞ですか…………天海君、将来時計塔に就職するにはどのような経歴が求められますか?」

 

「頭脳、人格、経歴、コミュ力、ありとあらゆることが審査対象になる。一芸特化もありだね。非魔法師も積極的に採用しているし」

 

「そうなんですか?」

 

「農高や高専などからも優秀者を雇用している」

 

「なるほど……、美酒美食の食料資源も握る時計塔ならではですね……」

 

「時計塔基準では市原さんは採用レベルだが、論文コンペなどで優勝すると待遇は比較にもならない」

 

「研究者や技術者にとって夢みたいな環境なのね…………鈴ちゃん、応援するわ!」

 

「ありがとうございます…………論文コンペ”など”で、とは他にどのような分野があるのですか?」

 

「第一次産業や書道、絵画、音楽、舞踊、料理などなど」

 

「…………どれも魔法師には関係ありませんね……」

 

「ルシル様は芸術の保護者でもあります」

 

「ルシルはパトロンなのよ」

 

 日本の書道などを始めとして理解できないことが多過ぎるからね。専門家に任せるよ。ステータスで解析できるけど、一々面倒くさいんだよ……ぱっと見、ミミズののたくったものにしか見えないとかね……

 

 

 

 司波達也退学について

 

「父親が逮捕された結果だろう」

 

 FLT本部長逮捕のニュースを突き付けた。

 

「…………そういうことだったのね……」

 

「FLT本部長が銃刀法違反、ですか……」

 

「あのCADにインストールされていた魔法は殺傷性ランク的に完全に銃刀法違反だ。親馬鹿で子供に与えるなどしてはならない。呆れたものだ」

 

「ここはステイツではなく日本っていうことを忘れていないかしら」

 

「武器の売買所持は日本では規制されています」

 

「それ以外にも入学初日のド変態といい、高周波ブレードによる殺人未遂のキチガイといい、オープンソース主義の売国奴といい、一高は頭が可笑しい輩が多過ぎる」

 

「ステイツでも一般市民のティーンネイジャーは学校に銃器や刃物を持ち込むことなんてしないわ」

 

「持ち込む輩は普通にギャングや犯罪者予備軍として遠巻きにされますよ」

 

「魔法科高校の民度は一体どうなっている?」

 

 真由美と鈴音は全く反論できない。

 

「…………魔法科高校に問題しかないのは理解しました。お願いしますから、ルシル君、生徒会に、」

 

「断る。1Aの光井ほのかに打診しなさい」

 

「そんな〜〜」

 

 涙目の真由美に合掌。

 

「『Pay it forward 可能の王国』2000年のハリウッド映画の名作を視てみなさい」

 

「…………2000年のハリウッド映画、ですか……」

 

 概要は、11歳の少年が、社会科の授業中に世界を変えるアイデアを思いつく。それは、人から施しを受けたら別の3人に返すというもので、彼はさっそく実行に移す。そして、広がっていく慈愛の波が、心に傷を持つ大人たちを巻き込んでいくムーブメントになる。

 

「賛否両論あるが、この映画は講堂で全員鑑賞するべきだ」

 

「ルシル君の保証する名作なのね?」

 

「特に現代魔法師は考えさせられることが多い倫理教育にもなると思うくらいには。これ、メディア」

 

 真由美にポンと渡した。

 

「会長、部活動勧誘週間が終わったら、放課後講堂に全校生徒を集めて鑑賞しましょう」

 

「ブランシュ」

 

 真由美と鈴音が驚きを顕にしてこちらを見た。

 

「侵食されているだろう? 『邪眼』で洗脳されている剣道部エガリテのメンバーを洗浄するためにも今日にでも鑑賞することを勧める」

 

 真由美達は警察省公安の力だと理解した。

 

「…………わかりました。今日の部活動勧誘は中止にします」

 

「大変結構」

 

 

 

 一高に戻ったところ、汗だくの服部はんぞー君が戻ってきたところだった。

 

 服部はんぞー君は地面に大の字になり、ゼーハーゼーハーしている。

 

「ようやく戻ってきたの?」

 

「…………………………………………………………………け、警察に職質された…………ふ、不審人物として…………」

 

「ああ、ド変態包茎ストリーキング強姦事件あったから、警戒厳重なのかな?」

 

「しゃ、洒落にならない…………もう反省して悔い改める……」

 

「大変結構」

 

 起き上がり校舎に向かった服部はんぞー君の姿は見ていて腹が痛い。

 

「本当にお漏らししたら爆笑するんだけどな」

 

 ボソッと呟いたところ、リーナとミアが腹に力を入れた。

 

 

 

 ……………………

 

 

 

 一高講堂で『ペイ・フォワード』を上映した結果、リーナとミアも含めて多数泣いた。

 

「ううっ……、こんな結末ってハリウッド映画である?」

 

「主人公がいじめられっ子を庇ってナイフで刺されて死んでしまうだなんて……」

 

「ぐすっ、これは確かに賛否両論あると思うけど、現代魔法師が視るべき名作ね……」

 

「はい、正に馬鹿に刃物ですね……」

 

「これはあたしも泣く……」

 

「これは悲惨なものがあるな…………主人公は善良な少年であるのに……」

 

 あーちゃんなど号泣している……

 

「アル中の母親と家庭内暴力の父親との間に生まれたのが奇跡みたいな善良な少年で何も望んでいなかったのに……、これは俺もくるものがあります……」

 

 母親にはトレバーへの愛はあるよ? 薬中ホームレスなど家に連れ込み食事を与え宿泊させるなど、まともな母親なら悲鳴を上げるよ。あの場面では笑った。トレバー少年行動力半端ないなと。

 

 …………映画冒頭の売れない新聞記者に新品のジャガーをポイッとあげるなど書類手続き的にも日本では無理があるが…………アメリカン・ドリーム?

 

 しかしあの台詞はカッコいい。

 

『Pay it forward』次へ渡せ

 

 多数涙を流す中で壇上に登場したルシルは注目の的になった。

 

「あの絶世の美少年が史上初の推薦入学者の天海ルシル君?」

 

「なんで制服じゃねーんだ?」

 

「スーツにコートだしな」

 

 静粛に

 

「新入生の天海ルシルです。一高の皆様、『ペイ・フォワード』の結末、正に馬鹿に刃物、キチガイに刃物でしょう? CADはナイフよりも危ない武器だということを認識しなさい。先日高周波ブレード使用による殺人未遂で逮捕されたキチガイがいました。立派な犯罪です。明日は我が身だと心得るように。今、自分がしようとしていることは犯罪ではないのか考えてみましょう。日本はUSNAよりも厳しいですよ? 売国奴=外患誘致罪=死刑です。

 外患援助罪も存在します。外国から日本に対する武力行使があった時に、これに加担して、その軍務に服し、軍事上の利益を与える犯罪です。刑法第82条に定められています。外患援助罪の刑罰は「死刑または無期もしくは2年以上の懲役」です。外患誘致罪と同様に、日本に住む人の生命を危険にさらす重罪なので刑罰が重く定められています。

 内乱罪は、国の統治機構を転覆させるなどの目的で暴動を起こす犯罪です。刑法第77条に定められています。革命と称して大勢の人が集まり暴動を起こす行為や、政権内での暴力的なクーデターなどが想定される犯罪です。

 外患誘致罪も内乱罪も日本国家の転覆を目的とした犯罪であり、未遂罪や予備・陰謀罪の規定がある部分も共通しています。

 一方、外患誘致罪が外国からの武力行使を引き起こすのに対し、内乱罪は国内での暴動などを引き起こすという違いがあります」

 

 この世界の外患誘致罪の適用範囲はオープンソース主義にも適用される。関本勲は死刑囚として実験体になった。外患誘致罪は一番重い刑罰だ。問答無用で死刑だからね。

 

 不安を煽りに煽っていったところ、剣道部員達が立ち上がった。

 

「剣道部の壬生紗耶香です。生徒会に反魔法国際政治団体ブランシュについて告発します!」

 

 剣道部は洗脳が解け、即日ブランシュは摘発殲滅された。九重寺と警察公安の共同作戦だ。

 

 

 

 …………まさか映画で洗脳が解けるとはね……

 

 

 

「ルシル君、お礼を言わせてください。ありがとうございました! 一高に侵食されていたエガリテの洗脳は解けたし、ブランシュも壊滅しました」

 

「映画が人を変えるとは思いませんでした」

 

「あれは正に現代魔法師に必要な映画だな」

 

「しかし『ペイ・フォワード』で一つ不満がある」

 

「結末かしら?」

 

「いや、ピュアな少年なのに何故トランクスなのだと。そこはブリーフだろと」

 

『そっち!?』

 

「それ以外の何がある?」

 

「ルシル君はブリーフ履いたことあるのかしら?」

 

「小さい頃は母上の趣味で女装させられていたから、幼女おパンツ様履いてた」

 

「そういえばルシル昔女装していたわね」

 

 そう、それが原因でリーナとミア、他にも浴場に突撃してきたからね。

 

「ですがあの儚げな可愛いトレバー君ならイメージのためにもトランクスがいいのではありませんか?」

 

「そうだね……」

 

 ルシルの微妙な表情に真由美達は何かあるのかと……

 

「あの映画の続き、聞きたい?」

 

「え? 続きがあるの?」

 

「それは是非とも聞きたいですね」

 

 全員聞きたいようだ。

 

「…………主人公のトレバー少年役の天才子役オスメント、徐々に劣化していって、未来はただのおっさん」

 

「どんなオチよ(ですか)!?」

 

 「これ、画像」と突き付けたところ、「あの可愛い子がこの髭面のおっさん!?」、「あの儚げな可愛い子が……」、「面影はほとんどありませんね……」、「これは詐欺ではないのか……?」、「あのトレバー君がどうしたらこのような……」と失礼極まりない感想続出である。

 

 

 

 おまいう

 

 

 

 克人やはんぞー君は微妙な表情になっている。

 

「世の中の女性はこのようなものだから」

 

「…………」

 

「……俺は何も聞いていない、俺は何も聞いていない……」

 

 黙り込む克人と、ぶつぶつ呟くはんぞー君、しっかりと現実を見つめ給えよ。

 

「現実って残酷だよね〜〜」

 

「一番残酷なのはこのオチを教えてくれたルシル君よ!」

 

「感動を返してください」

 

「このオチは酷いと思うぞ……」

 

「夢を壊さないでください!」

 

「夢は儚いとはよく言ったものだよね」

 

 悲しいものだね。

 

 

 

 その日の夜、烈爺と一杯やりながら……

 

「…………『ペイ・フォワード』が名作で心を揺さぶるものがあるというのは認めるが、それだけで洗脳が解けるものなのかね?」

 

「ハハハ、やはり烈爺は疑問に思いますよね。情動干渉系魔法でじわじわと十師族でも気付かないレベルに使っていたのかと。

あれは贈与の失敗の物語…………」

 

 キリストのアクィナスの『不動の動者』などあるが、トレバーはピュアすぎた。

 

 アル中の母親、DVの父親……恩送り相手の薬中ホームレス、シモネット先生、いじめられっ子の同級生……

 

 シモネット先生の「世界は君に何を期待している?」という問いに、

 

「何も」

 

 と返答している。

 

「『ペイ・フォワード』は供犠 sacrifice の物語だ。トレバーは自らの生命を犠牲にし、捧げることによって、この世を良きものに、代わりに与えた」

 

「…………」

 

「これは贈与ではなく、供犠だ。トレバーの純粋さと生命、人々との負い目……

 

『ペイ・フォワード』は続く。

 

私はキッカケを作っただけです」

 

 

 

 烈は感嘆の溜息を溢した。

 

「やはりルシル君はトリックスターだね。まさか映画と言葉だけで洗脳を解くとは」

 

「最後の最後で情動干渉系魔法で煽りました。誰も気付きもしていません」

 

 情動干渉系魔法という名のヴァッシェン・バリアだけどね。

 

「使い方が本当に巧みだね」

 

「この結果は魔法大学の最新研究データでも閲覧レベルは高くした方がいいでしょうね」

 

「それがいいだろうね。群集心理を映画と言葉だけでほとんど誘導できてしまうなど、危険過ぎる。しかし『ペイ・フォワード』は現代魔法師の倫理教育に有用だ」

 

「天才子役オスメント少年が出演する映画は名作が多いのでお勧めします」

 

 フォレスト・ガンプやシックス・センス、A.I.などなどお勧め。

 

「それはいいことを聞いた。光宣達と一緒に視てみるよ」

 

 烈は情動干渉系魔法が隠されていたオチがあることなど十師族でも青二才は気付かないだろうと思っていた。

 

「で、和尚?」

 

「アッハッハ、やっぱりルシル君は誤魔化せないか」

 

「以前伝えておきましたよね。『全て筒抜けだ』と」

 

 念能力者を甘く見るな。

 

「和尚、悪戯にしても度が過ぎると思うのだよ」

 

「これはすみませんな」

 

 頭をペシペシ叩く八雲に烈爺は溜息を溢している。

 

「何か飲みたいカクテルありますか?」

 

「テキーラ・サンライズを貰おうかな」

 

 はいどうぞ

 

「やっぱりルシル君のドリンクフリーは重宝するよね〜〜」

 

「全く、この生臭坊主は……」

 

「烈爺、比叡山は酒女金、俗に塗れていますから」

 

「和尚はその権化だね」

 

「いや〜、これは手厳しいですね〜〜」

 

 テキーラ・サンライズをクピッと味わう八雲にジト目を向ける烈。

 

「和尚はリーナとミア嬢にも不埒な真似を隠そうともしなかったとか?」

 

「いや、その節は大変失礼いたしました」

 

「和尚、今回の用件はブランシュかね?」

 

「拙僧も自分の庭先に不穏分子がいるため排除してやろうかと思っていたのですが、まさかの事態ですからね。世界を変えるのは『愛』ですか」

 

「愛に溢れたあの作品で実験してみただけ。『邪眼』程度なら余裕でした。最後の情動干渉系魔法は必要なかったかもしれません」

 

「念には念を入れるのは大切なことだよ」

 

「相変わらず用意周到だね、ルシル君は」

 

 …………前世で汚れた私は『ペイ・フォワード』を視て、『これ、ネズミ講じゃないのか?』と思ったことは内緒だ。

 

 

 

 

 

 

 




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