※この小説には魔法少女ノ魔女裁判の
重大なネタバレが含まれています!
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初戦闘(?)回
【副題観測記録/観測ログNo.7】
フィクスマージ語 " - yu-Range - "
翻訳結果…… 『 果実 』
──この観測記録は、
チャンネル0に沈む彼女たちの痕跡。
読者はこの記録を通して、死後の視界を
垣間見ることになるだろう──
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この3つの根拠から導き出せる答えがある。
液体状の化け物の正体……それは
死んだ過去の魔女
▶︎死んだ私自身
死んだ過去の囚人
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……ステンドグラスが割れた音が響く。
これは……割れなかった時は間違いとみなして、
わざと発言して確認するのもいいかもしれない。
それで正解が導けるなら。私はやってやる。
「死んだ私自身だ」
「え!?死んだヒロちゃん自身っで、でも
ヒロちゃんと私はここで喋ってるよ?」
「あぁ、正確に言うと死んだ私の身体が受けた
過去に発動した魔法の影響だろう。
図書室の枯れない桜も根拠だとするとね……」
実際、魔法の影響らしき桜が残っていた。
もし過去に魔法を桜に与えたとしたら……
その影響はこの屋敷に残り続けていることになる。
(つまり、牢屋敷内で発動した魔法は長期間の間
維持される環境である、と仮定できる)
「魔法の影響によって私の死体に変化が現れ、
こちらに干渉してくる化け物が生まれた……
そう考えればある程度は納得できるんだ」
(ただ、その魔法の可能性が一番高いのは……、
シロの魔法かもしれないことは黙っておこう)
彼女は顎に右手を置き親指を頬に、
左手は腰に置いて、考えを言い始める。
「う〜ん……魔法の影響だと仮定して、どうして
あんな液体状になっちゃうんだろうね〜?」
「……それに関してはまだわからない……
遭遇した時に集中して見てみないとね。ただ、
相手は友好的じゃない可能性が高いし危険だ」
「ん〜、じっくり見る機会があればいいけど、
私達を攻撃してくるなら、難しそうだね〜」
あぁ、と頭を傾けつつ、
次の根拠である凶器に関しても言及する。
「さらに化け物が持っていた凶器も根拠だ。
間違いなく私が持っていた『火かき棒』だよ、
持っている武器と一致していたし、間違いない」
「あ〜、だから私達は既視感があったんだね!」
「そういうことだな」
(推理に過ぎないから物的証拠はないが……)
「えーと……それがもし合っているとしたら、
分割されたヒロちゃんの体は、誰かの
魔法の影響で勝手に動いてるってこと……?」
うぷっと言い、彼女は顔色を悪くした。
グロテスクな絵面を想像してしまったんだろう。
私自身もそんな事は認めたくはないが、
今の情報だと一番説得力がある仮説だ。
「なるべく戦いたくはないけどさ〜
逃げ続けるのも牢屋敷内だけだと難しいし
……いつかは戦うしか……ないよね……」
彼女は半ば諦めの顔で悲しそうに言う。
そんなシロの事を見て、彼女の肩に手を置いた。
手に入れた武器を彼女に見えるように立つ。
「一応、対抗できそうな武器は見つかったし
試しに戦ってみて、倒せるなら倒す。
そうすれば何かわかるかもしれない」
それにこの武器があれば
君の事も守れるかもしれないと、
少しクサイ台詞だったが彼女を励ました。
本当のことをいうと、倒したい気持ちがある。
死んだ後体を操られている?いい気分ではない、
見つけたらすぐにでも倒すと心が訴えている。
そもそも自分の体がゾンビみたいに動くところを
誰だって見たい訳がない……忌々しい。
「え……でもヒロちゃんが危ないよ……?」
彼女の表情はとても心配そうにしている……。
心優しい性格なのか、戦いは苦手そうだ。
「大丈夫、相手がある程度強いなら時間を稼いで
逃走すればいいし、逃げられる場所を確保して
おけば、そんなに危険はない……はずだよ」
「そうかな……でも怪我はしない様にね?
傷つく姿を見るのは嫌だから、わかった!
無理だと思ったらすぐ逃げる……約束しよ?」
と、シロは小指を私に向けてきた。
指切りげんまん……子供がする可愛い約束だ。
もちろん私も小指を合わせその約束を承諾する。
「あぁ、約束だ」
「それに相手の『頭』がないとしたら、
私の武器が弱かろうと、やりようはある」
「?」
「そのために、少し……議論しようか」
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牢屋敷に囚われて2日目朝。
図書室にいた私達は、あの化け物が現れた
ラウンジに移動し、調査をしている。
ここに現れるかもしれないと、待つことにした。
待っている間は部屋中を観察する。
ラウンジにある凶器、ボウガンを見たが
ボウガンも矢も動かされた形跡はない。
残滓が付着しているかもと思ったが……
痕跡もなかった為、今は気にしないでおく。
その間に、生きている何人かがラウンジを通って
玄関ホール監房へと移動していくのを確認した。
時刻は9時50分。どうやら10時から何か規則が
あって監房に戻らないといけないのだろう。
その確認途中で玄関ホールにある『残滓』を見た。
私はそれを見てある策を思いつく。
シロにその作戦を提案し、勝てる見込みを作る。
あと今回の策には関係ないが
廊下の端にボロボロのエプロンが落ちていた。
看守が落としたのだろう。
【残滓】を纏ってるから持っていけるね〜と
呑気な事を言いながら突っついて遊んでいるシロ。
一応、遊ぶなと注意をしておく。
さらに時間が過ぎるのを待つと、
玄関ホールを行ったり来たりする看守を見た。
屋敷内の管理をチェックする時間なのだろうな。
……そろそろ10時になる。
シロをまず作戦の為に玄関ホールに待機させる。
私はあの化け物が出てくるのを、暖炉からは
丁度見えない位置の豪華な椅子の陰に隠れていた。
相手だけ視認できて尚且つ隠れられる場所は
ここしかなかった為、しゃがんで待ち伏せる。
玄関ホールにある時計の針の音が
うるさく感じるくらいの静寂。
私達はあの化け物から隠れていた側なのに、
今度は待つ側になるとは……なんて皮肉。
手に入れた『血塗れの火かき棒』をしっかりと
握りしめ、考えたあの化け物を倒す策。
準備はできている。いつでもこい、『化け物』!
時計は……10時の鐘を鳴らす。
そのとき、暖炉の近くから気持ち悪い音。
音に反応し、武器を握りしめ奇襲の準備をする。
赤黒い液体と蝶が突然大量に部屋に現れ始め、
部屋の地面はぬかるんだ赤い液体で満たされた。
ラウンジの地面から「胴体だけの化け物」が
姿を見せ、武器を片手で持ち、暖炉前に佇む。
その姿は私と同じ体だった。
私は玄関ホールに向かって目を二回瞬きする。
作戦を実行する時だ。
化け物は暖炉の前をウロウロしている。
まるで誰かを探す様に動いていた。
私が指を挙げ合図を出すと、次にシロは動いた。
玄関ホールにある古時計の鐘が複数回、
ゴーンゴーンと鳴る。
『!?』
化け物は音が鳴る方向に体を動かす。
時計を少々うるさく聞こえるように、
わざと大袈裟な音を響かせた。
時計に付着していた残滓操作による
相手の視線を誘導させるための策だ。
化け物は玄関ホールへ向かうか迷っている。
時計の鐘の音が鳴った時の化け物の反応を見て、
私は確信を持てた。
こちらを見ていない隙を狙って、
足を鐘の音と同タイミングに合わせすり寄る。
バレない様に化け物の背後へと近寄っていく。
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化け物がシロの足音を聞いて反応した後、
なぜ私達を見逃したのか。戦う前に議論した。
見つからなかった理由は? 目で確認してない?
初遭遇時は私達を見ていた訳じゃないかも?
様々な議論をした結果、最終的な結論は
『音』で反応しこちらに近づいた事だった。
つまり、あの化け物は
『目でこちらを認識しているわけじゃない』
『音だけでこちらを認識している可能性がある』
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そんな事を事前に話し合っていたおかげか
私は簡単に化け物の背後に立つことができた。
鐘の音に私の足音はかき消されている為か
一切こちらに気づく様子はない。
頭がないなら聴覚もないのではないかと
希望的観測で考えてはいたが、そこまで
欠陥がある化け物ではないこともわかった。
私はゆっくりと音を立てず、武器を移動させる。
化け物の弱点は心臓の位置と仮定し、
武器をしっかり両手で持って突きの体勢をとる。
要はバックスタブ狙いの一撃を狙う作戦だ。
念入りに相手の心臓らしき位置を確認し、
そして私は化け物に向かって思いっきり
足を一歩踏み込み、火かき棒を突き刺した。
「ギィヤアアアァァァ!」
目を瞑って武器をがむしゃらに動かす。
化け物の大きな悲鳴が私の耳を震わしてくる。
肉と肉の間を無理に刺したからだろうか、
べたべたと気持ち悪い感触が体全体にはしる。
相手の体を深く深く傷つけるよう必死に動かす。
早く倒れてくれと。
最後に、武器を引き抜こうとしたら
急に武器が化け物の体からすっぽ抜けて──
「っ……!」
その武器を引き抜いた反動で私は後方に転ぶ。
あまり慣れてない動きをしたせいか、
武器をつい床に落としてしまったようだ。
立ちあがろうとしたが、体全体がよろめく。
落とした武器を手に取り、
敵の状態を見ようと急いで前を向く。
胴体だけの化け物は床に倒れ込んで、
身体中が溶けていき液体と化していた。
倒れた体全体が液体になったかと思えば、
最後に液体は全て赤い蝶となって消えていく。
なんとか無事に倒せたようだ。
残されたのは綺麗な【残滓】のみで、
ラウンジの地面も同様に元に戻る。
一度赤い液体で服が濡れたと思ったが、
それも全て赤い蝶となって消えた。
どうやら私たちの作戦勝ちのようだ。
「ヒロちゃん!!転んだけど大丈夫?」
シロは急いで私に駆け寄ってくる。震えた声だ。
作戦が成功して敵を倒した事より、
転んだ私の安否を先に確認するなんて……
本当に優しいな君は、と少し感傷的になる。
「あぁ、大丈夫だよシロ」
「本当に怪我してない? よかったぁ……」
彼女の手を借りて、立ちあがる。
転倒した時に腰あたりから先に落ちたせいか、
ヒリヒリしている気がした。
「ヒロちゃんが怪我しなくて良かったぁ……」
彼女の顔に涙が頬を伝っている。
あまりにも心配そうな表情の彼女を見て
ふと、思うことがある。
(どうして会ったばかりの私の事を、
彼女はここまで心配してくれるんだろうか)
「君のおかげで敵を簡単に倒せたよ、ありがとう」
「ヒロちゃんの作戦が良かっただけだよ〜〜」
ただのお人よしと結論付けるのは簡単だが、
この繊細さはいくらなんでも過剰だ。
(過去に、よほどのトラウマでもあるのか?)
彼女は気丈に振る舞ってはいるが、もしかすると
精神状態はかなり悪いのかもしれない。
「視線を誘導するなんてよく考えたね〜!」
「時計に残滓が残っていたから、
能動的に動かせると考えたんだよ」
記憶喪失という現象の発生原因……
よく挙げられるのは、
トラウマから脳を守るための防衛機能……か。
「敵は無事に倒せたね〜なら、
早速この残滓を見てみようよ!」
もしそんな状況に彼女があるとしたら……
思い出させるのは酷かもしれない。
それならせめて、私といる間くらいは──
(何かいい思い出を作ってあげたい)
「あぁ、一緒に見てみようか」
私達は一緒に残滓に向かい、手を伸ばす。
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「あぁ、私ーーー赤ーーんーーーーー」
「ーーーーまーーーーーくーーーーーとー」
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「……っ!」
ノイズまみれの聞きづらい音声が流れた。
真っ暗闇で声だけしか聞こえない。
今までの残滓で得た記憶とは全然違って、
かなり見づらい記憶だった。
ただ、誰か二人の声は聞こえた気がして、
その二人に心当たりがないか、記憶を辿るが、
やはり私の知っている人物の声ではない。
この記憶は重要かもしれない。
シロに心当たりがあるか聞いてみようとすると、
「……」
彼女の表情は……こわばっていた。
明らかにその記憶が何か心当たりがある顔で、
汗が頬を伝っていた。
何かを思い出そうとしているようにーー。
「……シロ?」
「……え!なぁに?ヒロちゃん」
声をかけると、時間差でこちらに反応した。
「今の記憶……私は全くわからなかったが、
シロ、君の記憶の一部……かもしれない」
「……多分、私もそうだと思う。けど……
どうして化け物を倒した記憶が私のなの……?」
……その一言に私はなんと返せば『正しい』か、
求めた答えはどこにあるか、わからなかった。
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ヒロの脳内メモ
→今現在の状況
残滓操作による視線誘導によって
液体状の化け物を一方的に倒せた。
正直、刺した時の感触は気持ち悪かった。
まだ手に残っている気がする……。
扉という壁に阻まれてる問題
▶︎現在解決方法を模索中。
→牢屋敷関係
ある程度の規則があって
一定の時間に施錠がされる。
▶︎例外 娯楽室はいつも空いている
食堂の料理は期待できそうにない。
10時〜? 15時〜?時 に一旦施錠される。
▶︎これを破ると看守に追いかけられる。
捕まったら懲罰房に拘束される。
→シロ関係
人懐っこい犬のような少女。
運営側の可能性あり。
昔の牢屋敷を訪れたことがある。
魔女の一人かもしれない。
「死ぬ可能性が高い人物」のみ見える。
レイア、ノア、メルル、エマ
現在はこの4人を認識可能。
彼女の魔法は現在特定不可。
魔女因子の痕跡を【残滓】と発言。
この【残滓】を集めると
彼女の魔法は強化されていく……らしい。
もしシロが敵側だとすると、
敵を強化していることになるが……
純粋無垢で嘘がつけ無さそうな
彼女は本当に敵なのか?
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