─登場人物─
【
結ヶ丘高等学校に通う一年生で、仮面ライダームジカの変身者。
歌うことが大好きだが、ヌッラの能力により歌声を奪われてしまった。
【
結ヶ丘高等学校に通う一年生で、スクールアイドル部の一員。
人前では緊張して歌えないという悩みを抱えていたが、可可の想いに触発されて共にスクールアイドルを始めた。
【
結ヶ丘高等学校に通う一年生で、スクールアイドル部の一員。
幼い頃からショウビジネスの世界で活動してきた。表には見せないが努力家であり、ショウビジネスの世界で培ってきた様々なことを器用にこなす。
紆余曲折ありつつも、無事に大成功で幕を閉じた結ヶ丘高等学校初の学園祭。
それから一夜明けた月曜日の昼下がり。普段なら学校にいるはずのこの時間だが、今日は学園祭の振替休日だ。それを利用して、俺はある人物と待ち合わせをしていた。
「奏叶くーん!」
待ち合わせ場所に小走りで駆け寄ってくる一人の少女。
日差しに照らされながら、煌めくような可憐さを放つその姿に、俺は思わずドキッとして頬を赤らめてしまう。
「ごめん!待った…?」
温かみのあるオレンジ色のトップスに、白いロングスカートを身にまとったその少女は、俺を見上げる形、所謂上目遣いで聞いてくる。
「全然、俺も今来たとこ」
「よかった!」
俺のなんともテンプレートな返答に、目の前の彼女はホッとしたように笑みを浮かべる。
あれ、なんかデジャヴ。
とまぁ、わけのわからないモノローグはこのぐらいにして…
俺と待ち合わせをした相手というのは、以前もこのようなやり取りを交わしたクラスメイト、澁谷かのんさん。彼女と休みの日に待ち合わせたのは、とある約束を果たすためである。
〜〜〜〜〜
「それじゃ行こっか」
その言葉に頷いた私─澁谷かのんは、目的の場所に向かって歩みを進め始める奏叶くんについて歩く。
今日、どうして奏叶くんと出かけることになったのか…その発端は、昨日の学園祭の帰り道にまで遡る。
───
──
─
学園祭の片付けも終わり、私たちスクールアイドル部の5人はそれぞれ帰り支度を済ませていた。
しかし、恋ちゃんは生徒会長として理事長先生と話があるため学校に残り、ちぃちゃんは学園祭に持ってきていたアルバイト先のキッチンカーを返しに、一人暮らしのクゥクゥちゃんは日用品の買い物に行ったため、珍しくすみれちゃんと二人で帰っていた。
「かのん。あなた、さっきからちょっと様子が変よ?」
横並びで歩いているすみれちゃんが、唐突にそんなことを言ってきた。
「えっ?そ、そうかな…?」
「ま、だいたいの理由はわかってるけどね」
すみれちゃんは一度足を止めると、私の方に振り返ってニヤリと笑う。
「さっきの奏叶と恋のやり取りを見たから、でしょう?」
「うぇっ!?」
すみれちゃんの言葉は図星であり、私は驚きのあまり体を仰け反って変な声を出してしまう。
「だってぇ…とうとう恋ちゃんまで、奏叶くんに名前で呼ばれるようになったんだよ!」
それは、学園祭でのライブ終わりのこと…
『みんなライブお疲れさま!』
制服に着替え終えて5人で歩いていると、たまたま通りかかった奏叶くんから労いの言葉をかけられる。
『"恋''も、初めてのライブなのに堂々としたパフォーマンスに綺麗な歌声で、ホントにすごかったよ!』
『"奏叶さん"…ありがとうございます!』
なんてやり取りがあったのだ。
恋…
奏叶さん…
この間まで、葉月さん、音居さん呼びだったのに、いつの間に…
以前からずっと気になっていた、奏叶くんが私だけ苗字呼び問題。
ちぃちゃん、クゥクゥちゃん、すみれちゃんときて、とうとう恋ちゃんまで名前で呼ぶようになった。
「なんでぇ!?」
「結局、あの時はそれについて話せなかったのよね?」
私はその問いに、しょぼんとして頷く。
すみれちゃんが言う"あの時"とは、私と奏叶くんが怪物に攫われた時の話だ。本当はあの日二人で映画を見た後に、それとなく聞いてみようと思っていたけど、怪物の事件でそれどころじゃなくなってしまった。
『今度こそ、一緒にカフェオレ飲みに行こう!』
あ、そういえばあの約束のカフェオレ、まだ行ってないな…
あの怪物が作った空間で交わした奏叶くんとの約束が頭に過る。
あれからも神津島でのライブや生徒会長選挙、学園祭といろいろあって、その約束はまだ叶えられていない。
ピコンっ♪
その時、私のスマホに一件の通知が入った。
誰からだろう…なんて思いながらスマホを見てみると、差出人は奏叶くんからだった。
「えっ…」
「…?かのん、どうかしたの?」
スマホを見て目を見開く私に、すみれちゃんは首を傾げる。
「奏叶くんが…」
「奏叶が?」
「コレを…」
私はスマホの画面をすみれちゃんに見せる。
【約束してたカフェオレ飲みに行かない?】
奏叶くんから送られてきたそのメッセージは、ちょうど私が考えていた約束についてのお誘いだった。
ただでさえ遊びの誘いをもらうだけでも嬉しいのに、まさか私と同じことを彼も考えていたと知って、嬉しさのあまり顔に熱が籠るのを感じる。
すると、そんな私を見たすみれちゃんが「ふふっ」と微笑んだ。
「嬉しそうったら嬉しそうね」
奏叶くんのことになると、最近の私はどうも変だ。その理由は、自分でもよくわからない。
他の友達だったら、きっとこんなふうにはならない。でも、奏叶くん相手だと普段の何倍も感情の波が大きくなっている。もっと話したい、一緒にいたいと思えば思うほど、いろいろ考えて上手く行動に移せなくなってしまう。
「よし。明日って、ちょうど学園祭の振替で休みよね?」
「え?うん、そうだよ」
「ならちょうどいいわ。明日、奏叶と二人で出かけて、名前の件も話してきちゃいなさいよ」
「えぇ!?あっ、明日って…流石に急すぎだよぉ…」
「そんなこと言ってたら、いつまでも前に進めないわよ」
すみれちゃんのズバッとした発言に、私は確かにと思いギクッと体が硬直する。
「ほら、さっさと返事しちゃいなさいったらしちゃいなさい」
そう急かされ、私も腹を括りスマホを取り出して奏叶くんにその旨の返事を送る。
数分後、奏叶くんから明日で大丈夫との返事がきた。その返事に私は胸踊るのと同時に、少しの緊張が走る。
でも、確かにすみれちゃんの言う通り、ちょうどいい機会かもしれない。名前の件もそうだし、私が奏叶くんに対してだけ感じる、いつもと違う感情。そんなモヤモヤの答えが、もしかしたら見つかるかもしれない。
〜〜〜〜〜
「わぁ…!」
俺の目の前で、運ばれてきたカフェオレに澁谷さんが目を輝かせる。
「奏叶くん!ここのカフェオレ、すっごく美味しい!」
そして、カフェオレを一口飲んだ澁谷さんは嬉々とした様子で舌鼓を打つ。
「ホントだ…!」
俺も自分のカフェオレを口にしてみると、その美味しさに驚いた。
普段あまりコーヒー系の飲み物は飲まないが、そんな俺でもここのカフェオレは特段美味しいと感じた。コーヒーの苦味と、ミルクのクリーミーな甘味がうまく調和している。恐らく、ミルクもコーヒーに合うものを厳選しているのだろう。
先日、カフェオレが美味しいとSNSで話題になっていたのを見つけて、澁谷さんと一緒に行くのにちょうどいいお店だと思い誘ってみたが、正解だったようだ。評判通り、ここのカフェオレは絶品だ。
「澁谷さんって、昔からカフェオレ好きなの?」
「うん。子供の頃からずっと好きだったよ」
「すごいね。俺なんて、最近ようやく美味しく飲めるようになったのに」
なんなら、今でもブラックコーヒーは苦くて飲めない。
そういえば、俺が初めてカフェオレを美味しいと思ったのは、あの日だったな…
澁谷さん家で飲んだ、あのカフェオレ…
鼓野さんを怪しいスカウトだと思い込んで逃げ回っていた最中、たまたま立ち寄った澁谷さんの家のカフェ。そこで飲んだカフェオレが、人生で初めて美味しいと感じたカフェオレだった。
「家がカフェをやってるっていうのもあって、小さい頃からお母さんに飲ませてってせがんでたんだ。それで、いつの間にか大好きになってた」
「澁谷さん家のカフェオレ、ホント美味しいもんね」
「奏叶くんも、引っ越してきたばかりの時に来てくれたんだよね?」
俺はその言葉に頷き、改めてあの日のことを思い出す。
初めて鼓野さんに出会いプロテクションという組織のことを知った日でもあり、初めて千砂都に出会った日でもある。
今思えば、この日が人生の大きな分岐点だった。
仮面ライダームジカとしての俺と、結ヶ丘高等学校に通う俺。
そんな俺の"始まりの日"。
「まさか、あの日ちぃちゃんから聞いた男の子が同じ学校で、同じクラスになって、こんなに仲良くなれるなんて思ってもなかったなぁ」
「だよね。引っ越してきたばかりで一人だったから、澁谷さんや千砂都たちと仲良くなれて心強かったよ」
今の俺にとって大切な友人である澁谷さんに千砂都、クゥクゥ、すみれ、恋。そして、鼓野さんや九重さん、牧田さん、狼谷さん、政宗さんたち俺の戦いをサポートしてくれる人や、桜葉先生や正道さんといった頼れる大人たち。
かけがえのない人たちと出会えたからこそ、歌という大切なものを失っても、俺は今も腐らずにいられるんだと思う。
「そっか…一人暮らしってことは、掃除も洗濯も、家事とか全部自分でやってるんだよね。すごいなぁ…」
「そんなことないよ。家事サボっちゃう時だってあるし、自分で家賃払ってるわけでもないし…」
「それでもだよ。私、一人で生活するなんて想像できないなぁ…そういえば、ご飯とかはどうしてるの?奏叶くん、料理もできちゃうの?」
ギクッ…
痛いところを突かれてしまった。
「いや…俺、料理はからっきしで…だからいつも外で食べるか、買ってきたお弁当とかで…」
「あー…確かに、いつもお昼ご飯買ってきたものだもんね」
「料理はなんか苦手なんだよね…いや、苦手というか、してないだけというか…」
苦笑しながらそう言って、今度は俺から澁谷さんに聞く。
「逆に、澁谷さんは料理とかするの?」
「そんなにしないけど、一応できるよ。これでもカフェの娘だからね!」
えっへん、と胸を張る澁谷さん。
そんな彼女を微笑ましく思いながら、俺は再びカフェオレに口をつける。すると、澁谷さんが何かを思い出したのか、「あ…」と小さく声を漏らす。
「そういえば奏叶くん知ってる?」
澁谷さんがそう前置きしたので、俺はカフェオレをテーブルに置いて耳を傾ける。
「最近、前に私たちをさらった怪物と戦ってるヒーローがいるんだよ」
「へ、へー。そーなんだー」
話の内容がまさかの俺が変身する仮面ライダームジカについてだったので、俺は内心ヒヤリとしつつ当たり障りのない返しをする。
「ちぃちゃんはまんまるのヒーローって呼んでるんだ。いくつかの姿があるみたいなんだけど、まんまる大好きなちぃちゃんにとっては、丸い体の姿が一番印象に残ってるみたい」
あー、そういえば…千砂都はこの前も、まんまるのヒーローって言ってたな。
まんまるのヒーロー、かぁ…なんかあんまり嬉しくないかも。
もし今度ムジカの姿で会うことがあれば、ちゃんと仮面ライダームジカって名乗ろう。
「人知れず人を守るために戦ってるなんてかっこいいよねって、ちぃちゃんたちと話してたんだ」
その言葉に、内心嬉しくなる。
誰かに褒められたくて戦っているわけではないが、それでも、そういった風に言ってもらってるというのは戦う活力になるな…
「あ、でも…」
すると、澁谷さんは恥ずかしそうに頬を赤く染めながら、うるっとした瞳で俺のことを上目遣いで見つめる。
「あの時の奏叶くんの方が…かっこ、よかったよ…?」
少し震える声でポツリと零れたその言葉に、俺はまるで心臓を掴まれたかのように胸がドキッと高鳴った。
「っ…」
澁谷さん、それは反則でしょ…!?
普段はしっかりとしている澁谷さんだが、突然まるで小動物のような可憐さを見せてきた。そんな不意打ち攻撃に、俺の鼓動の速度が加速する。
俺は冷静さを取り戻すために、澁谷さんにバレないよう控えめに深呼吸する。
とはいえ、比較対象のまんまるヒーローと俺、同一人物なんだよな。冷静になった途端、そんな口にできないツッコミが浮かんでしまった。
「ありがとう。あの時は澁谷さんを守ることに必死だったから、あんまり覚えてないんだけど…」
あはは…と照れ笑いした俺は、そう答えて頬をかく。
あの時は、変身が封じられ生身のままヌッラと戦った。それでも澁谷さんは絶対に守らなければならない、そんな必死な想いから、アドレナリンが出ているような状態だったのだろう。そのためか、あの時の記憶はあまり残っていない。
やっべ…なんか照れたりしてたら、急にトイレ行きたくなってきた…
「澁谷さん、ちょっとお手洗い行ってくるね」
〜〜〜〜〜
うぅぅ…恥ずかしいぃぃぃ…
私─澁谷かのんは、ひとりカフェの席で悶えていた。
その理由は、さっきの私自身の発言。
『あの時の奏叶くんの方が…かっこ、よかったよ…?』
ひとりになった途端ふと冷静になった私は、とてつもない恥ずかしさに襲われていた。
『ありがとう。あの時は澁谷さんを守ることに必死だったから、あんまり覚えてないんだけど…』
そんな私の言葉に対する彼の返事を思い出し、ただでさえ熱がこもっている顔が更に熱くなる。
ずるいよ、奏叶くん…
サラッとあんなこと言うなんて、カッコ良すぎるよ…
「えへへっ…」
楽しいなぁ…
奏叶くんと一緒にいると、不思議と胸が弾む。その感情は、他の友達といるのとはどこか違う。でも、私は自分のこの気持ちがなんなのかはよくわからないでいた。
「あ…」
そして、私はふと重要なことを思い出した。
『澁谷さん、ちょっとお手洗い行ってくるね』
今日もやっぱり、"澁谷さん"呼びだったなぁ…どうしてなんだろ…
「はぁ…」
って、ダメダメ!弱気になっちゃダメ!
今日はその理由を聞くためでもあるんだから。この前も聞けなかったし、今日こそは…
その時、背後から私に話しかける声が聞こえる。
「どうかしたの?お嬢さん」
とても美しく、澄んだ女性の声。
「え?」
わ、綺麗な人…!
振り返ると、そこにはまさに"美女"という表現がぴったりだと思うほどに美しい女性がいた。艶やかで絹のようにサラサラと靡く美しい黒髪に、深い黒色の大きな瞳、透き通るような白い肌。座っていてもわかるほどにしなやかでスラッとしたスタイルの持ち主で、身につけている黒くシックなワンピースがそのスタイルの良さをより際立たせている。
そして、何よりも目を引くのは、彼女が身につけている黒いベール。そのベールによって彼女の顔の右半分が隠れており、一見独特なそのファッションが、逆にミステリアスな雰囲気を醸し出しより一層彼女の魅力を引き出しているように感じる。
そんなお姉さんは、私が座っている席の後ろにある二名掛けのテーブル席に、私と背中同士が向き合うような形で座っている。つまり、お姉さんはわざわざ振り返って私に声をかけてきたということになる。
「どうしても気になってね、あなたのこと。さっきまであんなに幸せそうだったのに、急にため息を吐いていたから」
「えっ?私、そんなにわかりやすかったですか!?」
「それはもう。さっきの彼と話しているあなたは、心の底から楽しそうで、幸せそうな、甘い声をしていたわ」
言われて、とても照れ臭くなる。
見ず知らずの人にまで気づかれるなんて、私、どれだけわかりやすいのぉ…
「さっきの彼は…彼氏さん、かしら?」
「かっ、かかかかかか彼氏ぃ!?」
その瞬間、私の顔が沸騰したかの如く急激に熱くなるのを感じた。
「そっ、そんなんじゃないです…」
「あら、そうだったの?」
お姉さんは首を傾げると、「ふふっ」と意地の悪そうな笑みを浮かべる。
「でも…その様子じゃ、あなたは満更じゃなさそうね」
「ふぇっ!?」
思わず、変な声が漏れた。
満更じゃない、って…それじゃまるで…
「それで、突然浮かない顔になったのはどうしてなのかしら?」
「……それが…」
いきなりこんな話をするのもどうかなと少し迷ったけど、このお姉さんなら、もしかしたら何かいいアドバイスをくれるかもしれない。そう思った私は、正直に話してみることにした。
「自分だけいつまでも名前で呼んでくれない、ねぇ…」
「今まで誰かにこんなこと思ったことないのに、奏叶くんにだけは、どうしても下の名前で呼んでほしい。他の子には呼んでるのに、私だけいつまでも距離があるような感じがするのは嫌だって、思っちゃって…」
私、本当にどうしちゃったんだろ…
今まで感じたことのない感情に、私はずっと戸惑っている。
「それはつまり、嫉妬ね」
「え?嫉妬…」
「他の子ばっかりじゃ嫌だ、もっと自分を見てほしい。言い換えれば、あなたはその彼にそう思っているってことでしょ」
そんな…嫉妬だなんて…
「勘違いしているようだから言っておくけれど、嫉妬するのが悪いことだなんて、そんなことないわよ」
「えっ…?」
「だって、嫉妬するということは、それだけ相手のことを"強く想っている"ということでしょ?」
相手のことを、強く…
「ま、名前で呼ぶ呼ばないに関しては、あなたの友達が助言したように彼に直接聞いてみるしかないわね」
「そうですよね…」
やっぱり、自分自身で勇気を出すしかない。
そう思ってもやはり心のどこかに恐怖心があり、思わず俯いてしまった。
「けれど、この状況は何も悪い可能性ばかりじゃないわ」
「え?」
「彼は、あなたのことだけはいつまでも名前で呼ばない。逆に言えば、それもある意味"特別"ってことじゃない?」
「そ、そうかもしれないですけど…」
「そして、その特別は…きっと悪い意味じゃない」
心のどこかで恐れていたこと。奏叶くんは私のことが嫌いとか、苦手だと思っているから、名前で呼ばないんじゃないか…
しかし、お姉さんは"悪い意味じゃない"ときっぱり否定した。
「だって、嫌な感情を持っている相手と、ふたりで出かけたりなんてしないでしょ?」
「っ…!」
「だから、そんな不安そうな顔をしないで、笑顔で自信を持って聞いてみなさい」
お姉さんの話を聞いて、ずっとあった不安な気持ちが晴れたような気がした。今なら、ちゃんと聞けると思う。
「お姉さん、ありがとうございました!私、聞いてみます!」
私は、お姉さんに感謝を伝える。
するとお姉さんは、口元に手を当ててふふっと微笑む。
「若いっていいわね、羨ましい。若さだけは、何をしようと取り戻せない。どんな力を使おうと、ね…」
私とお姉さんの会話がひと段落ついた頃、ちょうど奏叶くんが席に戻ってきた。
「ごめん、お待たせ。って、澁谷さんの知り合い?」
「ううん。たまたま、ちょっと話が盛り上がっちゃって」
「それじゃあ、
お姉さんは席を立つと、私の耳元に近づき、私にだけ聞こえる声量で「がんばってね」と声をかけてくれた。
あ、名前聞くの忘れちゃったなぁ…
せっかく相談に乗ってもらったし、名前ぐらいは聞いておけばよかった。
去っていくお姉さんの後ろ姿を見ながらそんなことを考えているうちに、奏叶くんは席に着いていた。そんな奏叶くんの表情が何かを思案しているように感じ、私はそれとなく聞いてみる。
「奏叶くん、どうかした?」
「あ…あの人、なんか知ってるような気がして…」
「え、見覚えあったの?」
「いや、顔は見たことないと思う…」
顔は見たことないってことは、声とかに聞き覚えでもあったのかな…?
「ま、気のせいかな。やっぱりなんでもないよ」
そう言ったが、さっきのお姉さんを思い出そうとしている時の奏叶くんの表情は、どこか険しかった。私はそれが気になりはしたものの、本人が気のせいだというのでこれ以上は何も聞かないことにした。
「ふぅ…」
私は、心を落ち着かせるように一つ息を吐いた。
勇気を出せ、私!
今、奏叶くんに聞くしかない…!!
そう自分を鼓舞した私は、ついに話を切り出すのであった。
「奏叶くん…!」
──次回『〜奏でるムジカは青空のソナタへ〜』
「どうして、私だけ名前で呼んでくれないの…?」
かのんは、心の内に秘めていた悩みをついに打ち明ける。
「俺は、グラヴィータ・ヌッラ」
そして、奏叶とかのんの前に、ピリオドの幹部─グラヴィータがヌッラとなって立ちはだかる。
そんなグラヴィータの持つ力は、これまでのヌッラとは別格であった。
「"銀色"の、ヌッラ…」
『#30 銀色のヌッラ』
─────
『#29 ビタースイートな香り』
最後まで読んでくださり、誠にありがとうございます!!
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もしよろしければ、よろしくお願いします!
次回『#30 銀色のヌッラ』は、10月3日20時に投稿予定です。
お楽しみに!
仮面ライダー作品を見たことがあるか
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