※この小説には魔法少女ノ魔女裁判の
重大なネタバレが含まれています!
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儀式準備 編
【副題観測記録/観測ログNo.30】
フィクスマージ語 " - Ninpet - "
翻訳結果…… 『 人形 』
──ふっ! この観測記録は、
チャンネル0に沈む彼女たちの痕跡。
読者はこの記録を通して、死後の視界を
垣間見ることになるだろうね!──
化け物が出てくる時間をやり過ごした私たちは
眉唾な儀式の準備をしている生存者を見るため
一度監房部屋を確認しようと歩を進めていた。
時刻は昼の12時。
ノアくんとシロくんにゲストハウスを任せて
私とヒロくんは監房廊下まで移動している。
彼女が言うにはここで作業しているらしい。
ヒロくんが歩みを止めたのは奥から二番目の
部屋の前、ココくんとハンナくんの部屋だね。
「やはり、ここで準備しているようだ」
そう言って中に入るヒロくんについていくと
ハンナくんとマーゴくんが見えた。
ハンナくんの手にノアくんに似た人形と裁縫道具。
あとは……完成している他の人形もあるみたいで
ベットの上に綺麗に整列して置かれていた。
一方マーゴくんは紫色のカーテンを並べて
儀式に必要な道具なのだろうか慎重に縫っている。
劇の作業風景のような雰囲気だね。
そのとき廊下側から騒がしい足音が響いてくる。
大量の布を持ったシェリーくんがズカズカと入り
ベットの上に勢いよく置いたせいか
綺麗に置かれてあった人形が跳ね空を舞う。
「持ってきましたよ、ハンナさん!」
「丁寧に置いてくださいまし……
というか、随分多いですわね」
布の山を作ったシェリーくんはチラッと
準備の進捗を見つつハンナくんに視線を向けると
誇らしげな顔を浮かべていた。
「いろんな部屋から引きちぎってきました!」
「なんて乱暴なことしてるんですの!?」
「私も手伝いますねぇ~」
彼女のツッコミを綺麗にスルーし
制作物を手に取ったシェリーくんは……
「あっ」
テーブルの上に一時的に置いてあった
制作途中のカーテンを破ってしまった。
それを見たマーゴくんは深いため息を吐く。
「シェリーちゃん。もう少し加減できないかしら」
「すいませ〜ん、こういうのは苦手でしてぇ~」
「仕方ないわね……貴方には別の作業を頼むわ」
「細かい作業は私とハンナちゃんに
任せて、運ぶのだけお願いするわね。
明日の夜までには間に合わせたいの」
そう言って布をハンナくんに次々と渡していくと
カーテンを作る作業に集中しなおすマーゴくん。
急かすようなその態度に疑問を抱いたのか……
「なんか急いでるようですけど……
時間制限でもあるんでしょうか?」
虫眼鏡を覗いた状態で見つめそう聞いた。
するとマーゴくんは手を止めずに返答をする。
「いえ? タイムリミットはないわ。
けど、この作業はなるべく早く済ませたいの」
「それはどうしてですの?」
同じ疑問があったハンナくんも乗っかって聞くと
回答を用意していたのか妖艶な笑顔を向け……
「死者が留まってくれるかわからないからよ」
こちらを試すようなその一言。
「あぁ! それはつまりぃ〜
“レイアさんたちがいなくなる可能性”ですか!」
いきなり自分の名前を呼ばれて少し驚いてしまう。
もしかしてそれでヒロくんやノアくんの
人形を作っているのだろうか。
「私たちはいつでもこの儀式の準備を
進められるけれど……時間が経てば
彼女たちはいなくなるかもしれない」
「だから早く済ませたいの♡」
「わかりました!
じゃあ私ももっと手伝います! あっ」
布を取り、案の定ビリィッっという音が鳴る。
「……今決めましたわ……こいつを〇す!!」
「え~? そんなこと言っていいんですか~?
処刑されちゃいますよ~?」
「構いませんわ! 絶対〇しますわ~!」
監房部屋はふたりの暴れる音で一杯になるが
呆れた顔をするマーゴくんの手は止まらない。
よくこの状況で作業できるね彼女は……。
「思ったより騒がしいな……」
「あぁ、そうだね」
「一旦離れるぞ」
騒がしい部屋から廊下へと移動し
音が響かないところまで移動すると
ヒロくんに声をかける。
「ところでヒロくん」
「なんだ」
そう言ってこちらに振り返ってくる。
「儀式の内容って具体的になんだと思う?」
その質問に少し思うところがあるのか
数秒の沈黙が流れた。
「……サバトの儀式、の『亜種』と考えている」
「亜種……?」
「あぁ。もちろん理由がある」
「現在、サバトの儀式では
『死者を呼び出す儀式を行ってはならない』
という決まりがある」
「だが、宝生マーゴは降霊術を行おうとしている」
「それって……一体何が召喚されるか
わからないじゃないか!」
「まさにそのとおりだ」
ヒロくんが危険視している理由が今まで
わからなかったけれどそれを聞いて納得できた。
「儀式で何が出てもいいように監視するべきだ」
「確かに危険だね。それに、私が伝えた場所と
違うことにも違和感があるよ」
「……場所だと?」
あのスマホにメモ書きした場所は……
『サラマンダーの部屋』だったはずなんだ。
それを伝えるとさらにしかめっ面になるヒロくん。
「本来と違う遺言にすり替えられたのか?」
「うん。そうだと思うよヒロくん」
「私の遺言は誰かに弄られた可能性が高い
……誰かが邪魔をしていると思うんだ」
「なら余計に調査を進めるべきだ。
他の人物の動向も見ておこう」
お嬢様言葉が聞こえてくるのをスルーしつつ
私たちは監房廊下を後にした。
他の人物が関与しているか確かめるために
ヒロくんと移動していたけど、確認できたのは
娯楽室に複数人集まっていることだけだった。
娯楽室内で集まっているのは4人。
アンアンくんとミリアくんは映画を観ていた。
ホラー慣れしている様子のアンアンくんとは
対照的にビクビクしているミリアくん。
2人はソファに仲良く座っている。
遠くの方に見えるのはココくんとアリサくん。
チェスの駒を持ちムムムと考えているココくんと
たまに聞こえる映画の効果音にビビるアリサくんの
2人は対局しているようだ。
「──きゃあああーーー!!」
部屋中に響く悲鳴に体が反応する。
『ミリアは驚きすぎだ』
「……あ~も~……こういう
ビックリ系のホラーおじさん苦手なんだよね~」
何を思ったのかスマホを取り出しポチポチする
アンアンくんを見ると何か企んでいる顔だ。
彼女が持つスマホを覗くと録音機能のようで──
「──きゃあああーーー!!」
……なぜかミリアくんの悲鳴を再生した。
「って録音してない!? も~恥ずかしいよ~」
「ふっ」
「ちょっとアンアンちゃん! やめてってばぁ~」
面白がって何度も再生するアンアンくん。
ミリアくんはそれを恥ずかしがって
スマホを取り上げようとするが華麗に
避けられてしまい、また再生される悲鳴。
映画はほったらかしのまま垂れ流されている。
微笑ましい光景を後にして、チェス中の二人へと
足を運ぶとチェックメイトになる一歩手前まで
追い詰められ唸るココくんを見た。
「ぐっ……この状況、もう無理じゃね?」
「喧嘩吹っ掛けてきたのはオメェだぞ」
「うぐっ、言わせておけば……
ぜぇったい、負けないからな!」
アリサくんの方は余裕といった顔をしている。
……孤立している人物に見えたんだけど
結構素直な人なのかもしれないね。
「ここにいる人物は関わってないようだな」
「そうみたいだね」
「…………」
横からヒロくんを覗くと悩んでる表情だ。
「ヒロくん? どうしたんだい?」
「一つ確認したいことがある」
「何をかな」
ヒロくんはいつも以上に真剣な表情をしていて
私の事を計るようにじぃーと見てきた。
「遺言には具体的になんて書いたんだ?」
「あぁ、そのことか」
あのときエマくんに渡したスマホの遺言……
つまりメモ書きに関しての質問かな。
「私が残したのは『視線を感じたこと』と
『ゲストハウスが怪しい』ことの2点だよ」
「前者は『サラマンダーの部屋』のこと。
後者は『構造に関して』だね」
「詳細を話してくれ」
「もちろんさ」
まずは視線の方から話そうかな。
あの部屋に入ったときに私はすぐに
得体のしれない視線を感じたんだ。
え、具体的に? えーと、そうだな……。
何というか……こちらを警戒するような感じ……
誰かを護ろうとする視線と言った感覚かな。
もちろん私の感覚でしかないから根拠はないけど。
それで、今度はゲストハウス全般の話だね。
こっちは物理的な話だよ。
知ってると思うけど3つのゲストハウスは内部構造
つまり備品や窓の配置が全部同じはずなんだよ。
それなのに、私は一つだけ違う点を見つけたんだ。
「それで? その違いとは?」
「慌てなくていい! 私たちの合流地点!
つまりゲストハウスに向かうのだからね!」
ふふっ……決まった……。
「たしかに、現場を見に行った方が早いか」
……あれ? スルーされた?
「“百聞は一見に如かず”と言う、現場に行くぞ」
「あぁ! 待ってくれよヒロくぅ〜ん」
後ろでココくんの負けたぁぁぁという声を
聞き流し、牢屋敷外へと移動を開始した。
何度見ても広い隔離施設だと感じる。
私とヒロくんは正面玄関から外に出て
石畳みの道を歩いていた。
もちろん目的地はゲストハウス。
先程の説明を保留したままだからね。
保留した話の続きが気になるのかヒロくんの
歩幅がいつもより広くなっていた。
「わりと急ぐんだね」
「あぁ、こういう事は早くハッキリさせたい」
「なるほど?」
ツカツカと私もヒロくんに合わせて歩く。
自然の匂いを感じつつ、木と木の間を進んでいくと
ついにゲストハウス前までたどり着いた。
ログハウス風の建物が3棟並んでいて
サラマンダーハウスの横で私は解説を始める。
「さて、私が気づいたことを説明しようか」
「たしか“一つだけ違う点がある”と言ったな」
「そうそう。その話だね」
要点を脳内でまとめつつ解説していく。
〈少女解説中…………〉
「つまりこういうことか」
説明をし終えた段階でヒロくんが最終確認をする。
「建物の老朽化具合を見て
“サラマンダーの間”と“ノームの間”は
1年以内に建てられた可能性が高い」
彼女は隣のゲストハウスの壁を軽く叩く。
「さらに“ウンディーネの間”の修繕された形跡から
少なくとも10年以上前だろうと推測。
これであっているか?」
「その通りさ。ヒロくん」
「それにしてもよく気が付いたな」
関心したような、けれどどこか疑っている表情。
彼女の懐疑的な視線に対し、得意げに胸を張る私。
「目に見える外装から判断するならともかく。
それだけで年数までわかるものなのか?」
「あぁ、もちろん気づいた理由があるんだ」
「……それは?」
「床の……【軋む音】さ」
私はサラマンダーの扉前、階段の木を踏んでみる。
生きているときに確認したのと違って
霊体だからだろう、全く足音がしなかった。
「私たち役者は『音』や『声』を確認するんだ」
「職業柄……というやつか」
「まあそれに近いものだね、話を元に戻そう」
3棟をそれぞれ歩いたときの床が発した『音』は
明らかにウンディーネの部屋だけ違った。
湿ったような深い軋み、老朽化特有の音がね。
「両サイドのゲストハウスからは
そんな音、確認できなかったんだよ」
「経験に基づいた聴覚の鋭さ……か。
納得はまあできる」
「ご満足いただけたかな? ヒロくん」
顎に触れていた手を下ろし、少し頷く彼女。
「それでゲストハウスを見比べた結果
怪しんで調査したら……ということか」
「まさにその通りさ」
「なるほどね、仮説としてはただ──」
そう話し合っていたときに開く扉の音が響く。
ヒロくんも気が付いたようで音の方向へと
移動するとノアくんとシロくんを発見する。
メルルくんが近くにいるから開けてくれたのかな。
嬉しそうに近寄ってくる二人と合流する。
「ヒロちゃんとレイアちゃんだ~」
「準備風景を見てきたよー」
おっとりした様子の二人は互い相性がいいのか
私といた時より明らかに元気そうだった。
「あぁ、まずはこちらの情報を共有しよう」
「そうだね。その後で聞こうか」
要点を抑えつつ余計な情報は省いて説明する。
〈情報共有中…………〉
「うん。わかった!」
私たちの情報を伝え終わった後
今度は二人が見た部屋内の情報を聞く。
「用意されてたのは手作りの祭壇っぽいモノと」
「赤色と紫色のキャンドルがあったよ~」
「あとね? 食堂にあった腐った果物とか~」
「大量の赤い塗料も準備されてたね」
……話を聞いても全然わからないな。
オカルト関係はそこまで詳しくないし
どうにか目立てるチャンスは……。
「あと……予言書の本が持ち込まれてたんだ~」
……ふむ?
「んー人形とね~小さい椅子もあったかも」
「レイアちゃんの人形を座らせてたみたいだよ?」
…………なんだって!
「私の人形が……フフッ」
まさか! 亡くなっていても目立てるなんて!
「…………」
「つまり。生存者たちはレイアを……
降霊術で呼び出そうとしている。
なんだ、わりと簡単な話だったか」
「でも不可解な点もある、サバトの儀式──」
フフッ私を降霊術で呼び出すなんて……
皆私のことが恋しくて仕方ないんだね!?
罪な女だな──私は……。
「……聞いていたか? レイア」
「え、あ、あぁ。勿論聞いていたとも!」
深いため息と呆れた顔、苦笑いがその場に溢れた。
【今回判明した事】
→謎の儀式をノームの部屋で準備中。
一部の生存者たちは儀式の準備をしている。
エマくんグループとマーゴくん、ナノカくん
一体どんな儀式をしようとしているのか……。
【特筆すべきところ】
→シロの目に映る人物。
エマ、ハンナ、シェリー、メルル
アンアン、アリサ、ナノカ 7名。
→扉という壁に阻まれてる問題
ノア君のスプレーで【一時的に】壁を
通り抜けることができる。
ただ、毎回あの頭の中を
掻き回されるような気持ち悪い感覚に
襲われるため、あまり使用したくない。
それぞれ道具を固定されてしまっている。
ヒロくんの火かき棒やノアくんのスプレーを
交換したりはできないようだ。
→牢屋敷関係
娯楽室はいつも空いているよ。
食堂の料理は期待できないね、
まぁ、食べれるだけマシだろうか。
10時〜12時、15時〜17時、22時〜翌日6時、
囚人全員が監房に拘束される時間で、さらに
私たちにとっては化け物が出現する時間。
見つかった場合は看守にずっと追跡される。
捕まったら懲罰房に拘束され2日間動けない。
そんな愚かな行動は慎むべきだね。
→シロ関係
知り合いらしき人物が見えた。
誰かはわからないが……
美しい顔をしていたね。
母親が【魔女】の可能性が高いみたいだ。
彼女の母親……花に随分詳しいね。
応接間の環境を変えた人物に思える。
ほぼ、【魔女】だろうと予想している……
と、ヒロ君は言っていた。
彼女の魔法は現在特定不可。
魔女因子の痕跡を【残滓】と発言したらしい。
この【残滓】を集めると
彼女の魔法は強化されていくらしい。
→敵か? 味方か?
正直いうと彼女が敵とは思いたくない。
あの実験体のレポート、いやまさか……
私の思い違いであればいいんだけど。