魔法少女ノ魔女裁判 ─君の為に〇ぬ時─   作:プッチーノ

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 ※この小説には魔法少女ノ魔女裁判の
  重大なネタバレが含まれています!
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  ヒロ考察 その2 後半

 【副題観測記録/観測ログNo.34】
  フィクスマージ語 " - 9/20 - "
  翻訳結果…… 『 1 』
  翻訳担当者:二階堂ヒロ

 ──この観測記録は、
 チャンネル0に沈む彼女たちの痕跡。
 読者はこの記録を通して、死後の視界を
 垣間見ることになるだろう──


ヒロ考察 その2 後半

 

中庭から移動した私は娯楽室へと辿り着く。

 

シャンデリアの蝋燭が中央にあるからか

他と比べても非常に明るい部屋で眩しい。

 

(あの化け物とは、対照的な明るさだな)

 

そのため入ってすぐ人がいることに気が付く。

 

下段の棚を開けているミリアと、ソファで

スケッチブックとペンを片手にうんうんと

唸りつつ何か書いているアンアンの二人だ。

 

棚の近くにはいろいろな道具が置かれている。

物体の倒れる音と同時に、棚から道具を出したり

入れたりして何かを探している様子のミリア。

 

テーブルの方に視線を移動させると

ソファの上に開かれている筆箱と書きかけの

紙にくしゃくしゃにされている紙の山。

そして近くのごみ箱にも同じような山があった。

 

はぁ、天啓が降りてきそうだったのに

 ……タイミング悪い……」

 

どうやらインクが切れてしまったらしい。

アンアンは不満そうにペンをゴミ箱へ放り投げる。

それは箱の縁に当たりゴロゴロと転がっていく。

 

(ちゃんとゴミ箱に捨ててくれ……アンアン)

 

ミリア、見つけてくれたか?」

ちょっとまってて、アンアンちゃん。

 おじさんがサクッと見つけちゃうよ~」

 

あぁ、どうやら代わりのペンを探していたようだ。

 

ん、あれ……こんなのあったんだね」

 

困惑した声と同時に紙同士を擦るような雑音が

部屋全体に伝わりアンアンは不思議そうに

棚の方へ視線を向けていく。

 

ミリア。どうした……?」

 

その音とミリアの声に疑問を感じたのか

ソファからゆっくりと立ち上がり

棚の近くへとしぶしぶ移動するアンアン。

 

ミリア?」

え? あぁ、アンアンちゃん。これ見て」

 

ミリアはアンアンに見つけた物を見せる。

その手には……クレヨンで描かれた絵。

屋敷の外を頑張って描いた風景画に見える。

 

かわいい絵だなぁーって思ってさ」

幼い絵の間違いではないか」

 

彩り溢れる花畑の上には私たちと似た少女たち。

魔道服や制服のようなものを着ているようだ。

大雑把に描かれた湖畔や大きな屋敷も隅に見える。

 

そうかもしれないけど……ほら、こっちの帽子

 被ってる女の子とかよく描けてない、かな?」

 

その一言に言いたい事があるのかスケッチブックに

サラサラと書き込んでいくアンアン。

書き終わったのをミリアに見せると……。

 

服装が白色の人ばかりだ。見づらい』

 

容赦のない感想だった。

 

もう、アンアンちゃんてば……」

この紙、結構ボロボロであるな」

 

ミリアから絵を貰ったアンアンは紙質の方が

気になるようで表面を慎重に触って確かめている。

手に持ったその絵は2棟の家がわかりやすく

描かれていてゲストハウスのように見えた。

 

うん……結構古いみたいだね」

ノアの絵の方が好みにあっている。

 これより断然上手い」

あー有名人の絵と比べちゃうのはちょっと……」

 

ペラペラとめくられていく絵たち。

どうやらかなり枚数が多いようで……

どれもこの屋敷付近の絵ばかりのようだ。

 

それもそうか……なぜか

 やけに同じ帽子を被った人物が多いな」

言われてみればそうだね

 ……あっ、もしかしてこの絵って」

 

ん……? なんだ?」

前の囚人が描いたのかな?」

だとしたら、その人に絵の才はなさそうだな』

 

(辛辣だな……芸術家肌か?)

 

あーまぁ、絵が上手いかは置いといて」

 

ポケットからスマホを取り出しパシャパシャと

写真を撮り始めるミリア。一枚、また一枚と

次々に写真フォルダへ保存しているようだ。

 

何をしている』

いやぁ、特徴的な絵だし……この絵は

 ちゃんとスマホに保存したいなーと思って」

 

いつでも見れるし、撮る必要あるのか?」

下手に触ると紙がボロボロになっちゃいそうだと思ったんだけどな……」

たしかに一理ある」

 

それを見たアンアンも同じようにスマホを取り出し

絵を一枚撮ってはまた一枚と保存していく。

気づくとあたり一面が絵で覆い尽くされていた。

 

ってアンアンちゃん! 広げすぎだよー」

ミリアが始めた。わがはいは無実」

はいはい。おじさんが悪いのは

 わかったから、片付けしよっか」

 

仕方ない、わがはいは大人なので手伝おう」

それじゃあアンアンちゃんはソファの方を──」

 

そう言って二人は片付けを少しずつ始める。

テーブルにあった筆箱すらまともに見えない量だ。

 

(かなりの量だな、誰がこんなに絵をか……ん?)

 

ふとテーブル上の紙に見覚えがある人物がいた

気がして、もう一度その絵に注目する。

 

(なんだ──この絵は……いや、そんなはずは)

 

二度見した上で、幻覚でないことを確認する。

その絵の中には見覚えのある……

私にとって信じがたい人物が描かれていた。

 

描かれる筈のない……【彼女】らしき人物。

私が助けることができなかった幼馴染。

その【幼馴染】が、確かにこの絵の中に居た。

 

その少女は……【月代ユキ】。

 

こんな幼児の落書きのような絵に

信憑性など、あるはずがない……。

だが、もし……【その場に居た者をそのまま】

描いたとしたら……ここに、彼女が……?

 

(……そして……何故【彼女】の隣に……)

 

私にとって大切だった幼馴染の隣に

同じように腰掛けている小さな後ろ姿。

ここで初めて会った不思議なあの子供。

 

そこにいるのは私が仮の名前を付けた、

【シロ】と呼ぶあの子にしか見えなかった。

 

(……いや、これは……ただの絵。ただ

 似ているだけの可能性も十分あるはず……だ)

 

そもそもユキがここに居たと仮定して……

その場合は時系列が完全に合わない。

私は確かに彼女が埋葬されるところまで見た。

 

もし過去に監獄にいたなら脱出できず魔女化するか

誰かに殺害されるか……そのどちらかのはずだ。

つまり中学生の時にあの学校で会えるはずもない。

 

(牢屋敷にユキがいたはずがないんだ……)

 

私がずっと傍にいたなら彼女を助けられたはずだ。

親友に任せたのに……君は友達を見捨てた。

エマに任せずに、私がユキを守っていたら──

留学に行かなければ自殺を止められたかもしれない。

 

だから……私は【エマを憎んで】いる。

君は……彼女を唯一助けられる立場だったのに

……何もしなかった。

 

(桜羽エマ……私は君のことが嫌いだ)

 

そしてその日から【自殺が禁忌】と化した。

友人をこの世界から奪った忌まわしき行為。

そんなものは【正しくない】。

 

正しくない、正しくない、正しくない……

正しくない正しくない正しくない正し──

 

ヒロくん?」

 

ふと後ろからレイアの声がした。

 

振り向くと以前より何か誇らしげなレイア。

スプレー缶を手に持っているノアと……

心配そうに私を見つめてくるシロが居た。

 

気絶から復帰してここまで来てくれたのだろう。

以前と違いレイピアを所持しているようだ……

あの鏡から入手した武器だろう。

 

気絶してしまって申し訳ないよ、私はもう大丈夫さヒロくん。みんなそろったことだし!探索を続けようじゃないか!!」

 

心なしか、前より柔らかな表情をしている。

なにか心境の変化でもあったのだろうか?

 

(まぁ、ただ【目立ちたい】だけかもしれないが)

 

私が居なくて寂しかったろう!ヒロくん!」

 

 

 

(…………は?)

 

 

 

寂しい…………?」

 

私の代わりに代弁してくれたシロ。

どうしてそう思ったんだレイアは……。

困った顔で私はノアとシロを見つめる。

 

のあもよくわかんないなー」

 

どうやらノアにとっても理解不能だったらしい。

どうしてそう思ったのかレイアに聞くことにする。

 

どうして、私が、寂しいと思った?」

 

レイアに対して真意を測ろうと、そう返答した。

 

どうし てかって? 私がリーダーだからさ!」

 

その言葉に唖然とする私たち。

 

 

 

(…………はぁ…………)

 

 

 

理由を聞いた私がバカだったかもしれない。

 

リーダーがいない事と寂しいに何の関係が?」

 

シロの鋭すぎる指摘にレイアがたじろぐ。

予想外の人から殴られたという表情をしていた。

 

シロくん!? 君をそんな風に育てた覚えは──」

いや、レイアちゃんは私の父親じゃないでしょ」

 

あまりに冷静すぎるツッコミで返すシロ。

小柄な顔から出てくる言葉は常識人のそれだった。

 

これからなればいいじゃないか!」

女の子は父親になれないよー?」

 

三人はじゃれつき始めてしまった。

 

そうした掛け合いを聞いていると、床に広がる紙が

いつの間にか一つにまとめられていた。

 

ミリアとアンアンが広げた紙を片付けたようだ

二人は他の人物にも見せるつもりなのだろう……

絵を抱え部屋を出ていく。

 

私はその姿を見送るだけで、

追いかけることはしなかった。

 

ヒロくん、一ついいかな?」

なんだ改まって」

シロくんとビリヤード勝負したとは本当かい?」

 

(勝負したいとか言うつもりじゃないだろうな……)

 

私と勝負してほしい!」

 

やはり的中してしまった。ため息を吐く。

 

まぁいいだろう。ルールは知って──」

勿論知っているさ、じゃあ早速、勝負といこうじゃないか!」

手加減はできないぞ」

むしろ……本気できたまえ!」

 

にやりとした彼女の交戦的な態度を見て……

 

(……こんな時間も悪くない)

 

そう思ってしまう自分がいた。

 

体を失ったもの同士の三人。

シロとノアとレイア。

仲間がいるという安堵がそこにあった。

 

懐かしそうにするシロの顔に違和感を覚えながら。

 

 

 

球を落とし合い、着実に残りの球を減らしていく。

お互いに実力は拮抗していた。

 

シロくんの話では、強いと聞いていたけれど?」

ナインボールなら簡単に逆転できる」

なら大丈夫だね」

 

シロとやった時より明らかに苦戦していた。

先程ユキの絵をみた影響のせいか、動きが悪い。

その様子をみて、シロが私を覗いてくる。

 

ヒロちゃん、調子悪い?」

────」

 

────────────────────

 

ヒロちゃん……大丈夫?」

 

────────────────────

 

(………………)

 

こういう時、シロはかなり目ざとい。

 

大丈夫だ。この程度問題ない」

 

レイアはなんだか含みのある顔をしている。

 

おっと、少しミスしてしまったね」

…………」

おや? どうしたんだいヒロくん。君の番だよ」

 

レイアが本気でミスしたのか絶妙にわからない。

手加減されたかもという気持ちを振り切り、

ナインボールを狙う……そして結果的は──

 

今回は私の勝ちのようだね!」

 

誇らしげにそう言うレイア。

最後に9番ボールを入れられなかったせいで、

ギリギリ敗北してしまった。

 

レイアちゃん、強ーい」

 

自然と笑顔になるノアの表情。

 

ふふっ、ヒロくんも強かったね。

 私に一歩及ばずといったところかな?」

 

負けてしまったが、決して悪くない気分だった。

気持ちよくなっている顔のレイアを横目に

拳を隠しつつ強く強く握りしめていた。

 

決して負けたのが悔しいわけではない。

 

……ちがうからな。いいな?。

 

 

 

ビリヤードの球、なんで勝手に

 動いてんのよぉ、まじキモすぎだってぇ……」

 

入口から覗いていた人に、誰も気が付かなかった。

 

────────────





───────────────────────
実験レポート No00000000

20XX/09/20  

被験者 ──シ──。

筆跡者 研究者S

経過観察:対象は【検閲済み】

所感:
本当に(滲んでいるため読めない)した【検閲済み】の魔女を【検閲済み】する。そして【検閲済み】を取り除くための──の犠牲……。

このような人間と見た目の変わらない少女を【検閲済み】にするなど……本当にこれでいいのだろうか?

……いや、こうしている間にも15歳以上の魔女化した少女たちはどんどん増え続けている。私だってこのような【検閲済み】段はしたくない。
   
私たち科学者が解析を進めればあの子を【検閲済み】から復活させることも、もしかしたら…………。
   
(あとは破損が酷い状態の為、読めない)
───────────────────────
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