ただしクソ転生者、てめーはダメだ。

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お前も信徒にならないか?

 あ、起きました?

どもども、混沌神でーす。

突然ですが貴方は死んでしまいました、本当に申し訳ない。

でも私のせいじゃないので当たらないでくださいね?

悪いの全部そこら辺に散らばってる馬鹿()のせいなんで。

え? 何が何だか分からない?

えーっとですね、異世界転生って言うのご存知ですか?

 

 あ、知ってる。なら話は早いですね。

この馬鹿は私が居る世界に貴方を世界を滅ぼす尖兵として送り込もうとしてたんですよ。

身の丈に合わない力を付与してね。

どうもこいつ私の居る世界をどうしてもおもちゃにしたかったみたいなんですよ。

だから自分の世界から適当な人間やらを送り込んで暴れさせようとしてたんですね。

で、それを止める為に私が逆探知して居場所ってかこれの居る世界を見つけてぶっ殺した訳です。

つまり私は私の居る世界を守る為に来たって事なんですよ。

 

 自分はどうなるのか、ですか?

うーん、貴方は完全に被害者なので……本当は元の世界に返してあげたいんですよ。

でもどうも貴方の居た世界って死者の蘇生って無いっぽいんですよね。

他の世界の理をねじ曲げて無理やり生き返らせると最悪魂……貴方と言う存在が無くなる可能性があるんですよ。

それでもいいならやりますけど、どうします?

 

 あ、嫌ですか。ですよね、分かりました。

なら……そうですね、ウチ来ます?

いいのかって?だって普通に生きてたのに馬鹿に殺されて魂宙ぶらりんなんて可哀想じゃないですか。

私も私の世界の他の神もそんな魂を見捨てるほど薄情じゃないんですよね。

出来ることなら助けたいですよ。

私基本的に人間好きなので。

 

 ん?……ありがとう?

別に礼なんていいですよ、当然の事をしてるだけなので。

神ってのはですね、本来は対価なんて必要とせずに祈りを聞き届けるべきなんです。

この馬鹿はそうじゃ無かったですけど。

だから気にしなくても良いですよ。

でも……そうですね。

どうしても私に礼がしたいと言うのなら、私の信徒になりませんか?

 

 実は私の世界に私の信徒って居ないんですよ、私って基本的にただの暴力装置なので。

そんなんが表立って信仰されたら、面倒じゃないですか。

でも私だって出来る事なら信徒が欲しい訳ですよ、信仰されてみたいんです。

だから私への礼はそれでいいですよ。

適当に私に祈りでも捧げててください。

 

 加護は……どうします?

私が加護与えると不死身になりますけど。

どんなに殺されても塵すら残らず消されても蘇ります。

私自身がそうなので、その力の一部って感じですね。

あまりお勧めできないですけど……必要?分かりました。

じゃあそろそろ行きましょうか。

 

 改めて──ようこそ人の子よ。私達の世界へ。

 

 

 

 

 

「ここどこなの……?」

 

 女は森の中に居た。

森に入るには明らかに不向きな服装。

辺りを何度も見渡すが、いくら見ても分からない。

 

「いきなり転生して好きに暴れていいって言われても……」

 

 女は転生者だった。

この世界を滅ぼしたい他世界の邪神によって無理矢理チートを付与されて送り込まれた異界の尖兵──。

 

「そんなの無理だよぉ……」

 

 しかし女は小心者だった。

本来であれば送り込まれる者は精神を弄られて横暴、強欲、残虐になる所を彼女は自身の精神力で耐え抜いたのだ。

故に、彼女は邪神に命じられた世界の破壊を拒絶した。

 

「と、とにかくここから抜け出さないと……!」

 

 サバイバル経験なんて物を持ち合わせていない彼女は一先ず、森からの脱出を目指す。

行き先なんてものは無いが、何に襲われるか分かった物じゃ無いここには居られない。

だが──動くのが少し、遅かった。

 

「おぉ! 美少女発見!」

「ひっ!」

「転生して早速見つかるなんて運が良いな! まぁ俺は選ばれた人間だから当然か!」

 

30代の男だろうか。

気色の悪い笑みを携えて女に近づいてくる。

 

「こ、来ないでください!」

「は? 何でだよ。何もしてないだろ」

「き、気持ち悪いです!」

「はぁ!? お前いきなりなんだ!? 俺に向かって舐めた口を……!!!」

 

 明らかに精神に問題がある男は腰に携えていた剣を抜く。

抜いた剣から凄まじいオーラが放たれる。

見た目だけは綺麗だが、奥底にドブのような色の悪意が見え隠れする。

 

「珍しい眼鏡美少女だったから俺の女にしてやろうと思ったが……気が変わった! 俺を否定する奴は全員敵だ! 殺してやるよ!」

「い、いやぁ!」

 

 女は咄嗟に自分が授けられたチートを使う。

授けられたチートは【無限生成】、あらゆる物を無尽蔵に生み出せる世界の摂理に反した物。

 

 それを行使して自分と男の間に大量の鉄の壁を作り出す。

だが、男に授けられたチートとは相性が最悪だった。

 

「無駄だ! オラァァァ!!!」

 

 男が雑に剣を振るう。

素人丸出しの剣捌きだったが一瞬で全ての鉄の壁がチリも残さず消し飛ぶ。

 

「そ、そんな……」

「ハハハッ! すげぇ! すげぇよこのチート! これがあれば俺は異世界で無双だ!」

 

 男のチートは【装備強化】だった。

あらゆる装備を強化して能力を底上げ出来るチート。

本人の戦闘技術がどれだけ未熟でも、簡単に軍隊を皆殺しに出来るほどの能力になれば技術の差など吹いて飛んでいく。

 

「お前今のチートだろ、他にも転生者が居るとは聞いてたが第1村人が転生者なんてな」

「ああ……いやぁ……」

「だけど残念だったな! 俺のチートの方が強い! お前は俺に勝てない!」

 

 下品な笑い声をひとしきりあげた後、男は更に女に近づいて服を引っ張る。

 

「やめて! やめてぇ!」

「うるせぇな! 殺されたく無かったら大人しくしてろ! 俺に刃向かったんだから俺に好きにされるべきだ!」

 

 普通の人生を送っていた女に待っていたのは理不尽に殺されて転生させられた先で慰め物になると言う地獄だった。

抵抗しようとしても男はチートで自身の服にも強化をかけて居るため、全く歯が立たない。

 

「(こんな事なら……あのまま死んでいた方がよかったな……)」

 

 最早女にはこの地獄が早く終わる事を祈るしか出来なかった。

男は恐らく満足したら自分を殺すだろう。

解放されても死ぬだけ。

どうしてこんな目にと絶望していた時──。

 

 

 

「ああ、聞こえるぞ、世界を穢すゴミ共の鳴き声が」

 

 

 森の奥から聞こえてきた声には凄まじい嫌悪と憎悪が含まれていた。

草を踏みながら近づいてきたのは神父のような姿をした男。

武器のようなものは持っておらず、何か特別な道具も身に付けてはいない。

 

「何だぁ……現地民か?」

「邪神の呪いを振り翳し、人々を傷付け、我が物顔で世界に生きる貴様らに慈悲など有りはしない。ここで死ぬがいい」

「黙れクソが」

 

 男が剣を振るうと凄まじい衝撃波が発生する。

直線上に立っていた神父は避ける事も無く、一瞬で消し飛んだ。

 

「あ、あぁ……人が……」

「ハハッ! 偉そうにしてたくせにこの程度か! やはり俺は最強──あ、れ?」

 

 神父を殺した男が突然苦しみ出す。

剣を落として胸を抑え始める。

 

「なん、だこ  れ  おかし  い  たい」

「な、なに……?」

 

 女は訳も分からず、呆然と男を眺める事しか出来なかった。

1秒ごとに男の苦しみは増えていく。

そして──男の中から声が聞こえてきた。

 

「貴様が持っている邪神の呪い(チート)が、我が神の加護を上回るだと? 有りえん、そんな事は起きる訳が無い」

「な  んで  し んだ はずなの  に」

「貴様の呪いは見たところ、身に付けている物を強化するタイプだろう。だったら──内部から引き裂くのみ」

「や やめ」

 

 その瞬間、男が真っ二つに裂ける。

大量の血液を吹き出しながら泣き別れした男の右半身と左半身はそのまま地面に倒れた。

女は自分の目を疑う。

 

「死ぬ時すら大地を穢す……本当に貴様らは救いようが無い。そうだろう?」

 

 死んだ筈の神父が男の体内を引き裂きながら出てきたのだ。

無傷の神父は男の死体を踏みつけながら、女の方に向かってくる。

 

「あ……ああ……」

「何故貴様らゴミ同士が争っていたのかは知らんが……どうでもいいな。どうせ殺すのだから」

「ま、まって……」

「待って何になると言うのだ。貴様らは邪神の尖兵(転生者)、この世界を滅ぼす存在。我が神の愛する世界を守る為、貴様らは全員殺す」

 

 神父は手を振り上げる。

無手だと言うのに逃れられない死が迫っていると女は感じる。

後数秒後、自分は死んだ男のように肉塊となるだろう。

故に女は──。

 

「わ、わたしはぁ! 邪神の尖兵じゃありません! この世界を滅ぼしたく無いですぅ!」

 

 半泣きになりながら叫んだ。

神父の拳が一旦止まる。

 

「……貴様とて、そこのゴミと同じで、邪神にこの世界に送られてきただろう?」

「た、確かにその通りです! チートも貰いました! でも、世界で好きに暴れろと言われましたけど……そんなの望んでないんです!」

「何……?」

 

 神父は驚きを隠せなかった。

それもその筈、何せ今までこの世界に来た転生者はどれも欲望のままに暴れて世界を傷付けてきたのだから。

 

「(そう言えば我が神が尖兵共は精神を弄られていると…)」

 

 この世界で暴れさせる為、転生者は全て精神操作を受けて本来の人格の悪意や欲望を増幅されている。

勿論送られてくる者はそもそも人格に問題があるような人物ばかりなのだが女は違った。

 

 女を転生させた神は選ぶのが面倒だったので適当に選んだ結果、人格に全く問題がない、寧ろ善良な人間を選んだのだ。

そしてその女は精神力が他の人間より遥かに強かった。

小心者ではあるが自分を見失わない、そんな人間だったのだ。

 

「……少し待て」

「は、はい」

 

 神父は女に振り上げていた拳を下ろし、祈りの体制になる。

女は神父の祈りを見て声が出なかった。

怖いのでは無く、余りにも敬虔な姿に言葉が出なかったのである。

 

【…ん? ああ、貴方ですか】

「我が神よ、どうか私の声をお聞き下さい」

【聞いてますよ、どうかしましたか?】

 

 神父は女の転生者の事を神に伝える。

本来であれば神と交信するには祭壇が必要なのだが、神父は信仰心が天元突破していた為必要なかった。

やろうと思えば常に繋げれるレベルだ。

 

【え、そんな転生者居たんですか!? ……どうしよう、どうします?】

「神の御心のままに」

【……貴方の意見が聞きたいですねー、うん】

「私の意見ですか、まずこの尖兵に尋問をし、邪神の居場所を──」

【あ、その人を送り込んだ神はもうぶっ殺したので大丈夫ですよ】

「流石は我が神! いつも世界を守ってくださりありがとうございます!」

【仕事ですから、まぁそうですね、軽ーく尋問してその人が付与されたチートの内容聞いといてください。時間のある時に教えてくれれば】

「生かす方向で行くのですね」

【悪さしないならその人も貴方と同じ被害者ですからね、出来る事なら助けたいですよ】

「何と慈悲深い……承知しました。この者を保護します」

【はーい、お願いしますねー】

 

 神父は交信を終え、立ち上がる

先ほど迄の神父とはまるで別人のようになっていた。

 

「我が神の慈悲によりお前は保護する事になった。殺す事はない、安心しろ」

「よ、よかったぁ……」

「それでお前の扱いだが、教会の方に着き次第お前が邪神から付与された呪いの詳細を聞く。その際は正直に答えるように……まぁ嘘を付いたら分かるがな」

 

 その時、女は安堵しきっていた。

自身の命が助かったのは神父に保護するよう伝えた神。

そんな神にシンプルに感謝していた。

なので──。

 

「保護してくれるなんて……素敵な神様なんですね」

 

 称賛した。してしまった。

その瞬間、神父は凄まじい勢いで女の肩を掴む。

神父の顔は先ほどの殺意に満ちた顔では無く、嬉しくてたまらない笑顔だった。

 

「お前もそう思うだろう! そう! 我が神、混沌神は素晴らしいお方なのだ! 名前で勘違いされる事があるが、これはこの世界に生きる人も動植物も他の神も大切にしているが故の混沌! この世界を愛し、守り続けて下さっているのだ!」

「え、え、え!?」

「成程お前は確かに異界の尖兵だった! だが我が神の素晴らしさが分かるのなら話が変わる! どうだ! お前も信徒にならないか!?」

「な、な、何なんですかぁ〜!?」

 

 神父のとんでもないマシンガントークに安堵も吹っ飛んで困惑し続ける女。

1時間ほど経った後も神父の混沌神の賛美は収まらなかった。

 

 

 

「うーん……いや嬉しいんですけどぉ……」

 

 混沌神は微妙な顔をしていた。

と言うのも原因は自分の筆頭信徒の神父だ。

 

「確かに、確かに言いましたよ? 信徒になって欲しいな〜って、祈ってくれたら嬉しいな〜って、でも……こんなにやれとは言ってないんですけど」

 

 混沌神には現在進行形で凄まじい量の信仰が集まっている。

ほんの10年前は信徒が1人も居なかったのにだ。

その原因は──神父だった。

 

「始まりは12歳で転生者を討伐した時でしょうか」

 

 混沌神が救った10歳の少年、自身の世界に転生させて己の加護を与えた。

下界への直接干渉が禁じられてる以上、死なないようにと強めに加護を与えた。

今思えばもう少し加減しとくべきだったかもしれない。

 

 1年程特訓に明け暮れた少年は不死身の加護を活かして当時暴れていた転生者を討伐したのだ。

殺し方は単純、転生者に休む暇を与える事なくゾンビアタックだった。

食事中もトイレ中も睡眠中もいついかなる時も襲いかかった。

1日目は転生者は余裕だった。

1週間経って焦り始めた。

1ヶ月経って精神に異常が出始めた。

1年経った頃には転生者は発狂して少年に討ち取られた。

この転生者を殺す為に少年は3万回は死んで蘇った。

 

 強力なチートを持つ転生者に好きなようにされていた人々は少年に心から感謝して英雄と呼んだ。

しかし少年はその呼び方を止めるように人々に訴えた。

何故ならこの勝利は自分のおかげでは無い。

自分の信仰する神、混沌神のお陰なのだからと。

当時全く認知されていなかった混沌神がメジャーデビューした記念すべき日である。

 

 それから少年は転生者を何人も討伐し始める。

洗脳チートで女を侍らせて居た転生者、魔法チートで多くの人々を脅迫していた転生者、無敵チートで数多くの軍隊を殺戮して回った転生者を。

全て殺した。

少年が死んだ回数は、最早混沌神すら数えられなかった。

 

 少年が討伐する度に混沌神の知名度が上がっていった。

彼が勝つ度に混沌神の素晴らしさを全力で喧伝してたのも拍車をかけた。

少年が青年になった頃、混沌神を信仰したいと言い始める者達が現れた。

彼等は皆、転生者達に酷い目に遭わされたり、大切な人達を奪われたり、故郷を滅ぼされた人々だった。

 

 青年は共に戦う為には混沌神の加護が必要だとした。

彼の戦い方は己の命を投げ捨てて特攻し続けると言う正気とは思えない物。

故に彼は最初は止めた。

これは自分だけが耐えられる物だ、貴方達が無理をする必要はないと。

 

 だが彼等の怒りと憎しみは青年の想像を超えていた。彼等は自身の私財全てを注いで混沌神の神殿、教会を各地に建てまくった。

そして青年に頼んだのだ。

どうか、混沌神を信仰する教団のトップに立って欲しいと。

 

 青年は彼等の覚悟を認めて混沌神へ交信して他の者達にも加護を与えて欲しいと頼み込んだ。

ちなみにこの頃には既にどこでも交信出来るほど信仰心が極限まで高まっていた。

 

 混沌神は戸惑いながらも加護を与えた。

青年よりは弱いが、彼等は不死身の力を得た。

不死身の人間が部隊を組めるほど数居る。

となればやる事はひとつだった。

転生者狩りである。

 

 無限の命で超強力なチートを持つ転生者を押し潰し始める。

囲んで殺して、死にながら殺して、あっという間に転生者は数を減らしていった。

 

 反比例するように混沌神の認知度と信仰は上がり続けた。

そして大きくなる教団。

混沌神を知らない者はこの世界に居なくなった。

 

 青年が転生者以外には絵に描いたような聖人だったのも大きかった。

困ってる人を見捨てず、空腹な者には食事を与え、住む場所を無くした者達に住居を与えた。

青年は自分の生き様は、混沌神への評価に繋がると思っていたからだ。

混沌神から加護を貰っているのなら、その慈悲に恥じない人間になろうと努力し続けた。

 

 そしてとうとう混沌神を信仰する教団、混沌教団は世界に完全に受け入れられた。

混沌神は世界を守る為に邪神と戦い続けているのだと認知された。

存在自体が知られてなかった混沌神は世界で1番有名な神になっていた。

 

「やり過ぎでしょ、どう考えても! なんで他の神を信仰してる人達からも感謝の念が飛んでくるんですか! どんだけ広めたんですか私の事!」

 

 嬉しくはあった。信仰されてみたいなぁと思っていた夢が叶ったのだ。

でもまさかここまで広まってしまうとは思わなかった。

その影響で本来信仰関係なく強かった混沌神は信仰を得て更に格が上がった。

最早この世界の1番の神と言っても遜色ないレベルまで上がってしまったのだ。

 

「トップに立つ気1ミリも無いんですけどね……」

 

 混沌神としては愛する世界にちょっかいかける馬鹿をぶち殺せれば満足だった。

少しでも世界の役に立てればとコツコツ頑張っていた。

周りの神は努力が報われたとか言ってくるが別にこの方向に頑張ってた訳じゃないので内心複雑だった。

 

「はぁ……そろそろ帰ろうかな」

 

 転生者を送り込んだ他世界の神をぶち殺してたら青年──神父から交信が来たので対応していたがそれも終わったので帰る準備をする。

 

「たまには休もうかな……」

 

 休みなど必要無いはずの混沌神は、何だかすっごく疲れていた。

 

 

「すまない、取り乱した」

「いえ、大丈夫です、はい」

 

 すっかり冷静さを取り戻した神父に若干引きながらも女は返事をする。

 

「だが信徒になった方がいいのは確かなのだ」

「その……加護の方はそんなに要らないと言うか……不死身になりたい訳じゃないので……」

「それに関しては強制しない、我が神自身も加護に関しては授けるのに少々思う事があるとの事だ。我々の事を慮ってくれるとは……なんと慈悲深いお方か……!」

「あ、はい。私もそう思います」

 

 女は既に神父の賛美を否定してはいけないと理解していた。

取り敢えず同意しよう、そう言う思考になっていた。

 

「何故信徒になった方がいいか、理由は単純だ。お前が異界の尖兵だからだ」

「どう言う事ですか?」

「この世界に置いて異界の尖兵とは唾棄すべき存在、これは我ら混沌教団以外からも同じ評価だ。今のままでは、お前はマトモな扱いを受ける事が出来ない」

「ど、どんな扱いされるんですか……?」

「普通に人として扱われないぞ」

「そんなに!?」

 

「異界の尖兵達はそれ程の事をしてきたのだ。奴等のせいでどれだけの命が失われてきたか……思い出しただけで怒りが湧いてくる」

「そ、そのすいません……転生者で……」

「いや、お前を責めている訳ではない。先ほどお前はそんな事をしないと誓ったからな。だがもし混沌神の信徒になれば──この世界の一員として認められる。真っ当な扱いを受ける事が出来る。混沌神様への信頼はそれ程までに高いのだ。──もう一度、お前に問おう」

 

 

「お前も信徒にならないか?」

 

 

 女は頷いた。

頷く以外、この世界で生きていけないと思ったのもあるがそれよりも。

神父の笑顔が、ひたすらに怖かったのだ。




一話で打ち切りになった異世界チートスレイヤーをふと思い出して書きました。

思いつき短編を読んでくださりありがとうございました。

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