…――それから4ヶ月の時間が流れた。
異世界転移するまでの準備はだいたい整ったが最近は体が不調だ。仕方ないことだがサービス終了するまでの後1ヶ月、体には頑張ってもらおう。
あれからNPCを製作してどのギルド拠点にもNPCを複数体、創っておいた。
転移後の新しい
だが、二つだけ懸念点がある。
それは、転移する時の条件だ。原作の"オーバーロード"とスピンオフの"亡国の吸血鬼"では、転移する時間が違うのだ。
原作の"オーバーロード"では六大神降臨から600年後に転移したのだがスピンオフの"亡国の吸血鬼"ではその原作のおよそ250~200年前に転移したのだ。
原作では、明言されていなかったのだがその違いで考察されていたことがある。
考察されていたことズバリそれは、高度だ。
原作の"オーバーロード"はナザリック大墳墓の第10階層の玉座の間で転移したのだがその時はいわゆる地下にいる状況である。
だが、"亡国の吸血鬼"では、花火を打ち上げようと地上から数十メートルの高さにいた。
以上のことで考察されたのが"高度"が転移する時間に関係しているということだ。
俺がその条件を知っているのはアドバンテージだが、これはあくまでも読者間での予想だ。
それに、もう一つの懸念があるのだが転移する時はプレイヤーを中心にして起きるのかWIを中心にして起きるのか、あるいはその両方かが分からないということだ。
俺の予想はその両方だと考えている。なぜなら13英雄のリーダーが初めは誰よりも弱かったとあるからだ。
つまりは『ユグドラシル』サービス終了の時を好奇心で見にきた復帰プレイヤーだったのであろう。そんな初めからの状態でWIを持っているとは考えにくいからだ。
もう一つの理由としては"亡国の吸血鬼"でWI『両界曼荼羅』は聖域指定された場所にあったのだ。プレイヤーと一緒に転移した場合そんな貴重なWIを見逃すとは思えない。
つまり考えられることはプレイヤーを介して転移した訳ではなかったということだ。
結果、予想されることは、その転移するのはプレイヤーとWIの両方だ。
転移する条件はそんなところだろう。
以上のことから分かるのはNPCは転移する条件には含まれていない。だから、NPCが転移するのにWIかプレイヤーを介することが必要かもしれないと予想している。
いくらWI『ファウンダー』でナザリック大墳墓以外のギルド拠点をシステム的にもギルド『アインズ・ウール・ゴウン』として認識していても転移できない可能性は少なからずあると考えられる。
念には念を入れて転移する前にギルド拠点一つにつきWI『熱素石』などを置いておこうと思う。
これで転移することは出来るであろう。まぁ転移する時間は違うかもしれんが…――
「まぁ、なるようになるだろう。」
こんな感じが転移する上での懸念点だが俺は原作と同じ時間に転移しようと思う。
原作のほうがよく知っているのもそうだが原作前より転移することでバタフライエフェクトが起きて原作キャラ達に会えなくなってしまう可能性があると考えたからだ。
俺は原作キャラに会えなくなってしまうのはとても残念だからな。
それに原作は辺境部しかないので大陸中央で覇を唱える六つの強国や深遠なる躯など俺が知らない未知に溢れている。
俺には、それが楽しみで仕方ない。
俺が知らない世界や意思を持ったNPC達に会うのも楽しみだ。
勿論、『ユグドラシル』も楽しかったが、俺は転移した後のことを期待せずにはいられなかった。
☆☆☆☆☆☆
…――それからの1ヶ月は瞬く間に過ぎて行った。
そして、遂に原作が開始する日になってしまった。
D M M O R P G『ユグドラシル』サービス終了日だ。
原作と同じようにへろへろさんが久しぶりに『ユグドラシル』にログインしに来てくれた。へろへろさんは原作と同じように『エルダー・ブラック・ウーズ』というスライム種の中でほぼ最強の異形種だ。
「モモンガさん、おひさーです。」
「ホントに久しぶりですね。転職してからでしたっけ?」
「それぐらいですねー。今は絶賛デスマーチ中でして」
「それって大丈夫なんですか?」
「体ですか?ちょーぼろぼろですよ」
どうやらヘロヘロさんはブラック労働らしい。労働基準法があったら即通報ものだ。まぁ、そんなの今の地球に存在しないんだけど……終わってやがるぜこの腐った世界。
「そういえばなんかギルドランキング一位になってるけど何があったんですか?」
「引退する予定のギルドがナザリックを攻略しにきたんですよ。」
「よく防衛しきれましたね」
「私達『アインズ・ウール・ゴウン』は最強ってことですよ」
そんな感じでギルド『アインズ・ウール・ゴウン』について何があったのかヘロヘロさんと語り合った。久しぶりにこんなに喋ったなと思った。願わくばヘロヘロさんにも一緒に転移してほしいものだが……。
「ヘロヘロさん、最後まで残っていきませんか?」
「まぁ、最後まで残りたいんですが、ちょっと眠すぎて」
分かっていたことだがヘロヘロさんは最後まで残れないようだ。俺と違って家族もいるようだし異世界転移するから残ってくれなんて無責任なことは言えなかった。
もしヘロヘロさんが転移したとして残された家族はつらいものだ。最後まで俺の好物を作っていた母さんを失った時に初めて気づいた。
もっと早く前世の記憶が戻っていればと何度考えたことか……
「わかりました。今までありがとうございました」
「ギルド長はどうされるんですか?」
「私は最後まで残ります。誰かが来るかもしれないから……」
誰も帰ってくることがないのは知っているが原作と同じようにそう言い訳した。
「なるほど、こちらも今までありがとうございました、モモンガさんがギルド長でいてくれてたからこれだけ楽しめたのだと思います」
「いや私こそ皆さんがいたから楽しめました。私自身特に何かをしたわけではありません」
「そんなことないと思いますが…今まで本当にありがとうございました。では私はこれで」
「こちらこそ、仕事頑張ってください」
そしてヘロヘロさんはログアウトして消えていった。結局原作と同じようになってしまったがクランの時とは違って不思議と無力感はなかった。
俺は立ち上がってギルド武器のほうに向かった。
向かうまでの間にギルド『アインズ・ウール・ゴウン』の思い出が駆け巡っていた。随分と不思議な気分だ。
今では誰もいない筈の円卓を見てギルドメンバーを幻視する。
「ギルド『アインズ・ウール・ゴウン』は俺に任せください。」
俺はそれだけ言ってギルド武器『スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウン』を手に取った。
「さぁ行こうか、俺達の――いや我がギルドの新たな伝説の始まりに……」
☆☆☆☆☆☆
部屋を出た俺はメイド達を見かけた。
「付き従え」
俺は原作と同じようにNPC達にそう命令した。メイド達を連れ、歩きだした。
そして玉座の間に行くまでの間にプレアデスも見かけたのでもメイド達と同じように命令した。
俺はメイド達を連れてレメゲトンへと到着した。ソロモン72柱をモチーフにしたのだが原作と同じ67体ではなくしっかりと72体創ってある。
俺が近づくと重厚な扉がゆっくりと開いた。
いつもは転移して玉座の間に来ているので中々に新鮮な気持ちだ。
「待機」
俺はNPC達に待機の命令を出した。そして階段をのぼり玉座へゆっくりと座った。最後に原作と同じようにアルベドの設定の『ビッチである』と一文を消し、『ナザリックを愛してる。』と書き加えた。流石にビッチはどうかと思うよタブラさん……
「ひれ伏せ」
一斉にNPC達は片膝を落として臣下の礼を取った。
これで準備は完全に整った。
時間を確認してみると残りは23:54:51だった。
後10分もしないうちに『ユグドラシル』は終わるのだろう。だがそれは『ユグドラシル』の終わりであって、俺にとっては新たな始まりである。
「そうか、これが未来への期待感か……」
記憶を取り戻す前の俺では未来への期待感など欠片も抱いていなかった。記憶が戻った俺は『ユグドラシル』にすべてをかけた。金や時間、その全てをだ。
などと考えているうちに終わりの時間が迫ってきた。
俺は、23:58:21、22、23と早めにあわせて数え始めたのは転移することに対して期待感があったからである。
俺は23:59:50、51で目を閉じた。
時計と共に流れる時を数える。それは幻想の始まりを表していた。
0:00:00…1、2、3
俺は目を開ける。自分の部屋ではない。ユグドラシルの玉座の間だ。
勿論、コンソールやGMコールも使えない。
「――おお!!」
転移を成功した喜びのままについ大きな声を上げてしまった。そしてきっと一人寂しく響いたはずの声に対して何か反応があるはずだ…
「…――どうかなさいましたか?モモンガ様?」
これから一週間用事(テスト)があるから更新が途絶えます。