私、悪い入間じゃないんです! 信じてください!!   作:かりん2022

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お題感想、感想、ありがとうございます!
なかなか書けずにいたのですが、お題感想で応援されたのもあり、
なんとか書き上げられました!

このまま入間編も何とか……!


私、悪い入間じゃないんです! 信じてください!!19

姉に、300万円を渡された。家にこんな大金があることすら知らなかった。

 

「何これ」

「私達は江戸川の女だから、2024年まで逃亡しないとなの」

「どういうこと?」

 

 姉は説明してくれた。

 ずっと前からあったリョナエロ漫画のサイト。

 そこに出てくる悪役。

 たった一人の対抗策。

 ヒントは江戸川区に住む女であるというだけ。

 

「これから、江戸川区はあらゆる援助と攻撃がくるようになるわ。それを待ってたら遅いの」

「私が魔女だって? 確かに静電気体質だけど」

「可能性は0じゃないわ。静電気体質で、江戸川の女。だから、魔女じゃないって確証が訪れるまで、私達には生き延びる義務があるの」

「江戸川区に何人女性がいると思ってるのよ。学校だってあるし」

「千里。地球の未来が掛かっているのよ。これは江戸川の女の義務よ」

 

 信じがたかった。

 

 それでも、姉が真剣な顔をしていたから、私はお金がもらえるならと頷いた。

 

 それから、実際、多くの援助が得られた。

 

 食事は夜におにぎりが2個だが、女なら無料になる宿。

 あちこちであらゆる層にあらゆる形で払われる補助金。

 戸籍をもとにしていないのもあった。旧江戸川区の女だと察知されずにお金を受け取れる為だと知った。

 

 全国放送と、江戸川区で多くの人が洗脳されたり囚われたりした事を知って、姉の決断に感謝した。

 

 2024年問題は起こる。

 この平和な世界、全てが儚く消えるもの。

 私は日本各地を回って、目に焼き付けた。

 

 そして、首相官邸の近くに宿を取った。

 女性なら無料で泊まれる小さな宿が乱立していて、4月は美味しい食事付きだった。私はもちろん宿泊した。

 当然のように、首相官邸までの地図が配られていたし、当たり前のように女達がこそこそとルートをチェックしていた。

 彼らもまた江戸川の女なのだろう。

 姉との再会も出来た。姉は涙を流して喜んでいた。

 私と違って姉はボロボロで、私はようやく、私の方にほとんどの資金を渡していたのだろうと気づいた。

 手を握り合う。細い手だ。ぎゅっと力を込めた。姉もぎゅっと握ってくる。

 

「頑張って生き残りましょう」

「うん、私、頑張るわ、お姉ちゃん。ありがとう、私、魔女だったら絶対世界を救うからね」

「絶対よ?」

「今日は一緒の宿に泊まろうよ。それぐらい良いでしょ?」

「そうね」

 

 

 

 

 それから姉は話してくれた。

 姉は呪術師に助けられた事があって、それですぐに与太話を信じたということ。

 五条さんという美しい呪術師に、恋をしてしまったこと。

 今、お友達を洗脳されて、苦しんでいるということ。

 今もまた、入間に狙われていること。

 もしも私が江戸川の女だったら、助けに行ってあげて欲しいこと。

 

 姉と二人で広い窓から空を見上げる。

 流星雨。閉じていく光。ざわめき。

 

 ああ、世界が終わる。

 

 全ての電気が消えた。

 

 世界が終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 全身がざわざわして、私は丸まった。

 

 まさか。

 まさか、本当に?

 

 姉の言葉がリフレインする。

 

『江戸川の女の義務よ』

 

 ここに来るまで、沢山の援助を受けてきた。

 江戸川区の女であるという一点だけでだ。

 そして、その理由が、私だった。

 

全身が痛い。姉が呻いて、姉も変異をするのだと気づいた。

どちらかが魔女なのか? 両方違うのか? わからない。

痛みに転げて震える。

古き全てが終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして新しき全てが始まった。

 私は倦怠感を振り払い、必死で目を覚ました。

 背中から激痛がして、羽が生えていて。

 血溜まりの中で、姉を見た。

 姉の体から、水晶が突き出ていた。

 

「おねぇちゃん!!」

「千里」

 

 姉は目を見開く。そして、誇らしそうに嬉しそうに笑った。血を吐きながら。

 

「行きなさい、きっと、五条さん、泣いてる」

「お姉ちゃん!!」

「どうか振り向かないで。私は弱みになる」

 

 ずっとここにいたかった。せめて姉が事切れるまで。

 でも、駄目だ。私は姉の、国の、地域の援助を貰って遊び呆けてきた。

 全てこの日の為に、私に期待して、それを与えてくれたのだ。

 姉をぎゅっと抱きしめて、窓を開けた。

 

「世界を救ってくるわ」

 

 姉はグッと親指を立てた。私は窓から飛び出した。

 誰でも使えるようになってる自転車に乗る。

 

「江戸川の魔女か!?」

「行って! 早く行って!」

 

 追いかける人。止める人。揉み合う。

 

「頑張れ! 頑張れ! 頑張れ!」

 

 私は、声援を受けながら、自転車を漕ぐ。

 発声練習をしつつ、頑張る。

 

「こっちだ! 急いで!」

「うおおおお江戸川の魔女! 江戸川の魔女出撃!!!」

 

 行ける。

 パキパキと作り替えられつつある体を実感しながら、私は首相官邸を見上げた。

 自転車を捨てて、羽を羽ばたかせる。

 竜の魔女が飛べるんだ、負けてたまるか!!!

 

 それでもやっぱりダメで、2階の窓から侵入。

 そこにいた人が慌てて鍵を開けてくれた。

 

「急いでください! 屋上はこちらです!」

「江戸川の魔女!?」

「頑張ってください!」

「ほ、本当に現れた……!」

 

 私は走る。そうして、ビシッと指を突きつける。

 人を指差すのは呪いの仕草だと聞いたことがある。

 目一杯呪いをかける。

 

 救われろ。救われろ。救われろ!

 

「『xxxx禁止を禁ずる!!!』」

 

 姉が恋したという、五条さんらしき美しい男性。

 絶望から潤んでいた瞳が、安堵するのを見てしまう。

 絶望から人を救われた瞬間を見て、自分がそれをなしたのだとホッとする。

 

 私は、姉を捨ててきた。その価値はあったはずだよね、と内心で姉に問う。

 

「君、名前は?」

「私は江戸川の魔女です。それ以上でもそれ以下でもありません」

 

 なんでもないように言う。決して憂いを悟らせないようにする。

 

 今、癒しの呪文を教えてもらって急いで姉の所に行けば、姉は救えるかもしれない。

 それを誰も否定するはずもない。

 でも、それは弱みになる。

 1時間のロスで、勝利を逃すかもしれない。

 今の私のやるべき事は救出だ。

 江戸川の女は誰にも負けてはならないのだ。

 

 

 全てが江戸川の魔女の為に尽くしてきたのだ。

 ならば、私はもう鬼灯 千里ではなく、江戸川の魔女なのだ。

 もはや、私という個はいらない。この国の為に全てを尽くす。

 

 

 

 

 

 

 

 後日、吸血に見破られ怒られ、無事救出されていた姉と共に説教を受けることになる私なのだった。

 なんか、超越者も術師も当然、一般人の大切な人がいるから、それを大切にしない風潮を作ると皆が困るんだって。それはそうだ。

 

 最後に、だから君達は幸せになっていいって言われた時、ジーンときた。

 義務を果たすならね、ってオチがついたけど。

 




マシュマロ
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