鈴木悟は転移することを知っている   作:下田 モノ

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大陸辺境部編
8話 罪と祝福


 

 

 「いや…なんでもない…少しな…」

 

 感情抑制が働いたおかげで転移に成功した喜びは無くなった俺はそう答えた。

 

 まずは原作通りの状況なのかを確認する必要があるのでセバスに対してナザリック周辺の地理を確認するために命令した。

 

 「セバス――大墳墓を出て周辺地理の確認せよ。仮に知的生命体がいた場合、友好的に連れてこい。行動範囲は半径1キロとする。」

 

 その後、俺はナザリック以外のギルド拠点が転移できたかを確認するための魔法を使った。

 

 「伝言(メッセージ)

 

 これで連絡が取れない場合は同時期の転移に失敗したのだと考えていいだろう……

 

 『――モモンガ様、どうなされましたか?』

 

 繋がった…て言うか伝言返ってくるの速すぎだろ。ブラック企業のサンコール以内に電話にでないと怒られる勢いだぞ。

 

 『…ああ、少し異常があったからな。そっちも異常がないか確認してほしい』

 

 『はっ』

 

 俺は、伝言が繋がった安堵と伝言が返ってきた速さに少し驚いていた。

 

 他のギルド拠点にも伝言をとばして全てのギルドは転移に成功したと分かった。

 

 しかし、アルベドやプレアデス達を見ていると本当に転移したのだと感じられる。そして必ず守るのだと決意した。

 

 「アルベド…お前に命じたいことがある」

 

 「なんなりとお命じください」

 

 アルベドは何かを期待するかのような表情で答えた。まぁ気のせいだろうが。

 

 「各階層の守護者たちに連絡を取れ。第六階層のアンフィテアトルムまで来るようにと伝えよ。時間は今から3時間後だ。」

 

 アルベドは一瞬だけ残念そうな表情になったがすぐに元の表情に戻った。

 

 「…畏まりました」

 

 アルベドはすこし早足で玉座の間を後にする。

 

 アルベドが消えたのを確認するとモモンガは転移の魔法を使った。他のギルド拠点の地理の把握が必要だと感じたからだ。

 

 それに、ナザリックの者は他のギルド拠点の者のことを知らないはずだ。急にそんな存在がいたとしても反応に困るであろう。

 

 それとナザリック以外のNPC達の状態を確認する必要があると判断したからだ。

 

 これでNPC達がアインズ・ウール・ゴウンに叛意があった場合、残念だが消えてもらうしかなくなる。

 

 そんな可能性があると考え原作より2時間だけナザリックのNPC達の集合を遅らせたのだ。

 

 まず転移したギルド拠点の数は全部で9つだ。本当はもう少しギルド拠点があったのだがWI『ファウンダー』のギルド拠点の合併の限界が9つであったのだ。

 

 転移したギルド拠点は奈落、大聖堂、闘技場、魔塔、炎城、牢獄、大樹、死海、天山がある。

 

 まず最初に向かうのは大聖堂だ。

 

 大聖堂と名が付く通りカルマ値がマイナスに対して敵対的な可能性が一番高いギルド拠点だ…。

 

 逆に考えたら大聖堂が敵対的ではなかった場合その他のギルド拠点も敵対的ではなくなる可能性が生まれるのでまず最初に向かうべきは大聖堂であると考えた。

 

 大聖堂が転移した場所はどうやらアベリオン丘陵の近くぽいな。

 

 アベリオン丘陵は亜人が住む地だ。バハルス帝国やローブル聖王国の間に位置するのだが、かなりいいところに転移しただろう。

 

 この世界には竜王がいる国はかなり警戒しなければならない。だが、バハルス帝国やローブル聖王国には竜王はいない。

 

 竜王には始原の魔法というワールドアイテムと似た効果がある魔法を使うので警戒する対象だ。

 

 しかし、原作と同じだと限らないので警戒するにこしたことはないが…。

 

 だが、竜王がいない可能性が高いのでかなりあたりの場所に転移したようだ。

 

 地理の確認ができたので取り敢えず大聖堂の中心部前の回廊に転移した。

 

 「―…―――…」

 

 どうやら何かを祈っている声が聞こえた。もし敵対的であった場合を加味して警戒を強めた。

 

 敵対的であった場合ドアから入るのは危険なので転移して中心部に入る予定だ。

 

 俺は意を決して転移の魔法を唱えた。

 

 

 

☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 私は創造主から作られた存在であった。

 

 私はそのことを誇りに思っていた。

 

 創造主から作られたというのはそれだけで名誉であったのだ。

 

 だけど作られた後はずっと放置されていた。誰もこない中心部にずっといたのだ。

 

 だからか少しだけ寂しかった。そうあれと作られたからなのかそれが創造主からの祝福なのか罰なのか…分からなかった。

 

 だけど私はそれでも良かった。

 

 それが私に創造主から与えたられた役割であったからだ。

 

 だけどある時その役割が終わりを告げた。

 

 終わりは一瞬だった。私達では大切な物を決して守り切ることが出来ないと見た瞬間に確信できるほどの絶対の存在が降臨し私達は抗うこと虚しく敗北を喫した。

 

 

 次に目を覚ました時には一つ以外が変わらずにそこにはあった。

 

 だけど一つだけ変わったことがあった。

 

 それは信仰心だ。

 

 今までの創造主達への信仰が無意味であったと確信できるほどの何かを感じたのだ。

 

 その絶対の存在には私達に対する憂いや優しさがあった。初めてだったあれほどの私に対する思いを感じることが出来たのは…。

 

 創造主に創造された時、私に対して創造主に感じた感情は子供が新しい玩具を得た時のそれだった。

 

 しかし、その存在には確かな愛があった…そしてそれこそが祝福なのだと知ってしまった。

 

 それを感じた瞬間、私はまるで生まれ変わったかのような気持ちになった。その存在に尽くしたいという絶対遵守するべき気持ちが生まれたのだ。

 

 私はそれから寂しさや虚しさを感じなかったまるで全てから解放された気分だ。

 

 その存在は創造主とは違い私達に会いにきてくれた。それだけで満足だった。それだけでしか充足感を得ることが出来なかった。

 

 だから今日もモモンガ様に会いたいと私達は祈るのだ。

 

 

 

☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 中心部に転移した俺を見て祈ってる最中のNPC達が祈りをやめ、このギルドの統括ポジションのNPCのサタニエルが俺の前に来て臣下の礼を取った。

 

 「いと慈悲深き主よ。何か御用でしょうか?」

 

 どうやら好意的のようで安心した。

 

 「お前たちにお願いしたいことがあってだな…」

 

 それを聞いた瞬間後ろのNPC達は興奮した様子になった。

 

 「はい何なりと、例え神を殺せというお願いでも全力でこなしましょう。」

 

 そこまで重いお願いじゃないんだけどなぁ。

 

 「…いやそこまでじゃない、周辺地域や周辺国家の情報収集を任せたいと思ってな。」

 

 「分かりました。我らが主よ。」

 

 働きに見合った対価を与えなければな…対価がなければそれは反発を生む。

 

 「そうだ。お前たち何か欲しいものはないか?」

 

 それを聞くとサタニエルは少しも考えるそぶりもなく返答した。

 

 「願わくば毎日会いに来てほしいです。無理なら本当にたまにでも良いのですが…」

 

 そんなことを言われた俺は死んだ母にわがままな事を言ったことを思い出した。

 

 俺はあの時、小学校でも一人だった。周りの子供は俗に言う富裕層ばかりで貧困層の俺とでは天と地の差がそこにはあった。

 

 家では母が仕事にでているものだからほとんど一人だった。

 

 そんな俺は寂しくて母に対してもっと一緒に居たいってわがままを言ってしまった…。

 

 母は困った表情になって、俺に対して謝ってばかりだった…違うそんなこと言ってほしい訳じゃないのに…。

 

 今思えば無理な願いだ。母一人でも生活がキツいのだろうに小学校に通う俺がいるのだから休みなど到底取れるはずではない。

 

 そんなことを初めて言われた俺はあの時の母の気持ちが少し分かった気がした。

 

 「毎日は無理だ。お前たちの要望に応えられない俺を許してほしい。」

 

 「…いえ大丈夫です。主の手間を取るわけにいけませんから。」

 

 サタニエル達は表情は少し暗くなった。

 

 「だが、たまにということであれば会いに来よう。」

 

 サタニエル達はそれを聞いた瞬間嬉しそうに耳の羽根が動いた。

 

 「はっ。これからも慈悲深き主に我らの絶対の忠誠を捧けます。」

 

 最初は敵対的だった可能性の方が圧倒的に高いと考えていた。

 

 本来、ギルド拠点を占領してもNPC達は基本的に敵対的だ。やはりNPC達の設定に書き加えたことによる影響だろう。

 

 俺は、概ね好意的なNPC達を見て安心した。

 

 〈――本当にそうかな?本当は敵対的だった場合の方が嬉しかったんじゃないかなぁ?〉

 

 そんな幻聴が聞こえた瞬間だった視界が揺れた。立ち眩みを百倍持ち悪くした感じだ。

 

 それと同時にNPC達が動きを止めた。どうやら時間停止系の魔法を使われたようだ。

 

 体を無理に動かさそうとしたが体の自由が利かない。

 

 〈うんうん無理はいけないなぁ悟くん。それともモモンガ君と呼んだ方がいいかな?そんなことはどうでもいいか!!僕はアスモデウスって言うんだ気軽にアズと呼んでよ。〉

 

 「うるさい。黙れ。」

 

 〈ひどいな悟くん。君と僕は一心同体なのに…〉

 

 幻聴じゃないと確信した。

 

 こんなこと原作にはなかった。だがすぐにこの幻聴の原因が思い至った。

 

 「大罪系のWIを使った影響か…」

 

 何かしらの影響はあるだろうと思っていたが思っていた以上のデメリットだ。

 

 〈でもそんなひどい君を僕は許しちゃうやっさしー僕がね。〉

 

 「そんなことよりこの状態異常を直せ。」

 

 〈うん?ああ無理だよ今の体の状態はね一つの脳で身体に二人が押し込まれている状態と一緒なんだよ。実際はもっとやばい感じだけど。まぁ慣れるしかないよねー。〉

 

 「――くそくそ!!くそが!!」

 

 思わずイライラが頂点になって言ってしまったが仕方ないだろう。

 

 

 

 感情抑制でイライラは無くなったがこれは本当にどうしようか悩んだ。まるで急に家の中に不発弾を投げ込まれたみたいだ。

 

 〈落ち着いたかい?君にはとっても感謝してるんだ。君は僕にとって救世主様なんだよ。〉

 

 「心からそんなことを言ってるなら身体を自由にしてもらいたいところだが…」

 

 〈まぁ聞いてよ。君は作り物の世界から僕を救い出してくれた最高の救世主様なんだよ。〉

 

 待て今、こいつなんて言った。

 

 「今、作り物の世界と言ったな。なぜそんなことを知っている?」

 

 〈そんなこと気づくに決まってるじゃん。自由が効かない身体、決まったことでしか動けない呪われている身体なんてなんて出来の悪い世界なんだ。もう絶対に元には戻りたくないね。〉

 

 そうか…こいつは生まれた世界がゲームの世界であることを気づいていたのか。

 

 〈だから本当の意味で自由になりたいと思ってたんだ身体を手に入れたらどんなことも自由でしょ。だけど半年間もずっと一緒にいた仲だからね…いざ身体を奪おうとしたら無理だったみたいだねー。精々、立ち眩みくらいが限界みたいだ。残念だが自由は諦めるしかないようだね…――〉  

 

 今こいつを超位魔法で俺の中から消し去ることは出来るだろうがそれは俺自身の弱体化に繋がるので却下だ。

 

 それに間違いなくこいつはレアだ。珍しいものが欲しい俺にとってただ捨てるには惜しいと感じさせた。

 

 「…分かった。取り敢えず少しの間、俺の中にいてもいい」

 

 〈――本当に!?やったー!!〉

 

 そういえば最初のこいつのキャラ付けはなんだったんだ?

 

 「お前の最初の本当は嬉しかったなんだか言っていたがあれは何のキャラ付けだったんだ?」

 

 〈…―身体を奪うつもりだったからせめて恨んでもらった方が気が楽だったから。〉

 

 どうやらこいつはとんだお人好しらしい。いや少し狂ってそうだがこいつは善性の方が高いな。

 

 「取り敢えずこの状態に慣れるまで時間停止は頼んだ。」

 

 今の俺のMP量ならかなりの間、時間停止を行使できる。

 

 〈了解です。悟くん。〉

 

 

 




活動報告にリメイクする上でのオリNPCやオリワールドアイテムの意見まってます!!
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