反転TS生徒のブルーアーカイブ   作:名無しの百合好き人間

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 百合と普通のカップリング、両方が見たくて書きました。
 楽しんでいただけると嬉しいです。


異世界転移と反転とTS

 目が覚めた時に感じたのは、頭の痛みだった。

 針が刺さっているかのような鋭い痛み。痛みを和らげる効果のあるツボを押してみても意味がなく、一向に和らぐ気配がない。

 

「⋯⋯あー」

 

 俺は唸りながら体を起こした。

 

 薄暗い視界の中に飛び込んできたのは、廃虚のような室内。天井には大きなヒビが走り、壁は一部が壊れて外の景色が見える程の穴が空き、窓枠の近くには尖ったガラス片が飛び散っている。

 

 何故、こんな場所にいるのか。どうやってここに来たのか。昨日何をしていたかの記憶が曖昧で、俺は全く思い出せない。

 置かれた状況を把握できるものを探して周辺を見渡すが、広がっているのは廃虚だけ。スマホを持っていないか探してみたが、それもない。

 

「⋯⋯悩んでも仕方ないか」

 

 ここがどこで、何故こんなことになっているのか。考えているだけでは答えは出ない。

 それを知るためには、やはりこの場所から出る必要があるだろう。

 

 廃墟の扉に近づき、押し開ける。扉が軋む嫌な音とともに、外の世界が視界に飛び込んできた。

 

「⋯⋯は?⋯⋯えぇ?」

 

 そこには、あり得ない光景があった。

 広がっていたのは都会にはよくあるビルが立ち並ぶ街。それは普通で、何らありえない光景ではない。

 

 問題は、その街を歩く人々の姿にあった。

 

 当たり前のように二足で歩きながら日本語を話す犬や猫、鳥といった動物。道端を歩く少女たちは、恐らく本物であろう銃を背負って走っている。

 銃の所持。そんな犯罪を誰も通報しないのは、恐らくそれが当たり前である銃社会だからなのだろう。

 

 二足歩行で歩く動物がいる、銃社会の国。そんなものは日本どころか、世界のどこを調べたって見つかるわけがないだろう。

 

 ここは日本でも海外でもない、全く異なる世界だ。

 そんな世界に、純日本人である俺がいるということ。そんな状況を端的に表す言葉がある。

 

「⋯⋯異世界転移ってやつ⋯⋯?」

 

 目の前を通り抜ける戦車を見ながら、俺は呟いた。

 

 

 

 

 

 

「⋯⋯さて、どうするべきか」

 

 一旦廃墟の中に戻った俺は、これからの行動を考えていた。

 

 銃が当たり前の世界に無防備な一般人の俺が一人。そんな状況の中、無計画な行動はできない。

 慎重に行動する必要がある。

 

「頼れる人はいない。チート能力なんてものもなくて、持ち物も何も無い」

 

 改めて自分の置かれた状況を確認すると、なんとも酷いものである。

 強制的に行われた異世界転移が、まさかのチート能力もアイテムも知識無双もなしの銃社会スタート。難易度ナイトメアである。

 

「こんな状況でどうしろってんだよ⋯⋯」

 

 正直、もう諦めたい。考えたところで状況が変わる気がしない。

 それでも、今の俺にできることは考えることだけ。それだけが俺に残された、この状況をどうにかできる可能性がある唯一の希望なのだから。

 

 絶望し、真っ白になりそうな頭を必死に働かせる。

 そんな俺に、さらなる悲劇が襲いかかった。

 

「たっだいまー!」

 

 扉が開かれ、不良といった風貌の少女が五人、廃墟の中へと入ってきたのだ。

 唯一の安置たと思っていたこの廃墟さえも、安全ではなかったらしい。

 

「⋯⋯オイ、なんだテメェ?アタシらのアジトで何してる」

 

 リーダー格らしき少女が、俺を睨みつけながら問いかける。手に持った銃の銃口を、俺に向けながら。

 

 選択肢を間違えれば死、黙っていても死。

 

 吐きそうになるプレッシャーの中、口を開く。

 

「あなたたちのアジトとは知らず、間違えて入ってしまいました。何も触っていませんし、壊してもいません。どうか、見逃してはもらえませんか⋯⋯?」

 

 両手を上げながらの命乞い。

 それがお気に召したのか、不良たちはニヤリと笑い。

 

「それなら、アタシらに差し出すモンがあるだろ?」

「さ、差し出すもの、ですか⋯⋯?」

「分かんねえのかよ、兄ちゃん。金だよ、金。賠償金ってやつ」

 

 そう言って、手のひらを俺に向ける。

 

「ま、アタシらも鬼じゃないからさ。有り金全部置いていけば、今回の件はチャラにしてやるよ」

 

 俺の持つ全財産を置いていけば、命は助けてくれる。

 そんなことで助けるなら喜んで金を差し出したい。差し出したいのに⋯⋯!

 

「⋯⋯ってないです」

「あぁ?ハッキリ言えよ」

「お金、持ってないです⋯⋯」

 

 不良の表情が一変した。

 笑みは失われ、恐怖を感じる無表情へと。

 

「⋯⋯なら、体で払ってもらうか」

「⋯⋯ッ!」

 

 ここで「え、俺襲われちゃう感じ!?卒業しちゃう感じ!?」などと考えられる単純思考なら、どれだけ良かったことだろうか。

 そんなわけがない。不良たちは金を欲しているのだ。

 

 ならば、答えは一つ。

 

「キヴォトスじゃ男なんて見たことないし、結構高く売れるだろ」

 

 人身売買、それしかない。

 

 それを察して逃げようとした俺の腕を、不良の一人が掴む。

 振り払おうにも不良の力が凄まじく、振りほどけない。

 

「うわっ、力弱っ。リーダー、コイツクソ雑魚ですよ」

「売るのが簡単で助かるだろ。逃げないようになんかで縛っとけ。あ、傷つけんなよ。価値が下がったりしたら困るからな」

 

 必死の抵抗も虚しく手足をガムテープで縛られ、口にもガムテープを貼られた。

 声は出せない、手足も動かせない。そんな状態の俺を不良の一人が担いで、人が一人入りそうなバッグに入れる。

 

 ⋯⋯あぁ、死ぬのか、俺。

 

 頭がそれを理解してしまった。

 もう、涙すら流せない。

 

 今まで、必死に勉強を頑張ってきた。

 嫌いな人間に愛想よくして、好かれるように努力した。

 全ては、人生をより良く生きるためだった。

 

 そんな俺の最後は、不良の金稼ぎに売られるだけ。

 

 ⋯⋯どうして、生まれてきたんだろう。

 こんな絶望を感じるくらいなら、生まれてこなければよかった。

 

 途方もない絶望に支配された俺は、これからの自分の末路を知りたくなくて。

 

 ゆっくりと意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 不良たちが男の入ったバッグを担いでアジトである廃墟を出ようとした、その時。突如、巨大な爆発が発生する。

 爆発は廃墟を簡単に破壊してしまい、不良たちは瓦礫の下敷きとなった。

 

 しかし、そこはキヴォトス人。不良たちはすぐさま瓦礫を退かして立ち上がる。

 

「いってえな⋯⋯ったく。オイ、爆弾爆発させたやつ誰だ?」

「わ、私は違います!」

「あたしだって!」

 

 リーダーの少女が睨みながら問いかけるが、誰一人として爆発させていないと答える。

 しかし、現に爆発はしているわけで。

 

「嘘ついてんじゃねえぞ!爆弾を爆発させてないのに爆発が起きるわけねえだろ!」

 

 部下の言い分を信じることなく、リーダーはキレる。

 それでもなお、部下たちは知らないと首を横に振るのだ。

 

(⋯⋯誰も名乗り出ねえ。まさか、マジなのか?)

 

 部下の必死の形相に嘘ではないと判断したリーダー。

 しかしそうなると、疑問が残る。

 

(誰が爆発しやがった?)

 

 そんな疑問に答えるかのように、瓦礫の中から何かが出てきた。

 

 そこにいたのは、一人の少女。

 長い白髪に赤い瞳を持ち、学ランに身を包んだその少女は何も喋らず、不良たちを見つめる。

 

 アジトを爆発した犯人が見つからない状況で現れた、知らない少女。

 不良たちが答えにたどり着くのも必然といえる。

 

「お前、良くもアタシらのアジトをぶっ壊してくれたな」

「⋯⋯⋯⋯」

「⋯⋯ダンマリかよ。まぁいい。お前ら、やれ」

 

 少女に四つの銃口が向けられ⋯⋯そして、発射。

 無数ともいえる弾丸が少女に襲いかかった。

 

 いくらキヴォトス人といっても、これだけの銃弾を受ければ怪我は避けられない。

 硝煙が舞う中で不良たちは勝利を確信し、笑う。

 

「バカなやつだよな。アタシらのアジトぶっ壊さなきゃ、怪我せずに済んだのにっ」

 

 そんなことをリーダーが言った、その瞬間。

 無傷の少女が硝煙の中から現れて、リーダーを蹴り飛ばした。

 

「⋯⋯え」

「リ、リーダー⋯⋯?」

 

 近くの建物の壁に激突したリーダーは、ピクリとも動かない。

 少女の一撃で気絶したのだ。

 

「⋯⋯や、ヤバいヤバいヤバいって!」

「に、逃げろ!」

 

 状況を把握した不良たちはリーダーを放置し、逃げようとして。

 それよりも早く、少女が蹂躙を始めた。

 

 逃げようとしても先回りされ、殴られる。

 

 銃弾をありったけ撃ち込んで無傷。

 

 そんな相手に、不良たちが勝てるわけもなく。

 数分後には、五人全員が気絶させられることとなった。

 

 

 

 

 

 

「⋯⋯ここは?」

 

 目覚めると、青空が広がっていた。

 てっきり死んだのかと思ったが、どうやら生きているらしい。

 

「あの不良たち、俺を解放したのか⋯⋯?」

 

 そんなはずはないのだが、現に今、俺は生きているし自由に動けている。

 立ち上がった俺が何が起きたかも分からず周辺を見渡していると、あるものが飛び込んできた。

 

「⋯⋯アレって!?」

 

 それは、俺を売ろうとした不良たちの姿だった。

 全員が全員、疑う余地もなく気絶している。

 

「⋯⋯何があった?」

 

 目が覚めたら周りに人が倒れてたとか、どこぞの勘違いイキリファンかよ。

 まあ、倒したのが俺じゃないから完全に同じというわけでもないが。一体どこの誰がこの不良たちを助けて俺を解放してくれたのだろうか。

 

「⋯⋯ま、誰でもいいか。助かったんだからな」

 

 お礼の一つでも言いたかったのだが、そういうのが照れくさい人だったのかもしれない。

 クールに去った謎の人物に感謝していると、ふと、違和感に気づく。

 

「⋯⋯あれ、白髪生えてる」

 

 視界の端にチラッと見えた白髪。

 気になって手に取ってみると、しっかりと俺の頭皮に根付いているのが分かる。 これは間違いなく、俺の髪の毛だ。

 しかし やけに長いし多い。髪の毛全部が白髪になったみたいだ。

 

「まぁ、そうなってもおかしくないストレスはさっき感じたけどさ」

 

 白髪が生えるのは老化の他に、ストレスも原因となるんだとか。

 ならば、俺の髪の毛が全部白髪になるのも不自然じゃない⋯⋯。

 

「いや、不自然だろ」

 

 自分のバカみたいな思考にツッコむ。

 どうやら、色んなことが起きて頭がバカになってしまったみたいだ。

 

 落ち着こうと、いったん深呼吸。

 

 そうして冷静になった俺は、おかしなことに気がついた。

 

「⋯⋯声、おかしくね?」

 

 さっきから発している声が、女の子のようになっているのだ。

 さっきの深呼吸で見えた手もなんだか小さくなっていたし、俺の全身に異常が発生している。

 

 ⋯⋯すごく、嫌な予感がする。

 

 ふと、近くの建物のガラスに映る自分の姿を見た。

 

 長く白い髪に、赤い瞳。

 透き通るような白い肌、膨らんでいる胸。

 小さな鼻に、ぷるんとした唇。

 

 それはそれは可愛らしい少女が、ガラスに映っている。

 そしてガラスに映っているのは、俺のはずなわけで。

 

「⋯⋯俺、女の子になっちゃった⋯⋯ってコト!?」




 主人公の名前のお披露目は次回になります。
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