─登場人物─
【
結ヶ丘高等学校に通う一年生であり、仮面ライダームジカの変身者。
歌うことが大好きだが、ヌッラの能力により歌声を奪われてしまった。
【
結ヶ丘高等学校に通う一年生であり、スクールアイドル同好会の一員。
人前では緊張して歌えないという悩みを抱えていたが、可可の想いに触発されて共にスクールアイドルを始めた。
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結ヶ丘高等学校に通う一年生であり、スクールアイドル同好会の一員。
スクールアイドルに憧れて上海からやって来た。好きなものへの情熱は人一倍強い。
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結ヶ丘高等学校に通う一年生であり、スクールアイドル同好会の一員。
かのんの幼馴染であり、丸いものが大好き。スクールアイドル活動では、得意なダンスを活かしてメンバーを引っ張っている。
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結ヶ丘高等学校に通う一年生であり、スクールアイドル同好会の一員。
幼い頃からショウビジネスの世界で活動してきた。表には見せないが努力家であり、ショウビジネスの世界で培ってきた様々なことを器用にこなす。
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結ヶ丘高等学校 音楽科に通う一年生であり、生徒会長を務めている。
亡き母が遺した結ヶ丘高等学校を存続させるために奮闘している。また、母の学校アイドル時代の記録が残されていないことから、かのんたちに結ヶ丘ではスクールアイドル活動をしてほしくないと思っている。
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結ヶ丘高等学校の理事長であり、神宮音楽学校の卒業生。
思ったことをはっきりと口にする性格。生徒たちからは、威厳のある人物だと思われている。
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葉月恋の母。神宮音楽学校の卒業生であり、高校時代は廃校を阻止するために学校アイドルとして活動していた。
その後、念願だった結ヶ丘高等学校の創立を叶えたが、それを見届けることができないまま二年前にこの世を去った。
【
結ヶ丘高等学校の音楽科教師であり、神宮音楽学校の卒業生。
ラフかつ飄々とした性格で、よく屋上でいちごミルクを飲んで休息をとっている。親しみやすいと生徒からの人気は意外と高い。
一夜明け、二度目の全校集会の日を迎えた。
「もう一度自宅を探してみたのですが…やはり、何も見つかりませんでした…」
集会前、廊下で顔を合わせた葉月さんからそう報告を受けた。
学校アイドル部に関する情報がないか、もう一度自宅を念入りに調べてみた葉月さんだったが、何も見つからなかったそうだ。
「全校集会で、正直に話してきます」
昨日、葉月さんが決めていたこと…全校集会までに何も見つからなかったら、今この学校が置かれている状況について全て正直に話す。
「全校集会まで、まだちょっと時間あるよね?」
「えっ?は、はい…」
「何もないって決めるのは、まだ早いかもしれない」
「えっと…どういうことですか?」
「今、澁谷さんたちが学校の資料室で、何か見つからないか探してるんだ」
さっき教室で、澁谷さんたちは理事長先生から許可がもらえたら、資料室に手がかりがないか探しに行くと言っていた。
「そんな…資料室は、もう何度も探しました」
「わかってる。でも、やっぱり引っかかるんだ」
「引っかかる?」
ずっと引っかかっていた。
アルバムで見た葉月さんのお母さんの楽しそうな表情。
もし学校アイドルが葉月さんのお母さんを苦しめていたのだとしたら、学校での日常の写真も、あそこまで幸せそうな表情にはならないと思う。
確かに、結果的には廃校は阻止できなかったのかもしれない。
でも、だからといって本当に後悔しか残らなかったのか…?
学校アイドルとしての記録がないのは、本当にそれを見たくないほど後悔していることが理由なのか…?
俺には、どうしてもそうは思えなかった。
だって、俺はこの半年間、思い通りにいかないことがあっても、精一杯スクールアイドル活動を頑張っている人たちを間近で見てきた。
澁谷さんも、クゥクゥも、すみれも、千砂都も、どれだけ上手くいかなくても、どんなに大変なことがあっても、その根底には、スクールアイドルが楽しいという気持ちがあった。
「俺は、ギリギリまで粘ってみる。このままただ諦めてしまったら、それこそ後悔が残ると思うから」
「……」
「俺も、澁谷さんたちを手伝ってくるよ」
俺がそう言うと、ずっと俯いて考え込んでいた葉月さんが顔を上げる。
「…
ということで、俺と葉月さんは資料室までやってきた。
「違う」
「これも違う」
「当時の学校の記録はあるけれど、学校アイドル部のものだけはないわね」
「コチラにもナイです…」
資料室の中から、澁谷さんたちの声が聞こえてくる。その様子からして、学校アイドル部の記録はまだ見つかっていない様子だ。
「やはり、ないですか…」
資料室に入った葉月さんが、そう声をかける。
「何度も探しましたが、そこだけ記録がないのです。なので、あえて処分したとしか思えなくて…」
「何か、言ってはナカッタのですか?」
「いえ…小さな頃、聞かされたかもしれませんが…」
クゥクゥに聞かれ、葉月さんは自身の記憶を探る。
「ただ、いつも口癖のように、同じ場所で想いが繋がっていてほしい、と…」
するとその時、朝のホームルームが始まる5分前を知らせるチャイムが鳴り響いた。
今日の朝のホームルームは全校集会があるため、生徒全員が体育館に集まることになっている。
「全校集会が始まります。行かなくては…」
「どうするの!?」
「正直に話すしかありません。この学校の現状を…」
そう言って、資料室から出ていく葉月さん。
そんな中、俺はさっきの葉月さんの発言が引っかかり、考え込んでいた。
──同じ場所で、想いが繋がる。
そういえば…
『恋には、私を追いかけるだけじゃなくて、恋の好きなこと、やりたいことをしてほしい。そうすれば、きっと想いは繋がるわ』
桜葉先生が、お母さんなら葉月さんにこう伝えると話した言葉の中にも、"想いが繋がる"とあった。
葉月さんのお母さんが学校アイドルを後悔していたかと聞かれた桜葉先生は、「俺からは答えられない」と言っていた。つまり、逆に言えば桜葉先生自身はその答えを知っているということになる。
そんな桜葉先生と、葉月花さん。二人が、葉月さんに同じ言葉を伝えていた。
きっとここには、何か大事な意味があるはずだ。
同じ場所というのは、神宮音楽学校と同じ場所に建てられた結ヶ丘高等学校のことか…いや、それだけじゃなくて…
「っ!」
『やっぱり、学校アイドル部って書いてあるよな…』
ふと、今の澁谷さんたちの部室を最初に見つけた時、"学校アイドル部"と表記されたプレートがあったことを思い出した。
もし葉月さんのお母さんが本当に後悔していて、意図的に学校アイドルに関する情報を消していたのだとしたら、あんなものは残っていないはずだ。
それじゃあ、もしかして…!
「待ってー!」
俺の頭にとある可能性が浮かんだ瞬間、澁谷さんが慌てて資料室から飛び出し、葉月さんを呼び止めた。
「この部屋の鍵って、葉月さんが渡してくれたよね?」
澁谷さんは二本組になった部室の鍵を見せて確認する。
「かのんちゃん、部室の鍵なんて出してどうしたんだろう…」
その様子を疑問に思った千砂都が呟いた。
あれ、部室の鍵なのか…ということは、澁谷さんも同じことに気がついたのだろう。
「多分、澁谷さんも気づいたんだ。学校アイドル部の記録は、きっと部室にある」
「え?でも、部室には特に…」
「いや、きっとあるはずだよ」
葉月さんのお母さんが遺した、大切な何かが…
「澁谷さん!?廊下は走ってはいけませんよー!!」
部室に向かって慌てて駆け出した澁谷さんを、葉月さんは戸惑いながら注意する。
「ククたちも行きましょう!」
澁谷さんに続いて、クゥクゥ、すみれ、千砂都も部室に向かう。
「えっ!?ちょっ、みなさんまで…」
「葉月さん、きっと何か見つかるはずだよ」
あの部室には、学校アイドル部に関する何かがあるはずだ。
そしてそれを、澁谷さんならきっと見つけてくれる。
「だから大丈夫。俺たちは、先に全校集会に行ってよう」
生徒会長である葉月さんが、全校集会に遅れるわけにはいかない。
俺は澁谷さんたちを信じて、葉月さんを連れて体育館へと向かった。
「ではこれより、全校集会を始めます」
司会を担当している生徒が号令を出し、全校集会が始まった。
「……」
舞台袖にて、もう間も無く舞台上に出る葉月さんの瞳が不安げに揺れる。俺はそんな彼女の肩にそっと右手を置いた。
「ぁ…」
それに気づき、葉月さんは俯いていた顔をあげて俺に視線を向ける。
俺はそんな彼女に優しく微笑んで、安心させるよう強く頷いた。
「まず初めに、学園祭について生徒会長より話があります」
司会の言葉をきっかけに、葉月さんは舞台上に出ていった。
「学園祭の話をする前に、まず…先日の
「すみませんでした」と頭を下げる葉月さん。
「不安に思った人や、怒りを感じた人も多かったと思います。ただ
「普通科はどうなるんですか?」
葉月さんの言葉を遮る形で、普通科の生徒から疑問の声が飛んでくる。それを皮切りに、生徒たちは次々に疑問を口にする。
「学園祭に参加できるんですか?」
「音楽科でなくとも歌いたいです!」
「私たちにチャンスは!?」
鳴り止むことのないそんな声に、葉月さんは俯いてしまう。
「スクールアイドルもやっぱり活動は禁止なんですか?」
「この学校で一番結果を出しているのに!」
「っ…それだけは…」
次々と飛んでくる声に、葉月さんは押しつぶされそうになっていた。
まずい…このままじゃ…
舞台袖で様子を見ている俺がそんな焦りを感じた、その時だった。
「待って!!」
体育館の入り口から、澁谷さんの声が響いた。
そして、彼女は一冊のノートを胸に抱えて、壇上の方に進んでくる。
「葉月さん、私から話したいことがあるんですけど…」
「いいでしょう。壇上に」
澁谷さんの言葉に対して、許可を出したのは理事長先生だった。
それを受け、彼女は壇上に上がる。
そして、澁谷さんは胸に抱えていたノートを葉月さんに見せる。
その表紙には、【神宮音楽学校 学校アイドルDiary】と書かれていた。
あれが…
よかった、間に合ったみたいだ。
「さっき、スクールアイドル同好会の部室で、このノートを見つけました」
「あ、奏叶くん。ここにいたんだ」
澁谷さんがノートについて話し始めると、共に部室でノートを探していた千砂都、クゥクゥ、すみれが、俺のいる舞台袖にやってきた。
「やっぱり、部室にあったんだね」
「うん。奏叶くん、かのんちゃんと一緒で、部室にあるって気づいてたよね?」
「葉月さんのお母さんの言葉がヒントになってね」
「それだけ?」
千砂都は、それ以外にも理由があると勘づいたのか、首をコテっと傾げながら俺の顔を覗き込んでくる。
「あと、実は入学して間もない頃、たまたまあの部室を見つけたんだ。その時も、プレートには学校アイドル部って書かれていた」
澁谷さんとクゥクゥが部の設立が認められないと慌てていた頃、俺はたまたまあの部室を見つけた。その時も、"学校アイドル部"と書かれたプレートが扉の上に付いていた。
「もし学校アイドルに関する記録を全部処分していたんだとしたら、あの部室のプレートだけが残ってるのは、なんだか変だと思って」
不自然にずっと残っていた学校アイドル部のプレート。それはまるで、ここがかつて学校アイドル部の部室だったと、未来の生徒たちに伝えているようだった。
そして、"同じ場所で想いが繋がる"という、葉月花さんの願い。
「それで、部室にあるってわかったんだ」
納得したように呟いた千砂都の言葉に、俺は静かに頷いた。
俺たちがそんな話をしていると、澁谷さんはノートに書かれた学校アイドルの日誌を読み上げ始めた。
学校でアイドル活動を続けたけれど、結局、学校はなくなることになった。
廃校は、阻止できなかった…
でも、私たちは何ひとつ後悔していない。
学校が"ひとつ"になれたから。
この活動を通じて、音楽を通じて、みんなが結ばれたから。
最高の学校を作り上げることができたから。
一緒に努力し、一緒に夢を見て、一緒に一喜一憂する。
そんな奇跡のような時間を送ることができたから。
だから私は、みんなと約束した。
"結ぶ"と文字を冠した学校を、必ずここにもう一度作る。
音楽で結ばれる学校を、ここにもう一度作る。
それが私の夢…
どうしても叶えたい夢…!!
学校アイドルだったひとりの少女が記した、仲間たちとの青春の記録。
そこには、後悔なんて一つも残っていなかった。むしろ、新たな夢に向かうという、希望に満ち溢れていた。
「お母さま…!」
ノートには、学校アイドルとしての、たくさんの楽しげな写真が残っていた。
「この学校を作った葉月さんのお母さんは、音楽で結ばれることを望んでいたんだよ。この学校は、その夢を叶えるための学校。普通科も音楽科も、心が結ばれている学校」
普通科だから、音楽科だから、そんな隔たりでいがみ合う必要なんてないのだ。
ただ、目指している道が違うだけで、同じ学舎の仲間なのだから。
「スクールアイドルは、お母さんにとって最高の思い出だったんだよ!」
「最高の、思い出…」
澁谷さんの一言は、葉月さんにとって朧げだった大切な記憶を鮮明にさせた。
『恋。スクールアイドルは…お母さんの最高の思い出!』
それを思い出した葉月さんの瞳からは、大粒の涙が溢れてくる。先日のような、これまでの不安や辛さによって生まれた悲しみの涙ではない。
ようやく母の本当の想いを知ることができたという、喜びの涙。
「コレも、ノートと一緒に」
舞台袖にいたクゥクゥが壇上まで行って差し出したのは、当時の花さんたち学校アイドルが着ていた衣装だった。大切に保管されていたのだろう。30年近く経っているとは思えないほど、綺麗な衣装だった。
「お母さま…!」
衣装を胸に抱いて涙を流す葉月さんへ、全校生徒からの温かな拍手が送られる。
今日まで、いろいろなことがあった。
特に葉月さんにとっては、苦しいこともたくさんあったことだろう。
でも…今日こうして、結ヶ丘高等学校全員の気持ちが"ひとつ"になれた。
「良かったね、葉月さん」
葉月さんのお母さんが記した情熱と、仲間との絆と、新たな夢。
それを受け継いで想いを結んでいこうとする葉月さんと、蟠りがなくなりひとつになった学校中の人たちの想いに触れ、俺の懐にあるブランクエネルジアディスクが、密かに新たな力へと目覚めていた。
〜〜〜〜〜
結ヶ丘高等学校の屋上。
心地の良い優しい風が吹くこの場所で、一人の男が物思いに耽っていた。
「ふぅ…」
この男─桜葉大翔は、好物であり、大切な思い出の一品でもあるいちごミルクを、感慨深く見つめていた。
「なんとか、無事にまとまったぞ」
天を仰ぎ、目の前に広がる青空にしみじみと語りかける大翔。
「一時はどうなるかと思ったがな…流石はお前の娘だよ。悩んで、迷って、それでも挫けない」
そう語る彼の脳裏には、先ほどの全校集会の光景が浮かぶ。
感極まり涙を流す葉月恋と、そんな彼女に温かい拍手を送る澁谷かのん、唐可可、嵐千砂都、平安名すみれ。そして、舞台袖でホッとしたように胸を撫で下ろし、拍手を送る音居奏叶。
「それに、信頼できる仲間もできたようだしな。もう大丈夫だぞ、葉月…」
その時、屋上の扉が開く。
「やっぱりココですか、桜葉先生」
そう声をかけながら、屋上にやってきた音居奏叶。
「おぅ。なんか用か?」
「学校アイドル部のこと、先生は全部知ってたんですよね?」
「あぁ、まあな」
「やっぱりそうでしたか」
大翔の返答を聞き、奏叶は自分の推察が正しかったのだと確信した。
「あー…言っとくが、意地悪で教えなかったわけじゃねーからな。こっちにも事情が…」
バツの悪そうに言い訳をする大翔だが、奏叶はそれを途中で遮って笑いながら言う。
「わかってますよ。葉月さんのお母さんに、頼まれていたんですよね?」
奏叶のその言葉の通り、大翔が学校アイドルについて教えなかったのは、亡き友人である葉月花との約束があったからだ。
それを思い出した大翔の脳裏には、彼女とその約束を結んだ時…そして、大翔と花が最後に言葉を交わした時の情景が浮かんできた。
───
──
─
それは、大翔が花の入院する病室を訪れた時のことだった。
「私ね、もう長くないと思うの…」
「……」
力ない笑みと共にそう言った花の姿は、彼が知っている彼女の姿とは随分と違っていた。
病に侵され、痩せ細ったその姿を目の当たりにした大翔は、彼女に残された時間がもう長くないのだと悟った。
「せっかく開校する学校を見届けられないのは残念だけど…私の想いは、きっと恋に繋がっていく」
「あぁ。それに、理事長はアイツが務めるって言うし…俺も、教師として赴任する。だから、安心してくれ」
「"約束"…守ってくれて、ありがとう…」
彼らが3年間過ごした神宮音楽学校での生活。
その幕引きの日に交わした約束──花が作る学校で、大翔が先生をする。
その約束が果たされるとわかり、花は安らかに微笑んだ。
「学校アイドルの思い出は、あまり見つからない場所に隠してあるから、あの子には内緒にしておいてね」
「え?なんで…」
「恋には、私を追いかけるだけじゃなくて…恋の好きなこと、やりたいことをしてほしい。そうすればきっと、想いは繋がるから…」
大切な娘を想う母の言葉に反対することなど、大翔には到底できなかった。
「だから、大翔くん…あの子が、自分で決めるまで、見守っていてほしいの…」
「あぁ」
ぶっきらぼうな返事をするくせに、そこはかとない優しさが詰まっているのが伝わる。そんな彼の声を聞いて、変わらないな…と感じた花は安堵したように息を漏らす。
「……でもね、」
少し考えた様子を見せた花が口を開いたので、大翔はその儚げな声に再び耳を傾ける。
「私がいなくなったら…あの子はきっと、一人で抱え込んで無理をしちゃう時があると思うの」
「……そうだな。お前の娘だもんな」
「ちょっとー、なにそれ…」
大翔の言葉に、花はぷくぅっと頬を膨らませる。
──イジるとそういう表情になるのは昔から変わらねーな…
そう思った大翔は、嬉しそうに笑みを零した。
そして、花は脳裏に浮かぶ大切な娘を想って目を細める。
「本当は、もっとずっと、あの子のことを見守っていたい。そばで支えてあげたい…」
もう叶わないとわかっている切なる願いを、絞り出すように口にする。
「だから、大翔くん…」
「あぁ」
「もし…あの子が無理しすぎちゃった時は、お願いね」
「……任せろ」
大翔は、花を心から想って答えた。
「ありがとう」
そんな花の儚げな微笑みは、今も桜葉大翔の脳裏に焼き付いている。
これが、大翔が花と会った最期の日だった。
─
──
───
──悪いな、葉月。
結局、俺は何もできなかったと思う。
葉月恋を支えたのは、今俺の目の前にいるコイツと、澁谷たち…お前と同じスクールアイドルをやっている少女たちだよ。
「……あぁ。あの子が自分で決めるのを見守っていてほしい、ってな」
そして大翔は、奏叶の質問への回答を口にした。
「桜葉先生は、ずっとその願いを叶えようとしてきたんですね」
奏叶は優しく微笑んで言った。
しかし、すぐに大翔に一歩近寄ると、まるでいたずらっ子のようなニヤリとした笑みを浮かべる。
「なんせ、花さんからの頼みですもんねー」
「…?って、おまっ…まさか…」
最初はそんな奏叶を疑問に思った大翔だったが、すぐにその意図に気づき、照れ臭そうに頬を掻く。
「はぁ…お前、案外鋭いな」
「でも、その気持ちはよくわかります。俺も、もし同じようなことになったら、一生忘れられないと思います…」
自分がその状況に置かれたらと考えた奏叶は、憂いを帯びた声音でそう言ったのだった。
〜〜〜〜〜
桜葉先生との話を終えた俺は、屋上を後にした。
さてと…俺も早く戻って、学園祭の準備しないと!
「かーなとくんっ!」
学園祭の準備に戻ろうと廊下を歩いていた時、背後から俺を呼び止める軽快な声が聞こえた。そして振り返ると、そこには千砂都の姿があった。
「千砂都?ごめん、遅くなった。俺もすぐ戻って準備手伝うよ」
「ううん。それよりも、ちょっとついてきて!」
千砂都はそう言うと、俺の手を取って駆け出した。
「うぇっ!?千砂都、どこ行くの!?」
「いいからいいから!」
結局、俺は手を引かれるままに千砂都に着いていくしかなかった。
そして、千砂都に連れてこられたのは普通科校舎の前。そこには、クゥクゥとすみれがいて、その周りには普通科音楽科問わず、結ヶ丘の生徒たちが集まっていた。
それからすぐに、澁谷さんが葉月さんを連れてやってきた。
俺たちの中央に二人が立つと、澁谷さんは葉月さんに手を差し伸べる。
「葉月さん…ううん。恋ちゃん、一緒にスクールアイドル始めませんか?」
そうか…澁谷さんたちは、葉月さんをスクールアイドルに誘うために集まっていたのか。葉月さんも、元々はこの学校をスクールアイドル活動で盛り上げようとしていたし、ピッタリな提案だろう。
「今まで、澁谷さんたちの邪魔をし続けてしまった
しかし、これまでの負目を感じている葉月さんは、俯いてその提案を断ろうとする。
「私、恋ちゃんと一緒にスクールアイドルとして歌いたい」
それでも、澁谷さんは真っ直ぐに自分の想いを口にする。葉月さんと一緒に歌いたい、と…
「この学校のために…いや、この場所で作られた、たくさんの"想い"のために!」
何のしがらみもなければ、きっと葉月さんは今すぐにでもその手を取りたいのだろう。
しかし、これまでずっとスクールアイドル活動を認めないと反対し続けてきた彼女は、そう簡単にやりたいと口にできなかった。
「大丈夫、できるよ!」
「素直じゃないわね」
「私タチはいつでもファインファインですよ!」
そんな葉月さんの気持ちを後押しするように、千砂都、すみれ、クゥクゥが声をかける。
「大丈夫だよ。今この学校に、葉月さんがスクールアイドルになることを反対する人は、誰もいないよ」
葉月さんの事情も、花さんの想いも、スクールアイドルの素晴らしさも知った今の結ヶ丘に、反対意見を述べる人は誰もいない。
その証拠に…
「ほら」
そう言って俺が周りの同級生たちを見ていくと、葉月さんもゆっくりと周りに視線を向けていく。
「っ!」
そこには、普通科と音楽科、両方の生徒たち全員が、温かい視線で葉月さんを見守っていた。それを見た葉月さんは喜びと感動で、その瞳には涙の雫が込み上げてきていた。
その時、フワッと吹き抜けてきた風が、葉月さんの背中を優しく押した。
それはまるで、
「っ…!」
そして、葉月さんはついに澁谷さんの手を取った。
その様子を見守っていた俺たちは、彼女たちに温かい拍手を送る。
こうして、結ヶ丘のスクールアイドルは5人となったのだ。
「さぁ!みんなで学園祭の準備、始めるよーっ!!」
『おぉー!!』
千砂都のかけ声に、この場の全員が気合い十分で答える。
"ひとつ"になった結ヶ丘高等学校で迎える、初の学園祭。
更に、そこで行われるスクールアイドルのライブは、かつてこの場所にいた学校アイドルたちの想いを引き継いだ5人でのパフォーマンスだ。
一体どんな学園祭になるのか、今から待ち遠しくて仕方がない。
そして、各々が学園祭の準備を始める。
しかし、俺には一つ懸念点があった。
今の俺は、ヌッラの能力のせいで左手が動かせない。ほとんどが女子生徒のこの学校では、力仕事で男手が必要になる場合があるだろう。もちろん俺も手伝いたいのは山々なのだが、今の状態じゃ重いものなんて到底運べない。
しかし、左手が使えない理由を明確に説明することもできないし、いったいどうするべきか…
そう悩んでいた俺だったが、それは意外な形で解消された。
「音居くーん!ちょっとこれ運んでおいてくれなーい?」
とあるクラスメイトが、ダンボールを指差しながら俺に頼んできた。
「あー…えっとその…」
かなり大きなサイズのダンボール。流石に片手で運ぶのは厳しそうで、俺がどうしようかと悩んでいた時だった。
「カナトさん!こんなとこにイマシタ!」
クゥクゥが、やっと見つけたといった様子でやって来た。
「アッチ手伝ってくれるって約束シテタのに、どこ行ってたデスカ!?」
「え?」
そう言われたが、俺はクゥクゥと特に何も約束はしていない。
俺が左手を使えない状態だと知っているクゥクゥは、無理をしないようにこの場から引き剥がそうとしてくれているのだろう。
「あ、先約があったんだ!ごめんね!」
そしてクゥクゥの狙い通り、クラスメイトは別の助っ人を探しに行った。
「ありがとう…!助かったよ」
「イエ!困った時はオタガイサマです!」
にっこりと笑って、サムズアップするクゥクゥ。
「カナトさんは、ククと一緒に作業シマショウ!」
そんなクゥクゥのお陰で、学園祭の準備中も俺が左手を使えないとバレてしまうことはなかった。
「アンタ、最近妙に奏叶と一緒にいるわね…」
「グソクムシには関係ナイです!!」
なんて、別の疑いが生まれてしまったりはしたが…
そして、学園祭の前日となった。
ギリギリまで準備をしていたため、帰り支度を済ませた頃にはもう既に外は暗くなっていた。
校舎を出て校門に続く道を歩いている途中で、葉月さんとバッタリ出会った。
「あ、葉月さん」
「音居さん、今帰りですか?」
「うん。ちょうどよかった。コレ、ありがとね」
俺は葉月さんのお母さんが遺した学校アイドル部について記されたノートを取り出した。
全校集会の日に部室で澁谷さんが見つけたこのノートだが、少し気になることがあり、葉月さんから借りていたのだ。
「ごめんね。せっかく見つかって、じっくり見たかっただろうに」
ようやく見つかった母の学校アイドルに関する記録。
それをいきなり借りてしまったことに対する謝罪をすると、葉月さんは笑って首を横に振った。
「いよいよ明日ですね…!」
「明日のライブ、楽しみにしてるね」
葉月さんにとっては、スクールアイドルとしての初めてのライブでもある。そんな彼女を鼓舞するように言うと、葉月さんは嬉しそうに微笑んだ。
「こうして生徒みんなが一丸となって学園祭を開催できるのも、
葉月さんはそう言ってくれるが、無事に学校がまとまったのは、澁谷さんたちと…何より葉月さん自身の頑張りがあってこそだ。俺は特段何もしていない。
「おと…」
すると、俺に視線を向け、いつものように「音居さん」と声をかけようとした葉月さんだったが、途中でやめて首を横に振った。
「"奏叶さん"。明日のライブ、しっかりと見ていてくださいね」
真っ直ぐな瞳でそう言ってきた葉月さんには、もう迷いや不安なんて、これっぽっちも残っていない様子だ。
「もちろん。楽しみにしてるね、"恋"」
そして、いよいよ学園祭の日がやってきた。
──次回『〜奏でるムジカは青空のソナタへ〜』
「せっかくの学園祭なんですから、そんなに固い顔しないでくださいよ」
紆余曲折ありつつも、無事に結ヶ丘高等学校 初の学園祭が幕を開けた。
「ちょっとだけ怖くって…腕、掴んだままでもいい…?」
奏叶はかのんたちスクールアイドル部の面々と共に、学園祭を満喫する。
そんな中、ついに結ヶ丘のスクールアイドルを狙うヌッラの正体に辿り着く。
「やっぱり、あなたがヌッラだったんですね」
『#27 学園祭を狙う影』
─────
『#26 瞬きの先へ』
最後まで読んでくださり、誠にありがとうございます!!
お気に入り登録や感想、評価等いただけると大変励みになります。
もしよろしければ、よろしくお願いします!
次回『#27 学園祭を狙う影』は、9月16日20時に投稿予定です。
お楽しみに!
仮面ライダー作品を見たことがあるか
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10作品以上見たことがある
-
3〜9作品見たことがある
-
1、2作品見たことがある
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全く見たことがない