〜奏でるムジカは青空のソナタへ〜   作:一葉 彩人

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─登場人物─

音居奏叶(おといかなと)
結ヶ丘高等学校に通う一年生であり、仮面ライダームジカの変身者。
歌うことが大好きだが、ヌッラの能力により歌声を奪われてしまった。

澁谷(しぶや)かのん】
結ヶ丘高等学校に通う一年生であり、スクールアイドル同好会の一員。
人前では緊張して歌えないという悩みを抱えていたが、可可の想いに触発されて共にスクールアイドルを始めた。

唐可可(たんくぅくぅ)
結ヶ丘高等学校に通う一年生であり、スクールアイドル同好会の一員。
スクールアイドルに憧れて上海からやって来た。好きなものへの情熱は人一倍強い。

嵐千砂都(あらしちさと)
結ヶ丘高等学校に通う一年生であり、スクールアイドル同好会の一員。
かのんの幼馴染であり、丸いものが大好き。スクールアイドル活動では、得意なダンスを活かしてメンバーを引っ張っている。

平安名(へあんな)すみれ】
結ヶ丘高等学校に通う一年生であり、スクールアイドル同好会の一員。
幼い頃からショウビジネスの世界で活動してきた。表には見せないが努力家であり、ショウビジネスの世界で培ってきた様々なことを器用にこなす。

葉月恋(はづきれん)
結ヶ丘高等学校 音楽科に通う一年生であり、生徒会長を務めている。
お淑やかで、とても真面目な人物。学校のことを誰よりも大切に思っているが、何故かかのんたちのスクールアイドル活動は認めていない。



#23 手を取り合って

 

「今日話したことは、一切口外しないでくれませんか?」

 

葉月さんは、金銭的な事情を抱える中、お母さんが遺した学校を守ろうと一人で頑張っていた。これまで知らなかった彼女のそんな事情は、結ヶ丘の他の人たちには知られたくないのだろう。

 

帰り際、葉月さんの家の外まで見送られた俺たちは、彼女本人からそう伝えられた。

 

「生徒が不安になったり、結ヶ丘に入学したことを後悔してほしくないのです」

 

学校を大切に想う葉月さんは、本当は、生徒全員のことを心の底から大切に想っている。だからこそ、全てを隠して一人で抱え込み続けるつもりなのだろう。

だけど、それじゃあ葉月さんはいつまで経っても悪者のままだ。そんなの…

 

「お願いします…!」

 

しかし、そこまでの覚悟を持って懇願されてしまっては、断ることなどできなかった。

 

そして、今日のところは解散となり、澁谷さんたちは帰路につく。

そんな中、俺はひとり考え込み、その場から動けずにいた。

 

「…奏叶くん?」

 

一向について行こうとしない俺を不思議に思い、澁谷さんたちは足を止めて振り返った。

 

「…ごめん!俺ちょっと用事あるから、先帰ってて!」

 

「…?じゃあ、また明日学校でね!」

 

まだひとつ、ここで解決しておかなければならない問題が残っている。

俺が葉月さんを呼び止めた、本当の理由が…

 

手を振り去っていく澁谷さんたちに手を振り返し、改めて葉月さんの方に向き直る。

 

「葉月さん。もうひとつ、大事なことを聞きたいんだ」

 

心臓の鼓動が早くなるのを感じる。

そんな心を落ち着かせるよう小さく深呼吸して、俺は本題の質問を口にする。

 

「今朝、普通科の教室に来て、澁谷さんたちの様子を見ていたっていうのは本当?」

 

全校集会の時、クゥクゥから聞いた話だ。

 

今朝、葉月さんがわざわざ普通科の教室まで来て、澁谷さん、クゥクゥ、千砂都、すみれの様子を観察していた。

 

そして、昨日のヌッラの標的は"結ヶ丘のスクールアイドル"。

 

あまりにもタイミングが良すぎると思った俺は、葉月さんが昨日のヌッラである可能性を考えるようになった。

 

「っ……えぇ、本当です」

 

思いもよらない質問だったのか、葉月さんは一瞬動揺したものの本当だと答えた。

 

「どうして…?」

 

「それは…」

 

答えに迷っているのか、はたまた答えられないのか、葉月さんがその先を言えないままこの場に沈黙が流れる。

 

「"怪物"と、なにか関係がある…?」

 

このままだと状況は膠着したままだと考えた俺は、意を決して核心に迫る質問をした。

 

「っ…!?」

 

"怪物''という単語を聞いた瞬間、葉月さんの瞳が大きく揺れた。

唇がプルプルと震え、明らかに動揺している。

普通なら、怪物なんて聞いてもピンとこないはずだ。

 

まさか…葉月さん、本当に…?

 

「ねぇ、葉月さん。お願いだから、本当のことを話して…」

 

もう、俺には彼女と冷静に話をすることはできなくなっていた。

ただただ必死に、懇願するようにそう言うことしかできない。

 

「本当のこと、なんて…」

 

「今ならまだ、引き返せるから…」

 

「ですからっ!(わたくし)は、学校を守るために…」

 

「わかってるよ!でも…それでも、あんな力に頼るのだけはダメだ!」

 

「力…?」

 

絶妙に、会話が噛み合わない。

しかし、今の俺にはそんなことを気にする余裕なんてなかった。

 

葉月さんが、お母さんが遺した学校を守るために頑張っているんだと知った。そして、そのために今どれだけ大変な状況なのかも聞いた。

彼女がずっと抱えてきた重責は、俺には到底理解することもできないほど大きかった。

 

だからって、ヌッラの力に飲み込まれるのだけは、絶対にダメなんだ…!

 

「葉月さんが、学校のために頑張ってるのはわかってるよ。だとしても、これだけは絶対に止める」

 

「っ!?」

 

その瞬間、葉月さんの視線がキッと鋭くなり、表情も険しくなる。

 

「どうして、止めるなどと…」

 

「決まってるじゃん!」

 

俺は感情の昂りから、つい声を荒げてしまった。

 

「葉月さんのこと、大事な友達だって思ってるからだよ」

 

「っ…大事な友達だと思ってるなら止めないでください!(わたくし)が…(わたくし)が、なんとかしないと…!」

 

「それだよ!葉月さんは、いっつも自分でって…困ってることがあるなら、なんでもいいから相談してよ!ひとりで抱え込んで、危険な力に手を染めるなんて絶対にダメだ!」

 

冷静さを失っていた俺は、ありのまま思っていることをぶつけた。

勢い任せに言葉を放ったことで荒くなった息を整え、俺は恐る恐る彼女に問いかける。

 

「俺、そんなに頼りないかな…?」

 

「……違います…」

 

しばらく沈黙が流れた後、葉月さんは小さな声で答えた。

 

「その逆です…あなたが、相談されたら自分のこと以上に必死になってくれる人だって知っています。だからこそ、頼りたくないんです…たった一度しかない高校生活を、(わたくし)のわがままで、振り回してしまうなんて…」

 

か細い震えた声で、言葉を紡ぐ。

張り詰めていた緊張の糸が切れたのか、そんな彼女の瞳から涙の粒が零れ落ちていく。

 

「葉月さん…」

 

「っ…おと、いさんがっ…嵐さんの、ことを頼ってく、れた時…とても、嬉しかったのです…」

 

"千砂都のこと"というのは、ダンス大会前に練習している千砂都の様子を見てきてほしいと頼んだ時のことだろう。

 

「友人として、わたく、しを…頼ってくれたのが、嬉しかった…本当なら、わたくしだって、音居さんに相談したかった…」

 

今まで溜め込んできたものが、感情が、一気に溢れ出した彼女は、嗚咽混じりに涙を流しながら自分の胸の内を吐き出す。

 

頑なに一人でなんとかしようとし続けたのは、葉月さんの優しさゆえだったのだ。本当なら、彼女だって誰かに相談したかった。だけど、迷惑をかけてしまうと恐れてできなかったのだろう。

 

俺はポケットからティッシュを一枚取り出し、右手に持って彼女の涙をそっと拭う。

 

「葉月さんが、どうして俺や他の人を頼ろうとしなかったのか、よくわかったよ」

 

本当に、この人は優しくて、強い人だ。こんなになるまで、ずっと自分を押さえ込んできたのだから。

 

「でもね、迷惑なんかじゃないんだよ?だって、結ヶ丘は俺にとっても大切な学校なんだから」

 

結ヶ丘高等学校で過ごしてきて、千砂都と、澁谷さんと、クゥクゥと、すみれと、葉月さんと、たくさんの出会いがあった。いっぱい楽しいことがあって、これからだって、いろんな思い出が増えていく。

 

結ヶ丘は、俺にとっても大切な学校なんだ。

 

たった一度の高校生活。葉月さんは俺にそう言ったが、それは、彼女にとっても同じだ。お母さんが遺したこの学校での、たった一度の高校生活を、辛い思い出だけで埋めてしまうなんて絶対にダメだ。

 

「だから、俺にも手伝わせてほしい。これからは、一人で抱え込まないで」

 

「音居、さんっ…」

 

「どうしていけばいいのか、"一緒に"考えていこう」

 

「っ…はいっ…!ありがとう、ございます…!!」

 

もっと早く、こうしてちゃんと伝えていれば、ここまで彼女が追い込まれることはなかったのかもしれない。

彼女がヌッラになってしまうことなんて、なかったのかもしれない…

 

大粒の涙を流す葉月さんを見て、そんな大きな後悔が湧いてくる。

 

しかし、現実から目を背けているわけにはいかない。

 

"俺たち"の大切な学校を守るためにも…

 

「それじゃあ葉月さん、レタルジアディスクを渡してくれる?」

 

今の彼女なら、きっと渡してくれるはずだ。

そう信じて、覚悟を決めて聞いた。

 

「…レタルジアディスク?」

 

しかし、涙を拭い顔を上げた葉月さんは、キョトンとして首を傾げる。

 

「えっと…ほら、ヌッラになるためのディスクを…」

 

「ヌッラ…?」

 

「え?」

 

「え?」

 

あれぇ…おかしいぞ?

 

「あの…先程から気になっていたのですが、危険な力とか、ヌッラとか、なんのことなのでしょうか?」

 

「えと…昨日、結ヶ丘の近くに出た怪物の…」

 

「あ!あの怪物、ヌッラというのですね」

 

絶妙に話が噛み合わなさすぎて頭が混乱してきた。

 

葉月さんは怪物のことは知っているが、ヌッラという言葉も、レタルジアディスクのことも、知らないということなのか…?

 

「えと…葉月さんは、なんで怪物のことを知ってるの…?」

 

「昨日見たんです」

 

「見た?」

 

「はい。見たというより、"襲われた"という方が正しいのでしょうか…」

 

「ええ!?」

 

ちょっと待てよ。俺はずっと、葉月さんがヌッラの正体なんじゃないのかと疑っていた。けれど、実際は葉月さんもヌッラに襲われた一人だった。

なんてことだ。俺はなんという勘違いを…

 

「襲われたって、大丈夫だったの?」

 

「えぇ。特に怪我などは…」

 

「何があったか、聞いてもいい?」

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「何があったか、聞いてもいい?」

 

葉月恋は、ヌッラに遭遇した時のことを語り始める。

 

 

───

──

 

事の発端は、昨日…恋が結ヶ丘高等学校の中庭を歩いていた時のことだった。

 

「この学校のアイドルのこと、教えてもらえるかな?」

 

突然彼女の前に姿を現したのは、細身で長身、右腕には調合タンクと鉢のような針を持つヌッラ…奏叶に左腕が麻痺する毒を浴びせたヌッラだ。

 

「かっ、怪物!?」

 

「今はスクールアイドルって言うんだっけ…それが誰なのか」

 

突如現れた怪物に恐怖する恋のことはお構いなしに、ヌッラは自身の質問を投げかける。

 

「どうして、彼女たちのことを知りたいのですか?」

 

恋はなんとか恐怖心を押し殺し、毅然とした態度でヌッラと対峙する。

 

「別に。二度と、アイドルなんてできないようにお仕置きしてあげるだけ」

 

「っ……そうですか。そんな理由なら、教えるわけにはいきませんね」

 

「そう…残念だ」

 

恋に答えるつもりがないとわかると、ヌッラは彼女に詰め寄り首元を掴んで拘束した。

 

「うっ、くぅっ…」

 

「ならば、力づくで答えてもらう。さぁ、死にたくなかったら答えろ」

 

ヌッラに捕まり、なす術がない。そんな恐怖に支配されている状況でも、恋はヌッラをキッと睨みつけて抵抗する。

 

「答え、ません…!この学校の大切な生徒を傷つけようとするあなたには…絶対に!!」

 

「あぁ…その目…その顔…この場所でアナタを見ていると、ますます思い出す…」

 

「っ…?」

 

「できればアナタは傷つけたくない。さぁ、早く答えろ」

 

しかし、それでも答えない恋に、ヌッラは痺れを切らしてため息を吐く。

 

「アナタにとっても、目障りな存在なはずだ。花ちゃんを苦しめたスクールアイドルなんて…!!」

 

「おっ、お母さまを!?」

 

ヌッラが吐き捨てた言葉に、恋が驚いたその時だった。

 

「ちぃちゃんが加入してくれて、私たち、ますます良いチームになったよね!」

 

「ハイ!このままラブライブ!優勝目指シテ…結ヶ丘スクールアイドル、頑張りマショウ!!」

 

少し離れたところの渡り廊下を、澁谷かのん、唐可可、平安名すみれ、嵐千砂都がたまたま通りかかった。彼女たちのそんな会話を耳にしたヌッラは、視線を向けて息を飲む。

 

「っ!?そう。あの4人か…」

 

目的である結ヶ丘のスクールアイドルが誰なのか判明し、ヌッラは恋の前から姿を消した。

 

──

───

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「そんなことが…じゃあ、今朝澁谷さんたちの様子を見に来てたっていうのは…」

 

「彼女たちが無事なのか、確かめたくって…」

 

全ての真相を知った俺は、自分自身への怒りで震えていた。

 

葉月さんは、命の危機に瀕しても、澁谷さんたちのことを隠し通そうとしていた。それなのに、俺はそんな彼女がヌッラなんじゃないかと疑っていただなんて…最低だ…!

 

「ごめん!葉月さん、本当にごめん!!」

 

俺は深々と頭を下げ、謝罪の言葉を述べる。

 

「おっ、音居さん!?どうしたのですか!?」

 

「俺…葉月さんが、その怪物なのかもしれないって疑ってた」

 

「え…?」

 

「葉月さんは、命懸けで澁谷さんたちのことを守ろうとしたのに…俺は…」

 

「頭を上げてください」

 

後悔に震える俺に、葉月さんは優しく声をかけた。

 

「音居さんは、怪物から澁谷さんたちを…学校を守ろうとして、怪物が誰なのかを探っていたんですよね?」

 

「うん。でも…」

 

「それに、いろいろと紛らわしい行動を取っていた(わたくし)にも落ち度があります。ずっと、澁谷さんたちスクールアイドルの活動を、目の敵にしているような発言をしていましたし…」

 

「……葉月さんは、どうしてスクールアイドルのことをそんなに…」

 

こうなったら、気になっていたことは全て聞いておこう。

以前、俺が入院していた病室で聞いた時は答えられないと言われた問い。

 

何故、葉月さんはスクールアイドル活動を頑なに認めないのか。

 

「スクールアイドルを認めない、というわけではないんです。ただ、結ヶ丘で、活動しないでほしいのです」

 

葉月さんは、スクールアイドル自体を認めないわけではない。

 

ただ、"結ヶ丘高等学校での"スクールアイドル活動が認められない。

 

彼女がそう思っている理由には、神宮音楽学校が大きく関係している。

葉月さんのお母さん─葉月花(はづきはな)さんは、神宮音楽学校で"学校アイドル"という、今のスクールアイドルの前身となる活動をしていた。

 

学校アイドル…そういうことか。

だから、澁谷さんとクゥクゥのスクールアイドル活動が認められる前から、今の澁谷さんたちの部室に学校アイドル部と書かれたプレートが貼ってあったのか。

 

「当時の神宮音楽学校は、廃校の危機に瀕していました」

 

入学希望者の減少。経営難。

そんな状況が続き、学校はいつなくなってもおかしくなかった。

 

そんな廃校を阻止するために、葉月さんのお母さんは学校アイドルを始めた。

やがてその活動は評判になったが、目標には手が届かず神宮音楽学校は廃校になってしまった。

 

当初は、葉月さんもお母さんのように結ヶ丘でスクールアイドルを始めて、学校を盛り上げようと考えていたらしい。

 

「どうして、始めなかったの…?」

 

「何も、残っていなかったのです」

 

「え?」

 

「どれだけ探しても、学校アイドルとして活動していた記録が一切残っていないのです。写真の一枚すら…」

 

それ以外の学校での思い出の写真は残っているのに、学校アイドルとして活動していた記録は、全く残っていなかった。それで葉月さんは、お母さんがアイドル活動を後悔しているのではないかと考えた。

 

「それで、結ヶ丘でスクールアイドルをしてほしくなかったんだ…」

 

「はい。それに、昨日の怪物も言っていました。お母さまを苦しめたスクールアイドルと…」

 

昨日のヌッラの言葉も相まって、葉月さんの中にある疑念が更に強くなってしまった。彼女の悲痛な呟きが、俺の耳の中で反響している。

 

葉月さんの事情はよくわかった。

しかし、俺の中ではまだ引っかかっていることがある。

 

葉月さんのお母さんは、本当に学校アイドルをしていたことを後悔しているのだろうか。さっき葉月さんの家で見たアルバムに写る高校時代のお母さんの写真からは、とても何かに後悔しているようには見えなかった。

もちろん、そこには学校アイドルをしている写真はなかったのだが…それでも、やっぱり俺にはそんなふうには思えない。

むしろ、その瞬間を心から楽しんでいるような写真ばかりだったのだから。

 

「音居さん」

 

俺が考え込んでいると、葉月さんから声がかかる。

 

(わたくし)のために考えてくださり、ありがとうございます。でも、母の話はこれぐらいにしておきましょう」

 

「え?でも…」

 

「今はそれよりも学園祭のことと、学校と澁谷さんたちを狙う怪物のことの方が先決です」

 

「う、うん…」

 

「それに、今は怪物について考えたいことがあります」

 

彼女の言う考えたいことについては、思い当たる節がある。

そしてそれは、俺も気になっていたことだ。

 

「さっき葉月さんも気にしてた怪物の言葉だよね?あれは、葉月さんのお母さんを知ってるからこその言葉だった」

 

『アナタにとっても、目障りな存在なはずだ。花ちゃんを苦しめたスクールアイドルなんて…!!』

 

葉月さんのお母さんがスクールアイドル…当時の学校アイドルで本当に苦しんでいたかはともかく、こんな言葉が出てくるのは、ヌッラが葉月さんのお母さんを知っている人物だからだ。

 

「それに怪物は、(わたくし)の容姿やこの学校を見ていると、何かを思い出すと言っていました。恐らく、それは(わたくし)と瓜二つの母と、その母の母校である神宮音楽学校での思い出のことだと思われます」

 

確かに、さっき見たアルバムに写っていた葉月さんのお母さんは、彼女にそっくりだった。そして、結ヶ丘高等学校がある場所に元々あった神宮音楽学校。その二つに強い思い入れのある人物。

 

それらを踏まえて導き出される答えは…

 

「怪物の正体は、神宮音楽学校の卒業生。それも、葉月さんのお母さんと同じ代の…」

 

「えぇ。しかも、ちょうど昨日は、それに該当する人物が結ヶ丘を訪れていました」

 

葉月さんのその言葉を聞いて、俺はハッとした。

 

そうだ。俺も屋上で会ったが、昨日は神宮音楽学校の卒業生が結ヶ丘に来ていたのだ。

 

「蜂須賀さん、揚蝶さん、鳥巣さん。それに、桜葉先生と理事長先生も…」

 

「はい…もちろん、その他の卒業生が侵入した可能性もありますが、タイミングからすると、その5人のうちの誰かというのが一番可能性が高いと思います」

 

なんとしてでも、ヌッラの正体を暴いて止めないと…!

二度と学校も、スクールアイドルも、葉月さんも傷つけさせない…!!

 





──次回『〜奏でるムジカは青空のソナタへ〜』

「カノンが葉月さんの意見も考えてみようと言ったのデスガ、皆さんは納得デキナイようで」

学校のこと、ヌッラのこと…解決するべき問題は山積みだが、打開策が見つからないまま時間だけが過ぎていく。

「桜葉先生の同級生のこと、教えてくれませんか?」

状況を変えるため、奏叶は桜葉大翔から神宮音楽学校時代の話を聞くことにした。
そして、彼の口から語られるのは、3年間の淡い記憶…

「アイツは…葉月花は、お節介で優しいやつだった」

『#24 桜の香り』















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『#23 手を取り合って』
最後まで読んでくださり、誠にありがとうございます!!

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もしよろしければ、よろしくお願いします!

次回『#24 桜の香り』は、8月29日20時に投稿予定です。
お楽しみに!
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